両手仲介の裏側とは?囲い込みや値引きの実態、片手仲介との違いも解説

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この記事の監修者

桝谷 浩太
桝谷 浩太

グローバルトラスト不動産株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

両手仲介の裏側とは?囲い込みや値引きの実態、片手仲介との違いも解説

不動産売買における両手仲介と片手仲介の違いや、囲い込みのリスクについて詳しく解説します。

この記事のポイント
  • 不動産仲介には、1つの不動産会社が売主と買主の仲介を行う「両手仲介」と、売主側と買主側で異なる不動産会社が仲介を行う「片手仲介」があります。
  • 両手仲介では、不動産会社が売主から預かった物件を、自社の顧客のみに販売しようとする「囲い込み」が問題視されています。
  • 両手仲介は、適切に運用されれば売主・買主双方にとって有益な取り引きです。囲い込み防止には、信頼できる不動産会社選びが重要です。

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目次

両手仲介・片手仲介の違いは何?

両手仲介と片手仲介のもっとも大きな違いは、取り引きに関わる不動産会社の数にあります。それぞれの特徴は主に以下のとおりです。
両手仲介:売主と買主の両方を同一の不動産会社が仲介する取り引き形態
片手仲介:売主側と買主側でそれぞれ異なる不動産会社が仲介する取り引き形態
両手仲介は1つの不動産会社が売主からも買主からも仲介手数料を受け取る形態のこと。対する片手仲介では各不動産会社が売主または買主のどちらか一方からのみ手数料を受け取ります。

以下の章では、それぞれの仕組みやメリット・デメリット、手数料の詳細について詳しく解説していきます。

両手仲介とは

両手仲介について、仕組みから手数料までまとめてみました。

両手仲介の仕組み

両手仲介は、1つの不動産会社が売主と買主の両方の仲介を行う取り引き形態です。不動産会社は売主から売却の依頼を受け、同時に買主を探して物件を紹介します。

詳しくは後述しますが、両手仲介には以下のようなメリット、デメリットがあります。
【メリット】
● スムーズな取り引きが可能
● 売主と買主の意思疎通がしやすい
● 手数料の交渉余地
● 買主の資金計画や検討度合が詳細に分かりやすい

【デメリット】
● 利益相反の問題
● 囲い込みのリスク
● 客観的な判断の困難
つまり、両手仲介はスムーズな取り引きと手数料面でのメリットがある一方で、透明性や公平性に課題があるといえます。

両手仲介の手数料とは

両手仲介の場合、不動産会社は売主と買主の両方から仲介手数料を受け取ります。具体的な手数料計算例は以下のとおりです。
【3,000万円の物件を両手仲介で売買する場合】
売主が支払う手数料:3,000万円×3%+6万円+消費税=105.6万円
買主が支払う手数料:3,000万円×3%+6万円+消費税=105.6万円
不動産会社の総収入:211.2万円
このように、両手仲介では不動産会社の収入が片手仲介の2倍になるため、積極的に両手仲介をすすめる不動産会社がほとんどです。

片手仲介とは

続いて、片手仲介の仕組みから手数料まで見ていきましょう。

片手仲介の仕組み

片手仲介は、売主側と買主側でそれぞれ異なる不動産会社が仲介を行う取り引き形態です。売主側の不動産会社(売主側仲介業者)は売主の利益を最優先に、買主側の不動産会社(買主側仲介業者)は買主の利益を最優先に取り引きを進めます。

片手仲介には以下のような以下のようなメリット、デメリットがあります。
【メリット】
● 利益相反の回避
● 売主側の要望を最優先
● 透明性の確保
● 囲い込みの防止

【デメリット】
● 連絡の複雑化
● 情報の食い違い
● 手数料の値引き交渉が難しい
このように、片手仲介は公平性と透明性に優れる一方で、連絡面や手数料交渉で課題があるといえるでしょう。

片手仲介の手数料とは

片手仲介の場合、各不動産会社は売主または買主のどちらか一方からのみ仲介手数料を受け取ります。具体的な手数料計算例は以下のとおりです。
【3,000万円の物件を片手仲介で売買する場合】
売主が売主側の不動産会社へ支払う手数料:
3,000万円×3%+6万円+消費税=105.6万円

買主が買主側の不動産会社へ支払う手数料:
3,000万円×3%+6万円+消費税=105.6万円
各不動産会社の収入:105.6万円
片手仲介では、各不動産会社の収入が両手仲介の半分になるため、より多くの取り引きを成立させる必要があります。

