- 市街化調整区域は都市計画法で定められた区域区分の1つで、原則として建物を建てることができません。
- 建物を建てずに活用するなら、駐車場、太陽光発電、資材置き場などの方法があります。
- 特別に開発許可を得て建物を建てる活用方法もありますが、需要を見定めることが大切です。
目次
市街化調整区域とは
市街化を目的としていないため、原則として住宅や商業施設など建物を建てることができません。
ただし、詳しくは後述しますが、許可を得ることができれば市街化調整区域でも建物を建てることが可能になります。
都市計画法に定められた3つの区域区分
市街化区域 | 原則として建物を建てられる |
---|---|
市街化調整区域 | 原則として建物を建てられない |
非線引き区域 | 原則として建物を建てられる |
市街化調整区域の土地活用が難しい理由とは
そのため、市街化調整区域内での土地活用は難しいとされていますが、その他どのような理由があるのでしょうか。
【理由1】立地が良くない場合が多い
「市街化調整区域では“原則として”建物が建てられない」となっているのは、許可を得れば建物の建築が可能になるためです。
しかし、立地が良くないことから建物を建てたとしても利用者が確保できないなどの問題が起こる可能性が高く、土地活用が難しいとされています。
【理由2】土地活用の方法が限定される
つまり、市街化調整区域にある土地を活用しようと思えば、原則として建物を建てない土地活用を考える必要があり、土地活用の方法が限定されてしまうことから土地活用が難しいとされています。
市街化調整区域での土地活用4選【建物を建てない場合】
1. 駐車場
駐車場は主に月極駐車場とコインパーキングのふたつに分けられます。それぞれどういった方が利用するのかを考えて活用しなければなりません。
例えば、月極駐車場であれば駐車場のない職場の近くや、自宅敷地内に確保できなかった2台目、3台目の駐車場としての活用が考えられます。
コインパーキングであれば商業施設の近くや駅の近くなどが活用しやすいでしょう。上記のような条件を満たした土地であるかよく検討する必要があります。
【メリット】初期費用が少なく済ませられる
コインパーキングの場合には、必要な設備の設置に費用がかかることもありますが、初期費用を抑えたいのであれば整地をしないまま利用できることもあります。
【デメリット】固定資産税が高い
このように建物を建てない土地活用では固定資産税が高くなってしまう点に注意が必要です。
2. 太陽光発電
建物を建てないでよいことはもちろんですが、何よりも太陽光発電システムによる土地活用は集客を気にしなくてよいからです。
2018年現在、10kw以上の太陽光発電システムを設置すれば、20年間、固定価格で買取してくれる制度が用意されています。少なくとも20年の間に太陽光発電システムの設置費用は回収できるよう、売電価格が設定されているのです。
20年の間に太陽光発電システムが故障してしまわないよう、メーカーの保証制度などに注意する必要があるでしょう。
3. 資材置き場
会社によっては、貸し出したお礼として簡易的な整地をしてくれることもあるでしょう。
ただし、資材置き場は市街化調整区域にせよ、それ以外の区域にせよ、周辺に資材の置き場に困っている会社がある必要があり、立地条件が限られる点に注意が必要です。
4. 墓地・霊園
墓地や霊園はあまり価格が高い土地には向きませんが、市街化調整区域の土地は比較的安価な土地が多く、墓地や霊園業者にメリットがあります。
貸し出す側としてはある程度広さのある土地である必要がありますが、他の土地活用より高い賃料を得られるかもしれません。
また、墓地や霊園として土地を貸し出す場合は少なくとも数十年は土地が返ってこないことは覚悟しておかなければなりません。
市街化調整区域での土地活用3選【特別に開発許可を得て建物を建てる場合】
では、市街化調整区域の土地に建物を建てて活用する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
1. 高齢者施設
また、こうした高齢者施設は市街化調整区域の土地でも周辺住人の需要やニーズを鑑みて自治体が必要と判断した際には許可が下りることがあります。
なお、高齢者施設は、施設内で一通りの設備が揃っていることが多く、郊外にあることの多い市街化調整区域の土地でも比較的需要が落ちにくいという点もポイントです。
2. 社会福祉施設
そのため、通常の方法では建築の許可が下りない土地でも、土地のあるエリアで社会福祉施設の建築を検討している社会福祉法人が見つかれば、賃料を得ることができます。
なお、土地の持ち主が建物を建てて、土地と建物とを合わせて貸し出す方法が一般的で、高額な初期費用が必要となります。
比較的高利回りで貸し出せることが多いですが、数年のうちに事業者が撤退(倒産)してしまうと建物を他に転用しづらくなる点に注意が必要です。
3. 医療施設
土地周辺に医療施設のニーズがあり、開業したい医師や医療法人が見つかれば、活用できますが医療施設も土地の持ち主が建物を建てて貸し出す方法が一般的です。
