借地権付き建物の売却方法5つ|相場価格の計算方法と成功のコツ

2024.06.19更新

この記事の監修者

秋津 智幸
秋津 智幸

公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士

借地権付き建物の売却方法5つ|相場価格の計算方法と成功のコツ

借地権付き建物の売却を検討している方に向けて、借地権の基礎知識や売却の流れ、注意しておきたいポイントについてご紹介します。

この記事のポイント
  • 借地権を売却するならまずは地主に相談!借地権譲渡の承諾料が必要になるケースもあります。
  • 建物価格と借地権価格を合わせた価格が借地権付き建物を売却する際の目安です。
  • 借地権の売却は借地権独特の知識や取引経験が必要。経験豊富な不動産会社に依頼することが売却成功の秘訣!

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目次

借地権の基礎知識

借地権とは、建物の所有を目的とする土地の賃借権や地上権を指します。

地上権と賃借権の違いについては、以下を参照ください。

地上権

他人の所有する土地を使う権利。地上権は、「物権」で、設定した土地所有者に登記の義務があります。 また、存続期間は30年以上となります。 「物権」であることから、当事者以外に対しても権利を主張することができます。 地主の承諾なく、リノベーションや建て替え、売却などが可能です。

賃借権

地主から土地を借りて、自己所有の建物を建てられる権利。借地権は、「債権」で契約当事者間のみで権利の主張ができます。 そのため、土地所有者(地主)の各種承諾が必要になります。 中古住宅に多いのはこちらです。売却や建て替え、リノベーションは可能ですが、地主の承諾が必要な場合があります。

地上権、賃借権ともに、所有権を移さず、土地を借りるだけでその土地の上に自分の建物を建てられる権利です。土地を借りる人を借地権者、土地を貸す人を借地権設定者(あるいは底地人)と呼び、借地権者は土地を借りる対価として、借地権設定者に地代を毎月支払います。
借地権には、以下のようにいくつかの種類があります。

普通借地権

普通借地権は、平成4年の改正により生まれた更新のない定期借地権に対し、更新のある借地権であることからこう呼ばれています。普通借地権の借地期間は一律30年で1回目の更新20年、2回目の更新10年で、いずれも当事者間でこれより長い期間を定めることは可能です。

更新に際して借地権設定者(底地人・地主)が更新を拒絶する場合「正当事由」が必要とされますが、旧借地権ではその取り扱いについて争いが絶えなかったことから、新借地権では「正当事由」をある程度まで明確にして、底地人のその土地を使用する必要性かつ建物が著しく老朽化しているなどの事情について正当事由がある場合には、立ち退き料などの給付を行うことで更新を拒絶できるものとしました。

また、普通借地権では、正当事由があり、更新拒絶によって借地契約が更新しないで終了した際、その時点で建物が残っている場合には、借地権設定者(地主)に対して建物の買取を請求できます。

立ち退き料の支払いだけでは「更新拒絶」できません。 あくまで土地利用に関する正当事由が必要で、立ち退き料の支払いは正当事由があった上で、給付すべきものです。いわば、更新拒絶において、立ち退き料の支払いは必要条件であって、十分条件ではありません。

秋津 智幸
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定期借地権

新借地権のうちのもう1つ、定期借地権には「一般定期借地権」と「事業用定期借地権」、「建物譲渡特約付き借地権」の3つがあります。いずれも契約期間満了に伴って借地契約が終了し、更新されないのが特徴で、借地権者は建物を取り壊し、更地にして借地権設定者(地主)に返還しなければなりません。

一般定期借地権では借地期間50年以上、事業用定期借地権は事業用の建物所有を目的とし、10年以上50年未満、建物譲渡特約付き借地権は借地権設定者(地主)が建物を買い取ることを前提に、30年以上となるよう契約を結ぶ必要があります。

借地権・借地権付き建物を売却する5つの方法

借地権および借地権付き建物を売却する方法はいくつかありますが、いずれも借地権設定者(底地人・地主)の許可が必要になります。

1.建物と一緒に借地権を第三者に売却する

借地権付き建物として借地権と建物を一緒に第三者に売却します。借地権付き建物の買主は、借地権設定者(地主)に対して地代を払い、借地権付きの建物と一緒に所有する権利を得ます。

2.借地権設定者(地主)に建物を売却する

借地権は契約の存続期間が長期にわたります。そのため、借地権設定者(底地人・地主)としては土地の権利(借地権)を取り戻したいと考えている場合もあります。

その場合、借地権設定者(底地人・地主)に建物を買い取ってもらうという方法もあります。借地権設定者(底地人・地主)が建物を買い取れば、借地権は消滅し、土地の権利は完全な所有権に回復します。

