専門家に聞く!再建築不可物件は売れない?買取業者に断られた「負動産」を処分する現実的な選択肢とは

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この記事の監修者

秋津 智幸
秋津 智幸

公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士

専門家に聞く!再建築不可物件は売れない?買取業者に断られた「負動産」を処分する現実的な選択肢とは

【30代女性からのお悩み相談】石川県金沢市で、築60年超の再建築不可の実家と、畑・田んぼを相続予定です。地方で需要もなく、いわゆる「負動産」状態と感じています。複数の買取業者に問い合わせましたが、電話やメールの段階で断られてしまいました。相続放棄以外に手放す方法はないのでしょうか?

※本記事の相談は、実際にアンケートで募集した悩みを、要約・編集したものです。

【私が回答します!】 「故郷の実家なのに、価値ゼロどころかマイナスと言われてしまった…」そんな悲しみと戸惑いを抱える方は、実は少なくありません。本記事では、再建築不可物件がなぜ売れにくいのか、そして売却できない場合に検討すべき処分方法を、実務の現場に基づいて整理します。

秋津 智幸
秋津 智幸

目次

再建築不可物件でも売却は可能?実勢価格と需要のリアル

結論
再建築不可物件でも売却は可能ですが、需要は限られ、価格は大きく下がる傾向があります。
再建築不可物件とは、現在の建物をすべて解体すると、その敷地に新たに建物を建てられなくなる物件のことをいいます。主な原因は次の2つです。

・建築基準法の「接道義務」を満たしていない
・市街化調整区域など、用途制限のあるエリアに所在している

とくに多いのが接道義務によるものです。建物を建てる土地は、幅4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接している必要があります。この条件を満たさない土地では、新築が認められません。

再建築不可物件は本当に売れないのか?

再建築不可物件であっても、既存建物を利用する前提であれば売却は可能です。ただし、建物を新築できないという制約から一般的な住宅需要は見込めず、売却価格は周辺相場より2~5割ほど低くなることが多いのが実情です。
(※価格差は立地・建物の状態・用途によって大きく異なります)

一方で、駅に近い・市街地に近いなど立地条件が良い場合には、
・自己利用目的の購入者
・リフォーム前提の投資家
が、相場から2~3割安程度で取引されるケースもあります。

このように、利用価値が明確な物件であれば、一般市場での売却や、条件次第で買取業者の対象になることもあります。

「負動産」を手放す主な方法と優先順位

再建築不可物件などの「負動産」を手放す方法の代表的なものとしては、以下の選択肢が考えられます。重要なのは、すべてを同時に検討しないことです。

実務上は、以下の順で可能性を潰していくのが合理的です。
1.まず「売却できる可能性」がないか確認
2.次に「無償譲渡・農地としての処分」を検討
3.それでも難しければ「制度利用」
4.最後に「相続放棄」を判断

1.売却(買取)が難しい理由と注意点

価格を問わず買取業者から早い段階で断られる理由は、主に以下です。
・再販出口が見えない
・解体・測量・境界画定などのコストがかかる
・接道義務や農地法などの法的制約が多い

また、再建築不可物件では更地にしないほうが売却しやすいケースが多いという点も重要です。建物を解体してしまうと二度と建物が建てられず、リフォームや活用の選択肢が大幅に失われるため、利用価値を大きく損なってしまい、売却が難しくなる可能性があります。

2.無償譲渡・寄付という選択肢の現実

売却が難しい場合は、「無償譲渡」という選択肢があります。とくに隣地の所有者は有力な候補ですが、無償であっても以下がネックとなります。
・固定資産税・管理負担が増える
・増えた負担よりも利用価値があるかどうか

受け取り手にとってのメリット(敷地拡張、駐車場利用など)を具体的に示して、持ち掛けてみる価値はあります。
なお、自治体の「空き家バンク」などで譲渡先を募集することもできますが、
・建築年次が不明
・建築基準法等の法令違反の是正が困難
といった理由で登録できない場合も多く、再建築不可物件は対象外となるケースがあります。

さらに、「自治体への寄付」も管理負担の観点から受け付けられない場合がほとんどです。

再建築不可物件と田畑は切り離して処分法を考える方が得策です。農地は農地の種類や立地条件、現況など条件次第ですが、農地として売却や無償譲渡は可能です。売却や無償譲渡の可能性については、農地の取り扱いが可能な不動産会社に相談してみてもいいでしょう。

