土地活用の中でも、昨今人気を集めているのが「トランクルーム経営」。自宅に置ききれなくなった荷物の保管先として、トランクルームのニーズが高まっています。アパート・マンション建築のように初期コストがかからないのが特徴です。物置のような倉庫を積み重ねるタイプ、倉庫を建築し間切りをするタイプがあります。この記事では、トランクルーム経営を検討している方に向けて、特徴や収益モデル、メリット・デメリットと併せて、契約をする前に必ず理解しておくべきリスク・注意点をご紹介いたします。
初期費用の少ないトランクルーム経営
トランクルーム経営は、数ある土地活用の中でも、少ない初期費用で進めることができます。
トランクルーム経営には、
・土地を貸し出して、地代を受け取る「事業用定期借地方式」 |
・施設をオーナーが建築、用意し、業者へ賃貸する「リースパック方式」 |
・オーナーが設備を建築、用意し、経営も自分で行うが、集客や管理を委託する「業務委託方式」 |
があります。
事業用定期借地方式であれば、初期費用は不要ですが、得られる収入は少なくなります。ご自分で取れるリスクに応じて、希望する運営方式を決めると良いでしょう。
トランクルーム経営に欲しい設備と必要な条件
初期費用の少ないトランクルーム経営ですが、どのような設備や条件が必要なのでしょうか。
欲しい設備
トランクルーム経営で欲しい設備には、まず、駐車場があげられます。郊外など、エリアによってはトランクルームまで車を使って荷物を運ぶことがあるため、駐車場を整備しておくと良いでしょう。なお、車から荷物の出し入れを行うことを考えると、通常よりも広めの駐車スペースを確保しておくべきです。また、24時間営業にするのであれば、夜に利用しに来る人のために電灯を設置したり、犯罪の抑制のために監視カメラを設置したりなどすれば、利用者に安心感を与えることができます。
必要な条件
コンテナを設置する場合、用途地域を確認しましょう。用途地域とは、各エリアをどのように利用していくかを定めるもので、エリアによってはコンテナを設置してすることが禁止されています。用途地域を確認せずコンテナを設置してしまうと、罰則が適用されることがあるので注意が必要です。なお、用途地域は各自治体で確認することができます。
また、倉庫として設置したコンテナは建築物に該当するため、建築基準法に基づいて確認申請を行い、確認済証を受けなければ設置することができません。仮に、確認済証を受けず無断で設置した場合は違反建築物として扱われてしまいます。なお、コンテナはコンクリート基礎などで固定する必要がありますが、建築基準法に対応しているコンテナもあるので、そういったものを活用してもよいでしょう。
トランクルーム経営のニーズが高まっている?
トランクルームは日本ではまだまだ普及が進んでおらず、今後さらなる普及が見込める市場として注目を集めています。トランクルームが最も普及している国はアメリカです。1960年代にテキサスの石油掘削のための出稼ぎ労働者用の収納スペースとして利用されたのが始まりとされています。その後、不動産投資先として人気が集まり、現在は2兆円もの市場となっています。
一方、日本においては、2016年時点で約510億円程度の市場に留まっています。
ただし、同データによると2008年に約250億円だった市場が毎年拡大し続け、8年で2倍もの市場拡大を果たしていることにも注目です。トランクルーム市場は今後も拡大が見込め、2020年には700億円を超える市場に成長すると予想されています。
トランクルーム経営の2つの種類
トランクルーム経営には「倉庫タイプ」と「コンテナタイプ」の2つがあります。
倉庫タイプは建物を1棟まるごと、もしくはビルの1階などをパーテーションで区切って貸し出すタイプで、大量にものを収納できます。一方、コンテナタイプは空き地にコンテナを並べて設置するタイプで、衣類や家電などの家財道具を収納するのに向いています。
トランクルーム経営の3つの運営方式
ここでは、以下3つのトランクルーム経営の運営方式について、その収益モデルも含めてお伝えします。
・事業用定期借地方式 |
・リースバック方式 |
・業務委託方式 |
| 事業用定期借地方式 | リースバック方式 | 業務委託形式 |
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初期費用 | なし | 200〜500万円 | 200〜500万円 |
