【不動産投資】買ってはいけない土地12選|擁壁、接道など…見分け方を解説します

2024.06.21更新

この記事の監修者

吉崎 誠二
吉崎 誠二

不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

【不動産投資】買ってはいけない土地12選|擁壁、接道など…見分け方を解説します

不動産投資で目標を達成したい方に向けて、投資用物件として買ってはいけない土地のリスクや見分け方についてご説明します。

この記事のポイント
  • 一般的な不動産投資家が手を出すべきでない土地や物件があります。
  • お得だからといって購入してしまうと、トラブルが増えたり、キャッシュフローに影響したりで、売るにも売れなくなる可能性があります。
  • 見分け方を学ぶと同時に、信頼できる専門家やコンサルタントのセカンドオピニオンを利用するのもひとつの手です。

目次

一般の不動産投資家なら買ってはいけない土地/物件12選

デベロッパー企業などのプロの開発業者なら別ですが、一般的な不動産投資家の方が手を出すべきではない土地には以下のような条件が挙げられます。それぞれの特徴とリスクについてご説明します。

1.敷地内の傾斜が大きい土地

傾斜土地は、相対的にかなり安く買えることは魅力ですが、敷地内の傾斜が大きいと、平坦な部分が限られます。そのため建物の規模や設計内容が限定的になる可能性があります。

また、盛り土を行うことによって平坦な敷地にすることもできますが、コスト高に加えて、もしも不同沈下(建物が均等でなく一方向に偏って沈下・傾斜する状態)が生じた場合、大きな損害を及ぼすこともあり得ます。

2.境界が不明確な土地

何らかの理由により、境界が不明確な土地は存在します。隣地との境界があいまいなまま土地を取得すると、隣地とのトラブルにつながる可能性があります。

土地取得のときには問題がなくとも、後々に相続や売却の際に隣地に越境していることが判明すれば建物の撤去や金銭の支払いなどが必要になる場合があります。

また、取得前に境界確定のために土地家屋調査士に依頼し、境界確定をするのも一案ですが、隣地が境界確定に応じてくれないこともあり、時間やお金がかかり、根気がいる事態に陥ることもあります。

3.接道義務を満たしていない土地

建築基準法により、接道義務を満たしていない土地には建物を建てることができません。建築基準法で定める道路に土地が22メートル以上接していなければ建物を建ててはいけないという決まりになっています。

そのため、接道義務を満たしていない土地に建物を建てて収益を上げることはきません。また、接道義務を満たしているものの、旗竿地(はたざおち)となっている土地は工事車両の出入りが難しい可能性もありますので、工事費用が割高になる可能性があります。

4.私道を共有している土地

接道義務とも関わりがありますが、公道ではなく私道に面している土地があります。私道の所有者は1人ではなく、複数人で共有している場合もあります。共有の場合、私道そのもののみならず、道路の下にある水道管などのライフラインに修繕が必要になった場合、私道の共有者同士で費用を負担します。

その負担割合などでトラブルが生じる可能性もあるため、私道を共有している土地については明確な取り決めの有無や過去のトラブルについて入念な確認が必要となるでしょう。

5.地盤改良が必要な土地

地盤改良が必要な土地は、過去に水田や畑として使われていたなど地盤が軟弱な土地のことです。地盤改良を施さずに建物を構えると、不同沈下が生じる可能性もありあります。

地盤改良の費用は、広さにより大きく差が出ますが、工法や深度、規模にもよって異なります。少なくとも数百万円はかかると見ておくとよいでしょう。

6.古い擁壁がある土地

擁壁とは、がけ崩れを防止するために人工的に造られた構造物のことを言います。古い擁壁は現在の法律の要件を満たしていないこともあり、既存の物を壊して新たに擁壁を作り直さなくてはいけない場合もあります。

擁壁を作り直す費用は数百万から数千万円になることもあります。また、現在の法律の要件を満たしている擁壁の場合、災害などで崩れた際は火災保険が適用されますが、各保険会社の支払い基準を満たすか否かで、火災保険適用外になる場合もあるので注意が必要です。
※支払い基準については各保険会社によって異なりますので詳細はご確認ください。

7.災害リスクが高い土地

一口に不動産を取り巻く、災害には、火災、水災、地震、人災(窃盗など)と、さまざまなものがあります。ハザードマップの確認や建物の密集度、治安などの確認を行い、災害リスクが高い土地は買うのを敬遠したほうが無難です。

8.市街化調整区域の土地

都市計画法において市街化調整区域とは「市街化を抑制すべき区域とする」と規定されており、原則として住宅や商業施設を建築できません。地域によっては特例措置があり、建築できる場合もありますが、周りに生活利便施設が少ない可能性もあるので、不動産投資の用地としては適していないでしょう。

ただし、高速道路のICが新設される、新たなバイパスが建設される計画がある、といった今後周辺地域の発展可能性が見込める場合は、一転して「超ねらい目土地」ということになるでしょう。

