知りたい情報はスマホのアプリでなんでも手に入れることができる時代。不動産の査定もアプリで済ませてしまおうというサービスが続々登場しています。すぐに不動産相場がわかる反面、査定の精度にばらつきがあるなど使い方には注意が必要です。今回は、不動産査定アプリについてその仕組みやメリット・デメリットを詳細解説します。不動産を売却したい時の情報収集にぜひご活用ください。
不動産査定アプリとは
不動産査定アプリとは、不動産の基本情報を入力することで簡単に売却価格の相場を調べることができるアプリです。従来では、不動産情報サイトから似たような物件をピックアップして相場を把握していましたが、似たような物件が見つからない、物件が多すぎて相場がわからないといった欠点がありました。
不動産査定アプリは不動産の所在地、不動産の種類(一戸建てかマンションか)、土地・建物の広さ、築年数などの基本情報を入力しただけで不動産相場がすぐにわかる画期的なサービスです。
不動産査定アプリの仕組み
不動産査定アプリの仕組みは運営会社によってまちまちですが、基本情報から物件の価格相場を知ることができること、くわしい査定を依頼したい時にはアプリ上で申し込みができることは共通しています。
不動産査定アプリでは、物件の基本情報を基に、独自のデータベースから似たような物件の過去の取り引き事例を自動的にピックアップし、参考価格を割り出します。中には、GPSを活用して現在地の不動産相場がわかる機能や不動産を担保にしてどれぐらいのお金が借り入れできるかを査定できる機能を備えているものもあり、各社がアプリの性能向上を競っています。
不動産査定アプリと一括査定サイトの違い
一括査定サイトとは、Web上で複数の不動産会社に不動産査定を依頼できるサービスです。不動産の基本情報と依頼者の連絡先などを入力することで、サイトと提携している複数の不動産会社に一度に査定依頼をすることができます。複数の不動産会社から査定をしてもらうことで売却価格の比較検討ができるため、こちらも大変便利なWebサービスです。
実際に、不動産会社の担当者が物件の情報を分析して査定するところが不動産査定アプリとの大きな違いです。もっとも査定方法によっては、不動産査定アプリとさほど変わらない精度の査定結果となることもあるようです。
不動産会社の査定には、机上査定と訪問査定があります。机上査定は、担当者が過去の取り引きデータから査定結果を算出するだけなので、査定のベースとなる情報は不動産査定アプリと似ています。したがって、査定結果も似通ってくるのです。一方、現地調査をして査定する訪問査定だと、物件のブランドや立地、傷み具合なども判断材料とするため、より売却価格に近い査定結果を得ることができます。
不動産査定アプリで査定するメリット
不動産査定アプリは手軽に不動産相場を調べることができるほか、匿名で査定を依頼できる、入力方法が簡単などさまざまなメリットがあります。不動産会社の訪問査定に比べて、査定の手間や時間が大幅にカットされていることが人気の理由です。
すぐに結果(相場・査定価格)がわかる
不動産査定アプリは、不動産の基本情報を入力すればすぐに不動産相場がわかります。AIが対象物件を分析し、データベースを検索して査定するため、スピードにおいてはほかに勝るものはありません。
訪問査定の場合には、アポイントを取って実際に現地調査を行い、査定結果が得られるまで1週間程度を要します。相場を知りたいだけであれば、査定アプリで十分といえるでしょう。アプリの中には、地図上に不動産相場を表示できるタイプもあり、周辺相場との比較検討も簡単にできます。
匿名で査定できる
不動産査定アプリの中には、住所や連絡先を入力しなくてもよいものがあります。売却するかどうかわからない段階で相場を知りたいだけなのに、さまざまな個人情報を知らせなければならないのは抵抗があるものです。運営会社によりますが、多くの不動産査定アプリでは物件情報の入力のみで査定することが可能です。
無料である
アプリのダウンロード、情報の入力、査定結果の取得について、多くの一括査定サイトと同様に無料です。ダウンロード後の課金やサブスクリプションなどもありませんので、手軽に複数の査定アプリを試してみることができます。
簡単入力である
