不動産買付の基本の流れ!買付証明書(買付申込書)や優先順位のルールとは?

2024.06.19更新

この記事の監修者

安藤 新之助
安藤 新之助

株式会社サクセスアーキテクト 代表取締役

不動産買付の基本の流れ!買付証明書(買付申込書)や優先順位のルールとは?

不動産投資で気に入った物件を購入する際に提出するのが「買付証明書」です。この記事では「買付証明書」について解説します。

この記事のポイント
  • 買付証明書は「物件を購入する意志」を書面に表したもの。提出することで、物件購入に向けて一歩前に進んだことになります。
  • ただし、買付証明書を提出したからといって即座に購入に向けて話が進むとは限りません。
  • 記載内容は年収、購入希望金額、手付金、有効期限など。極端な指値はNG!相場観をもって挑みましょう。

目次

不動産の買付の流れと基礎知識

不動産投資において買付証明書の提出は買主側の「物件を購入する強い意志」を書面で表したもの。買主側の情報や購入希望金額、ローンの有無、決済時期などの基本的な諸条件を売主側に伝える重要なツールです。

この買付証明書を買主が提出することで不動産業者が間に入り、買主・売主が売買契約締結に向けて本格的な交渉が始まる流れになります。

買付の流れ

不動産投資ポータルサイトや不動産業者から物件の紹介を受け、自身が希望するエリア、金額など条件に沿うもので購入したいと意思決定した際に、買付証明書を仲介する不動産業者に提出します。

良い物件は1日と待ってはくれませんので、購入の意思決定をしたタイミングで速やかに買付証明書を仲介する不動産業者に提出することが大切なポイントです。

もし、売買金額が自分の予算より高い場合には、購入したい金額を記し提出します。その際に何故、価格交渉したいのか理由を書き添えることで売主から納得が得られ、値引きに応じてもらえる可能性が高くなります。

買付証明書とは

買付証明書とは前述したとおり「物件を購入する意志」を書面に表したものです。その意思を不動産業者が仲介し、売主側に伝えることとなります。買付申込書、購入申込書などと呼ばれるケースもあります。

買付証明書を提出することで、物件購入に向けて一歩前に進んだことになります。

買付証明書の役割

買付証明書を提出したからといって必ず購入しなければならないというものではありません。あくまでも「自分が購入したい」という意思表示となります。詳細な諸条件を売主と話し合うためのファーストステップの位置づけであると認識しましょう。

ただし法的拘束力がないからといって、買付証明書を冷やかしまがいで提出するのは不動産業者などに迷惑がかかってしまいます。信頼関係に影響が出ますから慎みましょう。

優先順位のつけ方は不動産会社(売主)次第

本来であれば買付証明書を提出した順に1番手、2番手というように交渉権が得られるのが一般的。これを守っている不動産業者もいます。

しかしながら、仲介する不動産業者が提出された買付証明書の諸条件をもとに話を進めるか否かを決めることが実情です。少しでも高く提示した買主を優先し、売主に寄与したいと考える業者もいれば、金額を高く提示されても売却するにそぐわない買主とは繋ぎたくないと考える業者もいます。

買付証明書を提出したからといって、即座に購入に向けて話が進むとは限りませんのでそこは含み置きましょう

物件購入を賄える自己資金、金融機関の与信がある場合、ローン特約を外すことで一気に優先順位が上がり購入できる可能性が高くなります。

安藤 新之助
安藤 新之助

買付証明書と売買契約書の違い

買付証明書と売買契約書の違いを解説します。
摘要買付証明書不動産売買契約書
①手付金の有無なしあり
②本人確認書類なし必要
③法的効力なしあり
④キャンセル可能可能
(要手付放棄、違約金)
① 手付金の有無
買付証明書の提出時には手付金の予定金額を記載します。金額は売買金額の5~10%が相場。金額は話し合いによって変更が可能です。記載した額の手付金を売買契約時に現金、小切手、銀行振り込みにて支払います。