吉崎 誠二
吉崎 誠二

9.三叉路の物件

三叉路(さんさろ)とは、道が3つの方向に延びている交差点のことです。三叉路に面した土地は狭小である可能性もあり、入居者の安全面や生活環境に配慮した設計に苦慮する場合があります。

安全面に配慮した設計で建てても、交通量などにもよりますが、見通しの悪い三叉路に建物がある場合、自動車が建物に衝突してくる可能性も否めません。

10.日当たり・風通しが悪い物件

建物が密集しているなどして、日当たり・風通しが悪い土地は、建物の老朽化を進めてしまう可能性があります。そのため、修繕費を多く見積もっておきましょう。

また、日当たり・風通しの条件が悪い場合、家賃を周辺の家賃相場よりも低く提示しなければ入居者から敬遠される可能性もあります。

11.ご近所トラブルがある物件

ご近所トラブルといっても、その理由には人付き合いのトラブルをはじめ、近隣住民の騒音や悪臭、ペットの鳴き声、ゴミ出しマナーなどさまざまなものが挙げられます。そのような理由で空いている物件の場合、不動産投資のために取得しても、入居者に長く居住してもらえない可能性もあるでしょう。

12.事故物件

事故物件とは、「自然死や不慮の事故死以外の死」や「特殊清掃が必要になる死」が生じた物件のことを指します。売却の際には、仮に建物を解体して更地にしても告知義務が生じるため情報を知らずに取得するということはありません。

しかし、更地にしても周辺では心理的瑕疵(かし)があり、かつ事故物件をまとめているインターネットサイトも存在しているため、入居検討者から敬遠される可能性は十分にあります。

買ってはいけない土地を購入するリスク

先段にてご紹介した、買ってはいけない土地を購入するリスクについてご説明します。

客付けに影響する

集客できずキャッシュフローが悪化します。日当たりや風通しは、生活するうえで大切な要素です。そのほかにも、騒音などのトラブルに遭うことなく穏やかに暮らせる住環境を大切に考える入居者は多いでしょう。

しかし、買ってはいけない土地ではその条件を満たさない可能性も大いにあるため、入居検討者から敬遠され、家賃収入を得にくい状況となるでしょう。

トラブルへの対応が増える

買ってはいけない土地を取得しそこに建築すれば、不同沈下が生じたり、老朽化が進みやすかったり、という状況が生じれば、そのたびに対応が必要となり、費用もかさみます。その結果、家賃収入が得られていても支出が増えることによって、キャッシュフローへの影響も生じるでしょう。

出口戦略に影響する

買ってはいけない土地を取得することは、出口戦略にも影響します。不動産投資は、売却時のことも考えておく必要があります。将来、自分で不動産投資ができなくなる日は必ず訪れるので、相続または売却によって誰かにその物件をバトンタッチするタイミングが来ます。

しかし、買ってはいけない土地を取得した場合、バトンタッチする相手を見つけることに困難をきたすことがあるので、注意しましょう。

買ってはいけない土地の見分け方

現地に出向き、立地や周辺の生活利便施設の確認のみならず、ハザードマップと照らし合わせながら災害リスクの確認をしましょう。また治安の状況、トラブルにつながりそうな要素など、現地に行かなければわからないことはたくさんあります。

また、図書館で過去の住宅地図や地形図を確認し、その土地の活用履歴を調べることで簡易的な地盤調査をすることもできます。

取り引き履歴を確認する

物件を紹介してくれた不動産会社に以前の所有者やトラブルの有無などを問い合わせしましょう。また、長期間取り引きされていない、買い手がついていない場合には、その理由についても確認しておきたいところです。

専門家に相談する

不動産会社によっては、真摯に対応してくれなかったり、不都合な点をあいまいにしたりして買ってはいけない土地を買わせようとするケースもゼロではありません。そのためにも、複数の不動産会社に問い合わせを行い、信頼できる不動産会社や担当者を選ぶスタンスでいましょう。

また、不動産に精通した専門家などにセカンドオピニオンを依頼し、不動産会社にすすめられるままに勢いで買ってはいけない土地を買ってしまったという状況に陥らないようにしましょう。

まとめ

不動産投資は初期費用のみならず、運営費用も必要になります。いうまでもなく不動産を活用した事業であり、大家さんはその事業の事業主です。事業主としての自覚を持ち、入居者に良好な住環境を提供していくためには、物件選びは重要です。

不動産投資を成功させるためにも、信頼できる不動産会社や担当者と二人三脚で買ってはいけない土地を見極めて、不動産投資に適した土地を取得できるよう、勉強する姿勢を持ちたいものですね。

収益物件に適した土地かどうか見極める力
不動産投資家には必要不可欠です!

この記事の監修者

吉崎 誠二
吉崎 誠二

不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。

著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。