トランクルームの市場規模は拡大している
トランクルームとは、いわば「貸しスペース」のことを言います。トランクルームと一口にいっても、倉庫のように広いものもあれば、ボックス単位で貸している小規模なものもあります。トランクルーム市場は2008年には270億円規模でしたが、およそ10年後の2019年には650億円規模へと大きく拡大しています。今後もテレワークの普及やオフィス縮小にともなうトランクルーム需要は拡大する可能性が高く、2025年には1,000億円を超える規模へと成長する可能性を秘めていると注目されている市場になっています。
トランクルームの経営方式
トランクルームの経営方式には、トランクルームの経営方式には、全てを自己負担で行う自己経営方式の他、手間があまりかからない「事業用定期借地方式」「リースバック方式」「業務委託方式」があります。今回の記事では、あまり手間のかからない方式である「事業用定期借地方式」「リースバック方式」「業務委託方式」について、それぞれの収入、ランニングコスト、注意点などについてご説明します。また、あわせてトランクルームの種類についてもご紹介します。
事業用定期借地方式
事業用定期借地方式は、トランクルーム業者に土地を貸して、地代収入を受け取る方式です。トランクルームの設置、建設などにかかる初期費用やメンテナンスコストは、すべてトランクルーム業者が負担します。
リースバック方式
リースバック方式は、土地所有者がトランクルームの設置、建設を行い、トランクルーム業者に貸し出す方式です。規模にもよりますが、初期費用として数百万円が必要になります。土地所有者は、トランクルーム業者から毎月固定の家賃収入を受け取ります。また、リースバック方式では、土地所有者がトランクルーム業者を探すことになります。
業務委託方式
業務委託方式は、リースバック方式と同様、土地所有者がトランクルームの設置、建設を行い、トランクルーム業者に貸し出す方式です。規模にもよりますが、初期費用として数百万円が必要になります。土地所有者は、業務委託した業者から毎月固定の家賃収入を受け取ります。業務委託経営方式は、トランクルーム業者を探すことを業者に委託するため、リースバック方式よりも家賃収入は低くなります。
トランクルームの種類
トランクルームには「倉庫タイプ」と「コンテナタイプ」があります。
文字通り倉庫内にトランクルームを収納しているため、トランクルーム内の温度差は天候に左右されません。そのため、衣料品や書籍など幅広い物を収納することができます。
日光や風雨にさらされている環境であるため、トランクルーム内の温度差は天候に左右されやすく、
コンテナそのものも劣化しやすいといえます。そのため、収納するのに望ましいものは工具類やレジャー用品など、温度差にも耐久性のある物に限定されます。
トランクルーム経営の初期費用
トランクルーム経営の初期費用とトランクルーム経営を始めるまでの流れについてご説明します。
初期費用
「事業用定期借地方式」でトランクルーム経営を行う場合、初期費用は0円です。また、「リースバック方式」「業務委託方式」でトランクルーム経営を行う場合は、トランクルームの設置、建設が必要となります。トランクルームの規模やタイプによりますが、トランクルーム本体とそのほかの費用(運搬設置、基礎工事、確認申請費用など)を含めて、少なくとも300~500万円程度かかると見込んでおくとよいでしょう。
トランクルーム経営を始めるまでの流れ
トランクルーム経営を行う経営方式を決めます。その経営方式に対応可能な複数のトランクルーム業者に問い合わせて相談を行いましょう。
トランクルーム業者は相談を受けた後、現地調査やマーケット調査を行い、トランクルーム経営に適している土地か否か確認をしてくれます。トランクルーム業者が提案してくれたプランを比較検討し、トランクルーム業者を決定したのちに契約締結をします。
契約締結後、トランクルームの設置の着工を経て、運用を開始します。
トランクルーム経営のメリット・デメリット
トランクルーム経営のメリット・デメリットについてご説明します。
メリット
トランクルーム経営の大きなメリットは、アパートマンション経営と比較すると初期費用が安く、手間もかからない点が挙げられます。また、アパートマンション経営では、広い整形地が必要になりますし、快適な住環境を確保するための配慮(採光、騒音など)も必要です。しかし、トランクルームの場合、不整形地であっても経営が可能ですし、日当たりや騒音の条件が悪くても問題ありません。むしろ街道沿いなどは騒音があっても、車でのアクセスはしやすいためニーズが高い可能性もあります。
