土地活用の中でも、初期コストが低く人気のある「駐車場経営」。また、駐車場経営を大きく2つに分類すると、月極駐車場形式とコインパーキング形式に分けることができます。この記事では、駐車場経営を検討している方に向けて、月極駐車場形式とコインパーキング形式それぞれの特徴や収益モデル、メリット・デメリットとあわせて、契約をする前に必ず理解しておくべきリスク・注意点をご紹介いたします。
駐車場経営は儲かる?それとも儲からない?
土地活用の方法を検討する際、「儲かるか儲からないか」を気にする方は少なくありません。では、駐車場経営はどうでしょうか。結論から言えば、駐車場経営はアパート・マンション経営のように収益性の高い土地活用方法とは言えません。後述しますが、駐車場経営は土地の利用効率が低い分、収入も低くなるためです。一方、駐車場経営にもメリットはあります。どのようなメリットがあるのか、次章でご説明していきます。
駐車場経営のメリット
土地活用の中でも駐車場経営は比較的低予算で始められることが魅力です。まずは、駐車場経営のメリットについて理解しておきましょう。
初期費用が少ない
アパート経営のように建物を建てる必要がないため、初期費用が少なく済み、すぐに始めることができます。
狭小地や変形地でも対応可能
場所が制限されることも少なく、たとえば、狭小地や変形地でも経営することが可能です。
災害リスクが小さい
自然災害が起きたとしても、駐車場の場合は建物もなくアスファルト舗装やコンクリート舗装を行えば経営を再開することができるため、比較的災害に強い土地活用と言えます。
ほかの業態への切り替えが容易
駐車場経営の特徴として、ほかの業態への切り替えが容易ということが挙げられます。月極駐車場であれば、道路の舗装もせず、ロープだけでも運営できないことはありません。とりあえずは固定資産税分を何とかしたいという動機で駐車場経営を始めてみても良いでしょう。その場合は、不動産会社に連絡して駐車場の区割りをしてもらい、利用者を募集してもらえば、後は管理を任せることができるので地主は何もする必要がありません。
将来、売却したり、ほかの土地活用法に移行したりする時も、利用者との契約期間が終了すれば、特に費用をかける必要もなく行えます。
駐車場経営のデメリット
駐車場経営は初期費用が少なく、比較的簡単に始められるというメリットがある一方で、建物がないことがデメリットの要因になることもあります。
税金負担が大きい
まずは税金負担が大きいという点です。アパートやマンションであれば固定資産税の減税対象になりますが、駐車場は減税の対象にはなりません。また相続税についても優遇措置はありません。
土地の利用効率が低い
駐車場はアパートやマンションのように2階建てや3階建てではないため土地の利用効率が低いと言えます。
収益性が低い
駐車場経営は土地の利用効率が低いため、アパート経営と比べると収益性も低くなってしまいます。
駐車場経営の種類①:月極駐車場
駐車場経営には大きく月極駐車場形式とコインパーキング形式の2つがあります。ここでは、まず、月極駐車場の特徴と収益モデルについて確認していきましょう。月極駐車場は、利用者と月毎の利用契約を結んで、毎月の賃料を受け取るものです。現地に何台駐車場を確保できるかによって収益の最大額が確定します。
コインパーキングと比べて機械の導入の必要がなく、敷地の舗装も必須ではないため、始めようと思えばいつでも始められ、利用者との駐車場利用契約が終了すればいつでも辞めることのできる手軽さがあります。なお、月極駐車場の場合は、地元の不動産会社に行って入居者募集〜駐車場の管理を依頼するのが一般的です。
収益モデル~収入と支出~
月極駐車場では、毎月の賃料から、不動産会社に支払う管理費や年間を通して払わなければならない固定資産税を引いた合計額がプラスになれば、その利益に対して課税される税金を払う必要があります。基本的には、この流れだけで収入と支出が決まります。1台あたり5,000円/月で、20台駐車可能な駐車場を例にシミュレーションしてみましょう。なお、これらの収入に対して不動産所得として所得税と住民税が課されます。
項目 | 満車時想定/月 | 稼働率90%想定/月 |
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収入 | 駐車場収入 | 10.0万円 | 9.0万円 |
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支出 | 管理費など | 0.5万円 | 0.5万円 |