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収入 | 地代 | 稼働に関わらず一定額 | 稼働次第で増減する |
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1.事業用定期借地方式の収益モデル
事業用定期借地方式は土地を借地するだけのタイプで、初期費用が全くかかりません。実際には、事業用定期借地方式で運営されているトランクルームはほとんどありません。また、事業用定期借地方式があるのはコンテナタイプだけです。
収入
事業用定期借地方式では、土地の借地料を毎月一定額受け取ることになります。事業用定期借地では、契約時に契約期間を10年以上50年未満で決めるため、その期間中は安定した収入が得られます。
ランニングコスト
事業用定期借地方式では、土地を貸すものの所有権は地主にあるため、毎月固定資産税を支払う必要があります。なお、借地料から固定資産税を差し引いて利益がある場合は、利益に対して不動産所得として所得税や住民税が課されます。
注意点
事業用定期借地方式では、最初に期間を決めて土地を借地し、基本的には延長がない旨を定めますが、10年以上50年未満と長い期間になってしまいます。途中で他の業態に変えたいと思っても、借地してしまっている以上変えることもできません。また、借地権付所有権は売却することもできますが、一般的には売りづらくなる点には注意が必要です。
2.リースバック方式の収益モデル
リースバック方式は、コンテナや建物を土地オーナーが建築し、トランクルーム業者へ一括して貸すというものです。
トランクルーム業者はトランクルームを管理・運営し、土地オーナーは稼働率に関わらず毎月定額の賃料を受け取ります。最初に初期費用を負担する必要がありますが、運営は業者が行い、毎月一定額の賃料を受け取れます。
ただし管理・運営を始めてみても運用が難しいと業者に判断されてしまうと、初期費用を負担したのにも関わらず施設だけが残ってしまう可能性もあります。
収入
リースバック方式の収入は、業者から受け取る固定賃料です。
ランニングコスト
リースバック方式では、事業用定期借地方式と違い、建物の所有権を持つため、ランニングコストとして土地と建物の固定資産税を支払う必要があります。業者から受け取る固定賃料から固定資産税を差し引いた額がプラスであれば、不動産所得として所得税と住民税を支払う必要があります。
また、リースバック方式では一般的に200〜500万円程の初期費用を負担する必要があります。
注意点
リースバック方式では、毎月の稼働率に関わらず、一定額の賃料を受け取りますが、この額については業者との話し合いで決められます。最初に初期費用を負担しているため、何年で回収できるかよく計算する必要があります。一般的にトランクルーム経営の利回りは15〜30%程度とされています。
3.業務委託方式の収益モデル
業務委託方式では、土地オーナーが建物や設備を建築し、経営もするものの借主の募集や管理に関しては業者に委託します。
収入
業務委託形式では、借主からの賃料がそのまま収入となります。事業用定期借地方式やリースバック方式と比べて高い収益を手に入れられますが、稼働率が悪ければ、その分だけ収入が落ちますし、手間もかかります。
ランニングコスト
業務委託形式では、リースバック方式と同様、建物を土地オーナーが建てるため、土地と建物それぞれの固定資産税を支払う必要があります。また、コンテナが破損した場合には補修費用を負担します。さらに、業者に管理委託するため管理費を支払う必要があります。
借主から受け取る賃料の総額から、固定資産税と補修費用、管理費を差し引いた額がプラスであれば、不動産所得として所得税と住民税を支払う必要があります。なお、業務委託形式でもリースバック方式と同様、初期費用として200〜500万円支払う必要があります。
注意点
業務委託形式では、設備を自分で導入し、また経営も自分で行うため、他の2つの形式と比べるとより経営的視点が必要となります。経営努力をして稼働率を上げればそれだけ収入が増えますが、一方で稼働率が下がればダイレクトに収入の低下につながります。
トランクルーム経営のメリット・デメリット
トランクルーム経営にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
