- 貸家建付地は自用地よりも相続税評価額を低く算出することができます。
- 貸家建付地の評価を受けるためには、土地の上の建物を賃貸物件として活用していなければなりません。
- 相続税対策として有効ではありますが、初期投資額と想定納税額を照らし合わせてよく検討しましょう。
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目次
「貸家建付地」とは
「貸家建付地」の上に存在するアパートなどの賃貸物件には、入居者の権利である「借家権」が付着しています。「貸家建付地」の所有者は、入居者の権利を無視してアパートなどの賃貸物件を取り壊すなどの行為ができません。
なお、そのような他人の権利が付着しておらず、所有者が自由に活用できる土地のことを「自用地(じようち)」といいます。
「貸家建付地」は、「自用地」よりも土地活用に制限を受けるため、相続税評価額の計算において、評価額が低く算出される仕組みになっています。そのため、アパート経営を行い、所有する土地を「貸家建付地」にすることが相続税対策につながると言われているのです。
ケースバイケースですが、貸家建付地の相続税評価額は、自用地よりも20%前後下がることが多いです。
自用地・貸宅地との違い
自用地とは、自分で使用している土地をいいます。自宅を建てている土地や、更地のまま駐車場にしている土地、親族が無償で使っている土地も自用地になります。
貸宅地とは、自分の土地を他人に貸して、他人の所有する建物が建っている状態です。建物を建てるために土地を貸すと、借りた人には「借地権」という権利が生まれ、貸している土地は「底地」と呼ばれます。
貸宅地の評価は「自用地評価額×(1-借地権割合)」です。
借地権割合が60%の地域なら、貸宅地は自用地の40%の評価になります。借地権は非常に強い権利で、契約を解除して底地を自分で利用するのは簡単ではないため、貸宅地(底地)の評価額は自用地よりも大きく下がります。
土地の上に建っている建物 | 相続税の評価方法 | |
---|---|---|
自用地 | 自分の所有する建物を自分で使っている(自宅) | 自用地評価額 |
貸家建付地 | 自分の所有する建物を他人に貸している(賃貸アパートなど) | 自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
貸宅地 | 他人の所有する建物 | 自用地評価額×(1-借地権割合) |
貸家建付地の3つの要件 【NG例も紹介】
しかし賃貸物件として活用していても、その敷地が「貸家建付地」とみなされないケースもあります。「貸家建付地」としての評価を受けるための要件とNG例についてご説明します。
1.土地の上に建物があること
【NG例】駐車場やコインパーキング
2.世間相場並みの家賃をもらっていること
【NG例】親族などに格安貸与
3.継続して賃貸されていること
【NG】空室なのに新規募集していない
貸家建付地の相続税評価額の計算方法
「貸家建付地」の評価額 |
---|
=自用地評価額-×(自用地評価額×1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
【ステップ1】自用地の相続税評価額を求める
自用地の評価額=路線価×面積 |
---|
※奥行価格補正率は考慮していません。
【ステップ2】借地権割合を確認する
【ステップ3】借家権割合は全国一律30%
【ステップ4】賃貸割合を確認する
賃貸割合は床面積から算出します。すべての部屋を賃貸している場合は100%です。
【土地活用ケース別】貸家建付地の相続税評価額の計算例
【ケース1】自宅とは別にアパートを1棟建てた場合
「貸家建付地」の評価額 |
---|
=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
・アパートの建っている土地の路線価は30万円、面積は300 m2(奥行価格補正等は考慮外) |
・借地権割合は60%(路線価図で確認) |
・借家権割合は30%(全国一律) |
・賃貸割合は100% |
【ケース2】自宅敷地内にアパートを1棟建てた場合
・土地の路線価は30万円、全体面積は300 m2 |
・自宅の敷地が150 m2、アパートの敷地が150 m2 |
・借地権割合は60%(路線価図で確認) |
・借家権割合は30%(全国一律) |
・賃貸割合は100% |
なお、自宅とアパートの敷地を分けることで、土地が不整形になる場合などは、上記とは異なる計算結果になる可能性があります。
【ケース3】賃貸併用住宅を建てた場合
・土地の路線価は30万円、土地面積は300 m2 |
・建物の床面積の25%が自宅部分、75%が賃貸部分(区分登記なし) |
・借地権割合は60%(路線価図で確認) |
・借家権割合は30%(全国一律) |
・賃貸割合は100% |
賃貸部分の土地は貸家建付地評価なので、自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=路線価30万円×225 m2×(1-60%×30%×100%)=5,535万円合計の評価額は7,785万円となり、全体が自用地の場合と比べて評価額は13.5%下がりました。
また、小規模宅地等の特例が適用できる要件を満たしていれば、自宅部分と賃貸部分それぞれについて評価額がさらに減額されます。
賃貸併用住宅についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
小規模宅地の特例が適用できればさらに評価減に!
相続税の申告期限(死亡から10カ月)まで所有し継続して賃貸していること、3年以上の賃貸経営期間があることなどが要件となっています。そのため、小規模宅地等の特例による優遇を活用するためには、早めに相続対策を始めることが対策です。
貸家建付地の評価で相続税対策をする際の注意点
安定した収益性は見込めるか?
一時的な空室ならば賃貸部分に含めることはできるのですが、空室が長期的だと「一時的な空室」と認められない場合があるので、安定した収益性が見込める場所に賃貸物件を建てることが大切です。
相続税対策をする必要があるか?
とくに大切なのが、一次相続だけでなく二次相続まで見通した上で、相続税対策を考えることです。
配偶者がいる場合(一次相続)は、配偶者の控除制度があるので相続税を大きく軽減でき、相続税対策の必要はないと思われるケースもあります。ところが、二次相続では配偶者控除が使えず、税負担が大きくなってしまうことがあるため、二次相続まで考慮しておくと安心です。
不動産経営が負担にならないか?
また、安定した収入の見込める不動産であればよいですが、空室だらけのアパートを相続させるようなことにならないように、立地に応じた土地活用を慎重に見極めることが大切です。
賃貸物件の相続について相続人の意見も聞いてみたり、生前から賃貸経営についてのノウハウを伝えていくと安心です。
まとめ
大切なのは、相続対策だけに目をむけるのではなく、予算や事業見通しなど総合的に勘案した上で、実行に踏み切る姿勢です。その財産を相続する家族の意向などにも耳を傾けながら、慎重に対策を講じていきましょう。
相続税を抑える目的で賃貸経営をお考えの方に
おすすめの土地活用法をお伝えします。
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※ページ下部の「土地活用プラン請求サービスの注意点」をご確認いただいたうえ、ご利用ください。
この記事の監修者
木村 ゆり
【資格】不動産鑑定士/土地活用プランナー
千葉大学卒業、地方銀行に勤務後、都内の不動産鑑定業者で事務所ビルやマンション等の収益物件の評価を数多く経験。現在は不動産鑑定士事務所を経営し、住宅・店舗・更地・山林・資材置場など多様な不動産に携わる。土地活用や相続対策にも精通し、不動産に関するお悩み解決に尽力している。
株式会社よつば不動産鑑定https://kantei428.co.jp/
「貸家建付地」は土地を貸すのではなく、自分の土地に建っている建物を第三者に貸している状態です。「貸宅地」は、自分の土地を第三者に貸しているのが違いです。