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固定資産税 | 2.0万円 | 2.0万円 |
利益 | 7.5万円 | 6.5万円 |
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※管理費を5%、固定資産税を年間24万円(月2万円)と仮定して計算しています。
月極駐車場の注意点
月極駐車場では、不正駐車に注意する必要があります。契約者の車が駐車されていない間に不正に利用されてしまったり、未契約の空いているスペースに不正に駐車されてしまったりなど、不正駐車の被害は珍しいことではありません。仮に、対策をとらず不正駐車を野放しにしておいた場合、契約者に迷惑がかかるほか、解約を申し出る人が出てくる可能性もあります。不正駐車をした際の罰則を明記した看板や、防犯カメラの設置など、業者にアドバイスをもらいながら対策をするとよいでしょう。
駐車場経営の種類②:コインパーキング
コインパーキングはコインパーキングの利用者からの利用料が収入となります。月極駐車場では、駐車台数によって収入の上限が決まりますが、コインパーキングは車の出入りの回数によって収入が決まります。また、コインパーキングでは機械の導入が必要ですが、その運用方法には専門業者に土地を一括で貸し、専門業者が機械を導入して、地主は毎月一定額を受け取るパターンと、専門業者から機械を購入して管理を専門業者に任せ、収益を受け取って管理費を支払うパターンがあります。
前者は初期費用が不要ですが毎月の収入は少なく、一方、後者は初期費用がかかるものの毎月の収入を大きくすることができます。一方コインパーキングは、何かの用事がある時に一時的に利用するなどの利用法が考えられるため、駅や繁華街、駐車場のない商業施設の近くなどにある土地が向いていると言えるでしょう。
収益モデル~収入と支出~
先ほどの月極駐車場と同じように20台駐車可能なコインパーキングという設定でシミュレーションしてみましょう。仮に、1時間100円で1日8時間稼働だった場合、1台あたりの収入は800円/日、月で2.4万円になります。20台であれば以下の収入が得られることになります。
専門業者が一括借上するパターンだと初期費用を抑えることができ、毎月一定額を専門業者から受け取ることになります。この時の額は専門業者との契約内容により異なります。一方、自分でコインパーキングの機械を購入する場合、土地の広さにもよりますが、
機械導入費用として300万円程度、整地費用として100万円程度の費用が必要となります。仮にこの金額を金利3%、借入期間3年としてシミュレーションしてみましょう。この収入に対して不動産所得として所得税と住民税が課されます。
項目 | 1日8時間稼動想定/月 |
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収入 | コインパーキング収入 | 48.0万円 |
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支出 | 機械導入費・整地費用 | 11.6万円 |
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管理費など | 2.4万円 |
固定資産税 | 2.0万円 |
利益 | 32.0万円 |
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※管理費を5%、固定資産税を年間24万円(月2万円)と仮定して計算しています。
コインパーキングの注意点
コインパーキングは月極駐車場と比べると収入を大きくしやすいですが、初期費用がかかってしまう点に注意が必要です。また、駅や駐車場のない商業施設の近くなど、車で向かう人が多く、一時的な駐車スペースを必要とする人の多い場所に向いています。逆にそうでないところにコインパーキングを設けても十分な収入を得ることができず、機械の管理費用でマイナスとなることもあるため、周辺環境のリサーチがより重要です。
月極駐車場に向く土地とコインパーキングに向く土地は異なるため、自分の土地がどちらに向いているかよく見極めるようにしましょう。
駐車場経営を始める前におさえておきたい基礎知識
駐車場経営は開業準備から運営開始まで以下のような流れで進みます。
