- 生前贈与は、希望する相手に好きなタイミングで財産を与えることができる制度です。
- 年間110万円の基礎控除額を超えた場合は贈与税がかかるため、評価額が高額になりがちな不動産は相続税よりも税負担額が高くなりがちです。
- 資産の全体像や、受贈者の税負担、不動産の使途などをよく見据えて、生前贈与を検討する必要があります。
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目次
不動産の生前贈与とは
土地や建物といった不動産も生前贈与をすることが可能です。ただし、他の財産の生前贈与と異なり、贈与額(評価額)が大きくなる可能性に留意する必要があります。
また、贈与を受けた方には、贈与税以外に不動産取得税、登録免許税固定資産税などが課税されることになります。
贈与と相続の違い
贈与 | 相続 | |
---|---|---|
タイミング | 自分の好きなタイミング | 亡くなった時 |
相手方 | 自分の選んだ相手 | 法廷相続人が遺産を分ける。 ただし、遺言書があれば、相手を指定できる |
税金 | 贈与税 不動産取得税あり 登録免許税2% | 相続税 不動産取得税なし 登録免許税0.4% |
相続は亡くなったときに自然発生しますが、贈与は自発的に行うのが違いです。
相続では亡くなった人の思いどおりに遺産分割されるとは限りませんが、贈与は自分の希望する相手に財産を与えることができます。ただし、相続でも遺言書を残せば財産の分け方を指定できます。
税金面での大きな違いとして、相続では相続税、贈与されたときは贈与税の課税対象になります。相続では不動産取得税は課税されませんが、贈与では課税対象になります。また、不動産の名義変更の登記をする際にかかる登録免許税の税率は、相続よりも贈与の方が高くなります。
不動産を生前贈与するメリット
【メリット1】好きなタイミングで確実に渡せる
また、贈与を受ける方に制限は設けられていないため、法定相続人以外に贈与を行うことも可能です。
一方の相続は、自分が亡くなる時期まで財産を移転することができません。また、相続は原則として法定相続人に相続を受ける権利があります。法定相続人以外に相続を希望する場合には、遺言書の準備が必要です。ただし、遺言書が法律の定めるとおりに作成されていない場合に、遺言自体が法律的に無効になってしまうリスクがあります。
【メリット2】短期間で手続きも比較的簡単に不動産を譲れる
【メリット3】相続税を減らせる可能性がある
贈与の非課税枠
また、年に110万円の基礎控除以下ならば贈与税がかからないので、暦年贈与によってコツコツと財産を承継していく方法もあります。(非課税制度については、この記事の後半で詳しく解説しています)
【メリット4】認知症対策になる
その点、意思能力に問題がないうちに生前贈与を行っておけば、自分の希望どおりに確実に財産を受け継がせることができるので安心です。
不動産を生前贈与するデメリット
【デメリット1】贈与税は相続税より税率が高い
贈与税と相続税の税額速算表を比べてみましょう。
【贈与税の速算表】
課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
このように、贈与税は、相続税よりベースとなる税率が高いといえることが、デメリットに挙げられます。
相続税・贈与税はともに最高55%の高税率が適用されます。大切な資産を守るためにも、早めの対策が肝心。まずは一括査定からはじめましょう!
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【デメリット2】不動産取得税がかかり、登録免許税が高くなる
一方で、不動産の生前贈与の場合、贈与を受けた方には不動産取得税が課税されます。また、登録免許税は、2%に設定されているため、相続に比べると税金負担は多くなります。
【デメリット3】小規模宅地の特例などが適用されない
相続時精算課税制度を適用した場合、または生前贈与から3年以内(2024年1月1日以後の贈与では7年以内)に贈与者が死亡した場合には、生前贈与を行っても相続税の対象となります。この場合、小規模宅地などの特例は適用できず、相続税負担が重くなる可能性があります。
【デメリット4】不動産の維持費は受贈者負担になる
【デメリット5】生前贈与加算によって贈与財産が相続財産に加算される可能性がある
なお、相続開始前3年(または7年)以内に贈与していても、孫などの相続人とならない人へ贈与していて、その人への遺贈もなければ生前贈与加算の対象外です。
不動産の生前贈与と相続、どちらがお得?
