- 不動産の査定を不動産会社に依頼した際に、「市場で売却できそうな価格」を提案するための書類が、不動産査定書です。
- 不動産査定書は原則無料です。書式や記載項目もとくに決まりはないため、各社の表記はまちまちです。
- 査定額は高ければ良いというわけではありません。比較する際は4つのポイントに沿ってチェックしていきましょう。
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目次
不動産査定書とは|不動産鑑定書との違い
一般的に不動産の査定は、不動産を売却する際、仲介を依頼する候補となる不動産会社に依頼しますが、複数の不動産会社に査定を依頼することが可能です。査定を依頼して不動産査定書を作成(査定)してもらうこと自体に費用はかかりません。
なお、査定方法に決まりがないため、不動産会社によって不動産査定書に提示される査定額は異なるのが一般的です。また、売却する場合の不動産価格だけでなく、賃貸住宅や事務所店舗といった賃貸物件の賃料に関する不動産査定書(この場合は賃料)もあります。
一方、不動産会社ではなく、不動産鑑定士に査定を依頼することもできますが、基本的に不動産鑑定士に依頼する場合は費用がかかります。
不動産査定書は原則無料!有料の不動産鑑定書との違い
不動産査定書と不動産鑑定書は、不動産の価格を算定してもらう点では同じですが、価格を求める方法や算定された価格の公的効力、費用の有無などさまざまな点で異なります。
たとえば、価格の算定方法は不動産査定書には手順や方法に決まりはありませんが、不動産鑑定書の作成にあたっては、手順や方法が不動産鑑定評価基準というもので決められています。
その他、不動産鑑定書は不動産鑑定士しか作成できないこと、作成に費用がかかること、不動産鑑定書(示された不動産評価額)には公的効力があり、裁判や調停などの公の場面での証拠能力がある、などの違いがあります。
<不動産査定書と不動産鑑定書の違い>
不動産鑑定書 | 不動産鑑定 | |
---|---|---|
作成者 | 不動産会社・不動産鑑定士 | 不動産鑑定士のみ |
評価の方法 | ほとんどは取引事例比較法 一部収益還元法、原価法特に決まりない | 原則として取引事例比較法、収益還元法、 原価法の3つの方法で評価 |
費用 | 無料 | 有料 |
公的信用力 | なし | あり |
作成の目的 | 不動産仲介の売出価格の賃料設定のため | 公的価格(公示地下調査等)の算定 裁判や調停等の証拠資料 金融機関の担保評価税務上の根拠(固定資産税評価額の根拠)など |
作成にかかる時間 | 最短1日から1週間程度 査定の種類により異なる | 2週間~1か月程度 鑑定対象や依頼内容により異なる |
不動産査定書の記載項目【ひな形で解説】

対象物件の概要
具体的な項目としては、所在地、最寄り駅等の交通情報、土地建物の面積、築年(数)、構造・規模、間取りなどです。とくにマンションの場合は、物件名、所在階、部屋番号、管理費・修繕積立金などが加わります。
周辺の取引事例
ただし、記載される事例の種類や件数は、取得できた有効な事例の件数や紙面の都合などでまちまちです。
取引事例との比較|査定額(価格)の根拠
この部分は、項目ごとに数値や優劣のポイントを記載したものもあれば、文章で説明されているものなどさまざまです。不動産会社や担当者の考え方や査定額が適正に求められているかがわかる部分ですので、ある意味最も重要な項目です。
査定額(価格)
たとえば、古い一戸建てでそのまま古家付きで売却した場合と建物を解体して更地とする条件とした場合などのように条件が付されて査定額が提示されている場合や、査定時に不明な点がある場合や市場の動きが大きい場合には、査定額(価格)を○○~○○万円のように幅を持たせて提示されることもあります。
売出価格の提案
なお、売出価格の提案という項目がない場合は、査定額(価格)参考に不動産会社の担当者から口頭でおおよその金額を告げられることもあれば、実際に売却すると決まってから売出価格の提案をすることもあります。
予想手取り金額
この項目の記載がない場合、不動産会社の担当に相談すれば概算は教えてもらえるので、この項目がなくてもとくに問題はありません。
その他の項目
とくに査定日は重要で、査定日から時間が経ってしまうと査定額も変わってしまう恐れがあるため、査定書の査定日から数か月経って売却したいと思った場合は、改めて査定を依頼した方がいいでしょう。
不動産査定の依頼方法
まず、簡易査定(机上査定)ですが、最近はインターネットで依頼するのが主流ですが、もちろん、不動産会社の店舗に訪問して依頼することもできます。不動産会社によっては、電話やFAX、郵送などでも依頼することが可能です。
簡易査定では、査定してもらいたい不動産の概要を知らせるだけで簡易的な査定をしてもらうことができます。ただし、取引の多い地域のマンションや一戸建て、土地などの住宅や住宅用地に限られる傾向があり、それ以外の不動産では簡易査定が難しいあるいは査定額のブレが大きくなる場合があります。
簡易査定は、訪問査定に比べると査定額の確度があまり高くありませんが、依頼が簡単なため、できるだけ複数の不動産会社に依頼することで、その対応や結果から、訪問査定を依頼する不動産会社を見つける手段ともなります。
次に、訪問査定(実査定)ですが、実際に対象不動産(現地)に訪問して査定するため、簡易査定の後に依頼するケースが多くなります。不動産会社の窓口で依頼した場合などはそのまま予定を決めて訪問査定となることもあります。依頼方法は簡易査定を依頼した不動産会社の担当に電話やメールでお願いします。
訪問査定は現地対応となるため、手間もかかり、意外と大変ですので、依頼する場合は、そのまま売却など仲介を依頼する候補となる不動産会社に絞って依頼するようにしましょう。
不動産査定時に必要な資料
ただし、築年の古い物件やリフォームしている物件、認定を受けている物件では、査定に影響する可能性がありますので、できれば以下の資料を訪問査定時に準備しましょう。
・確認済証/検査済証 |
---|
・建物図面 |
・住宅性能評価書 |
・耐震診断書 |
・リフォーム時の図面等の資料 |
・認定住宅の認定書(長期優良住宅、ZEH等) |
・建物図面 |
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・購入時のパンフレット |
・購入時の重要事項説明書・売買契約書 |
・権利証・登記識別情報(通知) |
・マンションの管理費、修繕積立金の金額のわかるもの |
不動産査定書で確認すべきポイント4つ
【ポイント1】どのような事例が例示されているか
そこで例示されている事例が対象不動産とどの程度類似した物件かを見ることがポイントのひとつです。あまり類似していない事例から求めた査定額は実際の市場価格とのずれが大きくなる傾向があるためです。
周辺に類似した事例が少なく査定が難しい場合もありますが、その場合は一定の根拠をもって補正されていますので、その補正の説明が論理的なもの(納得できるもの)かも確認するポイントになります。
不動産査定で用いられる取引事例には、大きく分けると販売中の事例(募集事例)と成約事例があります。成約事例は、一般に公開されることはなく、一般の人が調べることはできません。そのため、成約事例が記載されていた場合は、その事例を知ることだけでも不動産査定書の価値があるといえます。