情報の入力はスマートフォン上で完結し、入力も簡単です。入力項目は提供アプリによって異なりますが、基本的には、所在地、物件種別、広さ、築年数、構造(一戸建ての場合)、階数(マンションの場合)、などの基本情報だけで査定ができます。GPSが所在地の入力をサポートしてくれる機能がついているアプリもあるため、入力の面倒さからは解放されるでしょう。
営業を受けなくて済む
不動産会社とコンタクトを取る時に気になるのが、担当者の営業攻勢がわずらわしいことです。不動産査定アプリでは匿名で利用できるものが多いために、このような営業を受ける心配はありません。不動産相場を調べるために気軽に使ってみるのもよいでしょう。
不動産査定アプリで査定するデメリット
不動産査定アプリは手軽に不動産相場を知ることができる便利なアプリですが、現時点では不動産査定の精度がそれほど高くなかったり、対象のエリアが限定されていたりするなどのデメリットがあります。AIやビックデータを活用した不動産アプリの開発はまだ始まったばかりですので、これからの改善に期待です。
精度にむらがある
不動産査定アプリの場合、不動産査定のベースになっている情報が運営会社によってまちまちであるために、査定の精度が劣るという面は否めません。自社の成約価格をベースに査定するもの、過去・現在の売り出し価格をベースに査定するものなど基準が一定ではなく、また物件の個別的な要素(ブランド力、デザイン、建具や設備のグレード、立地・眺望・日当たりなど)を加味しないため、どうしても査定が荒くなってしまいます。
対象不動産が限られる場合がある
アプリによっては対象となるエリアや物件の種別が限られているために、どの物件でも相場を調べることができるわけではありません。首都圏のみ、マンションのみなど、参照できる物件が限られているアプリが多いのが現状です。
特定の査定サイトに誘導される場合がある
物件の訪問査定を依頼する場合には、たいてい特定の不動産会社の査定(1社のみ)の紹介になります。これは、不動産会社の営業ツールとして不動産査定サイトが使われている場合が多いからです。そのため、より精度の高い査定を比較検討するためには、改めて一括査定サイトなどを活用して査定依頼する必要があります。
不動産査定アプリを使う時の注意点
不動産査定アプリを利用する時には、アプリの特性やほかの査定方法との違いを十分に理解して活用すべきです。査定結果を鵜呑みにして資金計画を立てるようなことはせず、参考程度にとどめておくのが無難です。スピーディーに相場を知りたい時には不動産査定アプリ、くわしい査定結果を知りたい時には訪問査定と、かしこく使い分けるのがコツです。
査定価格で売却できるとは限らない
査定価格はREINSの情報が反映されておらず、査定のベースとなる物件データがまちまちであるために、実際の売却価格とは差が生じることがあります。実際の価格に近い査定結果を得るためには、不動産会社に訪問査定を依頼するようにしましょう。
※REINSとは
国土交通省の指定を受けた不動産流通機構が運営する不動産情報ネットワークシステム。宅建業者のみがアクセスでき、売却・賃貸情報、成約情報を検索できる。
複数社で比較する方がよい
不動産査定アプリにも運営会社によって査定にクセがあります。データベースが少ないエリアの査定だと、外れた査定結果が出る可能性がありますので、複数の査定アプリをダウンロードして査定し、結果を比べてみることで、実際の不動産相場に近い価格を調べることができます。
まとめ
不動産査定アプリは、簡単な物件情報の入力で不動産相場を知ることができる便利なアプリです。個人情報を知らせることなく気軽に相場チェックができるなど、今までの不動産査定にないメリットもあります。
もっとも、査定の精度面ではこれからのアプリの改善を待たなければなりません。売却することを前提として査定を依頼するのであれば、一括査定サービスを活用することも考えた方がよいでしょう。
監修徳田 倫朗
【資格】宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験を持ち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
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