家の売却でやってはいけないこととは
これからご紹介するNG行為はどれもやりがちなことばかりです。しかし、不安に駆られてやってはいけないことをしてしまうと、値下げせざるを得ない、買主とトラブルになる、結局売却できないなどの結末を招くことになります。
不動産の売却は、不動産業者選びや資金計画などの「売却準備」、買主候補の探しや内見対応などの「売却活動」を経て「契約・引き渡し」という流れで行われます。今回は流れに沿ってNG行為を確認していきましょう。
「家の売却準備」でやってはいけないこと
売却の準備は不動産業者の選定が中心になりますが、査定や媒介契約だけではなく資金計画や銀行への相談も欠かせません。焦らずに1つ1つ穴をつぶしていくことが成功のコツです。
相談せず家を解体やリフォームする
家の売却の際には、「更地にしたほうが早く売れる」「リフォームしたほうが高く売れる」などさまざまなアドバイスをしてくる業者がいますが、それぞれの資金計画をシミュレーションしたうえで損得勘定してからでも遅くはありません。
売却にかかる諸費用を計算しない
購入だけではなく売却する際にも諸費用がかかります。仲介手数料のみならず、ローンの繰上げ返済手数料、抵当権抹消費用、さらに譲渡所得が生じる場合には譲渡所得税も発生します。費用の総額と支出時期について、資金スケジュール表にまとめておきましょう。
計画なく急ぎで売り出す
十分な売却計画なく、急いで売却しようとすると、買いたたかれる原因になります。相続や転勤など、期限が決まっている場合はなおさらです。余裕を持った準備をすることで冷静な判断ができます。
買取と仲介の違いを理解していない
売却における不動産業者の役割としては、買取と仲介の2種類があります。さらに、売却の仲介をしつつも、売却先が見つからなければ買取をするという買取保証のサービスを提供する業者もいます。それぞれメリット、デメリットがありますので、業者選びの際にはきちんと検討しておきたいところです。
ローンを組んでいる銀行に断らずに売り出す
住宅ローンが残っている時には、必ず事前に金融機関に相談しなければなりません。売却時には抵当権を抹消することが条件となりますが、売却資金で住宅ローンが完済できない場合には「任意売却」となり、金融機関の承諾が必要になってくるからです。その際には、新たな担保を提供したり、保証人を提供したりするなどの条件が付く場合があります。
相場を知らないまま査定依頼をする
査定依頼をする際には、事前に相場を調べておきましょう。住宅情報サイトで売却価格を検索してみるだけでも構いません。相場を把握しないままに査定に出しても妥当な金額なのかの判断が付かないために、的を射ない質問をしてしまったり、売却の決断が遅れたりと失敗を招く原因になります。
不動産会社1社だけに査定依頼する
不動産会社1社だけの査定だと、判断に偏りがあった時に気づかず売却してしまいます。複数の業者の査定を比較してみることが大切です。
査定額が高い業者に売却を依頼する
査定額は高いに越したことはありませんが、やみくもに査定の高い業者に売却を依頼するのは疑問です。結局売却できずに、売却価格を下げる相談をされるのがオチです。高い査定にはなぜほかの業者よりも高いのか理由を聞いてみましょう。
媒介契約を適当に選ぶ
媒介契約には専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の3種類があります。大まかな違いとしては、以下のものがあります。
・自分で買い手を見つけた時に業者を介さずに契約できるか(専属選任はできない) |
・ほかの業者と重ねて媒介契約を締結できるか(一般媒介はできる) |
売主の状況によってどの媒介契約がよいかが違ってきますので注意が必要です。
「家の売却活動中」にやってはいけないこと
売却活動中には、買主の内見対応、契約条件の交渉がありますので、不動産業者に任せきりというわけにはいきません。買主には誠実に対応することを心がけましょう。
高すぎる売り出し価格で売り出す
少しでも高い価格で売却したいという気持ちが先走って、高すぎる売り出し価格を設定している事例も見かけます。しかし、買い手も相場は把握しているはずですので、あまりにも高い売り出し価格だと物件検討の段階で除外されてしまう可能性が高くなります。
不動産会社に任せきりにする
売却活動は不動産業者とのコミュニケーションが重要です。情報の開示当初は問い合わせが多かったものの、その後尻すぼみになってしまうことはよくあります。定期的に不動産業者と連絡を取って進捗状況を確認し、反応が思わしくなければ販促や価格面での修正など次の手を打つ必要があります。
