自分・相手・世間|不動産の売却時期を決めるための“3つの知る”

2024.06.12更新

この記事の監修者

坪 義生
坪 義生

社会保険労務士/宅地建物取引士

自分・相手・世間|不動産の売却時期を決めるための“3つの知る”

「自分にとって良い条件」で家を売るには、買い手の事情と不動産売却の市場について知っておく必要があります。

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目次

「売れる時期」を考えたことはありますか?

「売却」と「購入」のタイミング 」の記事で、「自宅を買い替える場合、住んでいる家を売るのが先か、それとも新しい家を買うのが先か」についてお伝えしましたが、この記事では、「売れる時期」について考えてみましょう。

売却は、売り手と買い手の意思の合致で成立する

「自宅を売却したい」そう思い立ったあなたは、何から始めるのでしょうか。「不動産会社に売却依頼をする」。その通りです。不動産取引のプロに買い手を見つけてもらい、売買契約を成立させてもらわなければなりません。

ですが、あなたがもし「よりよい条件で売却したい」と考えるのであれば、不動産会社を訪れる前にやっておくべき事前準備があるのです。

不動産を売買するには、買い手が必要です。これは、マンションも一戸建ても土地もすべて同じです。売り手であるあなたに事情があり、売りたい自宅に特長があるように、買い手にもそれぞれの事情があります。

どれほど「すぐに売りたい」と焦っても、買い手がいなければどうしようもありません。あなたの希望通りの条件で売却するには、相手の事情と不動産売却をとりまく環境をしっかり勉強しておくことが大切です。

売却にかかる期間の目安

売却したいと思い立ってからすぐに買い手が見つかればいいですが、なかなかそういうわけにもいかず、売却には3~6か月かかることが一般的です。

初めの3か月で買い手が見つからなければ、次の3か月で価格設定を見直したり、広告に掲載する写真を変えたりといった方法を取りながら成約に向けて販売活動を続けます。

また、販売活動開始時期によっても売却にかかる期間は変わるため、売却を急いでいるようであれば、引越しシーズンと言われる3月や9月前後を狙って販売活動を始めると良いでしょう。

早く売りたい場合は買取という選択肢も

とにかく早急に不動産を売却したいと考えているのであれば、不動産会社に買取をお願いするのもひとつの方法です。買い手を探す手間も省けるほか、すぐに売却に結び付けることができるため、買取は売却を急いでいる人に適した方法でしょう。

ただし、買取価格は通常の売却価格よりも低くなってしまう点には注意が必要です。希望する売却時期や売却価格など、事前に不動産会社に相談しながら買取をお願いするか否か判断することをおすすめします。

希望どおりの売却に必要な「3つの知る」

売却したいのは、あなた。売却したいのは、あなたが所有する物件。そして、買ってくれるのは見ず知らずの他人です。希望どおりに売却するには「3つの知る」を意識します。

「3つの知る」とは、「自分を知る」「相手を知る」「世間を知る」です。自分の事情と自宅の特長を把握し、自宅を買ってくれるであろう相手を研究し、買い手となる相手が多く市場に出てくる時期に売却を仕掛ける。これが、売れる時期をつかむセオリーです。

よりタイミングを見逃さないようにするためには、景気動向、市況、金利、税制など、世間の条件の情報収集も欠かせません。「3つの知る」を実践し、希望条件を高いレベルで満たす売却時期を見定めてください。「3つの知る」を見ていきましょう。

「自分を知る」「自宅の特長を知る」

あなたが、自宅を売却したい理由は何でしょうか。売却希望時期はいつでしょうか。どのような条件で売却したいのでしょうか。「売れても売れなくても大した問題ではない」「相手が見つかればいつでもよく、時期にはこだわらない」「希望の売却条件はとくにない」、このような状態であれば相手は見つかりません。

売却するには、明確な目的と目標が必要です。「売れなくてもいい」「いつでもいい」と考えていると、購入希望者が現れても決断できません。仲介業者も、優柔不断さに付き合ってくれなくなるでしょう。

事前準備段階で、何のために売却するのか、いつまでに売却し、引越しをしたいのか、など目的や目標時期を具体的にしておくことが何よりも大切です。

自宅の特長も把握しておきましょう。買い手を探す際は、広告が一般的です。

「5LDK一戸建て、○○万円で販売中」という告知よりも、「教育環境は○○、住環境は○○。子育てファミリーに最適な環境の東南角地・5LDK・一戸建てが○○万円!」と言われると、子どものために広めの住宅を探している人の心に響くメッセージとなるかもしれません。

自宅の特長とターゲットを把握し、的確に伝えることがポイントです。広告も業者に任せきりにせず、自宅を知り尽くしているあなただからこその魅力を伝えましょう。

修繕履歴をも合わせて確認

上記の住宅の特徴と合わせて修繕履歴についても伝えるようにしましょう。とくに、築10年以上経っている場合、まったく修繕がされていない物件と、修繕がされている物件とでは、買い手の物件への印象は変わるものです。過去に修繕した部分があるのであれば、いつどこをどのように修繕したのか詳細を伝えることが大切です。

