空き家の管理方法ガイド|トラブル・劣化を防ぐ自主管理&代行委託のノウハウを伝授します

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この記事の監修者

木村 ゆり
木村 ゆり

不動産鑑定士/土地活用プランナー

空き家の管理方法ガイド|トラブル・劣化を防ぐ自主管理&代行委託のノウハウを伝授します

相続した実家が空き家になってしまい、管理に困っているというケースが増えています。
本記事では、実家を相続したものの活用する予定がないといった方に向けて、空き家の管理方法や注意点を、具体的に解説していきます。

この記事のポイント
  • 空き家は相続が原因で増加しており、全国で社会問題化しています。
  • 適切な管理を怠ると物件価値の低下や近隣トラブルの要因となり、管理不全空き家に指定されると固定資産税が6倍になってしまいます。
  • 管理方法には自主管理と業者委託があり、将来の活用や費用で選択が分かれます。

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目次

空き家の所有者は空き家の管理に困っている!

総務省のデータによると、日本の空き家は右肩上がりに増え続けており、空き家件数も空き家率も過去最高であり、1993年から2023年までの30年間で2倍となっています。
また、国土交通省の2024年のデータによると、空き家の取得原因の内、58%が相続によるものとなっています。
相続した実家が空き家になってしまい、管理に困っているというケースが多くなっているようです。

空き家を所有している方へのアンケートによると、以下のような理由で、空き家を手放さずに保有していることがわかりました。
・時々使用する
・家財道具や仏壇がある
・先祖から受け継いだ物件で手放せない
・他人に貸すのは不安
・買い手がないか、売っても安価だから
アンケートによると、空き家の所有者の方は、以下のような悩みを持っています。
・維持管理に費用がかかる
・借り手・買い手が見つからない
・遠方に住んでおり維持管理ができない
・修繕したいが費用が足りない
・取り壊したいが費用がない
実家を相続しても、すぐに借り手や買い手が見つからなければ、とりあえず空き家のままにしておくしかありません。思い入れのある家財道具が残っていることも多いですし、建物を取り壊すにも費用がかかります。とはいえ、空き家を所有していると、管理するのが意外と大変だったり、近隣から苦情が入ったりすることがあります。

そこでこの記事では、空き家をどのように管理すべきなのか、また管理以外にどのような方法があるのかなどをおさえていきましょう。

いずれは「売却したい」が50%越え

次に、空き家の今後についてのアンケート結果です。
空き家を所有している方の50%以上の方は、「いずれ売却したい」と考えています。いずれ売却したり、利用したりする可能性があるならば、空き家は適切に管理することが重要です。

空き家の管理が必要な3つの理由

すぐに活用する予定のない空き家は適切に管理しなければさまざまなデメリットが生じてしまいます。空き家管理の目的は主に以下の3点です。
✔ 物件価値の維持のため
✔ 近隣トラブルを避けるため
✔ 管理不全空き家(特定空き家)にしないため

①物件価値の維持のため

まず、人が住まない家は劣化が急速に早まります。建物の換気を定期的に行わないと湿気がたまり、カビの繁殖が進んだりするからです。

一度劣化してしまうと、将来的に住んだり、人に貸したり、また売却したりするときに大規模な修繕が必要になるなどして多額の費用が必要になる可能性があります。

②近隣トラブルを避けるため

建物の劣化に加えて庭の草木が生い茂ってしまうと、景観の悪化等から近隣への迷惑になってしまいます。「街並みが悪くなって、周辺の不動産価値が落ちてしまう」と苦情を言われることもあります。

さらに、劣化した建物を放置していると災害時などに倒壊してしまう可能性もあります。台風の際に瓦やスレートなどの屋根材が飛散し、隣家に損害を与えるケースもあります。周辺の建物や車に損害を与えたり、倒壊時に近隣の人に怪我を負わせたりした場合、損害賠償請求される可能性がある点には十分注意が必要です。

適切に管理をすることで、空き家への不法侵入や放火、不法投棄の被害にあうリスクも減らすことができます。

木村 ゆり
木村 ゆり

③管理不全空き家(特定空き家)にしないため

2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(「空家対策特措法」)により、「特定空き家」に指定されると固定資産税の住宅用地特例が解除され、固定資産税が6倍になってしまいます。

さらに2023年の改定では、特定空き家になる恐れがあると勧告された場合(管理不全空き家)でも住宅用地特例が解除されるというものに変わっており、空き家放置のリスクがより顕著になりました。

【自主管理チェックリスト】空き家の管理方法

前述したように、空き家は適切に管理しないとさまざまなデメリットが生じてしまいますが、“適切な管理“とはどのようなものなのでしょうか。

空き家管理の準備

空き家の管理作業は、動きやすく汚れてもよい服装で行います。換気をするので、天気の良い日中を選んでください。

持ち物は、軍手、スリッパ、ゴミ袋、カメラ、ぞうきん、懐中電灯など。劣化が気になる部分はカメラで記録しましょう。

空き家に到着したら、作業を始める前にご近所の方に挨拶して、最近変わったことがないか確認しておくことをおすすめします。

管理の頻度は月1回がベスト

最低でも月に1回程度は空き家を訪れて上記の管理を実施することをおすすめします。庭の草が伸びるのが早い夏場や凍結・積雪などが心配な冬場は点検頻度を増やしたいところです。

