- 市場価格を調べたり公的価格を参考にしながら、客観的な視点で売り出し価格を決めていきましょう。
- 早く売るか高く売るか?どちらを優先するかで売り出し価格の設定は変わってきます。
- 価格交渉を前提とした値付けにすることもポイント。信頼できる不動産会社に相談しながら設定することが大切です。
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目次
不動産の売り出し価格とは
売り出し価格と成約価格は別物!
一方、成約価格とは、最終的に売買契約を締結した金額を指します。そのため、交渉がない場合や交渉の結果、売り出し価格=成約価格となることもありますが、買主の希望価格やその金額に売主が歩み寄った場合、成約価格は売り出し価格と異なることになります。
一般的には、売り出し価格より買主の購入希望価格の方が低いため、成約価格が売り出し価格を超えることはありませんが、極稀に購入希望者が多く、売り出し価格が相場より安い場合など「買い上げ」や「買い上がり」と言われ、売り出し価格より成約価格が高くなることもあります。
売り出し価格を決める4つのステップ
ステップ1. 市場価格を調べる
自分の所有する不動産のおおよその市場価格を把握する具体的な方法は、不動産情報の掲載されているポータルサイト利用するといいでしょう。
具体的には、所有する不動産の種類(マンション、戸建てなど)や立地(最寄り駅からの距離)、面積、間取り、築年と同条件で売り出し物件を検索します。
このとき、ぴったり同じ条件である必要はないので、最寄り駅からの距離や面積、築年はやや幅を持たせて前後した数値で検索した方が表示される物件数が増えて比較しやすくなります。
検索後、所有する物件(以下「A」)と検索した物件(以下「B」)を比較します。たとえば、AとBの面積や建物の築年がほぼ同じで、立地はAよりもBの方が少し駅に近ければ、Bの条件がやや優れるため、Bの売り出し価格よりAの売り出し価格の方が安くなる可能性が高いといえます。
同じように、立地はほぼ同じで、面積が広い(狭い)や築年が古い(新しい)など物件の条件を比べながら所有する物件のおおよその売り出し価格をつかんでいきます。
特にマンションの場合、同じマンションで別の住戸の売りが出ていることもありますが、その場合は比較しやすく、基本的に立地や築年は一緒なので、階層や面積を比較することでおおよその価格を把握することができます。
公的価格も参考に
固定資産税評価額は、基本的に所有者しか知ることができませんが、公示地価や相続税路線価は毎年公表されていますので調べることが可能です。公的価格のうち、路線価や固定資産税評価額は税金を計算するための価格で、市場価格とは異なります。
また、公示価格も市場動向を知るための指標的な役割の価格であるため、やはり市場価格とは異なります。これらの公的価格は、定期的に改められるため、たとえば、過去数年の価格を調べることで上昇や下落の傾向を知ることができます。
国土交通省の「土地総合情報システム」を閲覧すると、過去の実際の取引価格(「実勢価格」)を調べることができますが、公表されている情報は物件の所在地や条件などがおおまかで、時間的にもやや遅れた情報のため、参考程度の利用に限られます。
ステップ2. 不動産会社に査定を依頼する
また、不動産会社の査定は、査定を行う不動産会社独自の検討方法で査定するため、依頼した不動産会社によっては査定額が大きく異なる場合もあります。
そのため、査定を依頼する場合には、より適正な市場価格を把握するためにも複数の不動産会社に依頼することがポイントになります。
机上査定と訪問査定の違い
不動産会社に電話やインターネットで査定を依頼することができ、依頼してから最短1~3日程度の短期間で査定額の提示を受けることができる査定法です。実際に売却する不動産を現地で確認するわけではないため、物件によっては査定の精度がやや欠けるのが一般的です。
一方、訪問査定とは机上査定で行った机上での査定に加え、実際に現地を訪れて査定を実施する方法です。担当者が現地を訪れてから1週間程度査定に時間がかかるなど、時間や立ち会いの手間がかかりますが、対象物件の現状と周辺環境なども踏まえて査定するため、机上査定と比べて高い精度が期待できます。
なお、実際に売却を依頼する際にはいずれにせよ訪問査定を受ける必要があるため、売却を検討しているのであれば、まず複数の不動産会社に机上査定を依頼し、その中から査定額や査定時の対応をみて、信頼できる不動産会社を選び、その不動産会社に訪問査定を依頼するとよいでしょう。
不動産会社の査定額は、媒介(仲介)契約が原則3か月であるため、その期間内に取引できるようにするため相場を踏まえて概ね3か月以内に売却できると思われる金額になります。また、各社の持つデータや経験、営業力の差が査定額となって現れますので、一概に査定が高いからよい、低いから悪いとは言えないことは知っておきましょう。
ステップ3. 売却希望価格と売却可能価格を設定する
一般的に、売主は売却価格を相場より高く見積もる傾向にありますが、早期の売却を目的とするなら、基本的には市場(相場)価格がおおよその上限と考えておきましょう。通常は、この売却希望価格を売り出し価格として設定します。
売却可能価格とは、売主としてその金額を下回ると売却できない、あるいは売りたくない価格、つまり下限値となります。
どうしても希望の高い価格で売却したいと考えているのであれば、売却希望額と売却可能価格を高めに設定しても問題ありませんが、売却しにくくなる可能性は高くなります。
一方、たとえば、住宅ローンの残債がある場合は、不動産を売却して諸経費を引いた金額と自己資金を合わせて住宅ローンの残債を完済しなければならないため、最低でも売却した資金と自己資金で完済が可能な額を下回らないように売却する価格を設定する必要があります。
また、不動産の売却と同時に買い替える場合や、新居を購入してから不動産を売却する場合など、急いで売却しなければならない理由がある場合には、いつまでも売買が決まらないということにならないよう、売却可能価格をある程度低く設定しなければなりません。
ステップ4. 売り出し価格を設定する
不動産の売り出し価格を決める際、いつまでに売却したいかという売却期限を意識するようにしましょう。