両手仲介の問題点は2つ

両手仲介における主な問題点は以下の2つです。

問題点①利益相反

両手仲介の最大の問題は「利益相反」です。

本来、不動産仲介会社は依頼者の立場に立って最善のサポートを行うことが求められます。しかし、両手仲介では売主と買主の両方から手数料を受け取るため、どちらの利益を優先すべきか曖昧になってしまいます。

たとえば、売主は「できるだけ高く売りたい」と考え、買主は「できるだけ安く買いたい」と考えます。通常であれば、売主側の仲介会社は売主の利益を、買主側の仲介会社は買主の利益をそれぞれ代弁します。

ところが両手仲介では、1つの会社が相反する利益を同時に代弁しなければなりません。この結果、どちらの利益も中途半端になり、適正な価格交渉が行われない可能性があります。

とくに、仲介会社が自社の利益(両方からの手数料)を優先し、早期成約を重視するあまり、依頼者の利益が軽視されるケースも少なくありません。

問題点②囲い込み

両手仲介において、とくに問題視されているのが「囲い込み」です。

囲い込みとは、不動産会社が売主から預かった物件を、ほかの不動産会社に紹介せず、自社の顧客のみに販売しようとする行為です。具体的な手口としては以下のようなものがあります。
●法定期限内にレインズ(不動産流通機構)へ売主の許可なく一定期間登録しない

●登録しても詳細情報を掲載しなかったり、故意に不正確な情報を掲載する

●ほかの不動産会社から「この物件を案内したい」と連絡があっても、「すでに申し込みが入っている」「売主が不在にしている」などの理由で断る

●自社の購入希望者と他社の購入希望者が重なった場合に、自社の購入希望者の方が購入価格が低いにもかかわらず、他社の購入希望の情報を売主に報告せずに契約締結を進める
囲い込みが行われると、売主にとって不利益が生じます。本来であれば多くの購入希望者の中からもっともよい条件の買主を選べるはずが、選択肢が狭められてしまいます。

結果として、売却価格が相場より安くなったり、売却期間が長期化したりするリスクが高まります。

このような問題を避けるためには、不動産会社選びの際に両手仲介の方針について確認し、透明性の高い取り引きを心がけている不動産会社選びが大切です。

両手仲介は悪いことではない!

両手仲介を行うと、民法108条に定める「双方代理の禁止」に該当して違法だと思われがちですが、実際は違法ではありません。

なぜなら、不動産売買における仲介会社の契約は「媒介契約」であり、売主や買主の代理人となる「代理契約」とは異なるからです。

媒介契約では、不動産会社は売主と買主の取り引きを仲立ちする立場であり、どちらか一方の代理人として行動するわけではありません。そのため、宅地建物取引業法でも両手仲介は認められている正当な取り引き形態となっています。

問題となるのは両手仲介という仕組み自体ではなく、その運用方法です。囲い込みのような不適切な行為が問題であって、適切に運用されれば両手仲介も有効な選択肢となります。重要なのは、透明性を保ち、売主・買主双方に対して公平なサービスを提供する会社を選ぶことです。

両手仲介にはメリットもある

両手仲介には次のようなメリットもあります。

両手仲介を行っている会社は大手が多い

両手仲介を積極的に行っている不動産会社は、大手企業が多い傾向にあります。大手不動産会社は豊富な顧客データベースを持ち、過去の取り引き実績から顧客のニーズを把握しやすいことが特徴です。

全国的なネットワークにより転勤などで遠方の物件を探している顧客にも対応でき、大手企業のブランド力と安心感により売主・買主双方から選ばれやすくなっています。

売主買主の意思疎通がしやすい

両手仲介では同じ担当者が売主と買主の両方を担当するため、意思疎通が取りやすくなります。売主と買主の条件や希望を同じ担当者が把握しているため迅速な調整が可能で、内見の日程調整や価格交渉などもストレスなく進むでしょう。

情報の伝達ミスや食い違いが発生しにくく、急な変更や追加要望にも迅速に対応できるのが大きなメリットです。

スムーズな売却が可能

両手仲介では売却物件の情報を社内で共有し、適切な買主候補を比較的早期に見つけることができます。希望条件に合った買主がいる場合はすぐに案内を開始できます。

また、両手仲介により利益が大きくなるため、不動産会社もより積極的な営業活動を行ってくれることが期待できるでしょう。

両手仲介は手数料の値引きがしやすい

両手仲介では不動産会社の収入が片手仲介の2倍になるため、手数料の値引き交渉に応じてもらいやすくなります。十分な利益が確保できるため、売主・買主双方の手数料を同時に値引きすることも可能です。

