- 不動産決済は、不動産取引を完了させるための重要な手続きです。
- 不動産決済には必要な準備や手続きが多いため、余裕を持って取り組みましょう。
- 不動産取引が終わった後も、書類の保管や確定申告は忘れずに。
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目次
不動産の決済とは
通常、売主が売買代金などの支払いと引き換えに所有する不動産を買主に引き渡し、同日に所有権移転登記の手続きを行います。
決済は売買契約から1~2ヶ月後に行うのが一般的です。この間に買主は売買代金の準備や登記の手配、売主は引っ越しや抵当権抹消手続きなどの引き渡し準備を行います。
そのほか、売買契約と決済を同時(同日)に行う一括決済もあります。買主が住宅ローンを利用せず全額自己資金で購入する場合、かつ不動産がすぐに引き渡しできる場合は可能です。
決済の方法
通常は、売買代金の残金と必要な清算金を相殺または加算した合計金額を売主指定の金融機関の口座に振り込みます。なお、売主の希望で司法書士へ支払う登記費用や仲介手数料など、一部を現金で用意することもあります。
最近だと、住宅ローンを融資する金融機関から直接売主に送金するケースも多くあります。その場合、買主は融資金を除いた金額を売主に支払うことで決済します。
そのほか、決済金を現金や預金小切手で支払うことも可能です。ただし、預金小切手や高額な現金は、金融機関によっては準備に時間がかかるので、買主は1週間以上前に金融機関に相談しておきましょう。
決済のタイミングと場所
決済金の送金・所有権移転などの登記申請をするため、金融機関や法務局が営業する平日でなければいけません。また、決済金の着金確認に時間がかかる場合や、司法書士が金融機関へ抵当権抹消書類を受け取りに行くことなども考慮して、早い時間から開始をするのが一般的です。
場所は、仲介する不動産会社の事務所、あるいは買主がローンを利用する金融機関で行います。最近はネットバンクでローンを借りるケースも多く、支店のある金融機関でもインターネット経由で送金が可能なので、不動産会社の事務所で行うことが多くなっています。
決済時に立ち会うのは
ただ、急な予定や、高齢で移動ができないなどの理由で売主や買主が不在のケース、共有者が多いため全員ではなく代表者が立ち会うこともあります。
共有者も含めて売主や買主が決済に立ち会わない場合は、事前に司法書士による本人確認(売却や購入の意思確認も含む)をしたうえで、代理人に委任状を交付して決済を行います。売主が海外など遠方にいる場合、委任状を持つ代理人が決済に立ち会い、売主や買主がリモートで参加し、決済当日の署名などを代理人が行うケースもあります。
決済時に売主や買主本人の立ち会いが必要な理由は、決済という不動産取り引きの最後の場面で、本人に確認することで、詐欺や錯誤などの不動産取り引きのトラブルを防止するためです。売主や買主が決済に立ち会えない場合は、なるべく早く仲介業者に相談するようにしましょう。
不動産決済当日の流れ

1.司法書士による登記書類などの確認
売主は本人確認書類、不動産の権利証、住所変更登記が必要な場合は住民票を提出し、登記原因証明情報や登記委任状への署名捺印をします。また、買主も本人確認書類、住民票、印鑑証明書などを提出します。その後、売主・買主ともに登記原因証明情報や登記委任状に署名捺印を行います。
必要な書類が確認出来たら、司法書士が確認できた旨を全員に告げ、決済(資金授受)へ移ります。
2.住宅ローンなどの実行
ローンの実行とは融資する金融機関から融資金が借主へ送金(貸し出)されることをいい、一般的には買主の口座へ資金が振り込まれますが、直接金融機関から売主の指定口座へ振り込まれることもあります。そのため、事前に金融機関と実行先について相談が必要です。
なお、融資は融資手数料や金銭消費貸借契約書に添付する印紙代などが差し引かれて実行されます。金額に不足がないかも注意が必要です。
3.残代金と清算金の支払い
清算金には、売主が買主に支払うものと買主が売主に支払うものがあり、代表的な例として以下があります。
売主が買主に支払うもの
買主が売主に支払うもの
なお、固定資産税と都市計画税の清算にあたっては、地域によって商慣習が異なり、起算日が1月1日の場合と4月1日の場合があります。同じ決済日であっても起算日が異なると清算金の額が異なるので、注意が必要です。
すべての引き渡し書類を渡し、引き渡し完了書を取り交わしたら、決済・引き渡しは完了します。
4.不動産会社への仲介手数料の支払い
仲介手数料の支払いは、契約時に半金、決済時に残りの半金を支払うケースと決済時一括して支払うケースがあります。ほかにも、売主へ残代金などを支払うタイミングで、あわせて仲介手数料を支払う場合もあります。支払い方も、振り込みや現金払いなど会社により様々です。
仲介業者によって支払い方やタイミングが異なるので注意しましょう。
契約時、仲介会社から仲介手数料全額の支払いを求められるケースが稀にありますが、取引の最後まで責任を持ち仲介してもらうためにも、あまりすすめません
