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ローンの返済が厳しいなら任意売却という選択肢がある

通常、抵当権を抹消するためには、融資額の返済の残りである「残債」を返済する必要があります。しかし、売却価格が残債を下回る場合には、不足額に自己資金を充当するなどしなければ抵当権を抹消してもらえません。しかし、任意売却であれば、売却価格だけでは残債に不足する場合でも抵当権を抹消してもらうことが可能です。
また任意売却は競売に比べ、市場価格に近い価格で売却できること、引越時期について協議できる、情報が開示されないなどのメリットがあります。 もしも住宅ローンの滞納が繰り返されるようなら、こうした手段もあるということを覚えておくと良いでしょう。
競売と任意売却の違い
競売の場合 | 任意売却の場合 | |
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価格 | 価格が相場の50~80%で落札 | 市場の物件に近い価格での売却ができる |
残債 | 残債務が多く残ってしまう | 残債務を少しでも減らす事ができる |
引越し代 | 引越し代が出ない | 引越し代を交渉できる |
引越し時期 | 裁判所から引渡命令や強制執行もある | 事前に協議して決められます |
情報開示 | 新聞やネット上に開示される | 事情を知られず売却が可能 |

任意売却の条件

任意売却の条件 | 住宅ローンを滞納していること |
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任意売却のタイミング

滞納期間が3か月にもなると、金融機関は保証会社へ代位弁済(保証会社が本人に代わって返済すること)を求めることになります。そのタイミングから任意売却を行うことができますが、なるべくそうなる前に、債権者である金融機関に相談するようにしましょう。なにより任意売却には、債権者の合意が必要になるためです。金融機関としても、時間とコストがかかるため競売を避けたいというのが本音ですから、ローンの返済が困難であることをしっかりと伝えることで、任意売却に応じてもらうことができます。金融機関からの通知に対して連絡を怠ると、返済や売却の意志がないと判断され、競売手続きを進められてしまいます。常に目を通し、早めに連絡を取ることが必要です。
代位弁済を経て、新たな債権者となった保証会社が裁判所に申し立てることにより競売の具体的なスケジュールが始まります。代位弁済から入札書の開札となる前日までが任意売却の可能期間となります。管轄する裁判所により異なりますが、競売にかかる期間はおよそ6か月です。
競売開始が決定されれば、裁判所から通知が届きます。そこで初めて事態の深刻さに気づくケースもありますが、その場合でも開札日までのおよそ6か月間は任意売却ができるため手遅れではありません。

任意売却の流れ


任意売却の依頼先
●弁護士、司法書士、税理士、宅地建物取引士などの専門家がいるか
●任意売却の実績が豊富か
任意売却は不動産取引の中でも特殊な案件なので、債務整理に関する法律の専門的な知識や、過去の任意売却の実績が豊富であるかどうかが重要になってきます。知名度や規模で判断せずに、しっかり話を聞いてから決めるようにしましょう。
任意売却のデメリットと注意点

また任意売却はあくまでも抵当権が抹消されるだけであって、債務がなくなるということではありません。住宅を売却し、売却代金をローン返済に充てたとしても、残ったローン残高は、債権者と相談の上で分割払いなどによって払い続けなければならないということを理解しておきましょう。
任意売却のデメリット
□ | ローンの滞納が滞ることにより金融機関の事故者情報(ブラックリスト)に登録される |
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□ | 債権者、連帯保証人などの同意が必要 |
□ | 売却に出してその金額を充てても、ローン残額が大きい |
□ | 成立しなければ競売にかけられる |
□ | 近隣や地域の人に気付かれてしまう可能性がある |
ローンの返済額が厳しくなったら、まずは金融機関に相談をしてみましょう。場合によっては返済条件を見直してもらえることもあります。あらゆる手を尽くしてローンの返済能力があるうちはなるべく返済するようにして、任意売却はあくまでも競売にならないための最後の手段だと考えるようにしましょう。
残債について
1. | 小額での分割返済 |
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2. | 自己破産を行う |
3. | サービサー制度等を利用する |
サービサー制度とは
法務大臣から営業の許可を得た民間企業が、金融機関などから任意売却で残ったローンを買い取り、債権を回収していくことをサービサー制度といいます。平成11年2月1日に施行された「債権管理回収業に関する特別措置法」(サービサー法)に基づき、代理で残額の回収をしていきます。
まとめ

監修坪 義生
【資格】社会保険労務士/宅地建物取引士
明治大学政治経済学部政治学科卒業、千葉大学大学院社会科学研究科修士課程修了(経済学)。
社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、(株)矢野経済研究所(「住宅産業白書」、「出版社経営総鑑」、「コンピューター・サプライ市場の展望と戦略」を担当)等を経て、91年、じんじ労務経営研究所(社会保険労務士登録)を開設。同年より、「月刊人事マネジメント」取材記者として企業のトップ・人事担当者を中心に取材・執筆多数。