家や土地など不動産を所有していると、必ず掛かる税金があります。それが固定資産税・都市計画税です。この記事では不動産を所有している方にむけて固定資産税と都市計画税の概要や計算方法を中心とした基礎知識を分かりやすくご説明します。
固定資産税・都市計画税とは?
家や土地など、不動産を所有していると課税される税金があります。その税金は、固定資産税と都市計画税です。それぞれの税金の概要についてご説明いたします。
固定資産税とは
固定資産税とは、固定資産(土地、家屋、償却資産※)を所有している人に課税される税金です。課税主体は市町村で、毎年1月1日現在の所有者に納税義務があります。課税標準額は固定資産税評価額となり、原則としてその金額に税率1.4%(標準税率)を乗じて固定資産税額を算出します。
※償却資産
償却資産とは、土地・家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却額または減価償却費が法人税法または所得税法の規定による所得の計算上損金または必要経費に算入されるものを指します。つまり、一般的な自宅資産に付随する資産は対象となりませんので、参考までに留めておいて問題はありません。
基準となる固定資産税評価額とは
固定資産税評価額は、市町村によって決められます。実勢価格(不動産を売却する際の取引価格)の目安とされている公示価格の70%の水準となるように設定されています。この固定資産税評価額は3年に1度、評価の見直しが行われます。詳しくは、下記の記事を参照ください。
固定資産税がかからない場合も
固定資産税には、免税点が設けられています。課税標準の金額が免税点に満たない場合は、固定資産税は課税されません。免税点は、以下の通りです。
都市計画税とは
都市計画税とは、固定資産税と同様に、土地や建物を所有している人に課税される税金で、街路・公園整備事業等の都市計画施設の建設・整備などの都市計画事業等の費用に充てられます。課税主体は市町村で、毎年1月1日現在の所有者に納税義務があります。課税標準は、固定資産税評価額で、原則としてその金額に税率0.3%(制限税率)を乗じて都市計画税額を算出します。
なお、固定資産税は、全ての土地と建物が対象となりますが、都市計画税は都市計画法による市街化区域内に所在する土地と建物が対象となります。また市町村によっては課税されないケースもあります。
固定資産税・都市計画税の計算方法
固定資産税・都市計画税の計算方法についてご説明いたします。
固定資産税の計算方法
固定資産税の税額は、以下の計算式で算出をします。
固定資産税の税額=課税標準(固定資産税評価額)×標準税率1.4% |
標準税率とは、地方税を課税する場合に、通常用いることとされている税率のことをいいます。財政上の特別の必要があると認める場合には、課税主体(市町村)の判断によって、標準税率と異なる税率を条例で定めることができます。
都市計画税の計算方法
都市計画税は、以下の計算式で算出をします。
都市計画税の税額=課税標準(固定資産税評価額)×制限税率0.3% |
制限税率とは、地方税を課税する場合に、課税主体(市町村)が課税することのできる税率の最高限度を制限するものです。つまり、都市計画税の場合は、税率が0.3%を超えることはないということになります。
更地にすると固定資産税は6倍かかる!?
後程詳しく説明しますが、住宅用地には、課税標準が軽減される特例があります。しかし、既存建物を取り壊した場合、更地となり、その特例の適用を受けられなくなります。課税標準は、本則にもどるため、特例適用を受けていた時と比較すると6倍の税額負担が生じる点には、注意が必要です。
固定資産税・都市計画税の発生時期と納付方法
固定資産税と都市計画税の発生時期と納付方法についてご説明いたします。
支払う人は誰?
納税の義務があるのは、先述した通り、固定資産税・都市計画税ともに課税対象資産を所有している人です。
売却した後の固定資産税・都市計画税は日割り清算
固定資産税・都市計画税ともに、毎年1月1日現在の資産所有者に納税義務が生じることは、すでにご説明したとおりです。年の途中で売却が成立した場合には、売却から年末までの期間分の税額を日割り計算して、買主に税額負担してもらうことが一般的です。
発生はいつから?
納税の義務があるのは、毎年1月1日現在、固定資産税台帳に登録されている人になります。ただし、年の途中で、対象資産を所有することになった場合は、資産を所有することになった人が日割り計算した納税額を負担します。
納付時期はいつ?