生前贈与に向いているケース
収益物件を保有している場合
早めに不動産を贈与すれば、贈与以降に発生する家賃収入は贈与された人が受け取るので、相続財産が膨らむのを防ぎ、結果的に相続税を減らせる可能性があります。
値上がりが予想される不動産を保有している場合
財産を早めに渡したい場合
多額の財産がある場合
生前贈与によって相続財産を減らせば、相続財産が基礎控除以下となり、相続税が非課税になる場合もあります。
暦年贈与によって、毎年110万円以内の贈与を行う場合には、早めに始めれば大きな節税効果が期待できます。子や孫の人数が多いときには、基礎控除額が受贈者(贈与を受け取る人)の人数分あるので、とくに暦年贈与の効果が大きいです。
相続に向いているケース
相続税が非課税になりそうな場合(基礎控除額よりも財産総額が低い)
余命わずかの場合
不動産の生前贈与で注意したいこと
遺留分のトラブルに注意!
“争族”にしないためには、相続財産の正確な価値把握が必要です。
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不動産の分割贈与のリスクに注意!
生前贈与で発生する税金・費用
登録免許税
不動産取得税
贈与税
贈与税=(贈与額(評価額)合計-基礎控除110万円)×税率-控除額 |
---|
贈与税の軽減制度と控除
暦年贈与
ただし、暦年贈与を毎年繰り返し行う場合には、「定期贈与」とみなされると贈与総額に対して贈与税がかかる可能性があるのでご注意ください。定期贈与は、一定期間、定期的に贈与を行うことです。定期贈与とみなされないためには、毎年違う時期に、少しずつ金額を変えて贈与を行い、贈与契約書も作成して証拠を残すことが大切です。
相続時精算課税制度
配偶者控除
相続の場合、基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人)がありますし、居住用不動産であれば、相続する宅地の評価額を最大8割減額することもできます(小規模宅地等の特例)。また配偶者は相続財産が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分」までであれば、相続税が課税されないため、配偶者については、相続税がかかる可能性は低いといえます。
このような相続税のしくみを考慮しても、なお配偶者に相続税がかかる可能性がある(配偶者が法定相続分を超えて相続財産を取得し、かつ、その額が1億6千万円以上である)場合には、生前贈与を行い、夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の適用を受けるメリットがあるといえます。
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
教育資金の一括贈与
結婚・子育て資金の一括贈与
不動産の生前贈与に必要な書類と手続きの流れ
必要書類
手続きの流れ
1.贈与契約書の作成
2.登記申請
3.贈与税の申告
不動産の生前贈与は口頭で合意するだけでも法的には有効ですが、トラブルを避けるため、贈与契約書の作成や名義変更を確実に行いましょう。

まとめ
そして、その前段階として、所有している資産の全体像を把握することが、まず大切です。生前贈与を検討する場合には、焦らないで、税理士等の専門家に相談しながらひとつひとつ慎重に進めていきましょう。
生前贈与、相続、それぞれのメリット・デメリットがあります。
まずは不動産の価値を知ることから始めてみてはいかが?
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この記事の監修者

不動産鑑定士/土地活用プランナー
千葉大学卒業、地方銀行に勤務後、都内の不動産鑑定業者で事務所ビルやマンション等の収益物件の評価を数多く経験。現在は不動産鑑定士事務所を経営し、住宅・店舗・更地・山林・資材置場など多様な不動産に携わる。
土地活用や相続対策にも精通し、不動産に関するお悩み解決に尽力している。
生前贈与を行うならば可能な限り早めに行うのがポイントです。