ローンが完済できなくても不動産を売却できる、
任意売却という方法を覚えておきましょう!
目次
不動産の任意売却とは?

通常、住宅ローンの抵当権を抹消するためには、ローン返済金の残りである「残債」をすべて返済する必要があります。しかし、売却価格が残債を下回る場合には、不足額に自己資金を充当しなければ抵当権を抹消してもらえません。
任意売却であれば、その売却価格だけでローンの残債に充当して抵当権を抹消してもらうことが可能です。 もし住宅ローンの滞納が繰り返されるようなら、こうした手段もあるということを覚えておくと良いでしょう。
任意売却ができる条件
滞納期間にこれといった決まりはありませんが、3〜6か月ぐらいが一般的です。住宅ローン滞納のほかにも、不動産の共有者や連帯保証人の合意を受けていること、税金の滞納などで役所から差し押さえを受けていないことなども条件となります。
任意売却と通常売却/競売の違い
通常売却とは、仲介業者を介して売却するもっとも一般的な売却方法です。売却タイミングや価格などすべて自分で決めることができます。ただし、残債に関しては一括で返済しなければなりません。ここが任意売却と異なるポイントになります。
競売(けいばい)とは、住宅ローンの滞納などを理由に家を裁判所に差し押さえられ、売りに出されることです。住宅ローンを滞納するなどして、金融機関が継続した返済が不可能だと判断すると、金融機関は不動産を強制的に売却して住宅ローンをまとめて回収します。
競売は通常売却や任意売却と比較して売却価格が大幅に低くなることが多く、不動産を競売で売却してもなおローンの残債がある場合には、その残債についても引き続き返済を続けなければなりません。
<b>任意売却の場合</b> | <b>通常売却</b> | <b>競売の場合</b> | |
<b>価格</b> | 市場に近い価格で売却ができる | 市場価格で売却ができる | 価格が相場の50~80%で落札 |
<b>残債</b> | 残債務を少しでも減らす事ができる | 一括返済 | 残債務が多く残ってしまう |
<b>引越し代</b> | 引越し代を交渉できる | 引越し代が出ない | 引越し代が出ない |
<b>引越し時期</b> | 事前に協議して決められます | 自分で決めることができる | 裁判所から引渡命令や強制執行もある |
<b>情報開示</b> | 事情を知られず売却が可能 | 開示されない | 新聞やネット上に開示される |
任意売却のメリット

1. 通常売却に近い価格で売却できる
2. 周囲に事情を知られずに売却できる
3. 契約日や引っ越し日の調整ができる
4. 持ち出し金が不要になる
5. 残債の返済について金融機関と話し合える
1. 通常売却に近い価格で売却できる
2. 周囲に事情を知られずに売却できる
3. 契約日や引っ越し日の調整ができる
4. 持ち出し金が不要になる
5. 残債の返済について金融機関と話し合える
任意売却のデメリット
1. 金融機関の事故者情報に登録される
2. 債権者、連帯保証人などの同意が必要になる
3. 成立しなければ競売にかけられる
4. 費用がかかる
詳しく見ていきましょう。
1. 金融機関の事故者情報に登録される
ローンの返済額が厳しくなったら、まずは金融機関に相談しましょう。
2. 債権者、連帯保証人などの同意が必要になる
ローン支払いが困難になったら、できる限り早めに金融機関に相談するようにしましょう。
3. 成立しなければ競売にかけられる
4. 費用がかかる
ただし、メリットでもご説明しましたが、任意売却では債権者との交渉次第でこれらの費用に加えて、引っ越しのための費用なども売却金額から支払うことができます。不動産売却の費用については以下の記事を参照ください。
任意売却の流れ

任意売却を選んでも、競売の落札日前日までに買い手が見つからなければ競売で売却されることになります。
任意売却に応じてもらえるタイミング
前述したように、任意売却は債権者の合意が必要です。債権者である金融機関としても、時間とコストがかかるため競売を避けたいというのが本音ですから、ローンの返済が困難であることをしっかりと伝えることで、任意売却に応じてもらうことができます。任意売却を検討する際は、できる限り早めに金融機関に相談するようにしましょう。
任意売却の注意点