3.借地権設定者(地主)から底地権を買い取ってから売却する

借地権設定者(底地人・地主)が借地権を設定している土地を手放したいと考えている場合もあります。

そのように考える借地権設定者(底地人・地主)から底地権を買い取って借地権から所有権にしたうえで売却するという方法もあります。その土地は、通常の所有権を売買するということになります。

4.業者に買い取ってもらう

一般の買主では、やはり所有権を望む人が多く、また借地権は購入時に融資がやや利用しにくいため、借地権付き建物がなかなか売却できないことがあります。

そこで不動産の権利を熟知している不動産業者に買い取ってもらうという選択肢が有効になります。なかには借地権付き建物や底地権の取り扱いを専門とする不動産業者もあります。

5.等価交換をして売却する

等価交換では、借地人の借地権付き建物と借地権設定者(底地人・地主)の持つ底地権の一部を、価格や価値が同等なだけ交換することで、交換後にそれぞれが持つ土地と建物の権利が所有権となります。

それから借地人と借地権設定者(底地人・地主)で同時に売却します。いずれも所有権となるため買手がつきやすくなります。

借地権の売却の流れ

借地権や借地権付きの建物を売却する流れについて、ご説明します。

1. 借地権設定(地主)に相談

借地権設定(底地人・地主)に売却について相談し、承諾を得ます。この際、借地権譲渡の承諾料が必要になる場合もあります。目安は、借家権価格の10%といわれますが、ケースごとに異なります。

2. 不動産会社と媒介契約の締結

査定依頼を行い、信頼できる不動産会社を選定し、媒介契約を締結します。売り出し価格を決定し、借地権や借地権付きの建物の売り出しを開始します。

3. 購入検討者の内覧および申し込み

購入検討者から、内覧などを経て、申し込みを受けます。必要に応じて契約条件の交渉、確認が行われます。

4. 売買契約

契約条件が整った後、不動産会社との事前打ち合わせで重要事項説明書および契約書を作成します。買主が決まった後、不動産会社から買主に重要事項説明の実施を経て、売買契約を締結します。一般的にはこのとき手付金の授受が行われます。

5. 決済・引渡し

売主、買主ともに引渡しの準備が整ったら、日程を調整して決済(金銭の支払い・清算)と引き渡しを同時に行います。決済後、同日中に権利移転の登記も行うのが一般的です。

借地権の相場価格

借地権付き建物を実際に売却する際の借地権価格は、土地が所有権である土地建物の価格を求め、そこから構造や築年などを考慮した建物価格を差し引いて土地価格を求めます。

求めた所有権の土地価格に借地権割合を乗じて借地権の価格を求めます。先の建物価格と借地権価格を合わせた価格が借地権付き建物を売却する際の目安となります。

一般的には売却前に不動産会社に査定を依頼して借地権付き建物の価格を把握することが一般的です。なお、実際の取引では買主と価格交渉が行われることがあり、最終的な価格は交渉後の価格になります。

借地権の評価方法とは

借地権の評価額は、自用地(他人の権利が付着していない土地)価格に、借地権割合を乗じて求めます。借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています。
たとえば、図のような青い土地(地積200m2)があった場合、この土地の自用地価格(路線価)は200m2×360,000円=72,000,000円(補正率考慮なし)となります。

また、路線価の右隣に表示されている借地権割合を表す記号がCであるため、借地権割合は70%となります。よって借地権価格は、72,000,000円×70%=50,400,000円と計算されます。

なお、路線価図にないエリアの自用地価格は、固定資産税評価額に評価倍率表に記載のある倍率を乗じて算出します。

借地権付き建物の売却を成功させる3つのコツ

借地権付き建物の売却を成功させるために知っておくと得する3つのコツを共有します。

【コツ1】借地権付き建物のメリット・デメリットを把握する

借地権付き建物を売却する際に知っておきたいメリットとデメリットについてご説明します。

借地権のメリットは価格の安さ

借地権のメリットは、所有権と比べて取得する価格が安い点が大きなポイントです。たとえば、借地権割合が60%の地域であれば、土地の価格は所有権と比べて40%程度安く購入できるイメージです。

具体的に簡単な例を挙げると、建物代が3,000万円、土地代(所有権)3,000万円、計6,000万円の住宅があったとして、その物件が借地権だった場合、土地代が1,800万円程度になるので、総額は4,800万円程度になります。

また、土地を所有しないため、固定資産税や都市計画税といった納税負担もありません。とくに普通借地権は、土地を借りる人にとっては有利な権利です。

少なくとも普通借地契約では30年以上の存続期間を設ける必要がありますし、借地権設定者(底地人・地主)は、強制的に契約を終了させられません。

そのため、借地権者は、地代は発生しますが、長期にわたって安心して土地を利用できます。

借地権のデメリットは地代の発生と地主の承諾

借地権のデメリットは、土地を利用するために、毎月地代がかかる点がデメリットの一つです。ただし、固定資産税や都市計画税といった税金の支払いがないため、その分、地代がかかってもそれほど大きなデメリットとはならないかもしれません。