② 本人確認書類
買付証明書の提出時に本人確認書類は必要ありません。売買契約時の際には自動車運転免許証など本人が確認できるものが必要です。

③ 法的効力
買付証明書に法的効力はありませんが売買契約書には法的効力が発生します。売買契約書に記載された内容に違反が無いようにしなければなりません。万が一、契約違反があった場合 契約解除ならび損害賠償、違約金が発生します。

④ キャンセル
買付証明書はキャンセルすることは可能ですが、売買契約締結後にキャンセルする場合、手付金放棄となるのが一般的です。さらに注意点として手付解除(手付金を放棄して契約をキャンセルすること)の期限を過ぎた後にキャンセルすると、条文に定められた違約金が発生するため、契約をキャンセルするにはかなりの慎重さが求められます。

買付証明書を提出するメリット・デメリット

購入したいと思っていても、口頭で伝えるのと書面で伝えるのでは相手に伝わるインパクトも違ってきます。いわば買主が売主あてに出す「購入したい」というラブレターと思ってもよいかもしれません。

ここでは、買付証明書を提出するメリット、デメリットをご紹介します。

買付証明書を提出するメリット

希望の物件を買いやすくなる

口頭で「購入したい」という買主はいくらでもいます。やはりそこで書面で購入希望額、諸条件、自身の身分を書き記すことで購入意思に信憑性が現れ、購入に向けて交渉もスムーズになります。

お得な情報が入ってくる

買付証明書を提出したことをきっかけに、買主の人柄や属性を不動産業者が知ることとなります。それにより、人間性や資産背景などを把握できない買主よりも優先して、表にでない優良物件の紹介がくる可能性が高くなります。

不動産会社との信頼関係ができる

買付を出す、出さないとでは不動産業者との距離感もずいぶん違います。当然、お会いしたり電話で話をしたりメールでやり取りしたりする回数も増えます。誠実な対応をすることでお互いに安心感が生まれ、後の情報交換、取引に弾みがつくのは間違いありません。

買付証明書を提出するデメリット

条件によっては後回しにされることもある

提出した買付証明書の諸条件の内容によっては優先順位が下げられ、後回しにされてしまうことは多々あります。

たとえば、相談なく売却希望価格に対して半額などの大幅な指値を入れたりするなどです。買主と業者、売主と信頼関係に影響が出てきます。

もちろん、売値が相場より相当高く値付けされているなど業者が納得するような明確な根拠があればよいかもしれません。価格は理由があって明示されていますから、慎重に条件提示をすることがポイントとなります。

買付を取り下げると信頼関係に影響がでることも

買付証明書が提出され、売渡が承諾されると業者も売主も売買契約締結に向けて動き始めます。その際、明確な理由もなく買主本位で買付を取り下げると業者、売主からの心証がとても悪くなります。「とりあえず買付を出してみた」など、冷やかしな買付証明は出さないようにしましょう。

選ばれる買付証明書の書き方

買付証明書は唯一ダイレクトに売主様に手渡される書面になります。買付証明書はこの書式でないといけないというものはありませんが、必要最低限記す項目があります。

ほとんどの場合、不動産業者が作成したひな形がありますのでその項目に応じて記載するのが一般的です。もちろん、ご自身のオリジナルの買付証明書でも大丈夫です。

買付証明書の内容についてご紹介いたします。

買付証明書のひな型

買付証明書の記載内容

・年収
サラリーマンの方など銀行融資を利用する際に、融資が受けられる見込みがあることを売主にアピールするなどに有効です。とくに記載しなくても問題ありません。

・購入希望金額
自分が購入したい金額を記載します。
価格交渉で指値をした場合、備考欄を設け指値の根拠を記載することで価格交渉に応じてもらえる可能性が高くなります。

