- 住宅ローンを滞納していて、売却金でもローンを返済しきれない時は「任意売却」の可能性を探ってみましょう。
- 債権者である金融機関との交渉を任せられる、信頼できる不動産会社に依頼することがポイント。
- 一般の売却と違って難しい条件があるため、具体的な流れや手続きをしっかり把握しておきましょう。
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目次
任意売却が可能な期間は住宅ローンの滞納から3~12カ月
住宅ローンの滞納を、そのまま放置していると競売にかけられることになってしまいます。競売では所有者の意向や希望といったものはほとんど受け付けられないため、デメリットが多く、出来るだけ避けたい方法です。競売にかけられてしまう前に検討したいのが任意売却です。
住宅ローンを滞納してしまったら、起こること
住宅ローン滞納1か月目
返済が厳しいようであれば、この時点で金融機関と返済について相談するようにします。条件はありますが、金融機関が認めれば、一定期間返済額の減額や返済期間を延長することで、毎月の返済額を減らすことができます。
住宅ローン滞納2~4か月目
2か月を超える滞納(延滞)では、個人信用情報に事故情報が掲載されるようになりますので、2ヵ月を超えるような滞納はしないようにすべきでしょう。
住宅ローン滞納5~6か月目
通常はこの通知が届いてから1か月以内にローンの残金を一括で返済することが求められます。
住宅ローン滞納7~8か月目
住宅ローン滞納8~9か月目
競売にかけられる前に検討したい任意売却とは
任意売却が可能な期間は、期限の利益喪失をしてから、競売の入札が始まる前までの期間です。なお、それまでに売買契約、不動産の引き渡し(所有権移転)など任意売却のすべての手続きを完了させる必要があります。目安としては、住宅ローンの滞納から6~12カ月といった期間です。
ちなみに、競売開始決定通知が届いた後、現地調査などが行われるため、実際に競売の入札が始まるまでには数か月かかります。
任意売却のメリット・デメリット
メリット | ・市場価格に近い金額で売却できる |
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・引っ越し費用などを売却金から控除してもらえる可能性がある | |
・売却にかかる諸費用も売却代金から捻出できる | |
・任意売却後の返済計画の交渉ができる | |
・近隣に経済状況などを知られずに売却できる | |
デメリット | ・個人信用情報には金融事故情報記録が残る |
・債権者の同意が得られない場合任意売却ができない | |
・販売活動に期限があり、競売になってしまう場合もある |
任意売却の具体的な流れ
その後、査定結果を踏まえて、任意売却について金融機関の許可が得られたら、不動産会社と媒介契約の締結をし、債権者との交渉を行いながら、買主との売買契約に向けて売却活動を進めていきます。
【ステップ1】不動産会社・専門業者への相談
また、借入先の金融機関に滞納の状況や延滞金も含めた住宅ローン残高の照会をしておきましょう。
【ステップ2】物件の売却価格査定
査定価格が決定したら、ローン残高や債務状況などの詳細を把握したうえで、任意売却のプランを組み立てます。依頼した不動産会社には金融機関との交渉も任せることになるので、信頼関係が築ける担当者かどうかもチェックしましょう。
問題なければ、専任媒介か専属専任媒介の契約を結ぶのが一般的です。
【ステップ3】債権者(金融機関)との交渉
しかも、任意売却で物件が売却できなければ競売となってしまいますので、債権者が納得でき、かつ相場価格に出来る限り近い金額とするよう交渉するのが、任意売却を行う業者の役割です。
また、注意点としては、抵当権を設定している債権者が複数ある場合は、その全ての関係者から同意を得ないと任意売却できないので、そういった交渉も業者の役割になります。
【ステップ4】売却活動のスタート
売却活動の事前準備はもちろん、販売活動中の内見や質疑応答は迅速に対応することが必要となります。
【ステップ5】売買契約の締結
【ステップ6】決済・引き渡し
決済・引き渡し当日は、代金決済を行い、債権者への所定の金額の入金が確認できた後、抵当権抹消の書類が渡されます。鍵などの物件の引き渡しを終えたら、抵当権抹消登記と同時に買主への所有権移転登記を行います。
残債の返済について
任意売却の売却先3つ|それぞれのメリット・デメリット
1.市場売却
【メリット】
任意売却の種類の中では、相場価格に基づいて、最も高く売ることができる可能性が高い方法です。結果として、売却後に残る住宅ローンがいちばん小さくなるため、債権者である金融機関の同意が得やすいといえます。
【デメリット】
一般的な市場で売買するため、売却まで時間がかかる可能性もあります。また、購入を検討しているのは第三者であるため、内見時の室内イメージは売却を左右するので、しっかりと清掃や整理整頓を心がけておくといいでしょう。
一般的な流通市場で売却する場合、やはり任意売却で売るよりも通常の状態で売却した方が売りやすく、高く売れる可能性がありますので、滞納する前、住宅ローンの返済が厳しいと思ったら、売却を検討してもいいかもしれません。
2.親子間売買
【メリット】
購入した親または子が承諾しているなら、任意売却後も、住み続けることができ、売却後の生活が建て直しやすいことがメリットといえます。ただし、親子間売買の場合、住宅ローンを利用できないケースが多く、自己資金で買い取る資金力が必要になります。
【デメリット】
