不動産を「早く」売ったほうが良い理由とは?
不動産を急いで売ろうとすると、売却価格が安くなりそうに感じるかもしれませんが、売却方法やタイミングによっては高く売れる場合もあります。
不動産を早く売ったほうが良い理由
不動産を売却するなら早く決断することが大切です。
・建物価格は減少する
・相場価格は変動する
・節税が期待できる
こんな理由があるからです。
建物価格は減少する
売却の対象不動産には3つの種類があることをご存じでしょうか。
1.土地の売却
2.土地+建物の売却
3.建物の売却
「建物の売却」は借地権付きなど非常に稀なケースで、ほとんどは土地または土地+建物が売却対象です。建物は年数が経てばたつほど劣化が進んで残存耐用年数が短くなるため、建物は黙っていても値下がりします。
相場価格は変動する
土地に関して言うと、以前は「土地は値下がりしない」のような “土地神話” がありましたが、現在はそのようなことはなく、土地の価格は変動します。
とくに近い将来の話をしますと、生産緑地の「2022年問題」と呼ばれる問題で、住宅地が大量供給され、土地の値段が下がる可能性があるのです。2022年に生産緑地の指定が解除される農地がたくさんあり、それらが住宅地として不動産市場にでてくると、相場価格が下落する可能性が非常に高まってくるといわれています。
節税が期待できる
自宅として使用していた居住用財産の売却では、3,000万円控除により譲渡所得税が課税されても納税を免れることのできるケースがあります。この特別控除を利用するなら、住まなくなってから3年後の年末までに売却しなければなりません。
相続した土地や建物を売却する場合にも、相続してから3年以内であれば取得費に相続税を加算でき、譲渡所得税を軽減できる可能性があるのです。
早期売却が迫られるのはどんな時?
不動産を通常の仲介で売却する場合、売り出しから売却までの期間は平均8か月といったデータがあります。
売り出しまでの準備期間も含めると、平均で1年近い時間を必要とするのが不動産の売却です。ところがそのように時間をかけることはできず、早急に売却しなければならないといった場合もあります。早期売却を希望する具体的な事情をみていきましょう。
ローン返済ができない時
住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、さまざまな事情でローンの返済ができなくなることがあります。1、2度の遅延であれば、なんとか遅れを取り戻して通常返済に戻ることができますが、3か月以上も延滞するようになると返済が追いつかないような苦しい状態になっていきます。
そのような時はできるだけ早く「任意売却」により自宅を売却し、住宅ローン債務を整理して普通の生活に戻れるようにした方がいいでしょう。ただし、任意売却には次のようなデメリットもあるので、十分把握したうえで決断しなければなりません。
1.信用情報機関に登録されるので、一定期間は金融機関からの融資が受けられない
2.売却しても住宅ローンの元金に満たない場合は、残債分を自己資金や借入金などで返済していかなければならない
離婚時の財産分与
離婚する時には、夫婦の財産は協議により分割するのが通常です。現金預金は簡単に分割できますが、不動産を分割することはできません。また住宅ローンの借入がある場合は、片方が連帯保証人になっているか、連帯債務になっている場合もあります。
最近はペアローンを利用しているケースもあり、不動産を共有したままの離婚は、将来に問題を残すことにほかなりません。離婚が決定した場合は速やかに売却する準備をし、現金を手に入れて財産分与を行うのが賢明です。
相続時の遺産分割
相続財産に不動産がある場合、遺産分割協議にしたがって分割しようとしても不動産は分割できず、共有にするか代償分割しなければなりません。共有は将来的な利用や処分の際に面倒であり、代償分割は手持ちの現金が必要になります。
そこでおこなわれるのが「換価分割」という不動産を売却して現金化したうえで遺産を分割する方法になります。
転勤や買い替えによる転居
転勤や買い替えによって所有していた住宅が空き家になっているケースでは、固定資産税は空き家であっても納税義務がありますし、空き家は傷みが早くなるとも言われ、メンテナンス費用もかかります。住宅ローンの返済がまだ残っていれば、支払いが続きます。マンションの場合であれば、管理費と修繕積立金は所有している間は必ずかかる費用となります。売却はできるだけ早くするほうが望ましいと言えるでしょう。
早く売る、最短ルートは「買取」
不動産を早く売りたいのなら「買取」に優る方法はありません。買取とは、不動産会社に直接売り渡すので買い手が現れるのを待つ必要がありません。仲介手数料を支払う必要もなく、数日から1か月程度で売却が可能です。
買取のメリット・デメリット
買取は売却期間を短くできることが最大のメリットです。さらに仲介手数料はかからず「契約不適合責任」という売主が負うべき責任も免除されます。その代わり、価格が相場価格より1~3割安くなるというデメリットがあります。