【チェックリスト】空き家管理でやるべきこと

【空き家の管理チェックリスト】
項目内容
【1】換気・窓や収納扉を全開にして1時間ほど換気する
・換気が終わったら窓を全て閉めて施錠する
【2】通水と漏水の確認・すべての蛇口で水道を3分ずつ流す(洗面所、キッチン、風呂、トイレなど)
・水漏れしていないか、確認する
【3】雨漏りや破損の確認・建物内部の点検(天井や壁に雨染みがないか)
・建物の外側の点検(屋根材の剥がれ、外壁のヒビ、雨どいの劣化など)
【4】庭の清掃、手入れ・雑草や庭木の処理
・害虫は発生していないか
・敷地内にゴミが捨てられていないか
【5】郵便物の処理・ポストを確認して不要なチラシなどを処分する
それぞれ細かく見ていきましょう。

【1】換気

月に1回、1時間程度、窓や収納の扉を全開にして換気しましょう。換気しないでいると湿気がたまってカビが発生しやすくなるため、建物の老朽化が進みます。湿気によって建材が傷むとシロアリの被害にもあいやすくなります。

【2】通水と漏水の確認

空き家の管理では、定期的に水道を流す「通水」が非常に重要です。通水の方法は、1ヶ月に1回、すべての蛇口で3分くらい水を流します。

長期間、水道を利用しないと、水道管に錆が発生してしまいます。また、水を流さないと排水管の中の「排水トラップ」の水が蒸発して、下水から悪臭が逆流して建物に臭いがしみついたり、害虫が下水管から侵入したりする原因になります。定期的に水を流し、漏水についても確認しましょう。

【3】雨漏りや破損の確認

まずは家の中から、天井や壁をよく見て、雨漏りによる染みができていないか確認してください。雨漏りしている場合には、早めに補修を行わないと建物内部の腐食が進んでしまいます。雨漏りによって漏電が起きてしまうことも珍しくありません。

次に建物の外側から屋根・軒裏・外壁・基礎を目視で確認し、瓦が剥がれている部分や外壁のヒビ割れなどを確認してください。雨どいの破損も建物劣化の原因になります。

【4】庭の清掃、手入れ

外回りの清掃や手入れがなされていないと、景観の悪化により近隣の迷惑になるほか、一目で空き家と分かるような状況になると不法侵入されて空き家が犯罪に使われてしまうといった事態にもつながりやすくなります。

庭木が伸びて道路や隣の家にはみ出していないかチェックし、必要なら剪定してください。ハチの巣などもできていないか確認が必要です。敷地内の不用品はできるだけ処分するか、外から見えない場所に移動しておきます。

【5】郵便物の処理

郵便物についても同様で、郵便物が貯まった家は長期間人が住んでいないと判断されることになるでしょう。不要なチラシはこまめに処分します。こまめに処分できない場合はポストをふさいでしまう方法もありますが、空き家であるとわかりやすくなってしまうのがデメリットです。

空き家を賃貸に出せば管理が不要になる?

空き家は定期的に現地を訪れ、管理していくことが求められます。とくに遠方に住んでいる場合には移動などもあり労力のみならず時間も要します。そこでおすすめなのが空き家を賃貸に出す方法です。
賃貸に出すことで、換気をする必要や漏水の心配をする必要もなくなりますし、入居者が清掃を行うことになるため物件の手入れも必要ありません。ただし、定期的に入居者に連絡をとるなどして、不具合がないか伺うことは大切です。

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【管理代行】空き家管理サービスに依頼するなら

空き家の管理について、業者に委託してしまうこともできます。ここでは、空き家の管理について自主管理と業者委託それぞれのメリット・デメリットを考え合わせながら、費用相場と管理会社の選び方をご紹介していきます。

空き家管理の費用相場

空き家管理サービスの費用は、地域やサービス内容により異なりますが、5,000~10,000円/月程度ということが多いようです。

年間6~12万円の出費ですから、自主管理にすることでその分が浮くと考えるとメリットと感じる方は多いでしょうが、空き家から遠いところに住んでいる場合は、交通費を考えると、地元の業者に管理を任せた方が安くつくという可能性もあります。

空き家管理会社を選ぶポイント

業者委託のメリットは手間がかからないことと、プロの手で適切に管理してもらえることです。自主管理では忙しいときは手を抜いてしまう可能性もありますが、プロに任せればそのような心配もありません。

定期的に報告をくれるかどうか

業者に委託するならば管理の内容について定期的に報告を貰い、しっかり管理してくれていないと感じるのであれば業者の変更も検討するとよいでしょう。

空き家管理の専門業者かどうか

空き家の管理を委託する業者を選ぶポイントとしては、地元の不動産会社に相談するのもよいですが、できれば空き家管理サービスを専門にやっている業者を探すことをおすすめします。