納付通知書は、毎年6月に送付されます。納付は一括で行うか、市町村で定めた4回の期日までに分割納付もできます。納付時期を過ぎても納付しない場合には、市町村から督促を受けることになります。
固定資産税を滞納したら延滞金が発生する
固定資産税を滞納すると延滞金の支払いが必要となる場合があります。納期限後1か月以内であれば、原則として税額に7.3%を乗じた金額を延滞金として納めなければなりませんが、特例として「特例基準割合※」が採用されていて、この割合が7.3%を下回る場合には、この「特例基準割合」+1%が実際の延滞金の利率となります。
納期限から1か月を超えてもなお、納付ができない場合には、税額に特例基準割合+7.3%を乗じた金額を延滞金として納める必要があり、さらに負担が増えることになります。固定資産税や都市計画税の支払いが困難な場合には、早めに市町村の窓口で相談するようにしましょう。
※特例基準割合
各年の前々年10月から前年9月までにおける国内銀行の新規の短期貸出約定平均金利の平均の割合に、年1%を加算した割合
固定資産税が軽減される特例
固定資産税・都市計画税の税額計算方法については、前段でお話しした通りですが、条件を満たすことで、軽減措置が受けられる場合もあります。その概要について、ご説明いたします。
1. 住宅用地の特例
一定の基準を満たす住宅用地については、課税標準の軽減が受けられる特例の適用を受けることができます。なお、東京都の場合、以下の軽減措置の適用を受けて算出される税額がさらに2分の1に軽減される措置もあります。
小規模住宅用地
住宅1戸当たり200 m2以下の小規模な住宅用地の場合、固定資産税の課税標準額は、固定資産税評価額の6分の1の額となり、都市計画税の課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1の額となります。
一般住宅用地
住宅1戸当たり200 m2を超える住宅用地の場合、固定資産税の課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1の額となり、都市計画税の課税標準額は、固定資産税評価額の3分の2の額となります。
マンションの小規模住宅用地の考え方
マンションの場合、土地に対する固定資産税は、マンションの建っている敷地全体の固定資産税を、専有面積に応じた持ち分割合で案分します。登記簿謄本の表題部の「敷地権の割合」を確認し、敷地全体のうち敷地利用権を有する面積を計算してみましょう。その面積が200 m2以下であれば、先述した小規模住宅用地の特例適用を受けられます。
2. 新築住宅の特例
「令和4年3月31日までに新築された住宅」などの一定の基準を満たす新築住宅の場合、固定資産税の税額が一定期間、2分の1に軽減される特例があります。減額期間は、一戸建てで3年、マンションで5年です。なお、この特例は、床面積120m2相当分までの適用となり、120m2超相当分については、税額軽減の適用はありません。
3. 既存家屋の特例
既存家屋についても、固定資産税について特例の適用を受けられる場合があります。いずれも令和4年3月31日までの特例です。基準の詳細については、不動産が所在する市町村の窓口で確認されるとよいでしょう。
省エネ改修
一定の基準を満たす省エネ改修が行われた住宅について、翌年度分の固定資産税(120 m2分まで)が3分の1(長期優良住宅に認定された場合は2分の1)減額されます。
バリアフリー改修
一定の基準を満たすバリアフリー改修が行われた住宅について、翌年度分の固定資産税(100m2分まで)が3分の1減額されます。
耐震改修
昭和57年1月1日以前に建てられた住宅について、一定の耐震改修工事を行った場合、1戸当たり120m2相当分まで固定資産税の税額が2分の1(長期優良住宅に認定された場合は3分の2)、1年間減額されます。
4. 負担調整措置
平成6年度の評価替えから評価の均衡化・適正化を図るため、宅地の評価水準を全国一律に地価公示価格の70%とすることになりました。それ以前は、公示価格よりも極めて低い水準で推移していたため、3年に1度の評価替え時に税負担が急増する可能性もありました。そうならないように、なだらかに課税標準額を上昇させる負担調整措置が講じられています。
負担水準
負担水準(%)=前年度課税標準額÷今年度評価額×100 |
上記計算式で算出される負担水準が100%以上の場合は、課税標準額が据え置き、または引き下げとなります。一方、負担水準が100%未満の場合は、課税標準額が上昇します。
納付通知書と自治体の情報は必ず確認しましょう
固定資産税・都市計画税の計算方法は非常に複雑です。そのため、市町村が課税額の計算ミスを起こすこともあります。固定資産税の納付通知書が手元に届いたら必ず確認するようにしましょう。また、固定資産税は地方税なので、自治体毎に優遇措置を設けている場合があります。情報を逃さないためにも自治体のホームページもチェックしておくとよいでしょう。
まとめ
身近な税金の1つである、固定資産税・都市計画税ですが、詳細について理解することは難しいこともあります。しかし、知らぬ間に特例適用を受けていて、特例適用期間が終了し、急に税額負担が増加して驚いたという方もいます。そうならないためにも、不動産を所有すると、毎年支払うことになる税金だからこそ、仕組みを理解しておくのは大切なことです。専門家のサポートも活用しながら、理解に努めてみてはいかがでしょうか。
この記事のおさらい
固定資産税・都市計画税の計算方法は?
固定資産税は、固定資産税の税額=課税標準(固定資産税評価額)×標準税率1.4%、都市計画税は、都市計画税の税額=課税標準(固定資産税評価額)×制限税率0.3%の計算式で算出されます。詳しくはこちらで確認しましょう。
更地にすると固定資産税は何倍になる?
住宅用地には、課税標準が軽減される特例がありますが、既存建物を取り壊した場合、更地となり、その特例の適用を受けられなくなります。そのため、特例適用を受けていた時と比較すると6倍の税額負担が生じてしまうというわけです。こちらの記事でも詳しく説明しています。
固定資産税・都市計画税はいつ発生する?
固定資産税は、毎年1月1日を基準として課税されます。納税の義務があるのは、毎年1月1日現在、固定資産税台帳に登録されている人です。年の途中で、対象資産を所有することになった場合は、資産を所有することになった人が日割り計算した納税額を負担します。
固定資産税を滞納したらどうなる?
まずは、市町村から督促を受けることになりますが、固定資産税を滞納すると延滞金の支払いが必要になります。滞納金は滞納が発生した翌日から発生しますので、固定資産税や都市計画税の支払いが困難な場合には、早めに市町村の窓口で相談するようにしましょう。
固定資産税軽減の特例はどんなものがある?
固定資産税軽減の特例には、住宅用地の特例や新築住宅の特例、そして既存家屋の特例などがあります。場合によっては、固定資産税の税額が一定期間、2分の1に軽減されることもあるため、特例については必ず確認するようにしておきましょう。
監修キムラ ミキ
【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー
日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。
大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。
その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。
URLhttp://www.laugh-dessin.com/
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