ほかにも、買取には特徴があるので下記を参考にしてください。
高額買取のヒント
買取の唯一のデメリットを少しでも緩和するには、買取査定を複数の不動産会社に依頼することが重要です。さらに引渡しまでの期間が短く、契約から引渡しまでのスケジュールを合わせてくれる不動産会社を選ぶことにより満足のいく売却に近づけることができるでしょう。
「買取」以外にも道はある!早く売るためのテクニック
売却までに3か月程度の余裕がある場合は、買取ではなく仲介で売却するのも選択肢です。その時に知っておきたいテクニックをお知らせします。
指示を待たずに事前準備する
仲介はまず査定からスタートしますが、査定に必要な書類を準備しておくのも売却時間を短くできるコツです。たとえば
・権利証
・固定資産評価証明書
・住宅ローン返済予定表
などを事前に準備しておくと、査定と売り出しを早めることができます。また、引渡しまでに必要となる境界石の確認も時間のある時にやっておくと、商談がスムーズに進むことにつながります。
買い手の一手先を読んだ価格戦略を立てる
売却活動に入って、購入希望者が内見をするなど商談が進んでくると、時間がかかるのが「売渡し価格」の決定です。買い手が決断しやすい価格設定にしておくとか、値引き交渉が入った場合の最低ラインを決めておくなど、売渡し価格の決定に時間がかからないよう準備をしておくことが重要です。
頼れる不動産会社と営業マンを味方につける
早く売るには不動産会社の担当者が、同じ意識で行動してくれることが大切です。早く売ることを優先させて安売りされても困りますし、価格交渉を頑張りすぎるのも破談の恐れが生まれます。売主と同じ気持ちで動いてくれる頼りにできる営業マンが担当についてくれると、売却はほとんど成功と言ってもよいでしょう。そのためには、頼れる不動産会社選びが重要となります。
”買う側目線”で物件の魅力アップを図る
早く売りたいという意識が強すぎると、かえって売れないこともあります。買い手目線で売れる環境を整えるのも方法です。
・インスペクションにより物件の現状を専門家に点検診断してもらう
・ホームステージングにより物件を魅力的に演出する
など、購入につながる好印象を買い手に与えることがポイントです。
期限のリミットがあるなら「買取保証」を利用
3か月の期間を設定して仲介で売却をスタートさせても、万が一3か月以内に売却できないと困るといったようなケースが生じた場合は「買取保証」を付けた媒介契約も検討してみましょう。買取保証とは、期限までに売却できない場合は買取してもらうことを条件に仲介してもらう方法です。すべての不動産会社が対応してくれるわけではないので、事前に確認しておきましょう。
早期売却を狙う場合の注意点
早期売却には思わぬ落とし穴も存在します。
注意したいのは次の2つのポイントです。
買い叩かれないように注意
早期売却は、ともすると購入希望者に「この売主さんは早く売りたがっている」と感づかれる可能性があります。不動産の売買は一般的に「値交渉(ねごうしょう)」と言って、売買価格は売出し価格そのものではなく値引き交渉の結果、売買価格が最終的に決まります。
購入希望者側にも媒介する不動産会社がついている場合は、値交渉が必ずあると考えたいものです。その時に相手側は強気の「指値(さしね)」をし、買い叩いてくる可能性が高くなるのです。買い叩きを防ぐには「急いではいません」のような印象を与えることが大切です。
業者の囲い込みに注意
媒介業者によっては「両手仲介」を狙って、一定期間「囲い込み」をするケースがあります。囲い込みとは、ほかの不動産会社に客付け営業をさせないために、業者からの問い合わせには「商談中です」などと偽り、営業行為をさせないことをいいます。囲い込みにより商談の機会が減り、結果的に売却が遅くなってしまうことがあるのです。
専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結した場合は、売買物件を国土交通大臣が指定した不動産流通機構「レインズ」に登録することが義務づけされています。レインズでは「囲い込み」は禁止行為としていますが、悪質な不動産会社が存在するのも事実です。
まとめ
買取以外の方法で、不動産を早く高く売るためには次のポイントをおさえましょう。
・不動産会社任せにせず、できることは早めに準備
・買い手が購入したいと感じる価格設定
・優良な不動産会社の選択
・買い手目線で物件をアピール
そして「買い叩き」や「囲い込み」には十分注意してください。
監修弘中 純一
【資格】宅建取引士/一級建築士
宅建取引士・一級建築士として住宅の仕事に関り30年以上になります。
住宅の設計から新築工事・リフォームそして売買まで、あらゆる分野での経験を活かし、現在は住まいのコンサルタントとして活動。
さまざまな情報が多い不動産業界ですので、正しい情報発信に努めています。
●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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