売却期限に余裕がある場合
不動産の売買価格には相場はありますが、個別の売買価格は売主と買主の双方が納得した額で決まるためです。
従って、たとえば買主がその物件を非常に気に入り、どうしても欲しいと思っているケースや、売り出し事例が少ない希少性の高い物件の売買などのケースでは、相場よりやや高くても売買が成立することはあります。
ただし、相場より高い価格での売り出しの場合は、売却に時間がかかることが多いため、売却に期限がなく、時間に余裕があるときのみ売り出し価格を高めに設定して、こうした買主が現われるのを待ってみてもよいでしょう。
売却期限に余裕がない場合
売却を開始して期限が近づいても買主がいない場合に値下げする手もありますが、「一度売り出してから値下げされた物件」はお得感があると見られることもある一方、「他の人が買わない理由があるのではないか?」と思われるリスクもあります。
そうしたことにならないよう、初めから売り出し価格をやや低めに設定することも一案です。
売り出しを始めて(物件情報の公開)から1か月程度で、市場の反応、たとえば問い合わせや見学希望などの反響がほとんどないようであれば、価格の見直しが必要かもしれません。売却する際は、売主として物件の市場の反応を常に意識するようにしましょう。
売り出し価格を決める際の注意点
ポータルサイトでの見え方を意識する
売り出し価格を設定する際、不動産会社の担当からこうしたポータルサイトでの見え方も踏まえた売り出し価格の提案があるのが一般的です。
実際、ポータルサイトでは地域や価格、面積、築年などの条件を絞って検索されます。あまり売り出し金額が相場よりも高いと物件を探している人の希望条件から外れてしまうため、検索から漏れてしまい、物件が表示すらされない可能性があります。売却期限に余裕があるときでもこの点は意識しておくようにしましょう。
また、ポータルサイトでは価格帯で検索されることも多くなっています。たとえば、2,000万円~3,000万円未満といった形で検索される場合、キリのいい「3,000万円」で価格を設定していると、それより上の価格帯でしか表示されないことになってしまいます。
このことを避けるために、不動産以外の商品の価格設定と同様に、3,000万円なら2,980万円、2,500万円なら2,480万円など少し低い価格で設定することを検討してもよいでしょう。
価格交渉を前提とした値付けにする
たとえば、2,800万円程度で売却したいという場合に、売り出し価格を2,880万円に設定しておけば、買主から価格交渉が入ったときに「2,800万円なら売却する」といったことがしやすくなります。仮に価格交渉が入らない場合でも、高い価格で売却できれば売主としては何も問題はありません。
もちろん、高い価格に設定すればそれだけ問い合わせの数が減る可能性は高いため、その点には十分注意する必要があります。
売り出し価格は、一般的に一度公開してしまうと、価格を上げることが難しくなります。もちろん、公開後に価格を上げることもできますが、かなりその物件の印象が悪くなります。従って、売り出し価格の設定に悩んだら、無理のない範囲で少し高めの設定から販売をスタートしてみた方がいいでしょう。
早く売るか高く売るか、どちらを優先するか決める
早く売りたいなら、価格をある程度相場より安く設定する方が希望する期間内に売却できる可能性が高くなりますし、一方、高く売りたいなら、売却期限は設けない方が希望価格で売却できる可能性が高くなります。
従って、まずは早く売ることを優先するのか、売却価格を優先するのかをきちんと決めてから売り出し価格を設定することが大切です。
【参考データ】売り出し価格と成約価格の差
以下の表は2022年中に東日本レインズに登録された首都圏(東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県)のデータをまとめたものです。
ただし、比較するうえでは各築年の平均面積が異なるため、単純に価格だけで比較できませんが、たとえば、中古マンションでは、単価を比較することで成約価格と売り出し価格の差がある程度把握できます。
築年が古くなるにつれてその差が広がる傾向がありますが、おおむね売り出し価格の15%~20%程度成約価格の方が低くなっています。一戸建も平均面積が異なるので、一概に比較できませんが、やはり同程度の価格差があることがわかります。
あくまでこのデータは物件個別の条件を考慮しない平均値なので、必ずこれだけ差があるという訳ではありませんが、成約価格の方が売り出し価格よりも下がる傾向があることは理解いただけると思います。
まとめ
適正な価格を設定するために、まずは、市場価格を調べたり、売却可能価格と売却希望価格の違いを意識したりといったことから始めてみましょう。
その上で、やはり重要になるのは、仲介(媒介)を依頼する際、信頼できる不動産会社を見つけられるかどうかです。不動産会社選びで失敗することのないよう、一括査定を利用して複数の不動産会社の査定を受け、信頼できるパートナーとなりうる不動産会社を探すことをおすすめします。
不動産売却時の価格設定は売主が判断する重要なステップの1つ。
信頼して相談できる不動産会社を探しましょう。
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この記事の監修者
秋津 智幸
【資格】公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。神奈川県住宅供給公社を経て、不動産仲介業者に従事した後、2011年に個人事務所として不動産サポートオフィスを開設。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム、記事等の執筆・監修にも取り組んでいる。主な著書に「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)などがある。
市場価格を調べる際に大切なのは、客観的に見て他の物件と比べた時に検討してもらえる価格に見積もることです。所有する物件には愛着もありますが、購入する側にはそういった感情がありませんので、客観的な視点で測ることがポイントになります。