ローン中の家を売るには|オーバーローンでも売却できる3つの方法

2024.07.18更新

この記事の監修者

秋津 智幸
秋津 智幸

公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士

ローン中の家を売るには|オーバーローンでも売却できる3つの方法

住宅ローンの残っている不動産は、実は住宅ローンを完済することを条件として売却することができます。

この記事のポイント
  • 住宅ローンが残っていても家を売ることは可能ですが、ローン完済が必須。
  • 売却代金を住宅ローンの返済に充てることも可能!
  • まずは「いくらで売れるのか?」一括査定を活用しながら不動産会社に査定依頼をしましょう。

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目次

住宅ローンが残っていても、住まいは売れる!

ほとんどの人が、マイホームを購入する際に金融機関と住宅ローンを組むことになります。ローンの返済中にやがて諸事情により住まいを買い替える必要が生じたとき、「住宅ローンが残っていても、今の住まいを売ることができるのだろうか?」と考えることがあるはずです。

結論から言えば、答えは「YES」です。その方法を説明していきましょう。

ローンを完済して抵当権を外すのが絶対条件

不動産を購入するために金融機関で住宅ローンを組む際、金融機関は対象となる不動産に抵当権を設定します。抵当権とは、万一ローンが返済できなかったときに担保として不動産を確保しておくための権利で、返済が滞った際にはこの不動産を競売にかけることで融資した資金の残債を優先的に回収するためのものです。

抵当権がついたままでもその不動産を売却することはできますが、ローンの返済が滞れば、誰が所有していようとその不動産は競売にかけられてしまうリスクがあります。そのため、抵当権付きの不動産を購入しようとする人はほぼいません。

また、抵当権がついたままでは、その不動産の購入資金を融資をした金融機関の抵当順位が第2位以下となり、融資した資金を回収できる見込みが著しく低くなるため、融資する金融機関はまずありません。したがって、ローンを利用して購入したい買主が現れても購入できないため、ほとんどのケースで売買が成立しないことになります。

したがって、一般的に不動産を売却するには、設定された抵当権を抹消する必要がありますが、この抵当権抹消の条件となるのが、ローンの完済なのです。

「結局ローンを完済しないと売れないじゃないか。そんなお金ないよ」と思われるかもしれません。しかし、住宅ローンの完済は不動産の引き渡しの時点で行えばよいので、不動産を売却したお金で住宅ローンを一括返済することができれば、抵当権を抹消することは可能です。

もちろん、売却資金以外にも、貯金などの資産で完済する、別のローンで完済する、といった方法もあります。

抵当権を抹消するには金融機関の協力が必要となりますので、金融機関には早めに売却予定の旨を伝えておきましょう。

抵当権が抹消されないと買主は購入しない、あるいはできないと先述しましたが、売買の決済当日に売却代金からローンの確定した残債分を、融資を受けた金融機関へ送金し、その入金を確認したら司法書士に抵当権抹消の書類が金融機関から渡されることになります。

抵当権抹消の手続きについては下記の記事で詳しく説明していますのであわせてご覧ください。

まずはローンの残債と売却価格を調べよう

ここまで説明したように、住宅ローンの残っている不動産は、実際には住宅ローンを完済することを条件として売却することができます。全国的に地価は回復傾向にあるとはいえ、地方圏の住宅地では幅が縮小しながらも下落状態が続いているところもあります。

売ろうとしている不動産が必ずしもローン残高よりも高く売れるとは限らず、とくに購入時に物件価格に対して借入金の割合が大きく、購入してからの期間がそれほど経っていない場合は、売却資金だけで完済できるケースはなかなかありません。

ローンが完済できるかどうかは、所有不動産の売却価格がローン残高を上回るか下回るかで変わってきますので、売却を検討しているならまずはローン残高と所有不動産の売却できそうな価格がいくらかを調べましょう。

