住宅ローンが残っている家は賃貸にできる?売却との比較や注意点を解説します

2024.07.18更新

この記事の監修者

弘中 純一
弘中 純一

宅地建物取引士/一級建築士

住宅ローンが残っている家は賃貸にできる?売却との比較や注意点を解説します

転居の事情がある時、住宅ローンのある持ち家は賃貸にできるのか?賃貸と売却ではどちらがよいか?など対策と注意点を解説します。

この記事のポイント
  • 住宅ローンが残っている自宅を賃貸物件にする場合はます金融機関へ相談を!
  • 不動産投資ローンなどに借り換えれば賃貸運用は可能。その場合のデメリットについて把握が必要です。
  • 将来戻ってくる見込みがない場合は、売却もひとつの手です。いくらで売れそうか査定してみましょう。

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目次

事情があって自宅に住めなくなったら…

事情によりこれまで住んでいた自宅に住めなくなることは、長い人生の中では十分にありえることです。

家は人が住まないと傷みやすいと言われます。空き家にした場合は定期的なメンテンナンスが必要で、長期間の空き家状態は防犯の面でも心配です。できれば親戚や知人が住んでくれると安心ですが、そのようにうまくいかない時には「賃貸」にする方法が有力です。

しかし、住宅ローンが残っている場合、賃貸は可能なのでしょうか。

住宅ローンが残っていても賃貸にできる?

住宅ローンを利用して取得した住宅を、住まなくなったという理由で賃貸にすることは可能なのでしょうか?住宅ローンは『みずから所有し、みずから居住』することが基本条件です。そのため「賃貸にはできない」のが原則です。

住宅金融支援機構は2019年8月に公表した「フラット35の不適正利用懸念事案に係る調査結果」で、104件の投資目的による融資申し込み事案があったことを明らかにしました。該当する融資案件については、一括返済請求など法的措置も含めた厳正な処置が取られることになりました。

このように投資目的の住宅を取得するにあたって、住宅ローンを利用することはできません。しかし、取得後にやむをえない事情により住めなくなるケースがあります。

・転勤
・親の介護のための住み替え

このような場合ではどうなるのでしょうか?

例外はあるので金融機関にまず相談を

実は、住宅ローン返済中でも賃貸住宅にできる例外的なケースがあります。住宅金融支援機構のフラット35では、転勤などやむをえない事情により一時的に居住せず、将来融資した住宅に戻ることを前提にして賃貸することを認めています。

また民間金融機関においても同様の対応をするケースがあり、そのほか金融機関によっては、賃貸住宅向けローンに切り替えることで対応することもあります。

まず、このようなことになった場合は、住宅ローンの取扱い金融機関に相談することが大切です。

不動産投資ローンに借り換えれば賃貸可能

転勤などで賃貸にするにしても、金融機関は「一時的」な対応として行うため、賃貸期間が10年超になるなど長期の場合は難しい場合もあるでしょう。また、金融機関によっては賃貸住宅向けローンに切り替えられない場合や、切り替えても条件が非常に悪いなどの理由で、賃貸住宅として活用できず単身赴任になってしまうこともあるかもしれません。

その際は、金融機関を変更して不動産投資ローンに切り替える方法があります。不動産投資ローンについては次章で詳しく説明します。

不動産投資ローンに切り替えて自宅を賃貸にする時の注意点

不動産投資ローンは住宅ローンと異なります。そのため住宅ローンを借りた時とは検討する内容も違うため、注意しておきたいポイントがあります。

金利が上がるので返済負担が増える

住宅ローンは低金利政策のため、現在は約0.5%~約1.5%の金利が適用されていますが、不動産投資ローンは約1.5%~約4.5%と高くなります。

返済期間についても、住宅ローンは完済時の年齢などで最長35年が適用されますが、不動産投資ローンは法定耐用年数が重視される傾向があり、住宅ローンよりも短くなるのが一般的です。

そのため住宅ローンよりも不動産投資ローンのほうが、返済金額が高くなり家賃収入とのバランスにもよりますが返済負担は増加します。

不動産投資ローンの選択にあたっては金利がもっとも重要なポイントです。「INVASE不動産投資借り換え」では、住宅ローンから不動産投資ローンへの借り換えをサポートしてくれます。借り換えを検討する際はぜひ活用をおすすめします。

