「地積規模の大きな宅地の評価」で広い土地は相続税額が下がる?適用条件も解説します

2024.02.16更新

この記事の監修者

秦 光一郎

秦 光一郎

【資格】税理士

「地積規模の大きな宅地の評価」で広い土地は相続税額が下がる?適用条件も解説します

「地積規模の大きな宅地の評価」の規定を活用できるかどうかで、広い土地を相続した場合の相続税の額に大きく影響します。

この記事のポイント
  • 平成30年より適用されるようになった「地積規模の大きな宅地の評価」は従来の広大地規定よりも評価額が増大しています。
  • 広い土地を相続する際は改めて相続税評価額をシミュレーションし、具体的な対策を持つべきです。
  • 実際の流通額と乖離が生じそうな場合は、生前に売却しておくことも検討しましょう。

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目次

地積規模の大きな宅地とは?

地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500m2以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域では1,000m2以上の地積の宅地をいいます

三大都市圏とは、大まかに言えば、東京、大阪、名古屋及びその周辺の地域のことです。ただし、上記地積以上の宅地であっても、次のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれます。

①市街化調整区域に所在する宅地
②都市計画法の用途地域が工業専門地域に指定されている地域に所在する宅地
③指定容積率が400%(東京都特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
④評価通達22-2に定める大規模工業用地
簡単に言えば①は住宅等建物を建てることが規制される土地、②④は工場用地となる土地、③はマンション敷地に適している土地を意味し、これらの土地をこの規定の対象外としています。

宅地開発に際して潰れ地が発生する可能性がないためです。以下の国税庁の情報もご参考になさってください。

「広大地評価」と「地積規模の大きな宅地の評価」の違い

「地積規模の大きな宅地の評価」の規定は、従来の「広大地評価」に比し、基準が明確になり実務上の混乱は避けられるようになりました。他方、基準の明確化により、矛盾と見える事象も発生しています。

たとえば、この規定によれば490m2や990m2宅地は、同条件の500m2や1,000m2の宅地よりも高く評価される可能性があります。「広大地評価」は中小工業地区の宅地にも適用できましたが、「地積規模の大きな宅地の評価」では、中小工業地区の宅地は適用対象外とされました。

市街化調整区域にある宅地が対象外とされたことで、市街化調整区域内の地積規模の大きな雑種地の評価は、同条件の路線価区域に所在する宅地の価額に比し、高額になる事例も発生します

また、旧広大地補正率と規模格差補正率を単純に比較すると、補正率は大幅に上昇しています。500m2以上の土地で39%、2,000m2以上の土地で50%程度、5,000m2以上の土地では100%程度、補正率の値は上昇しました。

「地積規模の大きな宅地の評価」では、奥行価格補正率や不整形補正率等を反映できることから、上記の上昇率がそのまま宅地の評価額に反映されるわけではありませんが、従前の広大地規定に比し全般的に宅地の評価額は増大し、規模が大きいほどその傾向は顕著です。

地積規模の大きな宅地の評価に該当する要件

地積規模の大きな宅地の評価に該当するかどうか、確認する方法をご紹介します。

路線価地域/倍率地域

路線価とは、その道路に面する土地1m2あたりの評価額を意味します。これは相続税等の計算のために国が公表している財産評価基準です。土地の接する道路に路線価が定められている場合、その路線価に土地の地積を乗じて、土地の評価額を計算します。道路に路線価が定められている地域を路線価地域といいます。路線価は下記リンクの財産評価基準書、路線価図に定められています。

倍率地域とは、路線価が定められていいない地域を言います。倍率地域に所在する土地の評価は、固定資産税評価額にその土地の所在地域や地目に応じた倍率を乗じて算出します。区分毎の倍率も、下記リンクの評価倍率表に定められています。以下のリンクより、ご自身が所有する土地が、路線価地域、倍率地域のいずれに所在するか、ご確認なさって見てください。

普通商業・併用住宅地区/普通住宅地区

路線価地域は、更に細かく、ビル街地区、高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、中小工場地区、大工場地区、普通住宅地区の6種類に区分されます。上記財産基準書から路線価図をご確認頂くと、それぞれの路線がどの地区に所在しているのかを見ることができます。

路線価地域のこれら6種類の地区のうち、地積規模の大きな宅地の対象となるのは、普通商業・併用住宅地区と普通住宅地区のみです。倍率地域に所在する宅地については、地積規模が上記の基準以上であるならば、地積規模の大きな宅地の評価の対象とできます。

2つ以上の地区にわたる場合はどうする?