秋津 智幸
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3.「負動産」の処分で検討してみたい制度とは

売れない土地は国に返せる?相続土地国庫帰属制度

相続した不要な土地については、相続土地国庫帰属制度を検討できる場合があります。一定の要件を満たせば、負担金を支払って土地を国に引き取ってもらえる制度です。

しかしながら、実務上は、「国に返せるかも」という期待で進めると時間と費用だけがかかり、結局使えなかったというケースも少なくありません。
・申請時に審査手数料(1筆14,000円)
・承認後に負担金(市街地ではない宅地や田畑などは、原則20万円/筆)

※市街地の土地や森林などは、面積に応じて負担金が算定されます。
ただし、建物がある土地は原則として申請不可など、厳しい要件があります。たとえば、実家の家屋が残っている場合は、申請時の審査が通りません。また、更地にしたとしても、再建築不可の土地は申請後の実地調査で不承認となる可能性が高く、この制度は使えない可能性が高いため、事前に法務局での相談が必須です。

相続税の物納として納めることはできるか?

再建築不可物件や田畑は、相続税の支払いにあたって「物納」できるのでしょうか?

相続税は現金で納めるのが原則ですが、どうしても難しい場合は不動産などで納める「物納(ぶつのう)」が認められる場合があります。主な条件は以下の通りです。
・分割払い(延納)を利用しても、まだ支払いが困難である
・ほかに物納できる財産がない
条件を満たしたうえで、再建築不可物件は「物納劣後財産」として扱われる可能性があります。

したがって、再建築不可物件でも、相続人に金銭的な支払い能力がなく、他に物納できる財産がないときは物納できる可能性はあります。

ただし、所得税法の規定に基づく耐用年数を経過し、通常の使用ができない建物は物納対象外となる場合があるため、実務上はハードルが高い点に注意が必要です。

質問のケースの場合、まず相続人に相続税を支払う資力がない場合に限りますが、田畑は物納できる可能性があります。物納を検討する場合は税理士への事前相談は必須です。

秋津 智幸
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4.相続放棄は最終手段?管理継続との比較で判断する

売却・無償譲渡・制度利用のいずれも可能性が低いときは、不動産を手放す方法として相続放棄は現実的な選択肢です。押さえるべき注意点は以下です。
・相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立て
・相続財産を処分
(たとえば預貯金の払い戻しや遺産分割協議への参加など)すると「単純承認とみなされ、放棄不可になる可能性あり」
また、相続放棄をすると、最初から相続人でなかったことになります。そのため、本来自分が引き継ぐはずだった管理責任が他の親族に移ることになり、トラブルが発生する可能性があります。事前に親族全員で情報共有し、足並みをそろえることが大切です。

なお、「限定承認」という制度もありますが、「負動産」でも相続時点でプラス評価される可能性が高く、将来の管理負担は考慮されないため、実務上は不利になるケースが少なくありません。相続放棄にあたっては、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄は管理不能な「負動産」を次世代に残さないための合理的な回避策といえます。ただし、放棄前に処分行為とみなされる行動を取らないよう慎重に進める必要があります。

秋津 智幸
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まとめ

再建築不可物件や農地など、複数の不動産を相続する場合は、各々特徴が異なるので、まとめて考えず1つずつ切り分けて検討することが大切です。

・再建築不可物件は「売れる可能性の有無」を最初に確認
・農地は農地として別ルートで検討
・どうしても処分できない場合は制度や相続放棄を検討

相続は「何もせずそのままにしておく」ことが最もリスク化しやすいものです。早めに税理士や弁護士などの専門家に相談し、後悔のない選択を検討するようにしましょう。

「売れない」と言われた時点で、諦める必要はありません。
選択肢を正しい順番で検討することが、
負動産問題を解決するための近道です。
まずは今の不動産に「どんな選択肢が残されているのか」専門家に整理してもらいませんか?

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秋津 智幸
秋津 智幸

公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/AFP/2級FP技能士

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。横浜国立大学卒業。

神奈川県住宅供給公社を経て、不動産仲介業者に従事した後、2011年に個人事務所として不動産サポートオフィスを開設。自宅購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム、記事等の執筆・監修にも取り組んでいる。

主な著書に「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)などがある。

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