不動産取引も電子契約が可能!手続きの流れとメリット・デメリット

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この記事の監修者

秋津 智幸
秋津 智幸

公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士

不動産取引も電子契約が可能!手続きの流れとメリット・デメリット

不動産取引における電子契約に関心がある方に向けて、概要とメリット・デメリット、電子契約の注意点についてご説明します。

この記事のポイント
  • 電子契約は契約締結までの時間と手間が軽減できる一方、セキュリティ体制によってはデータの改ざんや流出などが生じる可能性も。
  • 電子契約でも重要事項説明の実施はマスト。不明な点があれば積極的に担当者に確認するようにしましょう。
  • 書面による契約か電子契約か?まずは所有している不動産の価格査定を行い、売却戦略を考えていくことが先決です。

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目次

不動産取引における電子契約とは

不動産の売却をする場合、一般的には不動産会社に仲介を依頼し、買主が見つかれば、買主と売買契約を締結します。その際、宅地建物取引士が対面で重要事項説明と契約説明を行った後、 署名押印をした書面(紙)を交付して契約締結するというのが従来からの不動産売買の契約方法です。

書面(紙)による売買契約の締結は、売主と買主、そして仲介する不動産会社が一堂に会することができれば、スムーズに行えます。しかし、契約当事者が遠方にいたり、多忙であったりすると、その日程調整を行うのも難しい場合があります。そのような場合には、郵送などで書類をやり取りをするという手間も必要となります。

とくに、郵送の場合でも買主に対して宅地建物取引士が対面のうえ免許証を提示して重要事項説明を行う必要があり、契約行為をすべて郵送で行うことはきませんでした。 また、郵送のやり取りには1~2週間時間を要することもあり、そのタイムラグの中で、買主の意向が変わってしまえば、契約不成立になってしまう可能性もあります。

2021年5月12日に国会で成立したデジタル改革関連法により、不動産取引についてのルールを定めている宅地建物取引業法が改正され、2022年5月18日に施行されました。

この改正により、不動産取引における重要事項説明書(35条書面)や契約書(37条書面)の押印が不要となっただけでなく、説明する宅地建物取引士の免許証の提示、重要事項説明や契約説明を、電子機器を用いてリモートで行うことができるようになり、 不動産の賃貸、売買ともに「電子契約」が可能となりました。

不動産の売買契約が「電子契約」も可能となったことで、先ほど触れた日程調整や郵送でのやり取りといった手間を省けたり、契約不成立になる危険性を回避できたりする選択肢も選べるようになり、不動産売却をしたいと考える方で日程の調整などが難しい方にとってはメリットの大きい改正であったと言えます。

賃貸借契約だけでなく売買契約も可能に

不動産の売買取引に先駆けて、2019年10月から賃貸取引について電磁的方法による提供に係る社会実験が開始されていました。

売買取引については、2021年3月から電磁的方法による提供に係る社会実験を行い、2022年5月18日に重要事項説明書等の電磁的方法による提供を可能とする宅建業法の関連規定の改正を含む「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が施行され、同日から不動産の賃貸借契及び売買契約も、国土交通省が示す遵守事項を踏まえて電子契約が可能になりました。

これにより「媒介契約書」、「指定流通機構(レインズ)への登録を証する書面」、「重要事項説明書」、「売買契約書」が電子ファイルでの取り扱いが可能になりました。

電子契約については、国土交通省が2022年4月に公表した「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」に示されたIT環境や重要事項説明書など書面の提供方法、説明方法によって行うのが一般的です。

秋津 智幸
秋津 智幸

登記申請もオンラインでできる!

不動産の売買を完了させるには、所有権移転登記が必要ですが、登記申請もオンラインでの申請が可能です。しかし、実際のところ、申請の準備や申請そのものが煩雑で一般の人が申請を行うのは簡単ではありません。

たとえば、申請には電子署名と電子証明書の発行が必要で(申請が個人の場合はマイナンバーカードを電子証明書の代わりとできますが、カードリーダーが必要になります。)、さらに申請に必要な書類の準備や申請画面で案内される専門用語や書類の名称なども難しく、一般の人が申請するにはかなりハードルが高いのが実態です。

