熟年離婚と財産分与の問題。持ち家・年金・退職金の分割方法を解説します

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この記事の監修者

佐藤 陽
佐藤 陽

AFP/宅地建物取引士/住宅ローンアドバイザー

熟年離婚と財産分与の問題。持ち家・年金・退職金の分割方法を解説します

この記事では熟年離婚を検討している夫婦に、とくに持ち家や年金、退職金の財産分与について解説していきます。

この記事のポイント
  • 熟年離婚では持ち家や年金、退職金の財産分与が複雑になりやすい傾向にあります。
  • 財産分与には精算的・扶養的・慰謝料的の3種類があり、請求期限は離婚成立から2年以内と定められています。
  • 不動産の分与方法は売却・代償金・共有維持など複数あり、正確な評価額の算出が争点となります。

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目次

増える熟年離婚と財産分与の問題

熟年離婚が増えているといわれる背景と、財産分与の問題について考えてみましょう。

熟年離婚が増えている社会背景

厚生労働省発行の「令和6年(2024年)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると平成以降の離婚件数(役所の離婚届受理件数)は2002年をピークに減少傾向でしたが、2023年から増加に転じています。

一方で同居期間20年以上の離婚件数は2015年以降増加の一途を辿っています。その中でも同居期間30年以上の夫婦の離婚増加率はとくに大きくなっています。つまり婚姻期間の長い熟年離婚がとくに増加していることが統計にも表れています。
背景には、平均寿命が延びたことや男女雇用期間均等法施行後の女性の社会進出の進展及びそれに伴う女性の経済的な自立の進展、夫婦の定年退職後の生活スタイルの違いなどが考えられます。

子どもの独立を機に、我慢していた不満が表面化するケースが多く、長年連れ添った夫婦でも「第二の人生」を模索する動きが広がっています。

熟年離婚に限定したデータではありませんが、2024年度の司法統計によると裁判所への離婚調停の申し立て理由で一番多いのは男女共に「性格の不一致」です。そして、申し立てるのは圧倒的に女性側が多いという事実があります。

熟年離婚における財産分与の心配事とは

若い年齢での離婚と熟年離婚では財産分与での心配事も異なります。熟年離婚だからこその心配事を挙げてみました。

共有財産が多く複雑化している

長年の結婚生活では、持ち家や預貯金、株式、保険など共有財産が多岐にわたるため、財産分与が複雑になりがちです。

老後の生活費の基盤となる

離婚後の生活費は年金や退職金に依存することが多く、財産分与で老後の生活基盤を築くのに十分な財産が確保できるどうかは切実な問題です。

持ち家の分配で揉めやすい

なかでも自宅をどう分けるかは最も悩ましい問題点です。売却・どちらかが居住継続・共有のままなど、いくつかの選択肢が考えられます。もちろんそれぞれにメリット・デメリットがあります。

また、最近は自宅購入時の住宅ローンを夫婦で収入合算やペアローンで借りているケースもあり、住宅ローンの返済期間も長期化しており、財産分与を複雑化しています。

熟年離婚の財産分与はその後の人生に大きな影響を与えます。「早く別れてすっきりしたい」という感情的なものもあると思いますが、改めて今後の人生設計を見直す良い機会でもあります。

佐藤 陽
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財産分与の基本知識と主な方法

財産分与もいくつか方法があります。まずはどんな方法があるのか確認しましょう。

財産分与とは?

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分ける法的制度です。婚姻前から各自が所有していたものや相続・贈与などで取得したものを除く、名義は関係なく実質的に共同で形成された財産が対象となります。

熟年離婚における財産分与の方法

離婚時の財産分与には「精算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3つがあります。

精算的財産分与

もっとも基本的な形式で、共有財産を公平に清算して分け合う方法です。不動産・預貯金・退職金などが対象となります。

扶養的財産分与

離婚後、相手が経済的に自立困難な場合、離婚後の生活保障として一定期間の金銭を支払う方法です。とくに専業主婦(夫)だった相手への配慮として活用されます。

慰謝料的財産分与

配偶者による不貞やDVなどが原因で精神的・身体的苦痛を被った場合に、慰謝料的意味を含めた金銭を支払うものです。

財産分与の割合と相場

基本的には「2分の1ずつ」が原則です。専業主婦(夫)であっても、家庭での貢献が考慮され、対等に分与されます。ただし、離婚の原因によっては、必ずしも「2分の1ずつ」とは限らず、双方の協議で違う割合で合意することもあります。

