不要な土地の相続放棄に必要な書類と注意点|親・兄弟・孫のケースごとに司法書士が解説

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この記事の監修者

太田 徹
太田 徹

司法書士

不要な土地の相続放棄に必要な書類と注意点|親・兄弟・孫のケースごとに司法書士が解説

不要な土地を相続した場合、相続放棄をすれば土地を引き継がずに済みます。相続放棄を行う場合の必要書類や注意点をケースごとに解説していきます。

この記事のポイント
  • 相続放棄は資産も負債も一切承継しない制度で、先順位が放棄すれば後順位に権利が移る仕組みです。
  • 必要書類は申述書・住民票除票(戸籍附票)・戸籍謄本で、続柄によって追加資料が異なります。
  • 提出先は被相続人住所地の家庭裁判所で、期限は原則3か月以内とされ、単純承認をすると放棄不可となります。

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目次

不要な土地を相続放棄したい!

土地を相続しても、相続放棄をすれば、不要な土地を相続せずに済みます。ただし、「不要な土地だけを相続しない」という選択性はありません。

相続放棄って何?

相続放棄とは、積極財産(資産)と消極財産(負債)のすべての引継を拒否し、初めから相続人とならなかった扱いになる制度です(民法939条)。
相続放棄は相続人ごとに行う手続きのため、相続人のうちのひとりが相続放棄を行っても、ほかの相続人は手続きを行わなければ、相続人のままです。また先順位法定相続人が相続放棄をすることで、その相続権は後順位の相続人へ移ります。

たとえば、被相続人の配偶者と子供が相続放棄を行った場合で、直系尊属(被相続人の父母、祖父母など)がすでに亡くなっている場合、相続権は兄弟姉妹に移ります。

なお相続放棄の件数は年々増加傾向にあり、2024年(令和6年度)は、全国で308,753件の相続放棄の申立てが受理されています。

相続放棄にも手続きが必要です。当事務所に相続のご相談に来られる方のなかにも、「この相続人は相続放棄する予定で・・・」とおっしゃる方がいるのですが、正式に相続放棄している訳ではなく、家庭裁判所での手続きを行わなければいけないことを知らない方が多いです。

太田 徹
太田 徹

不要な土地・不動産のみの相続放棄はできない

相続放棄を行うと相続関係から完全に離脱しますので、特定の資産だけを放棄することはできません。

相続放棄の法的効果はAll or Nothing(オール オア ナッシング)です。たとえば、不要な土地だけを放棄して、ほかの資産は相続するといった選択はできません。相続したくない土地で悩んでいる方は下記の記事もあわせてご覧ください。

その土地は本当にマイナスの遺産?
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それでも相続放棄をしたいなら。まずは書類準備をしよう 

相続放棄を行う場合には、戸籍などの必要書類を提出する必要があります。必要書類についてくわしく解説していきます。

相続放棄で必ず必要な書類3つ

相続放棄をする場合に必要になる書類は相続人によって変わってきますが、どのケースでも必要になる書類が3つあります。その書類を説明していきます。

①相続放棄の申述書

相続放棄の申述書は、申述人(相続放棄する人)の住所、氏名、被相続人との関係、被相続人の最後の住所、氏名、本籍、相続放棄の理由や財産の概略などを記載します。

書類自体は、裁判所ホームページから書式をダウンロードすることが出来ます。申述人は、押印をする必要がありますので、印鑑を準備しましょう。印鑑は、認印でも実印でもかまいません。

申述書の書き方がわからない方は、裁判所ホームページに記載例が公開されていますので、そちらを参考にするとよいでしょう。それでも不安な人は、司法書士や弁護士などの専門家に相談してみましょう。

②被相続人の住民票除票または戸籍附票

被相続人の死亡時の住所を確認し、本籍地情報を戸籍謄本と照合するために添付します。書類は、各自治体の市民課で取得が可能です。

書類を取得できる人は以下になります。被相続人の兄弟やその子供は原則取得が出来ませんので注意が必要です。
● 住民票除票…本人及び同じ世帯の人
● 戸籍附票…戸籍に記載されている人またはその配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)若しくは直系卑属(子、孫)
 (戸籍法10条)
ただし、専門家(司法書士、弁護士)に依頼すれば、代わりに取り寄せてくれます。