売却できそうな価格は、不動産会社に査定を依頼することで、より現実的な価格を把握することができます。

所有する不動産の相場価格を知りたいなら、不動産会社に査定を依頼してみましょう。無料で簡易査定なら時間もあまりかかりません。査定後、営業されるのが苦手な方は、売る気がなければ、はっきりと今は売却しないと断れば問題ありません。

秋津 智幸
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1.住宅ローンの残債を調べる

現在借りている住宅ローンの残債は、月ごとに返済額とその時点の残債が記載されている返済予定表を確認するとわかります。返済予定表は、固定金利の場合は借入当初に、変動金利の場合は1年ごとに金融機関から発行されます。

返済予定表を紛失した場合は、金融機関に返済予定表の再発行をお願いするか、残高証明を発行してもらえば、その時点の残債は確認できます。また、金融機関によっては、インターネットで住宅ローン残高を確認できるところもあります。

2.家の売却できそうな価格を調べる

自分の家と条件の近い物件の売り出し価格を調べることで、自分の家の相場価格はある程度把握できます。具体的には不動産情報が掲載されている不動産ポータルサイトで、最寄り駅からの距離やマンション、一戸建てなどの種類、築年、土地や建物の面積といった条件の似た物件の売り出し価格をいくつか調べ、自分の家と比較することである程度価格がわかります。

より適正な相場価格を知りたい場合は、不動産会社に査定を依頼すると実際に近い金額がわかります。

3.売却資金でローンが完済できるか計算する

自分の家が売却できそうな相場の価格(売却想定価格)がわかったら、その金額から売却に必要な経費を差し引きます。

必要な経費としては、仲介手数料やローンの返済手数料、印紙代、抵当抹消登記費用などがありますが、概算で売却想定価格の4%~5%程度見積もればよいでしょう。想定される価格から必要な経費を差し引いた金額がローンの残債を上回れば、完済できる可能性は高いといえます。

ここで、住宅ローン残債を売却代金から経費を引いた金額で完済できる場合を「アンダーローン」、売却代金から経費を引いた金額がローンの残債を下回ってしまう場合を「オーバーローン」と呼ぶことがあります。

アンダーローンの家を売る方法

売却代金から経費を引いた金額がローン残高よりも多い「アンダーローン」ならば、自己資金を追加することなく住宅ローンを完済して売却することが可能です。

自分で見積もった相場価格や不動産会社の査定した価格はあくまでも売却想定価格であり、必ずしもその価格で売れるわけではありません。通常は築年数に応じて値下がりしていくものですが、市況によっては値上がりすることもあります。

したがって将来を予想することは難しいので、アンダーローンの状態で売却を希望する場合は、思ったときに売り出すことをおすすめします。

アンダーローン時の売却費用・税金と減税特例

売却に伴う諸費用は、売却する不動産によって仲介手数料や印紙税や登記費用(抵当抹消登記)などの金額が異なってきます。また住宅ローンを借りた金融機関との完済条件(一括返済手数料など)によっても金額が異なってきます。そこで、まずは前述のように概算で売却価格の約4~5%かかると想定しておきましょう。

また、自宅を売却して売却益が発生した場合、所有期間が売却した年の1月1日時点で5年以下の場合は短期譲渡所得、5年超の場合は長期譲渡所得となり税率が異なります。さらに10年超の場合、課税譲渡所得6,000万円以下の部分は長期譲渡所得の税率よりも低い特例税率が適用されます。

なお、自宅を売却した場合、一定の要件を満たしていれば、所有期間の長短にかかわらず「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が利用できます。

オーバーローンの家を売る3つの方法

つぎに、売却代金から必要な経費を引いた金額がローン残債に満たないオーバーローンの場合の対応について考えていきましょう。

1.自己資金をプラスして完済する

たとえば、買い替えのためにローン残高が3000万円の住まいを、2500万円で売却できた場合、売却に必要な経費が4%とすると100万円が別にかかり、ローンの完済には600万円足りないことになります。

