- 賃貸住宅経営などの土地活用は、財産の相続税評価額を下げる効果があり相続税対策につながります。
- ただし、遺産分割が難しくなったり、納税資金が別途必要になるデメリットがあります。
- 相続税対策で土地を活用する際は、その後の運営についてもよく検討しましょう!
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目次
土地活用を行うと相続税対策になる?
ここでは、土地活用による相続税対策を考える前に、そもそも相続税とはどのような仕組みなのかについて解説したいと思います。
相続税の仕組みとは
法定相続人の決まり方
条件 | 法定相続人 | 相続分 | 法定相続人 | 相続分 | 遺留分 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1. | 子がいる | 配偶者 | 2分の1 | 子 | 2分の1 | あり |
2. | 子がいない | 配偶者 | 3分の2 | 両親 | 3分の1 | あり |
3. | 子も両親もいない | 配偶者 | 4分の3 | 兄弟姉妹 | 4分の1 | なし |
遺留分とは
遺留分があると、自分にも遺留分だけ財産を分けてもらうよう請求することができます。ただし、法定相続人のうち兄弟姉妹には遺留分がありません。
相続税の基礎控除の計算方法
3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
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つまり、法定相続人の数が多ければ多いほど大きな額の控除を受けることができ、たとえば配偶者と両親が相続人になる場合は3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円ですが、配偶者と子が5人いるようなご家庭では3,000万円+(600万円×6人)=6,600万円の控除を受けられます。
なお、この時の法定相続人の数には、法定相続人でありながら相続放棄をした人があっても、その放棄がなかったものとして計算します。
まずは相続税がかかるかを確認しよう
9,000万円(相続財産)ー5,400万円(基礎控除額)=3,600万円 |
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となり、3,600万円に対して相続税が課されることになります。
土地活用で相続税対策ができる2つの理由
【理由1】「相続税評価額」を下げる
土地活用で相続税評価額を安くする(下げる)方法には以下の3つの方法があります。
1. | 現金を「建築物」に変える(約40%減らす) |
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2. | 建築物を「貸家」にする(約30%減) |
3. | 更地を「貸家建付地」にする(約20%減) |
1.現金を「建築物」に変える(約40%減)
つまり、1億円をかけて建てた建物の評価額が6,000万円ほどしかなく、評価額1億円の現金が消えて、評価額として6,000万円にしかならない建物が残るため40%の節税につながるのです。
2.建築物を「貸家」にする(約30%減)
つまり、上記「現金を「建築物」に変える」で用いた事例で考えると、1億円かけて6,000万円の建築物を建て、さらに貸家にすることで6,000万円×70%=4,200万円の評価額にすることができるのです。
3.更地を「貸家建付地」にする(約20%減)
具体的には、以下の計算式で、何も建物が乗っていない時の自己所有地の評価額から、借家人の権利を差し引きます。
貸家建付地の相続税評価額 |
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自用地の相続税評価額ー{自用地の相続税評価額×(1ー借地権割合×貸家権割合)} |
借地権割合は、土地により30~90%(都市部では60~70%が多い)と定められています。たとえば、自用地の評価額が1億円の土地で借地権割合が70%の地域だった場合を想定すると以下のようになります(借家権割合は一律で30%)。
1億円ー{1億円×(1ー0.7×0.3)}=7,900万円 |
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このように、借地権割合が70%の地域では21%の評価額減となります。
【理由2】小規模宅地等の特例を利用する
最大で80%の軽減を受けられるわけですから、たとえば1億円の土地であれば2,000万円の評価額で済みます。土地の相続においてはかなり重要度の高い特例となります。
条件としては、亡くなった方(被相続人)と相続人が同じ財布のもとで生活していた親族であることや、土地の上に建物が建っていることを前提とし、その建物が居住用の建物なのか、事業用の建物なのか、またどのような事業であったのかによって受けられる評価減の上限と、面積の上限が異なります。
小規模宅地等の特例
区分 | 要件 | 最大面積 | 最大割合 | ||
---|---|---|---|---|---|
事業用 | 貸付事業以外 | 400平米 | 80% | ||
貸付事業 | 法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等 | 特定同族会社事業用宅地 | 400平米 | 80% | |
貸付事業用宅地 | 200平米 | 50% | |||
法人の貸付事業用の宅地等 | 貸付事業用宅地 | 200平米 | 50% | ||
被相続人の貸付事業用の宅地等 | 貸付事業用宅地 | 200平米 | 50% | ||
居住用 | 特定居住用宅地 | 330平米 | 80% |
相続税対策としておすすめの土地活用方法2選
1.賃貸住宅経営
仮に、経営していたとしても、全8戸あるうち半分が空室の場合、空室部分を埋めるための募集などをしていなければ、評価減を受けることができるのは入居者がいる半分の4戸のみとなってしまうため、相続人となった人に経営するだけの意欲や能力があるかどうかを考慮しなければなりません。
たとえ、全額現金で建てたとしても、空室対策や修繕対策など考えなければならないことが多く、亡くなった方(被相続人)には簡単にできることでも、経験のない相続人には難しいものです。可能であれば、生前より賃貸住宅経営について少しずつ仕事を任せていくような方法を試してみましょう。
代表的な賃貸住宅経営に関しては、以下の記事で詳しく解説をしています。
建物を建てないと相続税対策にはならない
建設費などの費用はかかってしまいますが、相続税対策が目的なのであれば建物を建てる必要があることを押さえておきましょう。
2.高齢者施設経営
比較的高い利回りが得られやすいものの、介護サービス事業者との共同で事業化するなど手軽に事業できない点や、比較的大きな規模の土地や建物が必要なことから投資金額が大きくなる点に注意が必要です。
土地活用の相続税対策における注意点
1.相続対策の優先順位を考える
遺産分割に関しては、子供が3人いたような場合に、長男に不動産を相続させると次男と三男に財産を残せないような計画では、子供たちの不満をまねく可能性があります。節税より先に、これら納税資金の準備と遺産分割の準備を考えることが重要です。
2.二次相続を見越して考える
一方、二次相続とは、配偶者が亡くなった際、配偶者から子供たちへの相続がなされる時のことです。二次相続の際には子供たちの配偶者の存在もあり遺産分割でトラブルとなってしまうケースが少なくありません。相続対策では、二次相続まで見越して考えることが大切です。
3.定期的に効果を見直す
4.借金でも自己資金でも効果は変わらない
一方、現金を持っていない人にとって、借金をして賃貸住宅経営を始めることは相続税対策上、非常に効果が高いです。土地活用による評価額軽減効果と借金額を相続財産から差し引く効果の2つ効果を得られるからです。
5.遺産分割しにくくなる
不動産を共有財産とすることもできますが、不動産として活用しづらくなるばかりでなく、将来その子供たちにさらに相続が発生していくとどんどん権利が分割していってしまう可能性があります。相続財産に不動産がある場合はこうした点についてもよく考えておく必要があります。
相続税対策ばかりに目を向けないように注意しましょう
相続税対策で土地を活用する際は、その後の運営についてもよく検討することをおすすめします。
まとめ
一方で、注意点としてお伝えさせていただきましたが、相続においては節税より納税資金や遺産分割の準備の方が重要です。こうしたことをトータルで考えながら、相続税対策を行っていくことが大切です。
相続税対策に土地活用は有効と言われていますが、
注意点を把握することが大切です!
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この記事の監修者
AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。