「相手を知る」「マーケティングする」

「自分を知る」で自宅の特長が明確になれば、自宅がどのようなターゲットに向いているか、どのような相手が買ってくれそうかの目途がつきます。

ファミリーか、ディンクスか、それともシングルか。若い人か、シニアか。勤め人か、自営か。自宅か、セカンドハウス利用か。などです。さらに、どのような節目で住宅を購入しようとしているのかも想像してください。

【参考例】相手が購入を検討するシーン

サラリーマン転勤
若い人独立、結婚
ファミリー子供の成長や進学のタイミング
シニアリタイアを機に
景気動向住み替えて住居費の削減を図る
税制の動き消費税導入前に、税制の適用条件が良いタイミングで

上述の「相手を知る」場面で、自宅の特長に応じたターゲットが明確になったら、次のステップは「相手が動く時期」のチェックです。不動産は春に大きな動きがありますが、上記の参考例でわかるように、転勤、進学、税制の適用要件などは、年度の変わり目がポイントです。

また、結婚というライフイベントにおいても、結婚式シーズンがあり、真夏や真冬は避けられる傾向にあります。転勤が直前に辞令が出ることが多く、時間が予見しにくいのに対し、子どもの進学時期はわかっているため、相手は余裕を持って新居を探し始めます。

あなたの自宅のターゲットは、転勤者でしょうか。それとも子育てファミリーでしょうか。状況が把握できれば、ターゲットにあわせた告知時期を検討すべきです。

結婚に伴う新居探しにも共通しますが、よほどの事情がない限り、結婚や子どもの進学に伴って、直前に新居を探し始めて契約し、引越しするのはレアケースでしょう。

であれば、それぞれのライフイベントのオンシーズン前に広告を出すことが大切です。仲介する不動産会社にとっては常識とも言えますが、業者任せにせずにあなた自身も知っておきましょう。広告には、物件のよさを最も知るあなたが選んだ写真を掲載してもらうことが効果的です。

「世間を知る」

3つ目の知るは「世間を知る」です。過去を振り返ると、景気動向、金利動向、税制などの変化とともに、不動産市場動向は大きく変わってきました。

たとえば、消費税増税が目の前に迫ったとき、住宅ローンが低金利となったとき、株価が持ち直したときなどを機に、住宅購入意欲が急激に高まり、不動産市場は活性化しました。

また増税に伴う住宅購入支援策として、住宅ローン控除の対象額が大きく引き上げられたときも同様の影響がありました。このように市況をつくる要因は世間の条件によって形作られていきます。

「世間を知る」際に大切なのは、今、どのような時期なのかアンテナを張りつつ、どう活用するか考えることと、さまざまな条件を自分と売却対象の自宅の場合にあてはめて考えることです。

たとえば、増税直前では購入検討者は増えますが、他の売却希望者との競争も激しくなることも考えられます。確実に売るためには、少し早めに行動することをお勧めします。資産価値の高いマンションであれば、需要の高い時期の方が高値が期待できるでしょう。

そこで大切なことが「自分を知ること」です。「自分を知る」ことがしっかりとできていれば、世間の条件に振り回されることはないのです。

自分の「売れ時」を意識しよう!

「よりよい条件で売れる時期に売る」ことが理想であり、そうしたいと誰もが願うところです。この「よりよい条件」とは、「自分にとってよい条件」であることが重要です。

売りたい時期が真夏や真冬と、いわゆるオンシーズンではなかったとしても、あなたがその時期に売却する必要があるならば、迷わずその時期に売り出しましょう。

まずは、「自分を知る」。何のために、いつ、売却したいのかを明確にして、あなたにとっての「売り時」「売れ時」を見極め、行動してください。

まとめ

売却時期を決めるために必要なことについてお伝えしてきました。不動産売却の理想は、販売を開始したらできる限り早期に成約に結び付けることですが、これは、長期間売り出していると「売れ残っている物件」というイメージがついてしまい、余計に買い手が見つかりにくくなってしまう可能性があるためです。

スムーズに売却を行うためにも、自宅の特徴、買い手となるターゲット、不動産市場の動向の3つを把握し、販売活動を進めていきましょう。

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坪 義生
坪 義生

社会保険労務士/宅地建物取引士

明治大学政治経済学部政治学科卒業、千葉大学大学院社会科学研究科修士課程修了(経済学)。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、(株)矢野経済研究所(「住宅産業白書」、「出版社経営総鑑」、「コンピューター・サプライ市場の展望と戦略」を担当)等を経て、91年、じんじ労務経営研究所(社会保険労務士登録)を開設。同年より、「月刊人事マネジメント」取材記者として企業のトップ・人事担当者を中心に取材・執筆多数。

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