その場合、完済に足りない分は自己資金を充当しなければなりません。結果的に、新たに購入する予定だった住まいの頭金に回せる金額も減ってしまいます。

このように、もしも買い換えのために不動産売却を考えているのなら、売却金額から経費を引いた金額がローン残債を下回ってしまう場合も想定して、自己資金に余裕を持たせた新居の資金計画を立てることが賢明です。

では、自己資金を足してもローンの完済ができない場合はどうすれば良いでしょうか。やはり住まいの買い替えは無理なのでしょうか。

2.住み替えローンを利用して完済する

実は、住み替えローンを活用するという方法があります。

住み替えローンとは、旧居の売却資金を従前の住宅ローンを返済に充てても残債があった場合に、その残債分を、新規に購入する住宅のローンに上乗せして借りることができるというもの。ただし借入額が増えるため、審査も厳しくなります。ローン審査が通る経済状況でも、本当に返済できるのかどうか、慎重に検討した上で利用する必要があります。

※住み替えローンも、一般的な住宅ローンと同様に「元利均等返済」や「元金均等返済」、「変動金利型」や「固定金利型」を選ぶことができます。

3.資金繰りができない場合は任意売却を!

住み替えローンの審査も通らない、しかしこのまま住宅ローンを払い続けるのは苦しいし、早く家を売って経済状況を立て直したいといった人は「任意売却」という方法があります。売却しても残債が残る状況でも金融機関の許可を得て不動産を売却し、不足分については返済方法を話し合いで調整できます。

ただし、数カ月ローン滞納をしていることが条件の一つであり、金融機関は許可する場合でも一定の条件のもとでの許可となります。また任意売却でも限られた売却期間の中で決められた条件で売れるとは限りません。 メリット・デメリットを良く把握したうえで、慎重に判断しましょう。
任意売却のメリット1. 通常売却に近い価格で売却できる
2. 周囲に事情を知られずに売却できる
3. 契約日や引っ越し日の調整ができる
4. 売却代金から売却費用を捻出できる
5. 残債の返済について金融機関と話し合える
任意売却のデメリット1. 金融機関の事故者情報に登録される
2. 債権者、連帯保証人などの同意が必要になる
3. 成立しなければ競売にかけられる
4. 費用がかかる

オーバーローン時の売却に使える減税特例

また、マイホームを買い換えた際に譲渡損失が出てしまった人の救済措置として、翌年以降3年間にわたって、繰り越して譲渡損失を他の所得から控除(損益通算)できる特例(「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」)もあるので、確定申告の際にはぜひ利用するようにしましょう(※利用には適用条件があります。詳しくは国税庁をご確認ください)。

住宅の買い替えや離婚による売却などケース別注意点

住宅の買い替えや離婚を理由とする売却、注文住宅などの一戸建てを新築する場合など、ケースによって留意すべきことをお伝えします。

買い替え予定の場合は「売り先行」が有利

現在の家を売却して新しい家に買い換える場合は、今の家を売却してから新しい家を探す「売り先行(売却先行)」と、新居を見つけてから現在の家を売却する「買い先行(購入先行)」があります。

買い先行と比べて、売却するのに期間が限られることがないため、売却を急がずじっくりと取り組むことが可能なため高く売りやすく、新居購入のための資金計画も立てやすく、心理的にも負担なく進められます。

それぞれのメリット・デメリットについてより詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

「買い先行」なら買い替え特約の検討を!