5.登記手続き
以前は不動産の所在地を管轄する法務局へ持ち込み登記申請を行っていましたが、最近は電子申請も可能になりました。決済時に必要な代表的な登記手続きとしては、以下になります。
所有権移転登記
抵当権設定登記/根抵当権設定登記
抵当権抹消登記/根抵当権抹消登記
申請は司法書士が行います。この登記費用は売主(不動産の所有者)の負担となります。
住所変更登記
登記簿上の住所が正しくないと、所有権移転ができないため、決済にあたっては必要な登記になります。この登記費用は不動産の所有者(売主)の負担となります。
不動産売却の決済に必要な書類などの一覧
売主が準備する書類など
| □ | 本人確認書類 | 必須。犯罪収益移転防止法によって本人確認は義務付けられている。運転免許証、マイナンバーカードなど顔写真のあるもの |
|---|---|---|
| □ | 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内) | 必須。所有権移転登記申請に必要 |
| □ | 実印 | 必須。所有権移転登記申請に必要 |
| □ | 固定資産税評価証明書 | 固定資産税・都市計画税納付通知でも可。事前に渡している場合は当日不要 |
| □ | 物件(建物)の鍵 | 土地のみ売買する場合は不要 |
| □ | 不動産に関する図面・証書など | 建物の建築図面や建築確認済証、検査済証など売買する物件に関する図面など保有しているものはすべて引き渡し |
| □ | 通帳(キャッシュカード) | 決済時の入金確認用。ネットバンキングで確認可能なら不要 |
| □ | 抵当権抹消登記申請書類 | 不動産に抵当権などが設定されている場合は必須。ただし、金融機関が準備することが一般的なので、売主は決済当日に準備してもらえるよう事前に手配することが必要 |
| □ | 仲介手数料 | 必須。振り込みまたは現金で用意 |
| □ | 登記費用 | 抵当権抹消登記や住所変更登記が必要な場合は必須。司法書士へ支払う。振り込みまたは現金で用意 |
| □ | 住民票、戸籍附表 | 売主が住所変更登記を行う場合は必須 |
買主が準備する書類など
| □ | 本人確認書類 | 必須。犯罪収益移転防止法によって本人確認は義務付けられている。運転免許証、マイナンバーカードなど顔写真のあるもの |
|---|---|---|
| □ | 印鑑(実印または認印) | 必須。認印でも可。実印を準備することを依頼されることが多い |
| □ | 住民票(発行から3ヶ月以内) | 必須。所有権移転登記申請に必要 |
| □ | 通帳と銀行印 | 融資実行確認、代金送金用。ネットバンキングで入金確認、送金可能なら不要 |
| □ | 仲介手数料 | 必須。振り込みまた現金で用意 |
| □ | 登記費用 | 必須。司法書士へ支払う。振り込みまたは現金で用意 |
| □ | 各種清算金 | 必須。固定資産税や都市計画税、マンションの管理費や修繕積立金の清算金 |
| □ | 印鑑証明書 | 抵当権設定登記が必要な場合は必須。事前に金融機関に提出している場合、当日は不要 |
不動産決済で起こりうるトラブル3選
1.忘れ物
たとえば、当日実印を忘れてしまうと、司法書士が所有権移転登記に必要な書類が作成できないため、決済や引き渡しができません。この場合は、忘れてしまった実印を取りに戻り決済を行うか、日を改めることになります。ただし、買主がローンを利用して不動産を購入する場合、簡単には日付をずらせないため、当日に決済できなければ、大きなトラブルとなります。
実印のほか、印鑑証明書や不動産の権利証(登記識別情報通知)といった書類、肝心の決済資金の準備を忘れることもあります。持参するものについては数日前から何度も確認をするようにしましょう。
2.送金・入金確認のトラブル
着金が遅れている場合は送金先を確認し、問題なければ着金を待たずに決済を終えることが可能です。また、買主に金額を間違って送金した場合は、決済を済ませたあと着金確認後に過不足金を調整します。
一方、間違った送金先に振り込んだ場合は、その日中に決済を終えることができません。送金先を間違えることは絶対にないよう、入念に確認をすることが大切になります。
3.手続き・手配の漏れやミス
金融機関に抵当権や根抵当権の抹消手続きの依頼を忘れていた場合は、その日の決済はまずできません。住所変更登記に戸籍抄本が必要な場合、本籍地が遠いとその日のうちに戸籍抄本などの書類を入手することは困難です。そのほか、売主や買主が決済に立ち会い出来ない遠方にいる共有者の委任状が手配できていなかったなど、
事前に必要な手配は、余裕をもって準備するよう気をつけましょう。
売主が決済日までに準備すること
抵当権(根抵当権)抹消の準備
抵当権や根抵当権の抹消書類の準備は、金融機関によって1週間~1か月ほどかかる場合もあり、売却活動を始めた時点で金融機関への相談が必要です。その後の手続きは、金融機関の案内に従って手続きを進めてください。