③申述人(放棄する人)の戸籍謄本

戸籍謄本は、相続放棄する人自身が法定相続人であることを証明するために必要です。戸籍謄本にはその人の氏名、生年月日、本籍、両親のお名前、続柄などが記載されています。

戸籍には、その戸籍に入っているすべての人の情報が記載された「戸籍謄本」と、特定の人の情報だけが記載されている「戸籍抄本」がありますが、必要なのは戸籍謄本ですので間違えないようにしましょう。

戸籍附票と同じく、各自治体の市民課で取得します。

書類を取得できる人は、戸籍に記載されている人またはその配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)若しくは直系卑属(子、孫)になります。被相続人の兄弟やその子供は原則取得が出来ませんので注意が必要です。

なお、住民票除票や戸籍附票と同様に専門家へ取得代行を依頼することもできます。

相続放棄で続柄別に必要な書類をケース別にご紹介

※被代襲者…孫や甥姪が相続人になる場合の被相続人の子、兄弟姉妹のこと
※代襲相続人…上述のケースの孫、甥姪のこと

上述した、共通して必要になる書類以外に、相続放棄をする相続人に応じて必要書類が異なります。

ここではケース別の必要書類を説明していきます。すでに同じ被相続人について相続放棄の手続きをされており、その際に戸籍を提出している場合は、今回の手続きで改めて戸籍を提出する必要はありません。

配偶者の場合

配偶者が相続放棄をする場合には、被相続人の死亡記載のある戸籍謄本が必要になります。

この戸籍謄本により、放棄をする人が配偶者であること、被相続人の死亡事実や死亡年月日、本籍地、生年月日などの証明になります。

子の場合

子が相続放棄する場合も、被相続人の死亡記載のある戸籍謄本が必要になります。配偶者との違いとしては、子が結婚していれば別の戸籍謄本になります。

孫の場合

被相続人の死亡記載のある戸籍謄本以外に、被代襲者の死亡記載のある戸籍が必要になります。

理由は、孫が相続人であることを証明する必要があるため、その親(被代襲者)がすでに死亡している旨の記載がある戸籍が必要になるためです。

親の場合

親が相続放棄する場合には、共通の必要書類以外の書類として、第一順位である子(場合によっては孫)などの相続人について戸籍で確認をする必要があります。

そのために、被相続人および子・孫の出生から死亡までの戸籍を取得する必要があります。

祖父母の場合

あまり多いケースではありませんが被相続人の祖父母が相続人になるというケースもあります。その場合、上述した親の場合と同じく第一順位である子(場合によっては孫)の相続人について戸籍で確認をする必要があります。

親との違いとして、追加で親が亡くなっていることがわかる戸籍も必要になります。

兄弟姉妹の場合

兄弟姉妹が相続放棄する場合には、必要な書類がもっとも多くなります。

兄弟姉妹は法定相続人としては第三順位となりますので、先順位(子や親など)の相続人に関する戸籍が必要になります。

法律上ご兄弟が相続放棄するようなケースでは、自分たちで戸籍を取得することができないケースもあり、専門家に依頼することが多くあります。当事務所にも戸籍の取寄せを含めて相続放棄のご相談に来られるという方が多いです。

太田 徹
太田 徹

相続放棄の書類の提出方法について

必要な書類を揃えたら、裁判所に書類を提出することになります。提出方法について具体的に解説していきます。

書類の提出先は家庭裁判所

書類の提出先は被相続人の住民票上の住所地にある家庭裁判所になります。(家事事件手続法201条1項)

実際に住んでいる所と住民票上の住所が異なる場合には注意が必要です。もし住民票上の住所がわからないのであれば、調べることから始めていく必要があります。

管轄裁判所が遠く自分で行うのが難しいということで、ご相談に来られる方もいらっしゃいます。当事務所でも過去に県外の家庭裁判所に相続放棄申し立てをしたケースもあります。

太田 徹
太田 徹

書類の提出方法は?

