田舎の家を相続したものの、住む予定も活用予定もなく、ただただ固定資産税の負担だけが大きいと感じてしまっているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、空き家の固定資産税をできるだけ減らしたいと思っている方に向けて、セカンドハウスとして利用することで得られる減税策について、空き家と比較してどのくらい減税されるかといった点に触れながら解説していきます。
相続した不動産、空き家のままになっていませんか?
都心に住む子どもが実家を相続したケースなど、住むこともなく空き家として放置されているケースは少なくありません。こうした空き家は、所有しているだけで固定資産税がかかるほか、誰も住まない家はどんどん劣化していき、雑草も生い茂ってしまうことから管理の手間も大きいものです。
空き家問題は少子高齢化の進む日本において年々進展しており、平成5年には448万戸だった空き家は平成30年に846万戸とおよそ2倍程度まで増えています。今後も空き家問題は深刻化していくことが想定されており、政府はこうした問題に対処するため、さまざまな施策を打っています。そうした施策の1つとして2015年に空き家対策特別措置法が制定されました。
これにより、管理されていない空き家について行政から「特定空家等」に指定されると、通常の住宅であれば適用を受けられる固定資産税の減税措置を受けることができなくなり、最大で固定資産税が6倍になってしまう可能性があります。
空き家を活用する方法
空家対策特別措置法により特定空き家に指定されないためには、売却するか、何らかの方法で活用することが一番です。とはいえ、田舎の空き家はなかなか買い手がつかないことも多く、また思い出のある実家を売却したくないという方もいらっしゃるでしょう。一方、空き家を活用すれば実家を残すことはできます。
空き家の活用法には賃貸に出したり、公的活用してもらったりといった方法などさまざまありますが、この記事では、この中でもセカンドハウスとして利用する方法についてご紹介していきます。セカンドハウスとしての利用であれば、実家の思い出を残しておきたいという望みも実現しやすいですし、最近では都心に拠点を持ちながら田舎で暮らすといった2拠点での暮らしも人気です。
セカンドハウスってなに?
セカンドハウスというと別荘と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、厳密にはセカンドハウスと別荘は異なります。セカンドハウスとは、遠距離通勤のため、勤務先近くの平日寝泊まりするための住まいや、週末を家族と過ごす郊外の住まいなど、日常的に利用する住宅のことを指します。
一方、別荘とは日常的に使うものではなく、保養を目的としたもののことで、たとえば夏休みや冬休みだけ利用するようなケースを想定するとよいでしょう。ちょっとした違いのようにも思えますが、家がセカンドハウスとして認められるか、別荘と判断されるかによって税制の取扱いの違いが異なります。
セカンドハウスは税制面でメリットが大きい
住宅がセカンドハウスとして認められると、固定資産税や都市計画税の軽減措置を受けることができます。一方、別荘の場合はこれらの軽減措置を利用することはできません。
固定資産税の減額
固定資産税とは不動産の1月1日時点の所有者に対して課される税金で、固定資産税評価額×1.4%の税金を支払う必要があります。この固定資産税について、セカンドハウスとして認められることで下表のように軽減措置を受けられます。
たとえば、土地面積200m2の物件について固定資産税が1,200万円の物件であれば
1,200万円×1.4%=16.8万円の税金が課されることになりますが、軽減措置の適用を受けることで税負担は2.8万円となります。
200m2以下の部分 | 200m2超の部分 |
---|
1/6 | 1/3 |
都市計画税の軽減措置
また、市街化区域内にある土地の場合、固定資産税評価額×0.3%の税金が課されることになりますが、セカンドハウスとして認められることで下表のように軽減措置を受けることができます。たとえば、200 m2で固定資産税評価額が1,200万円の土地の場合、通常であれば1,200万円×0.3%=3.6万円の税金を納める必要がありますが、軽減措置を受けることで1.2万円の税負担に抑えることができます。
200m2以下の部分 | 200m2以下の部分 |
---|
1/3 | 2/3 |
セカンドハウスにも住民税はかかる
居住している自治体に対しては住民税を納める必要がありますが、別荘やセカンドハウスの場合も住民税を納める必要があります。ただし、別荘やセカンドハウスでは住民税の内均等割のみの負担となります。均等割の負担額は全国一律で市町村民税3,500円と道府県民税1,500円を合わせた5,000円です。
セカンドハウスの優遇措置を受けるための手続き
固定資産税等の軽減措置を受けるためにはセカンドハウスとして認定される必要がありますが、このためにはどのような手続きをとる必要があるのでしょうか。具体的な手続き内容については自治体により異なるため、ここでは長野県の南牧村を一例にご紹介します。
まず、要件としては居住用の家屋である必要があり、事務所や店舗等は対象とならないほか、保養所など不特定多数の方が利用する場合も対象外となります。また、年間を通じて毎月1泊2日以上の利用があることが条件で、高速道路の領収書の写しや近隣市町村で買い物した際のレシートなど、毎月1泊2日以上の利用が分かる書類を添えて、「家屋の利用状況に関する申告書」を自治体の税務係まで提出する必要があります。
申請には期限があるので注意が必要
固定資産税の軽減措置については、所有者が変わるなどした翌年1月31日までに手続きを済ませておく必要があります。
それでもまだ固定資産税が支払えないときは
空き家をセカンドハウスとして利用することで固定資産税などの軽減措置を受けることができますが、軽減措置を受けてもなお固定資産税の支払いが厳しいという場合には、売却してしまうことも検討するとよいでしょう。売却して所有者が変わってしまえば、その翌年から固定資産税や都市計画税を支払う必要はなくなります。
空き家の売却については、立地など条件が厳しいこともありますが、自治体の空き家バンクが便利なほか、最近では民間の空き家ビジネスも積極的なので、そうした業者に相談してみるのもよいでしょう。
まとめ
田舎の不動産を相続した場合の、セカンドハウスとしての利用における固定資産税の軽減措置についてお伝えしました。相続した不動産は、空き家であっても、所有しているだけで固定資産税を支払う必要があります。毎月1回以上利用するなど、セカンドハウスとして利用することで、固定資産税の軽減措置を受けることができるため、覚えておくとよいでしょう。それでも固定資産税の支払いが厳しいという場合には、売却も視野に入れて検討することをおすすめします。
監修逆瀬川 勇造
【資格】AFP(2級FP技能士)/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。
大学在学中に2級FP技能士資格を取得。
大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。
●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。