相続した土地は3年以内の売却で税金に差がつく!活用できる特例や確定申告のポイント

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この記事の監修者

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

相続した土地は3年以内の売却で税金に差がつく!活用できる特例や確定申告のポイント

相続した土地の売却を検討している方に、売却で活用できる特例について詳しく解説します。

この記事のポイント
  • 不動産売却時にかかる税金でもっとも高額なのは譲渡所得税です。税率は20.315%もしくは39.63%にもなります。
  • 相続してから3年以内の売却で、取得費加算の特例、または相続空き家の3,000万円特別控除を適用すれば譲渡所得税を節税できます。
  • 不動産売却で活用できる特例は、適用要件があり特例の併用ができないものもあるため、比較検討をしてから活用しましょう。

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目次

相続した不動産は3年以内の売却で節税できる?

相続に関わらず所有する不動産を売却すると、印紙税、登録免許税(抵当権抹消が必要な場合)、譲渡所得税(売却益が発生した場合)などの税金が課税されます。

なかでも、高額になりやすいのが譲渡所得税です。

譲渡所得税とは、不動産売却の利益(譲渡所得)にかかる所得税・住民税の総称であり、2037年12月31日までは復興特別所得税も徴収されます。譲渡所得税の税率は所有期間によって異なり、20.315%もしくは39.63%です。

譲渡所得税のざっくりとしたイメージは以下になります。
■購入不動産:3,000万円
■売却金額:5,000万円
■税率:20.315%もしくは39.63%

課税対象金額:5,000万円-3,000万円=2,000万円
譲渡所得税:2,000万円×20.315%もしくは39.63%=400万円または800万円
とくに相続した不動産の場合、昔よりも土地の価値が上がっていたり、購入時の経費を計上できなかったりなどで利益が多く発生し税負担が大きくなるケースも珍しくありません。

ただし、相続してから3年以内の売却であれば、譲渡所得税の節税につながる以下の2つの特例が適用できる可能性があります。
✓ 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
✓ 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
たとえば、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例であれば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるので税負担をゼロにすることも可能です。

それぞれの特例は適用条件などが細かく決まっているため概要をおさえておく必要があります。以下でそれぞれ詳しく解説するため、適用を検討する際の参考にしてください。

そもそも譲渡所得税が発生するかを判断する必要があります。まずはいくらで売れるのかを把握し、税金をシミュレーションすることが大切です。一度一括査定で不動産の売却額を調べてみるとよいでしょう。

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相続財産を譲渡した場合の取得費の特例とは?

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例とは、相続時に支払った相続税の一部を譲渡所得計算時の取得費に加算できる特例です。

不動産売却の利益である譲渡所得税の具体的な計算方法は以下のようになります。
課税譲渡所得:売却価格 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除
取得費とは売却した不動産を購入した際にかかった費用です。土地の購入代金だけでなく不動産会社の仲介手数料や印紙税などの経費も含みます。一方、譲渡費用とは売却する際にかかった仲介手数料などの費用です。

売却額からこれらの費用を差し引くことで譲渡所得が求められます。

取得費の特例では、この取得費に対して相続税の一定額を加算できます。つまり、差し引く経費が大きくなるので譲渡所得が少なくなり、かかる税金の節税につながるのです。

特例の適用要件

取得費の特例を適用するには、以下のような要件を満たす必要があります。
 相続や遺贈により財産を取得した人である
 財産を取得した際に相続税が課税されている
 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの売却である
遺贈とは法定相続人以外が遺言によって財産を取得することです。法定相続人が財産を取得する場合は相続になります。相続、遺贈どちらでも適用できるため、被相続人(亡くなった人)の相続人でなくても他の要件を満たしていれば適用可能です。