また、今回お話したように、借地権の譲渡をする時や、借地上の建物を建て替える時、借地権を転貸する時など、借地権設定者(底地人・地主)の承諾が必要になります。

一方、借地上の建物を賃貸したり、相続で借地権名義人が変更になるなど場合、借地権設定者(底地人・地主)の承諾は不要ですが、後々のトラブルを避けるためにもその旨を伝えておくことが大切です。

なお、借地権付きの建物を購入する際に、住宅ローンを活用する場合、建物にのみ抵当権を付ける際、底地の権利者である借地権設定者(地主)の承諾は不要です。

【コツ2】地主との関係を円満に保つ

借地権付きの建物を売却するためには、承諾が必要になるため、まず借地権設定者(底地人・地主)との日頃の付き合いを円滑にしておくことが重要です。

もし、借地権設定者(底地人・地主)との付き合いの中で、底地を売却したいという話があるようであれば、底地を買い取って土地を所有権にしてから売却することもできます。

付き合いを円満に保つことで、そうした機会が得られる可能性が高くなります。

秋津 智幸
秋津 智幸

【コツ3】実績のある不動産会社に依頼する

借地権付き建物の売却を検討する際には、借地権付きの建物の売却に実績のある不動産会社に媒介(仲介)を依頼しましょう。

借地権は、売却にあたって借地権独特の知識や取引経験が必要で、とくに借地権設定者(底地人・地主)の承諾が必要となりますので、交渉までお願いできる経験豊富な不動産会社に依頼することが売却成功の秘訣になるといえるでしょう。

よくある質問

借地権や借地権付きの建物の売却についてよくある質問について回答します。
借地権を相続する場合の注意点は
借地権や借地権付きの建物を相続する際、借地権設定者(底地人・地主)の承諾は不要です。ただ、その後、借地権や借地権付きの建物を利活用する際に、借地権設定者(底地人・地主)とのやり取りが必要になる可能性もありますので、ひと言相続の旨を伝えるために出向いておきましょう。

なお、相続による名義変更についての承諾料などは不要です。承諾料を求められたり、一方的な土地の返却を求められたりした場合には、弁護士など法律の専門家に相談しましょう。

詳しくは借地の相続について解説した記事をご参照ください。
地主が売却に承諾してくれない場合はどうするべき?
借地権設定者(底地人・地主)が売却(譲渡)に承諾してくれない場合には、裁判所が地主に代わって許可を与える「借地非訟」を起こす必要があります。この方法は、最終手段と考えて、不動産会社と協力しながら、粘り強く交渉を進めていきましょう。

ただし、借地権設定者(底地人・地主)に無断で売却(譲渡)した場合は、借地権設定者(底地人・地主)は借主に対して賃貸借(借地)契約を解除したうえで、土地の明渡しを求めることができます。
更新時期の借地権は売れない?
更新時期が迫っている借地権は、売却できないわけではありません。ただし、売却にはやや不利になると考えておきましょう。

なぜなら、更新時期が迫っている普通借地権付きの建物を購入した方は、住み始めてすぐに、更新時期を迎えて、更新料の支払いが必要になるため、購入検討者からその分の値引きなどを求められるからです。

売却についての承諾を受ける際に、借地権設定者(地主)に更新料に相当する額を支払って、借地権の期間延長についても相談されておくとよいでしょう。

ただし、借地権の種類が定期借地の場合は、残存年数が少なると売却が難しくなります。定期借地権は更新ができないため、期限を迎えると建物を取り壊し、更地にして返還しなければなりません。そのため、残存期間が短ければ短いほど買い手は付かなくなります。
借地権を売却した時の税金は?
借地権付き建物を売却した時の税金は、基本的に土地の権利が所有権の場合と同じです。売却時にかかる税金としては、印紙税や抵当権抹消登記する場合の登録免許税、仲介手数料にかかる消費税があります。

また売却して利益が出た場合には譲渡所得税が課税されます。いずれも金額によって税額が決まるため、土地の権利の種類は関係ありません。

まとめ

借地権付き建物は売却できます。スムーズに売却を進めていくためには、日頃から、借地権設定者(地主)との良好な関係構築を行っていくことが欠かせません。

さらに、売却に備えて、借地権や借地権付き建物の売却に実績のある不動産会社を探しておくことも大切です。借地権設定者(地主)との交渉においても、心強いパートナーとなってくれることでしょう。

少し複雑なルールがある借地権の売却。
不安な時は実績のある不動産会社に相談してみましょう!

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この記事の監修者

秋津 智幸
秋津 智幸

公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。

神奈川県住宅供給公社を経て、不動産仲介業者に従事した後、2011年に個人事務所として不動産サポートオフィスを開設。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム、記事等の執筆・監修にも取り組んでいる。

主な著書に「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)などがある。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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