1. 月極駐車場にするかコインパーキングにするか検討する |
2. 専門業者に相談する |
3. 専門業者と契約する |
4. 現地を整備する(駐車場整備/機械導入) |
5. 利用者を募集する |
6. 利用者と契約し、駐車が開始される |
7. 賃料を受け取る |
専門業者への相談ですが、
月極駐車場にするかコインパーキングにするかで相談先が変わります。月極駐車場にする場合、主な相談先は地元の不動産会社が多くなりますが、コインパーキングにする場合には、コインパーキングの専門業者に相談します。
一般的に月極駐車場より、コインパーキングの方が収益性は高いですが、月極駐車場は現地を整備するだけで済むのに対して、コインパーキングにする場合は機械の導入が求められます。持っている土地の立地や、どのくらいの収益性が欲しいか、初期費用にいくら出せるかなどによって、どの方法で土地活用するか決めましょう。
料金設定は周辺相場と揃える
アパート経営と同様に、駐車場経営でも賃料設定が経営の安定性を左右します。まずは、周辺相場を調査しましょう。コインパーキングの場合、1時間単位で料金を設定するのか、それとも30分単位で料金を設定するのかも検討が必要です。また、1日最大料金をいくらにするかは、ほかの駐車場と差別化を図れる部分でもあるのでしっかり検討したうえで決めましょう。
月極の場合も周辺相場を確認したうえで、料金を設定することが大切です。集客したいからといって大幅に下げれば収益が得られず、また、収益を上げたいからといって高く設定すれば集客が得られず、キャッシュフローの悪化につながります。周辺相場のほか、収益や運営費なども含めて検討するようにしましょう。なお、一括借り上げ方式を採用した場合は、業者が料金設定をするため自身で料金を設定する必要はありません。
経営方式は一括借り上げor自営
駐車場経営を検討する際、経営方式も考える必要があります。駐車場経営の経営方式は次の3種類です。
一括借り上げ方式では、駐車場が空車の有無に関わらず毎月一定の賃料を得ることが可能です。また、管理業務はすべて業者が行ってくれるため労力がかかりません。ただし、その分手数料は高めに設定されています。
管理委託方式では、管理業務を業者に委託するという点では一括借り上げ方式と変わりませんが、毎月の賃料収入は契約数に比例するため、収益は変動します。
自営の場合は、募集を含めた管理業務も自身で行う必要があるため時間や労力がかかりますが、業者に支払う手数料はなく、また賃料も得た分だけ確保できるため、収益性は良いと言えるでしょう。ただし、募集業務がうまくいかなければ収益悪化につながることも忘れてはなりません。
パートナーとなる業者の選び方
一括借り上げ方式や管理委託方式を採用する場合、専門業者に運営を委託することになりますが、業者選びは経営の良し悪しを決定する要素のひとつと言っても過言ではありません。選定する際には、どのような業務を担ってくれるのか、また、手数料はどのくらいなのかなど、複数の業者を比較するようにしましょう。不明点があれば、契約締結前にすべて明らかにしておくことが大切です。
ほかの土地活用との比較
アパート・マンション経営やトランクルーム経営など、ほかの土地活用と駐車場経営を比較してみるとどういった違いがあるのでしょうか。
アパート・マンション経営との比較
アパート・マンション経営と駐車場経営の最大の違いは初期費用の有無でしょう。アパート・マンション経営は、最初に建物を建てる必要があるため初期費用が大きいですが、数年〜数十年かけて完済した後は、建物のある限り収入を生み続けることができます。収入の面でアパート・マンション経営と駐車場経営を比較すると、アパート・マンション経営の方が圧倒的に収益性は高いと言えます。
しかし、アパート・マンション経営にはさまざまな経費がかかり、また空室リスクがあるため全体的なリスクが高いです。それと比べ、駐車場経営はかかる経費や初期費用もそれほど高くないため、リスクの少ない土地活用だと言えます。総じて、アパート・マンション経営がハイリスク・ハイリターンな土地活用であるのに加え、駐車場経営はローリスク・ローリターンな土地活用であると言えるでしょう。
なお、アパート・マンション経営をしながら、土地の余った部分があれば、その部分を月極駐車場として貸し出すような運用法もあります。
トランクルーム経営との比較