一般的な相続では、
相続開始の日 … 被相続人が亡くなった日
相続税の申告期限 … 相続開始の翌日から10か月以内

となります。そのため、本特例を適用できるのは被相続人が亡くなった日の翌日から3年10か月以内となります。

なお、支払った相続税の一部を取得費に加算するため、そもそも相続税が発生していなければ適用できない点には注意が必要です。本特例が適用できるか分からない方は、まずは国税庁が作成したチェックシートで判断してみるとよいでしょう。

特例の計算シミュレーション

取得費に加算できる額は以下の計算式で求めます。
以下のケースで、譲渡所得税を計算してみましょう。
【相続条件】
■相続税額:2,000万円
■不動産の相続税評価額:4,000万円
■取得財産の価額(不動産を含めた相続財産の総額):1億円
■相続時精算課税・贈与財産はなし
加算できる取得費は以下のとおりです。

取得費に加算できる額:2,000万円×(4,000万円÷1億円)=800万円

このとき、売却条件が以下の場合で譲渡所得税を計算してみましょう。
【売却条件】
■売却価格:5,000万円
■取得費(加算分を含まない):4,000万円
■譲渡費用:200万円
■譲渡所得税の税率:20.315%
特例を適用しない場合、譲渡所得は、「5,000万円-(4,000万円+200万円)=800万円」となり、譲渡所得税は800万円×20.315%=162万円の課税です。

しかし、特例を適用することで取得費が4,000万円+800万円=4,800万円となるため、譲渡所得が0円となり税金は発生しません。

特例の申請方法

特例を適用するには確定申告が必要です。以下の書類を添付し、管轄の税務署に確定申告を行いましょう。
 確定申告書第一表・第二表
 確定申告書第三表
 譲渡所得の内訳書
 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
 売却した不動産の取得費が分かる書類(購入時の売買契約書や領収書など)
 売却時の費用が分かる書類
 売却時の売買契約書
 登記事項証明書
 本人確認書
必要書類は税務署や売却ケースによって異なる場合があるので、税務署のホームページなどで確認しましょう。

また、申告時期は売却した年の翌年2月16日から3月15日です。間に合うように早めの準備を心がけましょう。税金の計算方法や申告方法に不安がある人は、税理士などのプロへの相談をおすすめします。

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例とは?

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例とは、相続した空き家の売却であれば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例で、下記の特別控除の部分にあたります。
課税譲渡所得:売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除(3,000万円)
つまり、控除前の譲渡所得が3,000万円以下であれば本特例の適用で譲渡所得税が発生しないため、大きな節税が見込めます。

特例の適用要件

主な適用要件は以下のとおりです。
 昭和56年5月31日以前の建築
 区分所有建物登記がされている建物でないこと
 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいない
 売った人は相続または遺贈により財産を取得している
 建物を取り壊すか一定の耐震基準を満たして売却すること
 売却代金が1億円以下
 売却相手が親子や夫婦など特別な関係の人でない
 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却

適用するには、建物の築年数や売却代金・売却相手など細かい要件を満たす必要があります。また、売却する際には更地での売却か耐震補強する必要があり、専門家の確認が必須です。適用のハードルが高い点には注意しましょう。

取得費の加算が適用できる期間が相続開始から3年10か月であるのに対し、本特例は相続開始から3年です。取得費の加算とは適用期間が異なるため、売却時期には注意しましょう。

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

特例の計算シミュレーション

以下の条件で譲渡所得税をシミュレーションしてみましょう。
【売却条件】
■売却価格:8,000万円
■取得費:3,000万円
■譲渡費用:600万円
特例を適用しない場合の課税譲渡所得は以下のとおりです。
課税譲渡所得:8,000万円-(3,000万円+600万円)=4,400万円
税率が20.315%なので、譲渡所得税:4,400万円×20.315%=893万円

一方、特例を適用した場合の譲渡所得税は以下のようになります。
課税譲渡所得:8,000万円-(3,000万円+600万円)-3,000万円=1,400万円
譲渡所得税:1,400万円×20.315%=284万円