【ポイント2】査定額の根拠ははっきりと示されているか
不動産査定書の査定額に至る説明を聞いて疑問があった場合は、納得のいくまで質問するようにしましょう。
【ポイント3】査定の項目はどこまで見ているか
前述したように不動産の査定は、ほとんどの場合、過去の取引事例または現在販売されている事例(物件)と比較することによって査定額を求めています。したがって、少し手順は違っても、査定方法はほぼ同じということになります。
そこで不動産査定書の見るべきポイントとしては、査定の項目としてどこまで見ているかということになります。たとえば、同じマンションの同じ階にほぼ同じ面積の取引事例があった場合、リビングにある窓の向き(方位)まで項目で見ていれば、直近の取引事例が北向きで、対象物件が南向きなら通常は対象物件の方が査定額は少し高くなるはずです。
ところが向き(方位)まで項目として見ていなければ、査定額はほぼ同じになります。他にも、時期や規模にもよりますが、リフォームの有無や住宅性能評価書の有無などどこまで査定項目として見ているかによって査定額が変わってきます。査定書に記載されている査定項目や説明部分を見て、自分がプラスになるかもと思っている部分について記載があるか、なければ質問するなどして確認しましょう。
【ポイント4】査定額が高すぎたり、安すぎたりしないか
ただ、できれば複数の不動産会社に査定を依頼して、複数の不動産査定書を比べることができれば、高すぎあるいは安すぎる査定額は他と比べておかしいため、見極めることができます。
不動産査定書を比べる場合には、査定額だけでなく、記載された事例についても比較することでより不動産査定書の信頼度を図ることもできます。
不動産の査定額は、査定に用いる事例で大きく金額が異なります。たとえば、安い取引事例ばかりを用いれば、査定額も安くなり、その逆も可能です。こうした偏った査定額を鵜呑みにすることがないようするには、複数の不動産会社に査定を依頼する、あるいは自分でおおよその市場価格をポータルサイトなどで調べておくとよいでしょう。

まとめ
ただ、不動産の査定には査定方法などに決まりがないため、不動産会社各社で査定額が異なることがほとんどです。とくに不動産の売却では、金額も大きいため、納得のいく適正な金額で売却するには不動産査定書を比較することが大切です。
不動産の査定は不動産鑑定とは違って、無料で依頼できるので、手間はかかっても複数の不動産会社に依頼して比較することをおすすめします。
立派な装丁で届けられる不動産査定書ですが
確認すべきポイントを押さえておきましょう!
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この記事の監修者

公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。
神奈川県住宅供給公社を経て、不動産仲介業者に従事した後、2011年に個人事務所として不動産サポートオフィスを開設。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム、記事等の執筆・監修にも取り組んでいる。
主な著書に「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)などがある。
訪問査定時には上記で紹介した資料以外にも不動産会社の担当から有無を確認される資料などがある場合もありますので、査定の前に物件に関する資料などは何があるか、一通り確認しておくとよいでしょう。