評価対象となる宅地が2以上の地区に該当する場合は、その宅地の過半が属する地区に、その宅地の全部が所在するものとして取り扱われます。この考え方は、地区だけでなく容積率にも適用されます。

市街化調整区域でも該当する場合がある

市街化調整区域は、そもそも宅地開発をすることができない地域であるため、原則として地積規模の大きな宅地に該当しないこととされています。しかし「都市計画法第34条第10号又は11号の規定に基づき宅地分譲に関わる開発行為を行うことができる区域を除く」との規定があり、開発行為が可能な土地については、地積規模の大きな宅地に該当するものとしています。

地積規模の大きな宅地の評価方法

税法で「評価」とは、金額を算定することを言います。「ご所有の土地を評価する」とは、ご自宅の土地建物が、「いくら」「何円」であるのか、を算定することを意味します。

国は、相続税や贈与税の課税に際して公平に課税するための基準として、「財産評価基本通達」を定めています。先の路線価や倍率表が掲載されている「財産評価基準書」もこの「財産評価基本通達」の一部です。税法上の評価は、基本的にこの「財産評価基本通達」に基づいて計算されます。

路線価地域に所在する場合

路線価地域に所在する地積規模が大きな宅地の評価方法は以下の算式により計算します。算式中鍵となるのは、「規模格差補正率」です。地積規模が大きな宅地の評価は、通常の土地の評価額に「規模格差補正率」を乗じて算出します。

評価額=路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率等各種補正率×規模格差補正率×地積(m2)

倍率地域に所在する場合

倍率地域に所在する宅地の場合、次の①または②のいずれか低い金額により評価します。

①その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
②その宅地が標準的な間口及び奥行を有する宅地であるとした場合の1m2あたりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率等の各種各地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額

規模格差補正率

上記算式中の、規模格差補正率は以下の算式により計算します。なお、算式中のⒷ及び©は定数で、所在する地域及び地積に応じて下表の通り定められております。
【①三大都市圏に所在する宅地】
地積普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
©
500m2以上1,000m2未満0.9525
1,000m2以上3,000m2未満0.9075
3,000m2以上5,000m2未満0.85225
5,000m2以上0.80475
【②三大都市圏以外の地域に所在する宅地】
地積普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
©
1,000m2以上3,000m2未満0.90100
3,000m2以上5,000m2未満0.85250
5,000m2以上0.80500

地積規模の大きな宅地を相続する場合の注意点

ご所有の宅地の中に、上記地積の要件(500m2以上ないしは1,000m2以上)に該当する土地がある場合には、「地積規模の大きな宅地の評価」の規定を活用できるかどうか検討する必要があります。この規定は、相続税の額に大きな影響を及ぼします。ご注意頂かなければならない点は、宅地の評価単位についてです。相続税における宅地の評価単位は、利用者毎、を原則とします

つまり、せっかく地積規模が大きな宅地に該当する相続財産があったとしても、相続人がこれを分割登記し、各相続人の取得分が上記地積要件を下回ってしまえば、この規定の適用を受けることは出来なくなります。この場合、各相続人が1/2等、持分の共有形式で相続するならば、「地積規模の大きな宅地の評価」を適用することができます。

相続において土地の共有相続はなるべく避けるべきですが、地積規模の大きな宅地に関しては、相続税額への影響も考慮しつつ、共有相続も遺産分割手法の1つとしてご検討頂くことは賢明です

また、生前に検討できる対策としては、地積の要件を満たすことができるよう隣地を買い足しておくこと、どうしても兄弟で分割しなければならない場合は、同族法人へ不動産を売却し、同族法人株式の形式で分割承継させることなども考えられます。

相続税の支払いが難しいときは売却の検討も

地積規模の大きな宅地をご所有の方については、平成29年以前に行った相続シミュレーションは役に立ちません。新しい規定を適用して、相続シミュレーションを行い、現状の評価額及び納税予測額を把握しておくことは重要です

一旦相続が開始してしまいますと、土地の評価方法の自由度は失われます。相続における財産の評価は、上述の財産評価基本通達を原則とします。その評価が著しく不適当と認められる場合に不動産鑑定評価等の別手法を用いることが認められます。

このため相続税の課税価格が実際の流通価格よりも高額な評価にならざるを得ない場合はあります。上述の基準を満たさない宅地(490m2等)、中小工業地区の宅地や市街化調整区域の雑種地で地積規模が大きな宅地は、相続税の課税価格が流通価格よりも高額になる可能性の高い土地です。

評価上問題のある財産を生前に売却しておくことは、有効な対策の1つです。売却であれば、純粋な流通価格による譲渡ができます。同族会社へ売却しておくことは良く見られる手法です。評価が一義的でない宅地を資金化しておくことは納税資金の確保にもつながりますし、相続人間の争いを避けるのにも役立ちます

まとめ

この記事では、平成30年から適用されるようになった「地積規模の大きな宅地の評価」について解説しました。従前の広大地規定に比し、適用の対象となる宅地の範囲は狭まり、評価額は増大しています。

平成29年以前になさった相続シミュレーションは役に立たないことから、地積規模が大きな宅地をご所有の方は、改めて相続シミュレーションを行い、現状把握をなさってください。この点是非、顧問税理士と意思疎通を取り、具体的な対策について相談なさってください。

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この記事の監修者

秦 光一郎

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【資格】税理士

会計事務所に勤務しつつ平成16年税理士試験に合格。税務コンサルタント会社にて金融機関をサポートする業務の中、資産税業務の経験を積む。平成22年税理士法人シン総合会計設立。主に中小企業の会計税務支援を中心に、事業承継、資産税業務にも従事。不動産会社の税務相談会相談員、金融機関のセミナー講師等に携わる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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