トランクルーム経営と駐車場経営を比較してみると、初期費用の安さなど似た点がある土地活用だと言えます。トランクルーム経営も、コインパーキングと同じように土地を一括借上してもらって経営する方法と、自分で設備を購入して管理を委託する方法があります。トランクルーム経営は、駐車場経営の中でもコインパーキング形式と似たものだと言えるでしょう。
一方、立地に関してはコインパーキングが駅の近くや駐車場のない商業施設の近くが向いているのに対し、トランクルームは駅から遠くても構いません。また、高速道路や線路のすぐ近くで騒音や振動がある場所でも大丈夫です。トランクルーム経営は駐車場経営と同じく、業態転換をしやすいという特徴があるため、駐車場経営にするか、トランクルーム経営にするかについては、持っている土地の立地次第で決めるのがオススメです。
コインランドリー経営との比較
コインランドリー経営は駐車場経営と違い、初期費用が高額です。建物自体は比較的安く建てられますが、洗濯機や乾燥機のほか、両替機も必要になります。また、セキュリティー面の設備として防犯カメラの導入も欠かせません。一方で、コインランドリー経営は相続税を低く抑える小規模宅地等の特例や、設備費用の即時償却といった節税効果が期待できます。建物がない駐車場は小規模宅地等の特例の対象外となり、節税効果は期待できません。
最近は女性の利用が増えてきたこともあり、そうした需要に合わせて清潔でオシャレなコインランドリーも多くみられます。また、洗濯中の待ち時間を有意義に過ごしてもらえるようwifi環境を整えたり、キッズスペースやカフェを併設したり、差別化を図る施設も少なくありません。コインランドリー経営は、戦略次第でリピーターを増やし、収益を上げていくことも可能と言えます。
太陽光発電との比較
太陽光発電は駐車場経営と同様、節税効果のない土地活用になります。太陽光発電に必要なソーラーパネルは建築物とみなされないためです。一方、異なる点として、太陽光発電はリスクの少ない土地活用法と言えます。駐車場経営は空車リスクがあり、満車経営を目指して集客活動に力を入れなければなりません。太陽光発電はそのようなリスクはないため安定して経営することが可能です。
なお、太陽光発電の注意点として、隣地とのトラブルがあげられます。パネル設置の向きにより隣地に反射してしまうことがあり、場合によってはトラブルに発展する可能性もあるのです。なるべくトラブルを避けるためには、専門業者と相談しながら準備を進めると良いでしょう。
よくある質問
ここでは、駐車場経営に関するよくある質問をご紹介します。
- 駐車場経営で失敗する理由とは?
- 需要が見込めない立地で始めてしまった、料金設定が適切ではなかった、などの理由により駐車所経営に失敗する場合があります。また、管理会社との契約をしっかり確認せずに委託した結果、管理会社のずさんな管理が要因となって駐車場経営が立ち行かなくなる可能性もあります。委託先を選定する際は必ず複数の業者を比較するようにしましょう。詳しくはこちらの記事を参照ください。
- 個人で駐車場経営を行う場合の業務とは?
- 個人で駐車場経営を行う場合、駐車場内の日常清掃はもちろん、利用者からの入金確認や設備修繕を自身で行う必要があります。そのほか、事故などのトラブルが起きた際の対応も自身で行わなければなりません。管理が行き届いていないことで解約につながる可能性もあります。個人運営が難しそうであれば管理会社への委託も検討するとよいでしょう。
- 駐車場経営で経費にできるものは?
- アスファルト塗装工事代、駐車場内の修繕費用、ブロックや誘導看板などの設置費用、照明や精算機などの電力代などは経費計上することが可能です。また、広告費や管理会社へ支払う手数料なども経費に該当します。経費計上の可否について判断が難しい場合は、迷わず税理士などの専門家に相談するようにしましょう。
まとめ
駐車場経営は小さな初期費用で始めることができ、業態切り替えも容易なことから気軽に始められることがポイントです。また、駐車場経営には月極駐車場とコインパーキングがあり、収益性と向いている土地が異なるため、自分の土地にとってどちらが適しているかしっかり検討するようにしましょう。
監修逆瀬川 勇造
【資格】AFP(2級FP技能士)/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。
大学在学中に2級FP技能士資格を取得。
大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。
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