囲い込みを防ぐため、気を付けるべきポイント

両手仲介を利用する際は、囲い込みのリスクを最小限におさえるために、以下のポイントに注意しましょう。

両手仲介の場合、専任媒介契約は注意深く行う

両手仲介と専任媒介契約の組み合わせは、囲い込みが発生しやすい条件が揃っています。

専任媒介契約には積極的な営業活動や広告宣伝費の集中投入、レインズ(不動産流通機構)への登録義務、定期的な活動報告などのメリットがあります。しかし、契約期間中は他社に相談できず、囲い込みをされてもすぐに他社に変更することが困難になるでしょう。

対策として、契約前に売却戦略や広告方針を詳しく確認し、定期的な報告内容を事前に合意しておくことが大切です。

レインズ登録状況をこまめに確認する

レインズ(不動産流通機構)への登録は、囲い込みを防ぐための重要なポイントです。専任媒介契約では契約から7営業日以内、専属専任媒介契約では5営業日以内に登録される必要があります。

物件の詳細情報が正確に記載されているか、取り引き状況が通常は「公開中」のステータスになっている箇所が「売主都合で一時紹介停止中」など表示が不適切に使用されていないかを確認しましょう。また、他社に紹介用の販売図面が登録されているかもチェックしましょう。

不動産会社からレインズ登録証明書を受け取り、その後も定期的に登録内容をチェックすることが大切です。

販売状況の報告内容をよく確認する

専任媒介契約では、不動産会社は定期的に販売状況を報告する義務があります。

他社からの問い合わせ件数や内見希望者の数、広告・宣伝活動の状況などを詳しく聞きましょう。1か月以上他社からの問い合わせがゼロの場合や価格を大幅に下げる提案ばかりするといった状況は囲い込みの可能性があるため注意しましょう。

信頼できる不動産会社に相談をする

囲い込みを防ぐためには、信頼できる不動産会社選びが何より重要です。

まずは3~5社で無料査定を実施し、査定額だけでなく、その根拠をしっかりと比較検討しましょう。各社の売却戦略や提案内容を詳しく聞き、手数料や付加サービスの内容も確認することが大切です。

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会社選びの際は、過去の売却実績と成約率もチェックしましょう。インターネットでの口コミや評判も参考になります。担当者が宅地建物取引士の資格を持っているか、売主の立場に立って親身に相談にのってくれるかも重要なポイントです。

売却活動が始まってからも、進捗を定期的に報告してくれる会社なら安心です。契約内容や手数料について分かりやすく説明してくれる透明性の高い会社を選ぶようにしましょう。
とくに重要なのは、相談時に両手仲介・片手仲介についての会社の方針を必ず確認することです。囲い込み防止のための具体的な取り組みがあるか、レインズ(不動産流通機構)への登録や他社への情報提供をどのように行っているかも詳しく聞いておきましょう。

売却が長期化した場合の対応策についても事前に確認しておくことで、より安心して売却活動を進めることができます。

不動産の囲い込みを売主側が見抜くのは困難です。査定の際、営業マンが囲い込みをしないと話していても、実際には囲い込みをされていたケースもあります。
会社のホームページに囲い込みをしない方針や囲い込み対策について、しっかり記載されているか確認することも大切です。

桝谷 浩太
桝谷 浩太

まとめ

両手仲介と片手仲介には、それぞれメリット・デメリットがあります。両手仲介は確かに囲い込みなどのリスクがありますが、適切に運用されれば売主・買主双方にとって有益な取り引き形態です。

重要なのは、両手仲介そのものを避けることではなく、信頼できる不動産会社を選び、囲い込みなどの問題を防ぐための対策を講じることです。

不動産売却や購入を検討している方は、この記事で紹介したポイントを参考に、慎重に不動産会社を選択し、透明性の高い取り引きを心がけてください。適切な知識と注意深い対応により、満足のいく不動産取り引きを実現できるでしょう。

実は、両手仲介はメリットの多い取り引き方法。
信頼できる不動産会社を選べば囲い込みも怖くありません!

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桝谷 浩太
桝谷 浩太

グローバルトラスト不動産株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

三菱UFJ不動産販売、ソニー不動産(現SRE不動産)で主に居住用不動産の売買仲介を経験。その後、「透明性の高い不動産取引の仕組みをもっと世の中に広め、依頼を受けた顧客の利益を最大限追及する」ことを基本理念とし、2017年にグローバルトラスト不動産株式会社を創業する。

著書の「初めてでも安心!失敗しない家の売り方・買い方」はAmazonにてベストセラー3冠獲得。2か月後に増刷も決定。

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