修繕や設備のリフレッシュがなされていない場合、売主はその分を値引き予算として見積もっている場合もあります。

安藤 新之助
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・物件情報
土地、建物の所在地、平米数、用途地域など、物件概要書、登記簿謄本に記載された情報をもとに記載します。

・手付金
契約時に支払う手付金の額を記載します。売買代金の5~10%が一般的です。
諸条件により、金額を変更することも可能です。

・引き渡し時期
決済、引き渡しの希望時期を記します。
融資利用の際、売買契約から1か月~1.5か月後を目安に設定します。

・融資情報
融資利用の有無を記します。 
融資を受ける予定の金融機関名を書くケースもありますが、とくに書かなくても問題ありません。

・有効期限
買付の期限は2週間~1か月程度を目安にするのが一般的です。

買付証明書を出すときの注意点

買付証明書は前述しましたが買主の意向が売主様の手に届く唯一の書面となります。不動産業者のチェックを得て売主の手に渡してもらうための注意点、ノウハウを解説します。

極端な指値はNG

売買価格は売主の意向が反映された金額となります。仮に自分の購入したい指値金額をそのまま書き入れたとしても、不動産業者が売主に提案できない金額であれば売主様まで買付証明書が届くことはありません。

もし、指値を入れたい場合は不動産業者に一言、指値が可能かどうか、可能ならどの程度までいけそうか相談したうえで買付をだすことがポイントです。

まれに周辺相場よりも低く値付けされていることがあります。さらに安く買いたたこうとする気持ちが、チャンスを逃す羽目になることもあるので相場観をもって挑みましょう。

安藤 新之助
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キャンセルは可能だが信頼関係を大切に

買付証明書は法的な拘束力はなく、買主はいつでも買付を取り下げることは可能です。しかし、買付証明書が提出されれば内容によっては業者が物件を押さえる力をもっています。すなわち流通を止める力をもっているといっても過言ではありません。

法的な拘束力がないからといって正当な理由なく取り下げるのは今後の信頼関係に影響がでますから、買付を出すときも取り下げるときも慎重に行いましょう。

自己資金の準備は万全に

売買契約締結時に諸条件によりますが物件価格の5~10%の手付金が必要となります。この資金が当日に確実に準備できなければ多大な迷惑をかけトラブルの原因となります。それどころか自分自身も大きなペナルティーを被ることになります。

親、兄弟から資金を借りる予定だったが急に借りられなくなった、仮想通貨・株や投資信託を売却し資金を捻出する予定が市場の暴落によって準備できなくなった…などはよくあるお話です。“確実”な自己資金がない中での買い付けは非常に危険ですから思いとどまる勇気も必須です。

まとめ

買付証明書の提出は数ある物件の中から購入したいと思う物件に出合った時に最初に踏み出すステップです。買付証明の出し方次第でご縁をものにできるか否かを決まってしまう可能性があります。売価の満額で買付を出しても決まらないときもあれば、3割値引きで承認されることも。

成功されている不動産投資家の方は買付証明書に思いを込め、スピード感をもって提出しています。競争に勝つためにも情報を常に取り入れ目利きを養っておく心構えが大切です。

「買いたい!」という意思を伝える買付証明書。
効果的な書き方や提出時の注意点を把握しておきましょう!

この記事の監修者

安藤 新之助
安藤 新之助

株式会社サクセスアーキテクト 代表取締役

高校卒業後、通算20年以上住宅業界に携わり、2008年不動産投資を開始。当時の年収400万円から7年で資産10億円と家賃収入1億円を達成し、42歳でサラリーマン生活を卒業しセミリタイア。

現在14棟214室を保有する実践不動産投資家としてwebコラム執筆やTV、新聞などのメディアに多数出演しながら、3法人を運営し不動産賃貸業ならびに不動産賃貸経営コンサルタントとして活動中。

「NOをYESに変える不動産投資最強融資術」(ぱる出版)を執筆。 

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。