借り換え手数料がかかる

住宅ローンから不動産投資ローンに借り換える場合、手続きは次のような流れになります。

1.不動産投資ローンの申し込み
2.不動産投資ローンの審査
3.審査が承認されたら不動産投資ローンの金銭消費貸借契約締結
4.住宅ローンの一括返済を予約
5.不動産投資ローンの融資実行日に合わせて住宅ローンの一括返済
6.上記と同時に住宅ローンの抵当権解除登記と不動産投資ローンの抵当権設定登記

つまり、住宅ローンの金銭消費貸借契約が終了し、同時に不動産投資ローンの金銭消費貸借契約が新たにスタートします。どちらも金融機関には手数料の支払いが発生しますし、抵当権の解除設定の登記費用もかかります。不動産投資ローンが保証付きローンの場合は保証料もかかります。

さらに金銭消費貸借契約には印紙税もかかり、融資金額にもよりますが、諸費用として合計数十万円になることもあるため、事前に確認しておくことが必要です。

審査が厳しくなる

不動産投資ローンは住宅ローンよりも審査が厳しくなります。理由は住宅ローンと異なり、事業性の融資であるためです。

審査が厳しい理由の1つとして、前述した投資物件への不適正利用があった時期とほぼ同じころ、一部民間金融機関の不正融資などがあり、金融機関の融資姿勢が厳しくなったことも影響しているようです。

また審査においては、ほかの借入状況や勤続年数などに加え、担保評価や収支計画なども住宅ローンとは異なる審査基準があります。

たとえば、住み替え先の家賃は支出となるので、収入に対する支払い比率が高まり、返済能力をより厳しく審査される可能性もあります。

住宅ローン控除が受けられなくなる

住宅ローンの借入があれば「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」が受けられ、所得税などから税金が控除されるのですが、居住していない場合は受けられなくなります。

給与所得額にもよりますが、現在は最大40万円が控除される措置になっています。これまでは受けられた住宅ローン控除が受けられなくなるので、家計にも大きな影響がでる可能性があるでしょう。

すぐに賃貸を解除できるわけではない

転勤の期間だけ賃貸にし、戻ってきたら賃貸借契約を解除して、またマイホームとして住めるのが理想です。しかし、このようなことは大変難しいのが実情です。

住宅の賃貸借契約は「借地借家法」により、所有者である賃貸人よりも賃借人である入居者の権利が保護されます。賃貸人からの賃貸借契約解除には大きな制限があり、簡単に契約を終了させて退去してもらうことはできません。

そこで「定期借家契約」により賃貸借契約を締結する方法があります。定期借家契約は契約期限が到来すると契約を終了させることができる方法です。ただし、定期借家契約には契約の方法などに細かなルールがあり、簡単ではありません。「リロケーション」という方法があるので、ぜひ参考にしてください。

管理の手間や空室リスクがある

賃貸にするといっても、簡単なことではありません。入居者募集から賃貸借契約、そして入居中に起こるさまざまなトラブルや、入居者が決まらず空室がつづくなど、大家さんとしての悩みが必ず生まれます。

手間をかけずに家賃収入を得ようとすると、管理会社に管理委託をしなければなりません。管理会社に依頼するには、当然ですが管理料を支払わなければなりません。管理料の支出によって収支バランスが悪化することもあるでしょう。

賃貸と売却、どっちがよい?

