媒介契約書の基本と確認ポイント7選|不動産売却で後悔しないための知識

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この記事の監修者

竹内 英二
竹内 英二

不動産鑑定士/中小企業診断士/宅地建物取引士/公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)

媒介契約書の基本と確認ポイント7選|不動産売却で後悔しないための知識

不動産の売却を予定している人向けに、不動産会社と締結する媒介契約書について見方や注意点を中立的な立場で解説します

この記事のポイント
  • 不動産売却時に仲介会社に依頼する際、締結する書面を媒介契約書といいます。媒介契約書には取り引きで重要な事項が記載されています。
  • 媒介契約書に記載のある、契約の種類(一般・専任・専属専任)や依頼者としての義務、違約金の有無、媒介報酬のルールはとくに確認すべき事項です。
  • 媒介契約書の内容を十分に理解しないと、不利な条件での取り引きやトラブルに発展する可能性があります。不明点は不動産会社に確認しましょう。

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目次

媒介契約書とは

媒介(ばいかい)とは、仲介の法律用語です。不動産会社が売買や交換、賃借に関して売主(または貸主)と買主(または借主)の間に立って、売買契約(または賃貸借契約)の成立に向けて尽力する行為のことを指します。

不動産を売却する際は、不動産会社に仲介を依頼することになりますが、そのサービスを利用するために締結するのが媒介契約書です。本格的な売却活動を始める前に締結します。

なお、買主と締結する「売買契約書」は印紙を貼らなければならない課税文書ですが、媒介契約書に印紙は不要です。勘違いしやすい部分なので注意しましょう。

媒介契約書のひな型

媒介契約書は、国土交通省が標準的なひな形を提供しています。以下は、標準媒介契約約款のうち「専任媒介契約書」の一例です。
実際には不動産会社が所属している宅地建物取引業協会や全日本不動産協会のひな形が使われることも多く、国土交通省のひな型とは完全には一致していないこともあります。

そのため、最終的には、自分が実際に締結する媒介契約書をよく見て内容を確認することが必要です。

媒介契約書で確認すべきポイント7つ

媒介契約書は、何が書いてあるかを知ることで適切な見方を身に着けることができます。この章では、媒介契約書で見るべき主なポイントについて解説します。

①媒介契約の種類

媒介契約には、「一般媒介契約」、「専任媒介契約」、「専属専任媒介契約」の3種類があります。

一般媒介契約とは、複数の不動産会社に同時に仲介を依頼できる契約のことです。専任媒介契約と専属専任媒介契約は、1社の不動産会社にしか仲介を依頼できない契約のことを指します。

専任媒介契約と専属専任媒介契約の主な違いは、専任媒介契約は自己発見取引ができるのに対し、専属専任媒介契約は自己発見取引ができないという点です。自己発見取引とは、売主がみずから買主を見つけることを指します。
専任媒介契約や専属専任媒介契約を選択すれば、契約期間中に売主は他社に仲介を依頼できなくなります。また、専属専任媒介契約を選択すれば、売主が買主を見つけることもできないため注意しましょう。

②媒介契約書の有効期間

媒介契約書には、有効期間(契約期間のこと)が定められています。

専任媒介契約と専属専任媒介契約は、有効期間が法律で3か月を超えてはいけないと定められています。(仮に3か月以上の契約期間が定められていた場合は3か月となります。)

通常、不動産を売るのには3か月程度の時間がかかるため、媒介契約の有効期間も最長の3か月と定められていることが一般的です。

一方で、一般媒介契約は法律上の有効期間の定めはありません。そのため、一般媒介契約の有効期間は何か月でもよいですが、通常は専任媒介契約や専属専任媒介契約と同様に3か月で定められています。有効期間を過ぎた場合は原則として媒介契約は終了しますが、依頼者が申し出れば更新をすることは可能です。

媒介契約書の有効期間は、専任媒介契約や専属専任媒介契約では基本的に不動産会社を切り替えられない期限であると認識しておく必要があります。

なお、一般媒介契約は元々重ねて仲介を依頼できるため、契約期間中に他社を追加して依頼することは可能です。

③レインズへの登録義務と報告義務(専任媒介と専属専任媒介)

