路線価をもとに実勢価格を自分で調べたら
査定価格とかけ離れていないか確認しましょう!
目次
「路線価」と「実勢価格」とは

「公的機関が発表している地価」はいくつかあり、一物四価ともいわれます。この4つの公的地価とは別に、実際の取り引きで売買された価格のことを「実勢価格」と呼び、5つの指標をまとめて一物五価と呼ぶこともあります。
それぞれの地価には、算定方法や主な用途などに特徴があり、目的によって使い分けられていることを理解しておきましょう。
主な用途 | 評価水準 | 価格時点 | 公表日 | 所管 | |
---|---|---|---|---|---|
実勢価格 | 土地の売買 | 時価 | 随時 | 随時 | |
公示地価 | 土地の売買、公的な取り引き(土地の収用など) | 実勢価格の約90~100% | 毎年1/1 | 毎年3月中旬 | 国土交通省 |
路線価 | 相続税・贈与税のための評価 | 公示価格の約80% | 毎年1/1 | 毎年7月初旬 | 国税庁 |
固定資産税評価額 | 固定資産税評価 | 公示価格の約80% | 1/1 | 3年に1回、4月初旬 | 市区町村 |
基準地価 | 土地の売買 | 公示価格とほぼ同等 | 毎年7/1 | 9月中旬 | 都道府県が調査主体で国土交通省が集計 |
相続税や贈与税の指標になる路線価
路線価は相続税評価額とも呼ばれる通り、相続税や贈与税の算定の基準になる公的な地価です。路線価は国税庁によって評価が行われ、公示価格の約8割程度の価格となっています。
路線価に奥行価格補正率表や不整形地補正率表の数値を使って調整計算し、土地の立地や形状を加味した土地の評価額を算出します。なお、路線価がないエリアもあり、その場合には、固定資産税評価額を活用して土地の査定価格を決定する場合もあります。
実勢価格とは実際に市場で取引される価格
過去の土地の取引データは国土交通省の「土地総合情報システム」で調べることが可能です。所在地や条件から絞り込んで検索をかけると、周辺地域での不動産取引の価格や土地の広さや坪単価、形状、前面道路の条件などが表示されます。しかし地域によっては参考例が少ない場合もあるのが難点と言えるでしょう。
実勢価格の目安は路線価から計算できる
路線価図の見方と計算方法

路線価図の見方

出典:路線価図・評価倍率表|国税庁

出典:路線価図・評価倍率表|国税庁

出典:路線価図・評価倍率表|国税庁

出典:路線価図・評価倍率表|国税庁
また、数字の横に書いてあるアルファベットは借地権割合を表しており、路線価図の右上部にある表(エ部分)から、借地権割合を読み取ります。借地権割合とは、大まかにいえば、土地を貸している場合に、土地を借りている人が得られる権利割合です。Dは借地権割合が60%であるため、土地を借りている人は60%、土地を貸している人は40%の権利割合を有しているということになります。
記号 | 借地権割合 |
---|---|
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
路線価図がない地域
路線価を使って実勢価格を求める計算式
路線価方式で土地評価額を求めるには
奥行価格補正率は、土地の道路からの奥行きによる影響を調整するものです。地区ごとに奥行き距離によって、数値が決められています。数値は、国税庁ホームページから確認することができます。
土地評価額から実勢価格の目安を求めるには
先述したように、路線価による土地評価額は、あくまでも相続税や贈与税の計算の基準となる価格です。路線価による土地評価額から算出した実勢価格を1つの目安として、実際の類似物件がどれくらいの価格設定をしているかを見てみると、相場をつかむヒントになるでしょう。
路線価を用いて実勢価格を求める時の注意点

路線価には実際の土地の特性や時勢が加味されていない
土地には2つとして同じ条件のものは存在せず、広さ、向き、隣地の条件、履歴、建物の価値などにより、売りやすさは変化します。周辺地域の開発状況や経済情勢によっても不動産の需給は変化し、価格に反映されることを念頭に置き、路線価から算出した数値は参考程度にとどめるくらいが丁度よいでしょう。
実勢価格は土地の広さに比例して高くなるとは限らない
より正確な実勢価格を調べるには査定を受けよう
不動産価格に関する疑問は不動産会社に相談してみては?
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よくある質問

- 公示価格とは何ですか?
- 公示地価は、国土交通省が毎年3月に公表している土地(標準地)の1月1日時点の価格です。標準値は全国2万3000カ所が選ばれ、不動産鑑定士によって評価されます。各都道府県が9月に発表する基準地価(価格時点は7月1日です)と合わせて、土地売買の参考指標とされるものです。
- 土地の売り時はどのように調べればよい?
- 土地の実勢価格は需給のバランスによっても推移していくものです。不動産価格の変動要因としては経済環境や人口動態も挙げられます。公示地価や「不動産価格指数」、レインズの不動産市場動向などを参考に、価格動向の予測を立てられるとよいでしょう。詳しくは不動産価格推移の記事をご覧ください。
- 建物の価格はどのように決まるのですか?
- 建物については、固定資産税評価額も1つの目安となりますが、築年数が価格決定の大きな要因となります。たとえば、木造一戸建ての場合、耐用年数が22年であることを考慮すると築年数が25年を超えてくると建物価値はゼロに近い額として算定されます。実際には、建物の状態や取引事例を考慮して売却価格を決めていきます。
このように、とくに築古の一戸建てにおいては、不動産の売却価格の多くを土地の価格が占めます。そのため、不動産の売却査定価格を自分で調べてみたいという場合、土地の価格を知ることが重要になります。
まとめ

とはいえ、大まかな目安を把握したうえで、不動産会社に査定を依頼する姿勢は、判断軸を持つために有効です。自分なりの目安をもつことで、机上査定の結果が安すぎたり、高すぎたりしたときに、疑問を持つこともできます。見慣れない路線価図を探したり、読み込んだりするのは難しいと感じる方もいるかもしれませんが、ぜひ、計算にチャレンジしてみましょう。
路線価をもとに実勢価格を自分で調べたら
査定価格とかけ離れていないか確認しましょう!

監修吉崎 誠二
【資格】宅地建物取引士
不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。
吉崎誠二公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/
路線価図の見方は、一見ややこしそうですが、慣れるとそれほど難しくありません。以下の文章をよく読み、実際に所有している不動産があれば、それを例として、自ら路線価を算出してみてください。手を動かすことで、理解が深まります。