したがって、登記申請はオンライン申請が可能であっても専門家である司法書士に任せるのが一般的です。

書面契約と電子契約の違い

書面(紙)による契約と電子契約には以下のような違いがあります。
項目書面による契約電子契約
形式紙の書面電子ファイル(PDFなど)
説明及び免許書の提示対面で行う所定のIT環境内で行う
署名・押印直筆署名と押印
※押印は無くてもよい
電子署名やタイムスタンプ
押印所定の収入印紙が必要印紙不要
書類などの管理紙によりファイリングサーバーなど電子ファイルで保管

形式

従来の書面による契約では紙により作成された契約書などを用いて契約しますが、電子契約では電磁的方法(PDFなどの電子データ)を用います。

説明及び免許証の提示

不動産の売買契約では、契約前に宅地建物取引士が免許証を提示して重要事項説明などを行う必要があります。書面による契約では説明者と買主が対面にて免許証提示して重要事項説明を行います。

電子契約(この部分はIT重説と呼ばれる)では、所定のIT環境下で提示した免許証の確認が取れ、説明を聞き取ることのできるようにすることとなっています。

署名・押印

書面(紙)による契約では、宅地建物取引業法の改正により、契約書等に押印は不要になりましたが、署名は必要になります。一方、電子契約では、契約書類の存在と信頼性の担保のために、電子署名とタイムスタンプを用います。※電子署名とタイムスタンプについては、後段でご説明しています。

印紙

書面(紙)のよる契約の場合、不動産の売買契約書は課税文書の作成にあたり、契約金額(売買価格)に応じた収入印紙の添付・消印 が必要になります。電子契約では、メールなどで交付したPDFの契約書や電子契約書は「文書の作成」にはあたらないため、印紙税は課税されず、印紙が不要となります。

書類などの管理

書面(紙)による場合、書類を紛失する可能性もあり、また紙として保管すると保管場所の確保が必要で、セキュリティ面に不安もあります。

一方、電子契約は電子書面により契約するため、重要事項説明書や売買契約書など書類は、電子契約時に電子ファイルとしてサーバーに保管され、紛失の可能性はほぼなく、自身で保管する場合も場所を取らず、パスワードなどでセキュリティを施すことも容易になります。

実際に電子契約で売買契約を行うにあったては、重要事項説明などの説明を受ける当事者(買主)から電子契約で契約を行うことについて承諾を得なければなりません。承諾が得られない場合は、従来の書面(紙)を交付し、対面で行う契約となります。

秋津 智幸
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不動産売却における電子契約の流れ

電子契約を実施する際の流れをご説明します。

1. IT重説

電子契約であっても、契約の前に重要事項説明を買主に行う必要があります。重要事項説明もITを活用した「IT重説」が可能になっています。IT重説を行う場合は、重要事項説明書の電子ファイルを作成し、事前に契約当事者に送付します。

契約当事者が、電子ファイルを受領および確認した後、IT重説を実施しますが、重要事項説明時には、オンライン上の画面で宅地建物取引士の免許証を契約当事者に提示した後に 行います。

2. 重要事項説明書の電子交付

IT重説後は重要事項説明書を電子交付し、電子署名を行います。

3. 電子売買契約

重要事項説明を終えた後、あらかじめ作成および契約当事者に送付しておいた売買契約書の電子ファイルを使用して契約説明 を行います。契約説明後、質疑応答などを行ったのちに、契約当事者が電子署名を行い、電子契約での売買契約が締結されます。

電子署名とは

電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)によると、電子署名とは「電磁的記録が本人の意思により作成されたと示す目的」、「電磁的記録が改変されることなく作成されたものと確認できるもの」の2点を満たすものと定義されています。電子署名の認証業務は、第三者である認証事業者が行います。

タイムスタンプとは

電子契約の契約書に当たる電子ファイルの作成および編集が行われた日時を記録する仕組みのことをタイムスタンプと言います。

電子契約のメリット

電子契約のメリットは、売主や買主に限らず、不動産会社側のメリットも含まれます。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

【メリット①】収入印紙不要など、契約コストが削減できる

書面(紙)での契約の場合、契約書などを作成するために紙代、コピー代などが必要になります。そのほか、郵送でやり取りする場合には、封筒代や郵送代もかかります。電子契約の場合、インターネット上にある電子ファイルを介して契約締結を行うため、それらの費用は不要となります。