専任媒介と専属専任媒介には、レインズへの登録義務と報告義務があります。

レインズ(REINS:Real Estate Information Network System)とは、全国の不動産会社が見ることができる物件情報サイトのことです。媒介契約書では「指定流通機構」と表記されています。レインズに物件が登録されると、全国のほかの不動産会社も買主をあっせんすることができます。

専任媒介や専属専任媒介は一社専属の契約であることから、売主が不利益を受けないためにもレインズのような是正システムがあるのです。売主の不利益とは、たとえば仲介を依頼した不動産会社が手抜きをして一向に売却活動を進めないといったことが挙げられます。

レインズへの登録義務と報告義務は、下表のような期限の制限が存在します。
媒介契約の種類登録義務報告義務
専任媒介7日以内2週間に1回以上
専属専任媒介5日以内1週間に1回以上
一般媒介契約は複数の不動産会社に依頼できます。売却活動を不動産会社がサボり売主に不利益が生じても、他社に依頼をするなど自力で是正することができます。

そのため、一般媒介契約には不動産会社にレインズへの登録義務と報告義務は課されていません。

④明示型か非明示型(一般媒介)

一般媒介契約は、明示型と非明示型の2種類があります。
明示型…ほかに依頼する不動産会社を明示する方式
非明示型…ほかに依頼する不動産会社を明示しなくてよい方式
たとえば、明示型の場合はA社とB社に依頼する場合、A社にはB社にも依頼する、B社にはA社にも依頼することを明示しなければなりません。非明示型はいちいち明示をしなくてよいことから、売却期間中に自由に他社への依頼も追加することができます。

非明示型のほうが自由度は高いため、後から他社を追加する可能性が高い場合には、非明示型を選択することをおすすめします。

一般媒介はひな形が明示型となっているため、依頼者が何も言わないと明示型となってしまうことが多いです。非明示型にしたい場合には、媒介契約締結前に不動産会社にその旨を伝えることが適切です。

竹内 英二
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⑤特別依頼にかかる費用

売主は、不動産会社に対して特別な依頼をすると仲介手数料以外に別途費用が生じます。媒介契約書では、「特別依頼にかかる費用」という条文で規定されていることが一般的です。

特別依頼にかかる費用とは、具体的には遠隔地への出張旅費やテレビコマーシャルなどの過大な広告費が想定されています。なお、不動産会社が一般的に行っているインターネット広告やチラシの費用は、特別依頼にかかる費用には該当しません。

⑥違約金の発生

依頼者は媒介契約期間中に、義務に反することを行うと違約金が請求されます。売主が違約金を請求されるケースとしては、以下のような義務違反が挙げられます。
【違約金が発生するケース】
1.専任媒介や専属専任媒介であるのにも関わらず他社へ依頼した場合
2.専属専任媒介であるのにも関わらず自己発見取引をした場合
3.一般媒介の明示型であるにも関わらず明示していない他社に依頼した場合
4.売主の一方的な都合で有効期間内に契約を解除した場合
上記の1と2を行ってしまった場合には、不動産会社が本来受領できたはずの仲介手数料(媒介報酬)が違約金として請求される可能性があります。3と4を行ってしまった場合には、不動産会社が今まで費やした費用を請求される可能性があります。(費用償還の請求)

費用償還の請求で不動産会社から求められる可能性のある費用は、以下のとおりです。
現地調査費用写真代や交通費
権利関係調査費用謄本や公図の取得費用
販売活動費用チラシなどの広告費や現地案内のための交通費
契約交渉費用交渉のやり取りで生じた交通費

専任媒介や専属専任媒介で不動産会社を切り替えたい場合、一方的に契約解除をすると違約金が発生する可能性があります。そのため、切り替えたい場合は、3か月の有効期間を満了したタイミングで行うことが適切です。

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⑦建物状況調査のあっせんの有無

建物状況調査(インスペクション)とは、既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士による簡易な建物調査のことです。

建物状況調査を行うか否かは売主の自由であり、売主が建物状況調査を実施したいと申し出れば、不動産会社はインスペクター(建物状況調査を行う人のこと)を紹介してくれます。建物状況調査のあっせんをした場合、媒介契約の締結時に不動産会社はその旨を記載した書面を依頼者に交付する義務があります。