書類の提出は、下記のいずれかで行います。

家庭裁判所に持参する

裁判所に直接書類を持ち込むことが出来ます。裁判所は簡易裁判所なども一緒になっているため窓口が多くて迷うかもしれません。ですが、窓口に関する案内がありますので、それに従って行けば問題ありません。

必要書類を郵送する

遠方の家庭裁判所に提出する場合には、郵送になるでしょう。郵送の場合には、到着までにタイムラグがありますので、相続放棄の期限との兼ね合いも考え早めに対応しましょう。

相続放棄の手続き期限はいつ?

相続放棄はいつでもできる訳ではありません。手続きができる期限が法律で定められています。

期限は相続が開始したことを知った時から3ヵ月以内

民法上、相続放棄をする場合の期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」となっています。

ここでは、「自己のために相続の開始があったことを知った時(熟慮期間の起算点)」とは具体的にいつなのかが重要になります。条文を素直に読み解けば、「被相続人の死亡を知ったタイミング」となりますが、実務では下記のように単純な話にはならないことも多々あります。
・第一順位の相続人が相続放棄。第二順位である相続人は、死亡の事実は知りながらも相続権が自分に移っていることを知らなかった場合

・相続人が被相続人と長きにわたり音信不通。相続財産や債務があることを知らず、手続きを何もしなかったような場合
最高裁判所は、上記のような事情があるケースでは、起算点を繰り下げる判断をしています。

提出書類のうち、申述書などの提出前に入手できない戸籍などは後で追加提出することもできます。実際に当事務所でも、一部戸籍が期限に間に合わず後から提出して、相続放棄が受理された事案もあります。

太田 徹
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事前の申出で期限の伸長も可能

相続財産の調査に時間がかかるような場合は、家庭裁判所に期限伸長を請求することも可能です。なお期間伸長の手続きは、当初の熟慮期間のうちに行う必要があります。

期限内でも相続放棄できないケースに注意

民法では「相続人は、単純承認をした時は、無限に被相続人の権利義務を承継する」と規定しています。(民法920条)

つまり単純承認をするということは、相続放棄ができなくなるということです。

単純承認とみなされるのは以下のような場合です。(民法921条)
・相続財産の処分(民法921条1号)
売却などの法律行為はもちろん、財産の現状、性質を変える行為を指し、事実行為も含みます。家屋の取壊しや動産の毀損なども処分にあたります
・熟慮期間の徒過(同条2号)
相続人が上述の第915条第1項の期間内に限定承認(※)又は相続放棄をしなかったときは、期間の経過により単純承認とみなされます。
・相続財産の隠匿・私用・悪意の不記載(同条3号)
相続財産の全部または一部を隠匿したり、私的に消費(私用)したり、悪意で相続財産目録に記載しなかった場合は、 たとえ限定承認や相続放棄をした後でも、単純承認したものとみなされます。
(※)限定承認とは…限定承認とは、相続財産をもって被相続人の債務を弁済し、余りがあれば財産を相続するという手続きです。負債が資産を上回っていることが判明した場合でも、相続人が責任を負うことはありませんが、相続人全員で共同して行う必要があります。

相続をしてからの処分

相続放棄は法律で明確な期限や条件が定められており、手続きをするのも大変です。被相続人に多額の借金がある、というような事情がないのであれば、相続してから処分(売却など)をするのも1つの選択肢でしょう。

とくに不動産のような固定資産は、処分して、金銭に換えることも可能かもしれません。

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まとめ

相続放棄は必要書類が多いだけでなく期限も決まっています。そのため、手続きを行うのであれば、迅速な事前調査が必要となります。相続放棄を決断する前に、本当に行ってもよいのか慎重に判断しましょう。

とくに不動産などの場合、相続不動産を売却することで、相続にともなうさまざまな支出を加味しても、結果的にマイナスにならないこともあります。

自分だけでは、分からないことがあるのであれば、司法書士や弁護士などの法律専門職に相談したり、不動産一括査定サイトなどを積極的に利用してみたりしてください。

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愛知県豊橋市、太田合同事務所代表司法書士。愛知県司法書士会所属。2018年司法書士登録後、司法書士法人で業務に従事し、2022年太田合同事務所を開設。『地域・思いやり✖︎webオンライン密着✖︎充実した情報』をモットーに、司法書士業務と共にWebメディア運営、セミナー登壇にも取り組んでいる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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