家の買い換えの場合、それまで住んでいた家を売却できないと、ダブルローンを利用するといった無理をしなければ、新居を購入することができません。 場合によっては、売却よりも購入のタイミングが先行してしまうこともあります。

せっかく見つけた素敵な新居。ぜひとも早く購入したいと思うのも心情ですが、もしも今の家が思うように売却できなかったとしたらどうしましょう。

そういった事情がある場合には、新居の購入を契約する際に、可能であれば 、売主に相談して買い換え特約をつけてもらうことをオススメします。

買い換え特約とは、「00月00日までに所有する不動産を 売却できなかった場合、契約を解除(白紙撤回)する」という旨の特約条項です。この特約を結んでおくことで、万が一売却が不調に終わっても、一定の期間内であれば特にペナルティを負うことはなく契約自体を解除することができます。

買い替え特約は、新築マンションや一部の新築一戸建てでは、付けてもらうことができます。また、特約の期限(売却活動ができる期間)は契約日から3ヵ月程度が一般的です。一方、特約の期限が比較的長いため、売主が個人の中古住宅では付けてもらえない場合がほとんどです。

秋津 智幸
秋津 智幸

離婚の際の売却で気を付けることは

離婚を理由とする家の売却の場合、気を付ける点があります。まず、不動産の名義です。不動産が共有名義になっている場合、共有者全員の許可がなければ売却することができません。離婚後に相手や義理の親などに許可をもらい、契約や引き渡しの際、同席してもらう可能性もあるため、反対のないよう売却前によく話し合っておくことが大切です。

また、共有名義の場合、住宅ローンの中でも夫婦2人の名義で借りている「連帯債務型」や「ペアローン」では、売却資金を2人の口座に分けて自身の名義でローンを返済する必要があります。

また、夫婦の場合、持ち家などは「共有財産」と「特有財産」のどちらに分類されるか事前に確認が必要です。共有財産であれば、夫婦2人で婚姻期間に築いた財産となり、離婚時に財産分与の対象となります。購入資金をどちらが出したかは関係ありません。

一方、特有財産は結婚前に個人が築いた財産で、たとえば結婚前に購入した不動産などが該当します。

離婚を理由に不動産を売却する場合、「縁起が悪いので価格を下げないと売れないのではないか」と懸念される方もいるかもしれませんが、売却理由を気にしない購入者の方もいるので、それほど心配する必要はありません。

秋津 智幸
秋津 智幸

一戸建てを新築する買い換えの場合

新築中古を問わず、既に完成しているマンションや一戸建てに買い換える場合の住宅ローンは、引き渡しと同時に対象となる住宅の土地と建物に抵当権を設定できるので、融資額全額を一括で借りることができます。

建築中の新築マンションや新築の建売一戸建ての場合は、完成を待って、同様に引き渡し時に融資額全額を一括で借りることができます。

しかし、注文住宅のような一戸建てを新築する場合は、土地の取得時や着工時、中間金のように工事の進行状況に応じて完成前にも支払いが発生します。そのため資金が少ない場合は支払いに合わせた融資の借り入れが必要になります。このような場合、一時的に借りる「つなぎ融資」を利用することになります。

つなぎ融資は、建物が竣工するまでのもので、竣工後には住宅ローンを組んで融資が実行された際に一括で返済します。短い間の融資ですが、住宅ローンよりも高い金利が発生するため要注意です。

たとえば、予算を多めに確保し、土地の購入資金とは別に建設会社への支払い分を確保しておくなど、つなぎ融資を利用しないことも可能ですので、よく考えて購入計画を立てるようにしましょう。

まとめ

ローンの残債がある不動産の売却方法について紹介いたしました。引渡し時点でローンを完済して抵当権を外すことを条件に不動産を売却することは可能であり、ローン残高と売却によって準備できる資金とのバランスによっては、自己資金を充当したり、新たな住宅ローンを組んで返済したりと完済の方法が違ってくることをお伝えしました。

どんなケースでも、所有不動産をなるべく高く売ることができればそれに越したことはありません 。そのためには信頼できる不動産会社選びは重要なポイントになります。そこで、無料一括査定を利用して、より良い条件で売却活動を進めてくれる1社を選んでいきましょう。

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この記事の監修者

秋津 智幸
秋津 智幸

公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。

神奈川県住宅供給公社を経て、不動産仲介業者に従事した後、2011年に個人事務所として不動産サポートオフィスを開設。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム、記事等の執筆・監修にも取り組んでいる。

主な著書に「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)などがある。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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