売買当事者にメリットが大きい「電子契約」。
上手に役立てるために注意点はしっかりおさえましょう!
目次
不動産取引における電子契約とは

書面(紙)による売買契約の締結は、売主と買主、そして仲介する不動産会社が一堂に会することができればスムーズです。しかし、契約当事者が遠方にいたり、多忙であったりすると、その日程調整を行うのも難しい場合があります。そのような場合には、郵送などでやり取りをするという手間も必要となります。
郵送のやり取りには1~2週間時間を要することもあり、そのタイムラグの中で買主の意向が変わってしまえば、契約不成立になってしまう可能性もあります。
2021年5月12日に国会で成立したデジタル改革関連法により、不動産取引についてのルールを定めている宅地建物取引業法が改正され、2022年5月に施行されました。この改正により、不動産取引における重要事項説明書や契約書(37条書面)の押印が不要となっただけでなく、「電子契約」が可能となりました。
不動産の売買契約が「電子契約」も可能となったことで、先ほど触れた日程調整や郵送でのやり取りといった手間を省けたり、契約不成立になる危険性を回避できたりする選択肢も選べるようになり、不動産売却をしたいと考える方にとってメリットの大きい改正であったと言えます。
書面契約と電子契約の違い

署名押印
※電子署名とタイムスタンプについては、後段でご説明しています。
媒介物
契約管理
一方、電子契約は電子ファイルによって契約締結を行うので、インターネット上に「契約書」が存在します。そのため、紛失の可能性はありませんし、契約の進捗についても、すぐに確認できます。
電子契約のメリット

契約コストが削減できる (不動産会社のメリット)
電子契約の場合、インターネット上にある電子ファイルを介して契約締結を行うため、それらの費用は不要となります。また、電子契約の場合、印紙税もかからないため、書面(紙)での契約と比べてコスト削減を図ることができます。
契約締結までの時間と手間が軽減できる(不動産会社および契約当事者のメリット)
そのため、日程調整を行って一堂に会する必要もありませんし、郵送で日数をかけてやり取りする必要もありません。
電子署名

タイムスタンプ

電子契約のデメリット

関係者間での同意が必要
仲介する不動産会社が電子契約に対応していて、かつ相手方も電子契約での契約締結に協力してくれるなどの条件が必要になります。電子契約サービスにもよりますが、電子契約にかかる操作は、さほど難しいものではありません。
とはいえ、日常的にPC操作をしていない方やPCが手元にないという方にとっては、メールでのやり取りが難しかったり、PC操作についての懸念が生じたりする場合もあり、電子契約への同意が得られない可能性があります。
セキュリティ面の懸念
不動産会社が導入している電子契約サービスの提供事業者について確認し、セキュリティ面での事故歴がない信頼できる事業者を利用するように努めましょう。
また、電子契約で締結された電子ファイルをそのままデータで保管しておく際には、インターネットに接続しているPCとは別の媒体への保存をしておくようにしましょう。
電子契約の技術は進んでおり、操作性も簡便であり、セキュリティも高いため、デメリットに挙げたものについては、大きな障壁になるとはいえません。とはいえ、相手あっての契約です。契約当事者双方に不安を残したまま電子契約に踏み切るのは避けましょう。不動産会社を通じて電子契約についての説明を行ってもらい、契約当事者双方が納得したうえで、電子契約を締結するのが望ましいです。
電子契約の流れ

①重要事項説明
契約当事者が、宅地建物取引士による電子署名済の電子ファイルを受領および確認した後、IT重説を実施します。
②電子契約
電子契約の注意点

法務局のホームページにも、まだ電子契約での不動産売買を想定した対応についての明確な方針が発表されていないのが実情です。
不動産登記の手続きは、不動産の売買契約書面と印鑑証明書を添付して申請を行います。電子契約の場合、押印がそもそも不要であるため、印鑑証明書を添付しても契約の信頼性が担保できません。
そのため、電子契約での不動産売買契約締結の際には、不動産登記まで視野に入れて、不動産登記申請の依頼をする司法書士に、事前にどのような対応が必要なのかを確認してもらうようにしておきましょう。
まとめ

最近では、複数の不動産会社に一括して査定依頼ができるサービスも増えています。そのようなサービスを活用して信頼できるパートナー探しをするところから、不動産売却の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
売買当事者にメリットが大きい「電子契約」。
上手に役立てるために注意点はしっかりおさえましょう!

監修キムラ ミキ
【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー
日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。
大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。
その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。
電子契約には、不動産会社のみならず、契約当事者にとっても契約に要する時間と手間を省くことができるメリットがあります。デメリットについても確認したうえで、電子契約の利用を検討してみるとよいでしょう。
キムラ ミキ