値段・条件交渉に応じない
不動産の売買に条件交渉はつきものです。売却価格のみならず、引き渡し時期、修繕、クリーニングなどさまざまな契約条件が交渉の対象になります。すべての交渉を突っぱねていては、交渉は前に進みません。妥協できるところとそうでないところのメリハリを付けた交渉が大事です。
不具合や不利な情報を隠す
中古物件の売買ですので、何らかの不具合があることが通常です。これらを隠して売買することは後々買主とトラブルになるだけではなく、裁判沙汰になることも珍しくありません。買主と誠実に交渉することは、売却成功の絶対条件です。
内見対応がいい加減
買主の内見対応は、その後の条件交渉にも大きく影響します。誠実な対応を心がければ、物件に対する信頼も深まります。逆に、内見時に家が乱雑になっていたり、質問への受け答えがいい加減だったりすると、細かな不具合も目について価格交渉が厳しくなったりします。
「家の売買契約・引き渡し後」にやってはいけないこと
家の売却は契約・引き渡しで終了ではありません。引き渡し後にも買主から問い合わせがあるかもしれませんし、新たな不具合が見つかるかもしれません。そのような事態も想定しつつ、契約条項の確認や引き渡し時の確認はしっかりと行いましょう。
契約書を確認しない
契約条項には法律用語が使われていてとっつきにくいところもありますが、よく読んでみると難しいことは書いてありません。法律がからむ点や複雑な点については、担当者に質問・相談し、契約前にクリアにしておきます。契約後のトラブルは契約書の条項に従って処理されますので、具体的なトラブルのケースを念頭において契約書を読み込みましょう。
契約内容を後から覆す
契約内容について、契約後に覆すことは買主の同意がない限りできません。仮に同意が得られたとしても、買主との信頼関係にキズが付くことは否めないでしょう。基本的には、いったん締結した契約の条項は修正できないものと考えておいたほうが無難です。
残置物を処理しない
買主は不動産を購入したのであって、そのほかの残置物を購入したのではありません。残置物があれば撤去を請求できる権利があります。後々のトラブルを回避するためにも、残置物はきれいに片づけておくことが肝要です。
引き渡しの期日を守らない
引き渡しの期日も契約条項のうちですので、引き渡しが間に合わないことによって生じた損害は、損害賠償の対象になります。また、売主にとっても追加費用がかかる要因にもなりかねません。
買主が余計にかかった家賃を請求してくる可能性がありますし、決済時期のずれによる住宅ローン金利の再計算もあるでしょう。面倒なトラブルは可能な限り避けるべきです。
税控除の特例などを調べない
自宅を売却する時には、不動産売却にかかる譲渡所得について控除の特例があります。購入した自宅か、相続した自宅かによっても税金が異なってくることがあります。申告時期になって資金計画が狂ってしまわないよう、事前に調べておきましょう。
確定申告を忘れる
売却後の手続きで忘れやすいのが確定申告です。譲渡所得が生じる時にはもちろん、控除の特例を活用する時にも確定申告が必要になります。わからないところは税務署や税理士に相談して、申告手続きを済ませましょう。
家の売却でもっとも避けるべき行為とは?
不動産売却の際には、パートナー選びが肝心です。査定や売却依頼をする時に、不動産会社の比較検討をしないのが一番のNG行為といえるでしょう。知り合いの紹介のみ、近隣の1社のみ、のような依頼の仕方は避けたいものです。最近では、複数の不動産会社に一括して査定を依頼するWebサービスもあります。このようなサービスを利用することで、比較検討を効率的に進めることができます。
まとめ
家の売却は一生に一度あるかないかの大きな取り引きです。誰もが不安で何をしてよいのか迷うのも無理はありません。信頼できる不動産業者や専門家をパートナーに選んで、慎重に事前準備や売却活動を進めてください。
監修徳田 倫朗
【資格】宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験を持ち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。
抵当権を抹消するなどすべての法的な負担を除去することは、売買契約の基本条項です。抵当権を抹消するには原則としてローンを完済しなければならず、期限前弁済手数料の計算、引き渡し日までの金利計算などの手続きがあることから、金融機関への相談が必須となります。