財産分与の請求期限

離婚成立から2年以内に請求しなければならないと民法で定められています。期限を過ぎると、法的請求権が失効するため注意が必要です。(ただし、民法改正により「2年以内」が「5年以内」と変更があり、2026年5月24日までに施行予定です。)

熟年離婚で年金・退職金を分ける方法

熟年離婚の財産分与の特徴のひとつに退職金と年金の扱いがあります。それぞれが今後の生活の基盤にもなるので、熟年離婚ではとくに重要です。まずは分け方の基本を知っておきましょう。

退職金の分け方

退職金も財産分与の対象になり得ます。退職済みであれば実額を半分に、在職中ならば見込額を現在価値に換算して分与します。将来受け取ることを条件にする方法もあります。

年金の分け方

2007年の法改正により、婚姻期間中に形成された厚生年金(報酬比例部分)は最大50%まで分割可能です。合意分割と3号分割があり、手続きには年金分割請求や情報通知書の提出が必要です。

熟年離婚で不動産を分ける3つの方法

財産分与で金額的にも多くの割合を占めるであろうものが不動産です。とくに自宅不動産については、お互いに執着がある可能性もあり、分け方にどんな種類があるのかメリット・デメリットも含めて知っておきましょう。

① 売却して現金で分ける

売却して得た資金を2分の1ずつに分ける最も公平な方法です。現金化により平等に分けられ、離婚後の生活資金にも充てやすく、感情的対立を避けやすいのが特徴です。

 ただし、売れた値段で分配する、と合意が出来ていれば良いですが、片方に売却希望金額のこだわりがある場合、すぐに売れないこともあります。

まずは「いくらで売れそうか」
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② 妻が住み続け、夫に代償金を支払う

妻が住み慣れた家にそのまま住み続け、持ち分相当の代償金を夫に支払う方法です。妻にとっては、離婚後の住まいが確保されるメリットのある方法です。一方で妻の代償金支払い能力の検討が必要です。

また、夫の住宅ローンが残っていて、妻がその返済を引き継ぎたい場合、借り換えや住宅ローンの名義変更をしなければいけません。これも金融機関の審査が必要であるため、やはり妻の支払い能力が問われます。

万一、住まない夫が住宅ローンの返済を継続した場合、離婚後の夫にとっては自宅ではない家の住宅ローンを返済していることになり、自分が住む自宅のための住宅ローンという観点では、金融機関との契約違反に該当する可能性もあります。

これらのことは、妻が自宅を出て、夫がそのまま自宅に住み続ける場合にも注意しなければいけないポイントです。

佐藤 陽
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ただ、何より不動産の財産分与には、評価額を算出しなければなりません。しかし、不動産には中古売買での金額、固定資産評価額、地価公示価格などいくつかの金額が存在します。その評価額を巡って双方の意見が食い違うことでスムーズに財産分与が進まないこともあります。少しでも代償金の支払いを減らしたい側と少しでも多く貰いたい側の立場の違いで意見が対立するのが不動産です。

裁判所に申し立てをして離婚調停を行うのであれば、不動産鑑定士による評価額の算出が必要となるケースも出てきます。

そこまで至らない場合、不動産会社による査定を活用することもあります。その場合、1社ではなく、複数社の査定を入手した方がより納得感の持てる査定金額を入手できるでしょう。

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③ 持ち分だけ分けて共有にする

夫婦の共有名義になっている自宅を共有名義のまま維持する方法です。お互いの同意で、納得できる金額で売却できるまで持ち続けるということならば、それはメリットかもしれません。

ただ、どちらかが事情が変わり、すぐに売りたいとか、売る気がなくなったなど事情が変わった時に揉める要因になります。さらにそのまま持ち続けた場合、将来の相続では、面識もない相続人同士が共有しているなんてことも起きかねません。そうなると売るにも貸すにもトラブルを抱える負動産となります。

不動産の場合、所有中にも税金や維持費が発生することを意外と見落としがちです。 もし財産分与で所有することになる場合、所有するために負担する費用についても考慮しておく必要があります。

佐藤 陽
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【チェックリスト】損しない不動産財産分与のための5つのポイント

分け方で揉めやすい不動産の財産分与をスムーズに、かつ、損せずに行うためのポイントを5つ解説します。

1. 所有者名義の確認

登記事項証明書(いわゆる登記簿)を確認し、誰の名義になっているかを正確に把握しましょう。所有権を持つ不動産すべての情報を確認し、正確な権利関係を把握することが第一歩です。