また、抵当権は残債を完済すれば消滅しますが、根抵当権は残債を支払っただけでは消滅しません。そのため、金融機関との協議が重要になります。売却活動を始める前から金融機関へ相談することをおすすめします。
引き渡し書類などの準備
不動産の所有者(売主)のみ保有する書類など
| □ | 本人確認書類(身分証明書) |
|---|---|
| □ | 実印 |
| □ | 登記済権利証(登記識別情報通知) |
| □ | 建物の鍵 |
| □ | 建物の建築図面 |
登記済権利証については代用可能ですが、建築図面は代用もできないため、図面類がない場合はその旨を契約前に買主に知らせて了承を得る必要があります。
不動産の所有者(売主)のみ取得できる書類
| □ | 固定資産税評価証明書(固定資産税・都市計画税納付通知書) |
|---|---|
| □ | 印鑑証明書 |
| □ | 住民票(戸籍の附表) |
不動産の所有者(売主)だけでは準備できない書類
| □ | 抵当権抹消登記書類 |
|---|---|
| □ | 確定測量図(境界確認書) |
とくに境界確認書は了解が得られず、取得できないことがあります。心配であれば、不動産を売却する前から準備をしましょう。万が一、了解が得られなければ、トラブルを避けるためその旨を条件として売却するとよいでしょう。
引っ越し
契約上は引き渡しの前日までに済ませれば問題ありませんが、決済準備の最中に引っ越しをすると、書類の紛失など不測の事態を招く恐れがあるので、早めに済ませましょう。
新たに新居を購入する場合は、新居の引き渡しと旧居の引き渡し時期について、仲介する不動産会社に相談しながら進めることをおすすめします。
境界確定
境界確定は、隣地所有者の同意が必要です。そのため、売却活動を開始する前に確定測量を行い境界確定を行うのがベストです。隣地所有者の同意を得てから売買契約することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
取り引き完了後も書類管理と確定申告を忘れずに
決済時に登記申請に必要だった住民票や売主のもう権利のなくなった登記済権利証(登記識別情報通知)は、決済後も希望をすれば返却してもらえます。不要の旨を伝えれば、司法書士が処分します。
売主には不動産を売却した後、税務署からお尋ねが届く場合があります。このお尋ねは、不動産の売却により譲渡所得(とくに譲渡益)の発生状況について税務署から確認のために送られてくるものです。
不動産売却で所有権移転登記をしたことは、税務署や役所に伝わる仕組みになっています。不動産売却によりお金を得たことは税務署も把握しているので、状況確認のためのお尋ねにはきちんと回答しておきましょう。
売却益が発生する場合は、売却した翌年の確定申告が必要です。また、不動産の譲渡所得に関する特例が適用されて税金がかからない場合も、確定申告しなければ特例が受けられません。売却して売却損が発生する場合の確定申告は不要ですが、売却損が発生した場合の特例もあります。
不動産の売却後は、基本的に確定申告はするものと考えておきましょう。
確定申告の方法は税務署の無料相談でていねいに教えてもらえますが、確定申告時期の後半は大変混雑します。自分で申告する場合は早めに相談しましょう。
まとめ
不動産の決済は、売買代金などの授受を行って権利を移転し、不動産取り引きを完了させる重要な場面です。売主・買主ともに、決済に向けた準備は多くあるため、余裕をもって取り組みましょう。準備を怠ると、最悪決済ができず、場合によっては大きなトラブルに発展してしまうこともあります。
決済についてわからないことがあれば、早めに仲介業者の担当者に相談して不安や不備がないように準備しましょう。
不動産決済は、必要な手続きや書類が多くしっかりとした事前準備が必要です。
信頼できる仲介業者を選び、余裕をもって当日を迎えましょう。
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※ページ下部の「売却査定、買取査定サービスの注意点」をご確認いただいたうえ、ご利用ください。
この記事の監修者
公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。
神奈川県住宅供給公社を経て、不動産仲介業者に従事した後、2011年に個人事務所として不動産サポートオフィスを開設。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム、記事等の執筆・監修にも取り組んでいる。
主な著書に「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)などがある。





司法書士を立会人とする理由は、登記申請の代理が司法書士の専任特権であるほか、売主買主双方にとって取り引きの安全性や中立性を確保するためでもあります。所有権移転登記は買主がみずから行うこともできますが、登記申請にミスや犯罪性がないともいえません。