- 電子契約は契約締結までの時間と手間が軽減できる一方、セキュリティ体制によってはデータの改ざんや流出などが生じる可能性も。
- 電子契約でも重要事項説明の実施はマスト。不明な点があれば積極的に担当者に確認するようにしましょう。
- 書面による契約か電子契約か?まずは所有している不動産の価格査定を行い、売却戦略を考えていくことが先決です。
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目次
不動産取引における電子契約とは
書面(紙)による売買契約の締結は、売主と買主、そして仲介する不動産会社が一堂に会することができれば、スムーズに行えます。しかし、契約当事者が遠方にいたり、多忙であったりすると、その日程調整を行うのも難しい場合があります。そのような場合には、郵送などで書類をやり取りをするという手間も必要となります。
とくに、郵送の場合でも買主に対して宅地建物取引士が対面のうえ免許証を提示して重要事項説明を行う必要があり、契約行為をすべて郵送で行うことはきませんでした。 また、郵送のやり取りには1~2週間時間を要することもあり、そのタイムラグの中で、買主の意向が変わってしまえば、契約不成立になってしまう可能性もあります。
2021年5月12日に国会で成立したデジタル改革関連法により、不動産取引についてのルールを定めている宅地建物取引業法が改正され、2022年5月18日に施行されました。
この改正により、不動産取引における重要事項説明書(35条書面)や契約書(37条書面)の押印が不要となっただけでなく、説明する宅地建物取引士の免許証の提示、重要事項説明や契約説明を、電子機器を用いてリモートで行うことができるようになり、 不動産の賃貸、売買ともに「電子契約」が可能となりました。
不動産の売買契約が「電子契約」も可能となったことで、先ほど触れた日程調整や郵送でのやり取りといった手間を省けたり、契約不成立になる危険性を回避できたりする選択肢も選べるようになり、不動産売却をしたいと考える方で日程の調整などが難しい方にとってはメリットの大きい改正であったと言えます。
賃貸借契約だけでなく売買契約も可能に
売買取引については、2021年3月から電磁的方法による提供に係る社会実験を行い、2022年5月18日に重要事項説明書等の電磁的方法による提供を可能とする宅建業法の関連規定の改正を含む「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が施行され、同日から不動産の賃貸借契及び売買契約も、国土交通省が示す遵守事項を踏まえて電子契約が可能になりました。
これにより「媒介契約書」、「指定流通機構(レインズ)への登録を証する書面」、「重要事項説明書」、「売買契約書」が電子ファイルでの取り扱いが可能になりました。
登記申請もオンラインでできる!
たとえば、申請には電子署名と電子証明書の発行が必要で(申請が個人の場合はマイナンバーカードを電子証明書の代わりとできますが、カードリーダーが必要になります。)、さらに申請に必要な書類の準備や申請画面で案内される専門用語や書類の名称なども難しく、一般の人が申請するにはかなりハードルが高いのが実態です。
したがって、登記申請はオンライン申請が可能であっても専門家である司法書士に任せるのが一般的です。
書面契約と電子契約の違い
| 項目 | 書面による契約 | 電子契約 |
|---|---|---|
| 形式 | 紙の書面 | 電子ファイル(PDFなど) |
| 説明及び免許書の提示 | 対面で行う | 所定のIT環境内で行う |
| 署名・押印 | 直筆署名と押印 ※押印は無くてもよい | 電子署名やタイムスタンプ |
| 押印 | 所定の収入印紙が必要 | 印紙不要 |
| 書類などの管理 | 紙によりファイリング | サーバーなど電子ファイルで保管 |
形式
説明及び免許証の提示
電子契約(この部分はIT重説と呼ばれる)では、所定のIT環境下で提示した免許証の確認が取れ、説明を聞き取ることのできるようにすることとなっています。
署名・押印
印紙
書類などの管理
一方、電子契約は電子書面により契約するため、重要事項説明書や売買契約書など書類は、電子契約時に電子ファイルとしてサーバーに保管され、紛失の可能性はほぼなく、自身で保管する場合も場所を取らず、パスワードなどでセキュリティを施すことも容易になります。
実際に電子契約で売買契約を行うにあったては、重要事項説明などの説明を受ける当事者(買主)から電子契約で契約を行うことについて承諾を得なければなりません。承諾が得られない場合は、従来の書面(紙)を交付し、対面で行う契約となります。
不動産売却における電子契約の流れ
1. IT重説
契約当事者が、電子ファイルを受領および確認した後、IT重説を実施しますが、重要事項説明時には、オンライン上の画面で宅地建物取引士の免許証を契約当事者に提示した後に 行います。
2. 重要事項説明書の電子交付
3. 電子売買契約
電子署名とは

タイムスタンプとは

電子契約のメリット
【メリット①】収入印紙不要など、契約コストが削減できる
また、電子契約の場合、印紙税もかからないため、書面(紙)での契約と比べてコスト削減を図ることができます。
【メリット②】遠方に住んでいる・多忙な人でもすぐに契約できる
【メリット③】契約者が複数人でもスムーズに契約できる
また、契約時に交付する書面も一度書面を電子化してしまえば、紙の書面のように同じものを複数用意しなくてもよく、さらに、押印も不要で署名も簡単なことから契約がスムーズに行えます。
【メリット④】いつでも書類を閲覧でき紛失の心配がない
その電子契約で使用される電子署名アプリケーションは、改ざんを防止するため、電子署名後の書面データは自動的に外部のサーバーに保存されるようになっているため、保存された書面データはいつでも閲覧が可能で、紙に出力することも可能です。そのため、書面データは紛失する心配がありません。
電子契約のデメリットと注意点
【デメリット①】売主と買主双方の同意が必要
当事者全員が電子契約に対応でき、かつ相手方も電子契約での契約締結を承諾するという条件が必要になります。電子契約にかかる操作は、さほど難しいものではありませんがPC操作が苦手な方や電子契約に必要な機器が手元にないという方にとっては、電子契約への同意が得られない可能性があります。
【デメリット②】電子媒体が必要
また、説明を行うため、インターネットに接続でき、音声通話と画面表示が可能なパソコンやタブレット端末などの機器が必要になります。
【デメリット③】セキュリティ面の強化が必要
また、電子契約で締結された電子ファイルをそのままデータで保管しておく際には、インターネットに接続しているPCとは別の媒体への保存をしておくようにしましょう。
まとめ
こうした点を踏まえれば、当面は書面(紙)による契約が難しい場面で電子契約が活用されていくものと思われます。ただ、電子契約が可能になり、対面や押印といったこれまで必須だった手続きが不要にできることから、売買契約はしやすくなったと言えます。
不動産の売買契約はしやすくなりましたが、所有している不動産の売却を検討するなら、価格査定を行って所有する不動産の価値を知ることが第一歩です。
最近では、複数の不動産会社に一括して査定依頼ができるサービスも増えています。そのようなサービスを活用して信頼できるパートナー探しをするところから、不動産売却の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
売買当事者にメリットが大きい「電子契約」。
上手に役立てるために注意点はしっかりおさえましょう!
家の売却を検討中のあなたへ
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この記事の監修者
公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。
神奈川県住宅供給公社を経て、不動産仲介業者に従事した後、2011年に個人事務所として不動産サポートオフィスを開設。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム、記事等の執筆・監修にも取り組んでいる。
主な著書に「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)などがある。





電子契約については、国土交通省が2022年4月に公表した「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」に示されたIT環境や重要事項説明書など書面の提供方法、説明方法によって行うのが一般的です。