トランクルーム経営のメリット
トランクルーム経営には以下のようなメリットがあります。
1.初期費用が安い |
2.管理に手間がかからない |
3.不整形地でも活用しやすい |
1.初期費用が安い
トランクルーム経営のメリットの一つとして、初期費用が安いことが挙げられます。事業用定期借地方式であれば初期費用は掛かりませんし、土地オーナーが建物や設備を建築する場合でも200〜500万円程度の費用で済ませられます。
2.管理に手間がかからない
トランクルーム経営は、コンテナ数が少なければ管理の手間はほとんどありません。また、コンテナ数が増え、管理の手間も増えるようであれば、管理会社に任せてしまうことができます。
3.不整形地でも活用しやすい
アパートや、マンション経営であれば、不整形地の活用が難しいことも少なくありませんが、トランクルーム経営では、コンテナを置くことができれば不整形な部分も活用することができます。
また、トランクルーム経営では、駅からの距離などを気にする必要がなく、アパートやマンションの経営など立地の重要な土地活用と比べて、立地をそれほど気にする必要がない点もメリットだと言えるでしょう。
トランクルーム経営のデメリット
一方、トランクルーム経営には以下のようなデメリットがあります。
1.借り手がつくまでの期間が長い |
2.トランクルームに担保価値はない |
3.税制メリットは小さい |
1.借り手がつくまでの期間が長い
トランクルームは、通常の賃貸物件と比べて認知度、集客チャネルが一般化されていないケースが多く、借り手がつくまでの期間が長くなることが少なくありません。今後、トランクルーム経営がもっと普及していけばこの部分は解消される可能性があります。
2.トランクルームに担保価値はない
トランクルームを空き地に作ったとしても、アパートやマンションのように、担保としての価値がないため、トランクルームを担保に融資を受けることができません。複数の事業を取り扱っている場合など、他の事業資金の担保にしたい時にはアパートやマンションの方が良いこともあります。
3.税制メリットは小さい
以前までは、一定以上の大きさのコンテナであれば、事業用の償却資産として申告することで7年間減価償却することができ、それにより節税効果を得られましたが、現在では、コンテナであっても継続的に使用すると建築物として扱われるようになりました。
これにより、償却資産から家屋としての扱いを受けるようになり、家屋の固定資産税がかかるようになりました。その上、住宅ではないため土地の固定資産税の軽減を受けることができないなど、税制優遇などの恩恵を受けづらくなっています。
トランクルーム経営に向いている人
メリットもデメリットもあるトランクルーム経営ですが、どういった人におすすめできるでしょうか。まずは、日当たりの良くない場所や騒音が響くなど、住居には適さない環境に土地を所有している人があげられます。こういった土地にアパートを建てても、賃料を相場より低くしなければ入居者が見つからないなどの可能性があるため、トランクルーム経営を検討してみてもよいでしょう。
また、アパート経営のように建物建築のための費用が必要なく、ランニングコストも抑えられるため、費用を極力かけたくない人には適しています。
まとめ
トランクルーム経営は、初期費用が少なく始められ、利回りも高く、これから伸びていく市場との見込みから注目を集めています。しかし、集客が難しいことや、担保価値がないこと、税制メリットが小さいことなどデメリットもあります。トランクルーム経営は、土地の立地をそれほど気にしないで良いため、アパート・マンション経営や駐車場経営など、立地を気にしなければならない土地活用にそぐわない土地でも検討することができます。
しかし、実際には集客の難しさなど特有の問題があります。自分の土地がトランクルーム経営に向いているかどうかはプロの意見を聞いておくようにしましょう。土地活用についてのプロの意見を聞く時は、一括プラン請求を活用すると、一度の入力で複数社の紹介を受けられて便利です。
監修逆瀬川 勇造
【資格】AFP(2級FP技能士)/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。
大学在学中に2級FP技能士資格を取得。
大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。