特例適用前の税額が893万円に対して特例を適用することで284万円と大きく節税できていることが分かります。

特例の申請方法

本特例の適用も取得費加算の特例同様、確定申告が必要です。必要書類を添えて税務署に申告するようにしましょう。

主な必要書類は以下のとおりです。
 確定申告書第一表・第二表
 確定申告書第三表
 譲渡所得の内訳書
 売却した不動産の取得費が分かる書類(購入時の売買契約書や領収書など)
 売却時の費用が分かる書類
 売却時の売買契約書
 登記事項証明書
 本人確認書
適用する特例によって必要書類は異なるので、事前に調べたうえで漏れの内容に準備しましょう。

同居していたマイホームを売った場合は「居住用財産の3000万円特別控除」が利用できる

売却した不動産が居住用財産(マイホーム)であった場合、譲渡所得から最高3000万円を控除できます。夫婦で住んでいた家を妻が相続した場合や、親子で住んでいたマンションを子が相続した場合などが当てはまります。

この控除は、取得費加算の特例との併用が可能です。空き家特例とは適用要件が異なるため、事前に国税庁のホームページなどをご確認ください。

相続した土地を5年以内に売却すると税率が高くなる?

不動産は所有してから5年以内に売却すると、譲渡所得の税率が高くなります。相続後3年以内で売却し特例を適用できても、税率が高くなってしまっては節税効果があまり期待できないように感じる方もいるでしょう。

相続した不動産の所有期間は考え方が特殊になるので、所有期間と税率の関係をおさえておくことが重要です。

不動産の所有期間で税率は変わる!

譲渡所得税の税率は20.315%もしくは39.63%とお伝えしましたが、所有期間によってどちらが適用されるかが異なります。

譲渡所得は所有期間5年を境に短期譲渡所得と長期譲渡所得の2種類に分かれ、それぞれの税率は以下のとおりです。

所有期間所得税・復興特別所得税住民税合計税率
短期譲渡所得5年以下30.63%9%39.63%
長期譲渡所得5年超15.315%5%20.315%
所有期間5年以下の短期譲渡所得は、5年を超える長期譲渡所得よりも税率が2倍近く高くなります。

仮に、課税譲渡所得が2,000万円なら、短期に区分されると792万円、長期で406万円と税負担が大きくかわってきます。そのため、節税を考慮するなら所有期間も考慮して売却時期を検討することが大切です。

短期譲渡所得の所有期間の起点日はいつ?

所有期間を計算する際の起算日は、売却した年の1月1日です。実際の所有期間と譲渡所得の所有期間にはずれが生じる可能性がある点には注意しましょう。
たとえば、2020年6月1日に購入した不動産を2025年7月1日に売却した場合、実際の所有期間は5年を超えます。しかし、起算日である2025年1月1日時点では所有期間が5年を超えないので、譲渡所得税の計算では短期譲渡所得に区分されるのです。

なお原則として、売却した日と取得した日は土地引き渡し日になりますが、売買契約の締結日にもできます。同じ年であればどちらでも問題ありませんが、契約締結日と引き渡し日が年をまたぐ場合、売買契約の締結日をどちらにするかで所有期間と確定申告する年が異なるので注意しましょう。

相続した日から5年以内かどうかは関係ない

相続の場合、所有期間は相続人の所有期間のみではなく、被相続人の取得日から通算されます。以下のケースで見てみましょう。
被相続人が取得した日:2010年6月1日
相続した日:2020年7月1日
売却した日:2022年8月1日
相続した日から起算日である2022年1月1日までの所有期間は1年となるため、短期譲渡所得に区分されるように見えます。しかし、被相続人が取得した日2010年6月1日からの所有期間は11年であるので、長期譲渡所得となるのです。

また、この場合は相続後3年以内に売却しているので、特例の適用も検討できます。

相続した不動産は長期譲渡所得に区分されるケースが多くなります。ただし、被相続人が相続開始日前から5年以内に家を購入していると短期譲渡所得になる可能性もあります。注意しましょう。

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

相続した不動産を売却するときの注意点4つ

最後に、相続した不動産を売却する時の注意点を4つ紹介していきます。

①特例の併用に注意!