なお、建物状況調査には、別途インスペクターに対して費用が発生します。インスペクションの費用相場は5~6万円程度です。

媒介報酬の基礎知識

媒介報酬とは、不動産会社に支払う仲介手数料のことです。媒介契約書には、媒介報酬という名称で仲介手数料のことが規定されています。

媒介報酬の発生要件

不動産会社が媒介報酬を請求できるようになるには、以下の3つの条件を満たしていることが必要です。
1.依頼者と不動産会社との間で媒介契約が成立していること
2.媒介契約により不動産会社の媒介行為が存在すること
3.媒介行為により売買契約などが有効に成立すること
もっとも重要なのが「媒介行為により売買契約などが有効に成立すること」という点です。

つまり、媒介契約を締結しただけでは仲介手数料は発生せず、売買契約が成立しないと不動産会社は仲介手数料を請求できないということです。

媒介報酬の限度額

不動産会社が受領できる仲介手数料には上限額が規定されています。上限額は、取り引き額に応じて下表のような計算式で求められます。
取り引き額媒介報酬(別途消費税)
200万円以下取り引き額 × 5%
200万円超から400万円以下取り引き額 × 4% + 2万円
400万円超取り引き額 × 3% + 6万円

媒介報酬の支払いのタイミング

媒介報酬の支払いタイミングは、売買契約成立時に50%、引渡時に50%を支払うことが一般的です。

本来、不動産会社は売買契約成立時に媒介報酬を100%請求できますが、引渡まで売主が依頼する業務も多いため、商習慣で売買契約と引渡で50%ずつに分ける形となっています。

売買契約が解除された時の媒介報酬

もし売買契約が何らかの都合で解除された場合、不動産会社は媒介報酬を請求できるのでしょうか?
解除事由媒介報酬の請求の可否
ローン特約による解除請求できない
停止条件不成就による契約効力の不発生
不動産会社の責任による解除
手付解除請求できる
売買当事者の債務不履行による解除
合意解除
売買契約が解除された場合、表のように不動産会社が媒介報酬を請求できるケースとできないケースが存在します。

■ローン特約による解除
ローン特約とは、買主が住宅ローンの本審査に通らなかった時に売買契約を解除できる特約のことです。ローン特約による解除では、不動産会社は仲介手数料を請求できないことになっています。

■停止条件不成就による契約効力の不発生
売買に必要な条件が整わなかった時に売買契約が不成立になることです。不動産会社が原因で売買契約が解除されてしまった場合は、当然に仲介手数料は請求できません。

たとえば、農地の売却で売買契約後に農地法の許可が下りなかった時などが該当します。停止条件不成就による契約効力の不発生のケースも、仲介手数料を請求できないことになります。

■手付解除
売主が手付金を倍返し、買主が手付金を放棄することで一方的に売買契約を解除することです。売主または買主の一方的な都合であり、不動産会社に責任はないことから仲介手数料を請求できます。

■売買当事者の債務不履行による解除
たとえば、買主が代金を支払わないケースや、売主と買主が合意して解除する場合も、不動産会社に責任はないため仲介手数料の請求が可能です。

まとめ

媒介契約書は、不動産売却のプロセスにおいて最初に締結する重要な契約文書です。不動産会社の選定と密接に関わっており、売却の成否を左右する鍵ともいえる存在です。

とくに、媒介契約書には契約の種類(一般・専任・専属専任)や依頼者としての義務、違約金の有無、媒介報酬のルールなど、取り引きに直結する重要な事項が記載されています。これらを十分に理解せずに契約してしまうと、不利な条件で取り引きを進めることになったり、思わぬトラブルに発展したりする可能性があります。

そのため、契約を結ぶ前には媒介契約書の内容をていねいに確認し、少しでも不明点があれば、不動産会社に遠慮せず質問することが大切です。媒介契約書としっかり向き合い、納得したうえで契約を結ぶことが安心して売却を進めるための第一歩となります。

媒介契約書に不明点があっても放置は禁物!
気軽に相談できる不動産会社を見つけることが、売却成功の秘訣です。

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不動産鑑定士/中小企業診断士/宅地建物取引士/公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。

不動産鑑定士と中小企業診断士の資格を活かした不動産鑑定のほか、専門性の高い不動産Webライターとして活躍する。

各種著名メディアにおいて、相続関連や空き家の処分方法に関する取材対応の経験あり。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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