また、電子契約の場合、印紙税もかからないため、書面(紙)での契約と比べてコスト削減を図ることができます。

【メリット②】遠方に住んでいる・多忙な人でもすぐに契約できる

電子契約は、インターネット上の電子ファイルを介して契約締結をします。その電子ファイルの信用性は電子署名とタイムスタンプによって担保されます。そのため、日程調整を行って一堂に会する必要もありませんし、郵送で日数をかけてやり取りする必要もありません。

【メリット③】契約者が複数人でもスムーズに契約できる

インターネットを介して遠隔で契約することができるため、売主や買主に共有者がいる場合など契約当事者が複数人いても一堂に会する必要がなく、契約の場所は問わないことから契約日時の設定がしやすくなります。

また、契約時に交付する書面も一度書面を電子化してしまえば、紙の書面のように同じものを複数用意しなくてもよく、さらに、押印も不要で署名も簡単なことから契約がスムーズに行えます。

【メリット④】いつでも書類を閲覧でき紛失の心配がない

電子契約は、重要事項説明書や売買契約書などの書面は電子データ化された書面を使用し、電子契約アプリケーション内で署名して契約を行います。

その電子契約で使用される電子署名アプリケーションは、改ざんを防止するため、電子署名後の書面データは自動的に外部のサーバーに保存されるようになっているため、保存された書面データはいつでも閲覧が可能で、紙に出力することも可能です。そのため、書面データは紛失する心配がありません。

電子契約のデメリットと注意点

便利な電子契約にも、デメリットはあります。主なデメリットとしては、「関係者間での同意の必要性」と「セキュリティ面の懸念」の2点が挙げられます。それぞれの内容についてご説明します。

【デメリット①】売主と買主双方の同意が必要

電子契約を行うには、売主、買主、仲介する不動産会社の3者の承諾が必要になります。つまり、関係者のうち1者だけが電子契約を希望しても電子契約での契約締結はできません。

当事者全員が電子契約に対応でき、かつ相手方も電子契約での契約締結を承諾するという条件が必要になります。電子契約にかかる操作は、さほど難しいものではありませんがPC操作が苦手な方や電子契約に必要な機器が手元にないという方にとっては、電子契約への同意が得られない可能性があります。

【デメリット②】電子媒体が必要

電子契約を行うには、契約に可能なIT環境が必要になります。電子媒体とは、データを電磁的な作用で記録・読み出しをする記憶媒体の総称をいいますが、電子契約で使用するアプリケーションではインターネットを経由して外部のサーバー(データストレージ)を使用して電子ファイルの記録・読み出しを行うため、インターネット環境が必須となります。

また、説明を行うため、インターネットに接続でき、音声通話と画面表示が可能なパソコンやタブレット端末などの機器が必要になります。

【デメリット③】セキュリティ面の強化が必要

電子契約の重要事項説明書や売買契約書は電子ファイルとしてインターネットを経由して外部サーバー(データストレージ)上に保存されます。サイバー攻撃やウイルス被害を受けた時に、電子契約サービスを提供している事業者のセキュリティ体制によってはデータの改ざんや紛失、流出などが生じてしまう可能性がゼロではありません。

また、電子契約で締結された電子ファイルをそのままデータで保管しておく際には、インターネットに接続しているPCとは別の媒体への保存をしておくようにしましょう。

まとめ

始まったばかりの不動産売買における電子契約。契約当事者にとってメリットがあるものの、デメリットや整備途上の点があり、普及はこれからというのも実情です。また、不動産の取引では、高額な取引であるためやはり実際に当事者に会いたいといった感情や物件の現地確認のように完全に電子化できない要素もあります。

こうした点を踏まえれば、当面は書面(紙)による契約が難しい場面で電子契約が活用されていくものと思われます。ただ、電子契約が可能になり、対面や押印といったこれまで必須だった手続きが不要にできることから、売買契約はしやすくなったと言えます。

不動産の売買契約はしやすくなりましたが、所有している不動産の売却を検討するなら、価格査定を行って所有する不動産の価値を知ることが第一歩です。

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売買当事者にメリットが大きい「電子契約」
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秋津 智幸
秋津 智幸

公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。

神奈川県住宅供給公社を経て、不動産仲介業者に従事した後、2011年に個人事務所として不動産サポートオフィスを開設。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム、記事等の執筆・監修にも取り組んでいる。

主な著書に「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)などがある。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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