転勤などで住めなくなる自宅を賃貸にする以外に、売却することも選択肢としてあります。どちらがよいのか考えてみましょう。

賃貸と売却のメリット・デメリット比較

賃貸にする場合と売却する場合、どちらにもメリットとデメリットがあります。
メリット
賃貸・愛着のあるマイホームを手放す必要がない
・十分な家賃収入が見込めれば副収入になる
・老後の資産形成に役立てることができる
売却・住宅ローンの借入がなくなるのでマイホームの計画を新たに立てられる
・賃貸にする場合や空き家のままにする場合のメンテナンスを考えなくて済む
・売却代金からローンの残債務や諸費用を支払っても売却益が大きいと、自由に使える資金を獲得でき、しかも一定金額以内であれば課税もされない
デメリット
賃貸・空室リスクを抱えメンテナンスの費用もかかり、手間や煩わしさがある
・住宅ローンの切り替えや不動産投資ローンへの借り換えなど、費用と手間が余分にかかる
・家賃収入がなくなると、ローンの返済を自己資金からしなければならない
売却・新しく住宅を取得する時に金利が上昇していると資金計画が不利になる
・将来地価の著しい上昇がある地域の場合は将来利益を失うことになる
・急いで売ろうとすると売買価格が下がる可能性がある
・売却代金で住宅ローンの返済ができない場合は自己資金の持ち出しをしなければならない

賃貸と売却を迷う場合の判断ポイントとは?

賃貸と売却、どちらにもメリットとデメリットがあり、判断に迷うことが多いと思われます。その際、どのような考え方をするとよいか、3つのポイントをお伝えします。

1.資産価値を考える
2.家族の将来計画を考える
3.住宅ローンの残債務と家賃相場を考える

将来は絶対に戻ってきたいと思えるほどの好立地であり、売却して新たに同じような物件を取得すると、費用が高くなってしまいます。そのような場合には、賃貸にして手放さないのがよいでしょう。ただし、住宅ローンの返済額と自宅付近の家賃相場を検討し、家賃収入で無理なく返済をつづけていけるのか判断することが必要です。

賃貸にしてもローン返済額に満たない家賃しか見込めない場合は、将来戻ってきたいという思いが強くても手放すことが望ましいです。まずは自宅の現在の売却価格がどれくらいになるのか、ご自身で相場を調べてみると同時に、プロである不動産業者の査定を依頼して比較検討してみることをおすすめします。

査定額は不動産会社によって違うので
複数社の内容を比較するのがおすすめです!

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よくある質問

住宅ローンのある自宅を賃貸にする際、心配な面もいろいろとでてくるでしょう。このようなケースで、よくある質問と回答を紹介しますので参考にしてください。
住宅ローンで購入した住宅を賃貸にすると、金融機関に知られることはあるの?
住宅ローンで取得した住宅を賃貸にしていることを、金融機関が調査することはまったくないとはいえません。ローン返済を延滞することがあった場合や、たまたま発覚することはありえます。
賃貸にしていたことが金融機関に知られた場合はどうしたらよいでしょうか?
契約違反により一括返済を求められるので、契約違反状態を是正するか一括返済に応じるしかありません。契約違反の是正とは賃貸借契約の解除をしなければならず、ほとんど不可能です。そのため、不動産投資ローンに借り換えるなど、住宅ローンを一括返済する必要があります。
賃貸にする時の手順と注意点は?
賃貸にする場合に最優先でやるべきことは、金融機関への連絡です。例外的に賃貸利用を認める場合もあり、賃貸用ローンの切り替え、あるいは不動産投資ローンに借り換えるなど、住宅ローンを適法な状態にしなければなりません。その後は賃貸住宅にする手順に移ります。

・賃貸条件の設定
・賃借人の募集方法
・賃貸管理の方法
・賃貸借契約の型式

賃貸住宅にする場合には、このような点について検討しなければなりません。詳しくは「持ち家を貸し出す時の方法」を参考にしてください。

まとめ

住宅ローンの返済途中であっても自宅を賃貸にする方法はあります。賃貸にしなければならない事情が発生した時は、すみやかに金融機関に相談しましょう。金融機関や事情によっては、住宅ローンの返済をつづけながら賃貸にすることも可能です。住宅ローンでは認められない場合は、賃貸住宅向けローンや不動産投資ローンに切り替える方法もあります。

自宅の資産価値や将来の計画、そして住宅ローンの残債と家賃相場によっては、売却するほうがお得な場合もあるので、この記事を参考に検討してください。

住み替えのとき、住宅ローンの残った持ち家をどうする?
賃貸か売却か、比較検討してみましょう。

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弘中 純一
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宅建取引士・一級建築士として住宅の仕事に関り30年。住宅の設計から新築工事・リフォームそして売買まで、あらゆる分野での経験を活かし、現在は住まいのコンサルタントとして活動中。さまざまな情報が多い不動産業界で正しい情報発信に努めている。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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