任意売却の相談先
任意売却は不動産取引の中でも特殊な案件なので、債務整理に関する法律の専門的な知識や、過去の任意売却の実績が豊富であるかどうかが重要になってきます。事業者の知名度や規模で判断せずに、複数社に話を聞いた上で比較検討することが大切です。
任意売却の相談先には注意が必要です。士業の方々は一般的にみれば専門的な知識があって上手くいくようなイメージがありますが、とりあえず着手金だけもらい、自分たちの手に負えない状況であれば直ぐに手を引く場合もあります。したがって、専門家の見極めは重要なポイントです。

残債
以下のような返済方法もありますので、覚えておくとよいでしょう。
1. | <span style="font-weight: normal;">小額での分割返済</span> |
---|---|
<b>2.</b> | 自己破産を行う |
<b>3.</b> | サービサー制度等を利用する |
法務大臣から営業の許可を得た民間企業が、金融機関などから任意売却で残ったローンを買い取り、債権を回収していくことをサービサー制度といいます。平成11年2月1日に施行された「債権管理回収業に関する特別措置法」(サービサー法)に基づき、代理で残額の回収をしていきます。
よくある質問

- 任意売却には種類がある?
- 任意売却には、市場売却、親子間売買、買い戻し、リースバック、買取の5つの種類があります。市場売却は一般の不動産流通市場で売却を行う方法で、親子間売買は親が任意売却をし、子が買主になる方法、買取は不動産会社に買い取ってもらう方法です。
買い戻しやリースバックは引き続き居住できるメリットがあるなど、それぞれメリット・デメリットがあります。詳しくは、任意売却の種類に関する記事を参照ください。
こちらの記事 - どのくらいの期間滞納すると競売になる?
- 住宅ローンを滞納してもすぐに競売にかけられるわけではありません。住宅ローン滞納から1か月目は銀行から催促の電話やDMを受けます。この段階で滞納分を支払ってしまえばこの先に進むことはありません。
住宅ローン滞納から4~5カ月経つと代位弁済の手続きが取られ、住宅ローン滞納から6カ月以上経過するといよいよ競売の手続きが取られます。詳しくは、不動産の競売の記事を参照ください。
こちらの記事 - 任意売却をすると自己破産になるの?
- まず、任意売却をしたら必ず自己破産になるというわけではありません。自己破産は、任意売却をしてもローンの支払いが困難な場合に利用するものになりますが、残債の返済については話し合いに応じてくれる金融機関も多く、自己破産することなく解決できる場合が多いです。
任意売却をすると自己破産になるの?
まとめ

また、任意売却を行ってもローンの残債は返済していく必要があるという点も忘れないでおきましょう。
任意売却は債務者(所有者)、債権者(金融機関)、担保物件を買う第三者との合意が条件になるため、売却金額に債権者の合意が得られないと成立はしません。 また、債務者個人では手続き等がなかなか難しいため、たとえば、不動産会社の仲介で債権者・債務者の調整をしてもらうことが非常に重要です。したがって、任意売却をよく熟知している不動産会社などにお願いすることです。

ローンが完済できなくても不動産を売却できる、
任意売却という方法を覚えておきましょう!

監修寺岡 孝
【資格】不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー
アネシスプランニング株式会社 代表取締役。住宅コンサルタント、住宅セカンドオピニオン。
大手ハウスメーカーに勤務後、2006年に同社を設立。個人住宅・賃貸住宅の建築や不動産売却・購入、ファイナンスなどのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、3000件以上の相談を受けている。
WEBメディアに不動産投資についてのコラムを多数寄稿。著書に『不動産投資は出口戦略が9割』『不動産投資の曲がり角 で、どうする?』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。
そもそも住宅ローンが滞納し始めた場合には、まずは借入先の金融機関に相談することが先決です。返済ができない状況になった場合、金融機関はできる限りローンの返済を継続して欲しいので、返済期間の延長や一時的に元本返済は据え置き、利息分だけ毎月支払ってもらうなどの返済に関する条件変更を提案してきます。したがって、安易に任意売却を考えるのではなく、早期に金融機関への相談をするべきです。