市街化調整区域で建物を建てる場合の手続き方法と注意点
都市計画法43条の許可の基準は自治体によって異なりますが、敷地相互間100mに50戸の建物が連なっていることや、土地の前面にある道路が市街化区域まで幅4mもしくは6m続いているか、などが条件です。
市街化調整区域で建物を建てる場合の手続きの流れ
自治体への事前相談は具体的に土地活用の方法を決めていない時でも相談できるため、まずは自分の土地がどのような方法で許可を受けられるのか相談に行ってみるとよいでしょう。
なお、上記手続きにある都市計画法34条の内容は以下の通りです。
法第34条開発行為の内容 | |
---|---|
1号 | 当該市街化調整区域周辺に居住している者の日常生活に必要なもの |
2号 | 当該市街化調整区域内に存する鉱物資源、観光資源等の有効利用のため必要 なもの |
3号 | 温度、湿度、空気等について特別な条件を必要とする事業の用に供するもの |
4号 | 農業、林業、漁業の用に供するもの、又は農林水産物の処理、加工に必要な もの |
5号 | 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する 法律の所有権移転登記等促進計画に定める利用目的によるもの |
6号 | 都道府県が国又は独立行政法人中小企業基盤整備機構と一体となって助成す る中小企業者の行う他者との連携等に寄与する事業の用に供するも の |
7号 | 市街化調整区域内において現に工業の用に供されている工場施設における事 業と密接な関連を有する事業の用に供するもので、これらの事業活動の効率 化を図るために必要なもの |
8号 | 危険物の貯蔵又は処理に供するもので、市街化区域内に立地することが適当 でないもの |
9号 | 市街化区域内に建築又は建設することが困難なもの |
10号 | 地区計画又は集落地域整備法に基づく集落地域計画の内容に適合するもの |
11号 | 市が条例で指定する市街化区域に近接する区域において、条例で定める周辺 環境の保全上支障がある用途に該当しないもの |
12号 | 市街化区域において行うことが困難又は著しく不適当と認められ、市が条例 で区域、用途を限り定めたもの |
13号 | 既存の権利の届出により、行われるもの |
14号 | 上記以外のもので、開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化 を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域において行うことが困難又は著 しく不適当と認められるもの |
市街化調整区域で建物を建てる場合の注意点
仮に、インフラが整備されていない環境下で建物を建てるとなると、自身で電気、ガス、水道などを整備しなければならず、手間も費用もかかることは留意しておきましょう。
農地を転用する場合は転用許可が必要
市街化区域にある農地は農業委員会に転用届を出すだけでよい一方、市街化調整区域にある農地の場合は転用の許可が必要で、転用許可申請書を出さなければなりません。
なお、自分の所有している農地を農地以外に転用する時には農地法4条の許可が、農地を購入して宅地に転用する場合には農地法5条の許可が必要です(下表参照)。
一方、農振法(農業振興地域の整備に関する法律)により、農振地域に指定された農地に関しては原則として農地転用が認められません。
農地を土地活用する際は、まず、農振地域に指定されているかどうかをチェックして、農地転用の手続きが市街化区域か市街化調整区域のどちらであるのかを確認するようにしましょう。
農地法4条 | 農地を農地以外に転用する |
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農地法5条 | 農地を農地以外に転用して所有権を移転する |
市街化調整区域の土地でも売却は可能?
土地利用も制限されていることから金融機関による担保評価も低く、ローン申請が却下される可能性もあるため、購入者を見つけることが容易ではありません。
一方で、土地利用の制限があることで土地の価格が安く、固定資産税評価額も低くなるなどのメリットがあります。
売却を検討しているのであれば、そういったポイントをアピールしながら進めていくとよいでしょう。
売却する際の注意点:「地目」を確認しよう
市街化調整区域内の土地を売却する際、地目が農地である場合は、基本的に農地として売却しなければならないため注意が必要です。
地目が農地の土地を住宅建築のために利用することも不可能ではありませんが、上記で説明したように転用する旨を申請し、知事の許可を得る必要があります。
まとめ
そのため、建物を建てずに土地活用する方法と、建物を建てて土地活用する方法の両方について理解しておくことが大切です。
この記事の監修者
AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。