たとえば、不動産会社が業務の合間に空き家管理サービスを行うような場合だと、賃貸物件の管理の合間に空き家を確認するといった流れになることが多いため、管理が不十分になる可能性も否めません。空き家は依頼者のチェックが頻繁に入る可能性も低く、また、収益として小さいことも多いため、忙しいときには後回しにされてしまう可能性が高いのです。

一方、空き家管理サービスを専門にやっている業者であれば、そうした心配はありません。

拠点が空き家に近いかどうか

また、できるだけ拠点が空き家に近い業者を選ぶのもポイントです。空き家管理サービスは定期的に実施してもらう必要がありますが、拠点と空き家の場所が近ければ高い頻度でチェックしてもらえる可能性は高いでしょう。

管理費用は将来住むかどうかで判断

先述の通り、空き家管理サービスの費用相場は5,000円~10,000円/月程度です。もちろん、具体的なサービス内容や管理実施の頻度により費用は変わります。中には、月1回、外部からの建物の目視点検だけのサービスを月額100円でサービスを実施しているケースもあります。

将来的に住んだり活用したりする予定があるのであれば、しっかりした管理をしてくれる業者を選んだ方がよいでしょう。一方、将来的に取り壊しする予定というケースであれば、できるだけ安価で管理してくれる業者を選んだ方が効果的だといえます。要望に基づいて、いくつかの業者に問い合わせしてみて比較検討するとよいでしょう。

いずれ…より今、売却するメリット3つ

空き家を将来的に活用する予定がないのであれば、思い切って売却を検討してみるのも1つの方法です。

【メリット1】維持費用と手間の削減

空き家を所有していると管理の手間が発生し、管理委託するのにもお金がかかります。空き家の管理に欠かせない「通水」をするためには水道を解約できないので、水道料金の負担もあります。

また、管理委託以外に毎年の固定資産税がかかってしまうのも大きなデメリットです。売却してしまえば、管理する必要はなくなり、固定資産税を納める必要もありません。

【メリット2】価値下落リスクの低減

人が住んでいない家は、傷むスピードが速くなります。建物の傷みが少ないうちならばそのまま売却できる可能性もありますが、老朽化が進むと売却時に修繕費や取壊し費用が発生してしまうかもしれません。

土地の値段は将来、上がるのか下がるのか予想するのは難しいですが、建物については築年数が経過すれば価値が下がっていくのが通常です。

【メリット3】空き家売却の優遇税制は相続から3年以内

相続した実家を売却する場合には、相続発生から3年目の年末までに売却すると、譲渡所得税が3,000万円まで非課税になる制度があります。ほかにも一定の要件があるため、詳しくは下記の国税庁ホームページをご確認ください。

相続した実家が取得時よりも高く売れた場合や、両親が家を取得した値段を証明できない場合には高額な税金がかかってくることがあるため、ぜひチェックしておきましょう。

木村 ゆり
木村 ゆり
実家じまいの注意点については、こちらの記事をご覧ください。

空き家バンクや自治体の空き家活用支援なども検討を

人口が減少している郊外の家などは、売りたいと思ってもすぐに売れない場合があります。このようなときは、市役所などで空き家バンクなどの支援制度について聞いてみてください。空き家バンクは、市町村のホームページで物件情報を提供してもらえます。

人口減少に悩んでいる地方自治体は、移住対策に力を入れている場合があるので空き家の改修に関する補助金についても相談してみるとよいでしょう。
なお、不動産を売却する際には、最初に不動産会社に査定依頼することになりますが、その際には不動産一括査定サイトを利用すると効果的です。不動産会社は査定のプロとはいえ、同じ物件の査定でも査定額が異なります。これは、不動産会社ごとに査定のために利用するデータや、得意とする不動産のタイプが異なるからです。

しかし、複数の不動産会社に査定依頼するにあたり1社1社問い合わせするのは手間でしょう。一方、不動産一括査定サイトを利用すれば物件情報を登録するだけで複数の不動産会社から査定を受けることができます。空き家の管理が大変と感じたら、まずは不動産一括査定サイトを利用して売却査定を依頼してみてはいかがでしょうか。

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まとめ

相続した空き家の管理について、自主管理と業者委託それぞれのメリット・デメリットや注意点などご紹介しました。空き家を放置しているとさまざまなデメリットが生じるため、適切に管理することが求められます。

しかし、空き家の管理には手間や費用がかかるものです。将来的に活用しないことが予想されるのであれば、早い段階で売却を検討してみるのもよいのではないでしょうか。
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木村 ゆり
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不動産鑑定士/土地活用プランナー

千葉大学卒業、地方銀行に勤務後、都内の不動産鑑定業者で事務所ビルやマンション等の収益物件の評価を数多く経験。現在は不動産鑑定士事務所を経営し、住宅・店舗・更地・山林・資材置場など多様な不動産に携わる。

土地活用や相続対策にも精通し、不動産に関するお悩み解決に尽力している。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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