デメリット
トランクルーム経営のデメリットとしては、アパートマンション経営と比較すると税制優遇などの恩恵があまり受けられない点が挙げられます。固定資産税について小規模宅地等の特例※の適用が受けられません。減価償却についても長期償却となる可能性が高いため、節税効果は小さいでしょう。
※小規模宅地等の特例
住宅1戸当たり200 m2以下の小規模な住宅用地の場合、固定資産税の課税標準額は、固定資産税評価額の6分の1の額となり、都市計画税の課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1の額となります。
トランクルーム経営で失敗する原因
トランクルーム経営で失敗するケースには、どのような原因があるのかについてご説明します。また、その対策についてもご紹介します。
固定資産税を考えていなかった
固定資産税の負担が重いことが原因で資金繰りに困ってしまうケースがあります。先にご紹介した3つの経営方式、いずれについても地代収入や固定家賃収入が得られます。とくに「事業用定期借地方式」の場合は初期費用や管理費用について、トランクルーム業者負担となるので、地代収入のことに目が向きがちです。
しかし、元々、住宅用地として使われていた土地をトランクルーム用地として用途変更する場合、固定資産税は6倍に跳ね上がることになります。固定資産税の通知書を見て驚くのではなく、固定資産税の負担を考慮しても利益が生じるか否か、あらかじめキャッシュフローの確認をしておく必要があります。
建築確認が通らなかった
建築確認が通らず、トランクルーム経営ができないケースがあります。トランクルームは、コンテナタイプであっても基礎工事が必要になりますので建築物としてみなされ、建築確認が必要になります。「リースバック方式」「業務委託方式」では、土地所有者がトランクルームの設置、建設を行います。
初期費用を捻出したのにも関わらず、建築確認が通らず違法建築となり、そもそもトランクルーム経営を行うことができないという状態に陥ってしまっては目も当てられません。自己判断で進めず、トランクルームの設置条件や基準についての説明をていねいにしてくれるトランクルーム業者に相談するようにしましょう。
プロに相談してみよう
資金繰りや建築確認についてだけでなく、トランクルームに適した土地なのかどうかなど、自己判断で突き進まず、まずはプロに相談してみることがトランクルーム経営を失敗に終わらせないためにも重要です。
よくある質問
ここでは、トランクルーム経営に関するよくある質問をご紹介します。
- トランクルーム経営に向いている土地は?
- トランクルーム経営に向いている土地は、住居地域からほど近く、車がアクセスしやすい場所です。日当たりが悪くても騒音がひどくても、非整形地でもあまり問題になりません。
- トランクルーム経営はどんな人に向いている?
- トランクルーム経営に向いている方は、あまり初期費用や管理の手間をかけずに土地活用をしたいと考える方です。また、住宅としては日当たりなどの環境が悪い土地を所有している人にも向いています。
- トランクルーム経営の注意点は?
- トランクルーム設置ができないエリアや、建築確認が通らないトランクルームがあるということを知っておきましょう。また、どの経営方式でトランクルーム経営を行うにしても、固定資産税の負担はあります。手間のかからない土地活用の方法ではありますが、キャッシュフローは確認しておきましょう。
まとめ
初期費用も管理の手間もあまりかからないトランクルーム経営。しかし、今回の記事でご紹介したように、思わぬ落とし穴もあります。所有している土地がトランクルーム経営に向いているのか、ほかの土地活用方法が適しているのか、自分では判断がつかないということもあるでしょう。自己判断で土地活用を進めていくのではなく、まずはプロに相談してみる姿勢を大切にしておきましょう。
監修キムラ ミキ
【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー
日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。
大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。
その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。
URLhttp://www.laugh-dessin.com/
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