親子間売買では、融資をしてくれる金融機関を見つけることが非常に難しくなります。とくにすでに親子がその家に同居している場合、その家の購入資金としての融資は利用できません。
また、親子間売買では、市場売却よりも売却価格が低くなる可能性があり、債権者である金融機関の同意を得にくいばかりでなく、生前贈与とみなされると、贈与税が発生します。
3.業者買取
【メリット】
一般に買主を探さず、資金的に余裕のある不動産会社に直接買い取ってもらうので、売買契約締結から決済・引き渡しまで、一番早い方法です。
不動産業者は買取後に買い取った不動産を転売することが目的としています。買い取る不動産業者によりますが、リフォームを施して転売、あるいは更地にして転売するといった場合は、建物、室内状況が悪くても買い取ってもらうことが可能です。
【デメリット】
不動産会社は、転売を目的としているので、相場価格を通常は下回る価格で買い取ります。したがって、債権者である金融機関によっては同意を得にくいこともありますが、資金回収が早く、確実にできるので、最近は買い取りによる売却についても金融機関の許可は得やすくなっています。
業者による買取価格は、市場での売買価格よりも安くなりますが、不動産のプロが買い取るため、任意売却物件であっても決済・引き渡しまでスムーズな売却が可能です。時間がない場合は非常に有効な売却先になります。
任意売却は相談先の見極めが大切!
また、任意売却は通常の売却と比べて特殊な部分があるため、それを理由に本来は不要なお金を請求する、自社で売却を請負いたいがために嘘をつくといった業者なども残念ながらあります。
そういった業者に依頼してしまうことのないよう、任意売却のノウハウを持ち信頼できる不動産会社かどうかを見極める必要があります。
見極める方法としては、ホームページなら、宅建免許登録の有無や任意売却に関する詳しい説明があるか、相談では親身になってわからないことや不利なこともきちんと説明してくれるかといった担当者の態度がポイントです。なお、依頼先を間違わないために、時間が許す限り複数の会社に相談することも大切です。
よくある質問
- 任意売却ができない場合とは?
- 任意売却は債権者である金融機関の同意がなければ行うことができません。競売による債権の圧縮や不良債権化を回避し、可能な限り多く債権を回収するための手段が任意売却です。したがって、何の問題もなく返済ができている人には不要で、金融機関も許可することはなく、一方、競売までの猶予期間が短い場合は許可されないケースがほとんどです。
また、税金の滞納などで差し押さえされている場合は任意売却を利用できません。さらに、売却する不動産に共有者や住宅ローンの連帯債務者・連帯保証人がある場合、共有者や連帯保証人の承諾が得られなければ、任意売却することができません。 - 任意売却をすれば競売は必ず避けられる?
- 期限の利益喪失から競売で落札される前日までが、任意売却可能な期間です。一般的に滞納およそ9~10カ月で「競売開始決定通知書」が届き、その後4~6カ月で入札開始となります。任意売却で売却活動をしている間も、競売の準備は進んでおり、買い手が見つからなければ競売で売却されることになります。
- 任意売却に費用や税金はかかる?
- 通常の不動産売却と同様、仲介手数料や契約書類にかかる印紙税、抵当権の抹消登記費用などがかかります。仲介手数料の上限額は売買価格が400万円超の場合【(売買価格×3%+6万)×消費税】の計算式で求めることができます。
任意売却の場合、債権者である金融機関に了承してもらうことで、これらの費用は売却代金から清算することが可能です。 - 離婚したので家を売りたいのですが任意売却にすべき?
- 離婚をきっかけに住宅ローンの滞納が発生した状態で、夫婦共有名義の家を売却するなら、共有者である夫婦が共に了承したうえで、金融機関の合意を得ることができれば任意売却という選択肢もあるでしょう。
たとえば、夫婦の収入合算による住宅ローンの利用やペアローンによって家を購入していた場合、離婚して一方が退去して久しいとしても、住宅ローン契約上の連帯債務や連帯保証から逃れることはできません。ただし、共有名義人のどちらかが住宅ローンの支払い能力がある場合、金融機関が任意売却に同意しないこともあります。離婚後の不動産売却については、下記の記事でより詳しく説明しています。
まとめ
任意売却を検討しているなら
まずは専門家に相談してみましょう!
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この記事の監修者
秋津 智幸
【資格】公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。神奈川県住宅供給公社を経て、不動産仲介業者に従事した後、2011年に個人事務所として不動産サポートオフィスを開設。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム、記事等の執筆・監修にも取り組んでいる。主な著書に「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)などがある。
時限立法だった「中小企業金融円滑化法」の「金融機関が引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めるべき」という政府の方針は現在も変わっておらず、金融機関の多くは返済が難しくなった場合には積極的に相談に応じるようになっていますので、滞納が増える前に早めに相談するようにしましょう。