2. 住宅ローンの残債確認

住宅ローンが残っている自宅不動産を売却して財産分与する場合、残債額と現実的な売却金額との差額を計算し、まずは、住宅ローンを完済できるのかどうかを確認する必要があります。完済可能ならば、売却を進めることもできます。

もし、売却しても住宅ローンを完済できない見込みの場合、手持ち資金で穴埋め可能ならば売却可能です。しかし、穴埋めできない場合、売却はできないという判断になるかもしれません。

3.売却査定額の把握

不動産の評価額を把握するためには、複数の不動産会社や不動産鑑定士に依頼し、できるだけ客観的な評価額を把握することが重要です。複数の会社に評価額を出してもらうことで所有する不動産の妥当な評価額が見えてきます。

1社のみの査定を鵜呑みにするのはNG。
できるだけ客観的な評価をもとに話し合いをしましょう。

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4.財産分与の合意と書面化

話し合いで決まった内容は、必ず離婚協議書や公正証書などで書面化します。これは、後々になって、言った、言わないなどのトラブルを防止するためでもあり、一方が合意内容を守らない場合に法的手段を取りやすくするためでもあります。

5.売却スケジュールと生活設計の整理

売却する場合、不動産仲介会社に相談することになりますが、どの会社に売却活動を依頼するのかを検討するのと同時に売却までのスケジュールも確認しておきましょう。

売却が決まり、買主に引渡しをするまでに自分達の引越しも完了しておかなければいけません。売却資金で住宅ローンの残債を完済する予定ならば、銀行とも事前に手続きが必要です。引越し先も当然、確保しておかなければいけません。

ただでさえ慣れない手続きの連続です。売却の流れを把握し、段取り良く計画的に進めていきましょう。

よくある質問

熟年離婚に関するよくある質問を集めました。
夫の退職金は妻がもらえる権利はある?
退職金が婚姻期間中に形成されたものであれば、妻にも財産分与として請求する権利があります。しかし、財産分与として認められるのは、勤務先に退職金制度があり、退職金を受け取ることが確実であること、実際に受け取るまでの期間が10年以内など、受け取ることが確実視できないと認められないこともあります。
熟年離婚で財産分与を拒否できますか?
法的には拒否できません。民法768条に「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と規定されており、原則は拒否できません。しかし、財産分与の請求権の時効になった時(現行は2年以内。民法改正施行後は5年以内)や相手側が財産分与を放棄した時は拒否できます。
婚姻期間25年の年金分割はいくらですか?
婚姻期間中の厚生年金記録を分割できる制度です。分割割合が50%の場合、報酬比例部分についても25年分の厚生年金(標準報酬月額、標準賞与額)の半額が受け取れる計算になります。ただし、これも離婚等をした日の翌日から2年以内という期限が定められています。
熟年離婚の財産分与の平均額はいくらですか?
夫婦の資産状況により異なりますが、「司法統計年表(家事編)第27表」によると婚姻期間25年以上の1,000万円以上の財産分与額の割合が一番多いことが分かります。
婚姻期間が長くなればそれだけ共同で築いた財産も増えるということでもあります。

まとめ

熟年離婚における財産分与は、今後の生活基盤を安定させる大きな要素です。とくに不動産は評価額で双方の主張が対立することもあります。また、年金、退職金といった長年夫婦で築き上げた資産の分配には、法的知識と冷静な判断が求められます。

さらに財産分与には期限もあるため、損をしないためにも、正しい情報をもとに早めに準備を進め、計画的に進める必要があります。

結婚式のケーキ入刀は「夫婦の最初の共同作業」と形容されることがあります。一方で離婚の財産分与は「夫婦の最後の共同作業」と言えるかもしれません。 離婚の原因によってはお互いに感情的になっていることも考えられますが、是非お互いに協力して、財産分与をスムーズに進めたいところです。

佐藤 陽
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マイホーム購入、セカンドライフの住まいの選択、空き家になった実家の活用など、「お金」と「不動産」相談専門のファイナンシャルプランナー。

大手ハウスメーカー勤務中に、年間300件を超える住宅ローンアドバイス、ローン取次業務を経験。現在は独立し、家づくりや不動産実務に精通したファイナンシャルプランナーとして活躍中。実務経験を踏まえた不動産とお金のセカンドオピニオンは大きな安心感があると、相談者からも好評を得ている。

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