「取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特別控除の特例」は、併用できません。どちらを適用した方が節税効果は大きくなるかは相続状況や売却額によって異なるため、個々のケースに合わせてシミュレーションして判断しましょう。
\ 相続空き家とマイホームを同年に売却する場合も特例の併用に注意 /

マイホームを売却した場合「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」で3,000万円控除でき、相続空き家の3,000万円控除との併用が可能です。しかし、併用する場合は両方合わせて3,000万円までしか控除できません。
同年中の売却は節税効果が小さくなる点に気を付けましょう。別の年に売却すればそれぞれで3,000万円控除が可能です。

②不動産が共有状態の場合、単独所有にする

共有状態とは、1つの不動産に対して2名以上の所有者(名義人)がいる状態です。相続する不動産の場合は分割で揉めて複数の相続人でとりあえず共有にするケースが珍しくありません。

共有不動産の場合、以下のようなトラブルが起きやすくなるため避けた方が無難です。 
● 売却する際に共有者全員の合意が必要になり、単独での売却ができない
● 増改築でも合意が必要など活用に制限が生じる
● 次の相続で権利がより複雑になる
相続で共有になりそうな場合は、話し合いをして単独で相続できるようにしましょう。

また、親が所有している段階ですでに共有状態だったというケースもあるため、相続時に不動産の名義がどうなっているかを調べることが大切です。すでに共有となっている場合も、他の共有者の持分を買い取る、他の共有者に持分を売却する、共有者全員で協力して売却するなど、共有状態の解消を目指すことをおすすめします。

どの特例を適用した方が節税効果は大きいかは、詳細なシミュレーションが必要で判断が難しいケースも少なくありません。判断を間違うと税負担が大きく変わってくるので、悩む場合は税理士への相談をおすすめします。

逆瀬川 勇造
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③特例の適用には確定申告時に申請が必要

譲渡所得の計算の結果、課税されている場合は確定申告して納税が必要になります。

また、各種譲渡所得の特例を適用する場合も確定申告が必要です。特例を適用すれば税金が発生しないケースであっても、特例適用のために確定申告は必要になります。

たとえば、譲渡所得が2,000万円で相続空き家の3,000万円控除を適用する場合、控除適用により譲渡所得税が発生しません。このケースで「税金が発生しないから確定申告不要」と考え確定申告しないでいると、特例も適用されず税金が発生していることになります。

そのまま申告時期を過ぎてしまうと、無申告加算税などペナルティが科せられる恐れがあるので注意しましょう。

④3年以内に売却ができるよう早めに動く

特例の適用は相続開始から3年以内の売却が必要です。

相続した不動産を売却するには、事前に相続の手続きが必要となり、売却をスタートするにも時間がかかります。さらに、一般的な不動産売却には3か月から半年ほど時間が必要です。相続した土地の場合、田舎にある、立地が悪い、建物の解体が必要などで年単位で時間がかかるケースも珍しくありません。

3年という期間は意外と短く、売却スタートが遅れると期限に間に合わない恐れもあります。特例の適用を検討しているなら、少しでも早く売却活動をスタートすることが大切です。まずは一度、一括査定で不動産会社の査定を受けてみるとよいでしょう。

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まとめ

相続した土地を3年以内に売却することで、取得費の加算、または相続空き家の3,000万円特別控除の適用が検討できます。それぞれ適用要件が定められており併用ができないため、どちらを適用した方がより節税効果が大きくなるかを慎重に判断することが大切です。

また、相続してから3年以内の売却をするにはそれほど時間に猶予はありません。税務面も相談できる不動産会社を見つけて、早めに売却をスタートさせるようにしましょう。

3年以内に家を売却しないと損する可能性も!早めのスタートが肝心です。
家がいくら売れるかどうか、さっそく確認をしてみましょう。

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この記事の監修者

逆瀬川 勇造
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AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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