家族や兄弟間で行われることが多い個人間売買。
不動産会社は本当に必要ないでしょうか?
目次
不動産の個人間売買とは

どんな人がするもの?
・所有地を隣人に売却する
・貸している土地を借主に売却する
・借地権者に相手の家が建っている底地を売却する
など、取引の相手方が既に決まっている場合にも個人間売買によって取引されることがあります。このほか、最近ではインターネットサイトを介して知り合った相手との個人間売買も行われています。
一般的な不動産会社仲介での売買とは
次に、売主と不動産会社との間で「媒介契約」を締結します。媒介契約には次の3つの種類がありますから、売主の意向や物件に合わせて契約のタイプを選択します。
問い合わせがあれば資料を送り、「物件案内」をして詳細を説明します。購入希望者との価格交渉を行い、正式に購入の申し込みがあれば売主と買主との間で「売買契約」の締結を行います。売買契約にあたっては、不動産会社が契約書を作成し、契約締結時には宅地建物取引士による「重要事項説明」が行われます。
仲介による取引が成立したところで、売主および買主は不動産会社に仲介手数料を支払います。以下が、宅地建物取引業法によって定められた仲介手数料の上限額です。
取引額200万円以下の部分 | 取引額の5%以内 |
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取引額200万円を超え400万円以下の部分 | 取引額の4%以内 |
取引額400万円を超える部分 | 取引額の3%以内 |
個人間売買のメリット

1.金銭的なメリット
仲介手数料が不要
(1)200万円以下の部分(取引額の5%以内) | 200万円×5%=10万円 |
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(2)200万円超400万円以下の部分(取引額の4%以内) | 200万円×4%=8万円 |
(3)400万円超の部分(取引額の3%以内) | 1,600万円×3%=48万円 |
(1)+(2)+(3)=66万円 |
仲介手数料は課税対象ですから、消費税を加算します。
66万円+66万円×10%=72万6千円 |
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なお、以下の式を使って計算することもできます。
(売買価格×3%+6万円)+消費税
2,000万円×3%+6万円=66万円、消費税を加算すると、72万6千円になります。
仲介による売買の場合、上記のとおり消費税込みで72万6千円を売主・買主の双方が不動産会社へ支払うことになります。この金額を節約できるのは、魅力のひとつといえます。
2.心理的なメリット
むしろ、この場合は不動産会社を間に入れない方が、心理的な負担も少ないと考えられます。ただし、金銭の授受があった場合でも、それが時価(通常の取引価額または相続税評価額)を大幅に下回る金額だった場合、時価と売買価格の差額に対し贈与税が課せられる可能性もありますので、売買を行う前に税理士等専門家へのご相談をおすすめします。
住宅ローンが組みづらい
このほか、
このようなリスクを防止する意味でも、個人間売買では住宅ローンの審査に通りづらくなっているのです。
売買契約書の作成が難しい
しかし、何百万円、何千万円という金銭の授受が発生する不動産売買を、親しい間柄とはいえ口約束だけで行うのは大変危険です。「言った」「言わない」による後々のトラブルを避けるためにも、取り決めの内容はしっかりと書面に記しておく必要があるでしょう。売買契約書には、引き渡し前に天災などで物件が滅失・毀損した場合の危険負担や、瑕疵担保責任、住宅ローンの借り入れができなかった場合のローン特約についてなど重要なポイントがいくつもあります。個人で作成するには、かなりの手間と時間を要することになるでしょう。
瑕疵担保責任
新築住宅では、品確法(=住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって、購入した不動産に「隠れた瑕疵」があったと認められた場合、売主は引き渡し後10年間「瑕疵担保責任」を負うと定められています。中古住宅や土地の場合、民法により売主は“瑕疵を発見した時から1年間”責任を負うとされていますが、これは引き渡し後何十年たっても瑕疵担保責任を負い続けるということであり、売主の負担があまりにも大きすぎると言われています。そのため、売主が個人である場合の取引においては、瑕疵担保について「責任を負わない」「引き渡し後○カ月間は責任を負う」などの特約をつけることも可能となっています。
何も知らずに売買契約が成立してしまうと、売主は瑕疵担保に関して甚大な負担を負うことになってしまいます。双方でしっかりと話し合い、お互いが納得のいく取り決めを行いましょう。
価格交渉等、当事者間のトラブルの可能性
例えば仲介による取引の場合、不動産会社がきちんと査定を行った上で売買価格を設定します。価格交渉の際にも「値引きできる範囲」はある程度決まっていますから、不動産会社はその範囲内で売主・買主双方の意向を確認しつつ、話をまとめてくれます。それに対し、個人間売買では双方が直接話し合って、価格そのほかの条件を決定します。
ところが、1人の売主に対して複数の見込み客(買主)がいる仲介による取引とは違い、買主が既に決まっている個人間売買においては売主側に優位性がないため、協議が難航しがちです。売主側に専門知識がないことも、協議が難航する理由の1つと言えるでしょう。
個人間売買時の必要書類と必要経費

必要書類
以下は、売主が保管している書類です。
このほか、売買契約書を作成する場合や、登記を司法書士に依頼する場合には、売買契約書や委任状に売主の実印を押印する必要があります。実印と印鑑証明書を用意しましょう。取引相手によっては、身分証明書の提示を求められることもあるでしょう。また、買主が売買代金を現金で支払う場合には、売主は領収証を忘れずに準備しましょう。
必要経費
500万円超1,000万円以下の土地 | 10,000円 |
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1,000万円超5,000万円以下の土地 | 20,000円 |
ただし、2020年3月31日までの間に作成される契約書については、以下の軽減措置が適用されます。
500万円超1,000万円以下の土地 | 5,000円 |
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1,000万円超5,000万円以下の土地 | 10,000円 |
売主については、土地を売却するにあたり抵当権を抹消する必要がある場合のみ登録免許税が発生します。抵当権抹消登記の登録免許税額は、不動産1個につき1,000円です。
まとめ

例に挙げた仲介手数料はあくまでも「上限額」です。既に取引の相手が決まっているのであれば、仲介手数料をできるだけ抑えてもらうよう不動産会社に交渉することも可能でしょう。後々のリスクを排除し、スムーズに取引を行うためにも、不動産売買は不動産会社の仲介で行う方がよいでしょう。その際、一括査定のサービスを利用して、複数社の中からより相談しやすい不動産会社を選択することをおすすめします。
家族や兄弟間で行われることが多い個人間売買。
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監修いしわた さとみ
【資格】宅地建物取引士/2級建築士/既存住宅状況調査技術者/ホームステージャー
建築設計事務所、不動産会社、建設会社等での勤務を経て、現在は不動産・住宅・建設ライター、住宅営業、建設CADオペレーターとして活動。実家は建築屋。主婦で3児の母。