- 公売とは国が差し押さえた財産を入札などの方法で売却し、滞納した税金に充てることを指します。
- 公売物件は相場より安く買える可能性がありますが、占有者の立ち退きや残置物などの対応に余計にお金がかかる場合もあります。
- 現地確認は必ず行い、正確な情報を取得したうえで、買う買わないの判断をしましょう。
目次
競売物件より安全?公売物件とは
そもそも公売とはどういったものなのでしょうか。公売とは国が差押財産を売却することをいいます。税金を滞納している人(滞納者)が税金を納付しない場合、差し押さえた財産を入札などの方法で売却してお金に換えて、滞納している税金に充てることを指します。
公売される財産の種類には、土地・建物などの不動産、絵画・宝石・時計などの動産、自動車やゴルフ会員権などがあげられます。
競売物件との違い
競売とは債務者が住宅ローンの返済ができなくなり、金融機関などの債権者が裁判所に申し立てることにより、担保としていた債務者の不動産などの財産を差し押さえ、裁判所の権限によって強制的に売却することを指します。競売にかけられる不動産は競売物件として扱われ、一番高く買ってくれる人に売却してその代金は債務の返済に充てられます。
これに対して任意売却は債権者の許可のもと、ある程度所有者の希望条件で一般市場にて不動産を売却することを指し、こうした物件を任意売却物件と呼びます。競売と任意売却の違いを図表にすると以下の通りになります。
競売の場合 | 任意売却の場合 | |
---|---|---|
物件価格 | 相場価格の50~80% | 相場価格の80%程度 |
物件情報 | 基本的に内覧不可 | 相談のうえ内覧可能 |
引渡し | 裁判所は引渡しを保証しないため占有者や残置物のリスクがある | 退去時期を売主と調整のうえ契約できる |
瑕疵保証 | 現況での引渡しで瑕疵保証はなし | 現況での引渡しで瑕疵保証はなし |
住宅ローン | 取扱金融機関は少ない | 利用可能 |
交渉期間 | 債権者との交渉に時間がかかる場合もある | 短期間(1~3週間)で物件購入の判断、保証金の準備が必要 |
公売物件を購入するメリット
【メリット1】相場より安く買える可能性がある
また、物件に占有者がいる場合には立ち退き交渉は当事者間で行う必要があり、引渡命令をすぐに出すことはできない場合もありますので注意が必要になります。そうした交渉に時間や費用がかかれば、せっかく安く買ったとしてもプラスアルファの費用が発生する可能性があります。
【メリット2】諸費用を抑えられる
【メリット3】市場に出回っていない物件が買える
公売物件を購入するデメリット
【デメリット1】情報が少ない
国税庁の公売情報には以下のような注意事項があります。
公売は現況有姿により行うものであるため、次の一般的事項を十分ご理解の上、公売へご参加ください。
1 公売財産については、あらかじめその現況及び関係公簿等を確認してください。
2 公売財産に財産の種類又は品質に関する不適合があっても、執行機関(国)は、担保責任を負いません。
3 執行機関(国)は、公売財産の引渡義務を負わないため、使用者又は占有者に対して明渡しを求める場合や不動産内にある動産の処理などはすべて買受人の責任において行うことになります。
4 土地の境界については隣接地所有者と、接面道路(私道)の利用については道路所有者とそれぞれ協議してください。
5 土壌汚染やアスベストなどに関する専門的な調査は行っておりません。
このように一般の不動産物件の売買とは異なる点は注意する必要があります。
【デメリット2】契約不適合責任が発生しない
【デメリット3】残置物や滞納金の負担などトラブルが多い
【デメリット4】占有者の立ち退きは自己責任となる
したがって、物件に占有者がいるかどうか、現地に出向いて確認することが必要です。
【デメリット5】入札のハードルが高い
仮に、落札して購入する場合には、残りの残金の2,700万円を現金納付することになります。したがって、それなりの手元資金がないと入札にすら参加できないことになります。
公売物件の購入方法
入札方式は入札を行った参加者のうち最高価格の入札者に売却する方法で、特定の公売日に公売会場で出された入札書をその日に開札する期日入札と、定められた期間内に入札書を提出して別の日に開札する期間入札があります。
競い売りの方法はいわゆるオークション的な方法で、購入希望者が順次高価な買受の申込みを行い、最高価額の申込者に売却する方法です。この方法はインターネットオークションサイトでも実施しています。
公売物件の情報の入手先
・国税庁、国税局、税務署の職員
・公売への参加を制限されている人
公売物件入札の流れ
下記は期日入札の場合です。期日入札は、入札書の提出を行うことができる期間(入札期間)が1日である入札方法です。期日入札では、入札期間において入札書の提出を受け付け、同日中に開札します。
公売物件を購入する際の注意点
充分な資金を用意すること
入札前に情報収集をすること
法的なトラブルに備えること
公売物件の購入での注意点は占有者の存在や残置物や滞納金の有無を充分に調査、確認する必要があります。この点で現地確認は必ず行い、現状がどうなっているのかは目視や近隣への聞き取り調査などを行って正確な情報取得をしておくべきです。
まとめ
しかしながら、占有者の存在や滞納金の発覚、売主の契約不適合責任がないなど、落札後にトラブルに発展する想定もしておく必要があります。加えて、購入の資金は基本すべて現金となりますので、資金調達も充分に考えておきましょう。
こうしたメリット、デメリットを踏まえて、買うか買わないかの判断は必要でしょう。
価格が安いからといって飛びつくと後々、痛い目に合います。 入札前に専門家のアドバイスを受けるなど、事前に自己防衛をしておくべきでしょう。
「お買い得物件」が見つかりそうなイメージの公売ですが
リスクの事前把握が不可欠です!
この記事の監修者
不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー
アネシスプランニング株式会社 代表取締役。住宅コンサルタント、住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務後、2006年に同社を設立。
個人住宅・賃貸住宅の建築や不動産売却・購入、ファイナンスなどのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、3000件以上の相談を受けている。
WEBメディアに不動産投資についてのコラムを多数寄稿。著書に「不動産投資は出口戦略が9割」「不動産投資の曲がり角 で、どうする?」(クロスメディア・パブリッシング)など。
公売物件は競売物件と同様に価額が安いという点では大きなメリットがあります。しかしながら、購入前に確認できる情報は限られたものが多いので、そのリスクヘッジをどう考えるかが大きなポイントになります。また、基本的に購入代金は現金払いとなりますので、資金力がないと公売物件の購入は難しいものです。