公売物件とは?競売物件との違いやデメリットを解説します

2024.08.16更新

この記事の監修者

寺岡 孝
寺岡 孝

不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー

公売物件とは?競売物件との違いやデメリットを解説します

物件をお得に買える公売物件について、競売物件との違いや公売物件のメリット、デメリットを解説します。

この記事のポイント
  • 公売とは国が差し押さえた財産を入札などの方法で売却し、滞納した税金に充てることを指します。
  • 公売物件は相場より安く買える可能性がありますが、占有者の立ち退きや残置物などの対応に余計にお金がかかる場合もあります。
  • 現地確認は必ず行い、正確な情報を取得したうえで、買う買わないの判断をしましょう。

目次

競売物件より安全?公売物件とは

不動産投資を始めるにあたり、なるべく物件を安く買いたいものですが、中でも公売物件というものがあるのをご存知でしょうか。ここからはこの公売物件について解説していきましょう。

そもそも公売とはどういったものなのでしょうか。公売とは国が差押財産を売却することをいいます。税金を滞納している人(滞納者)が税金を納付しない場合、差し押さえた財産を入札などの方法で売却してお金に換えて、滞納している税金に充てることを指します。

公売される財産の種類には、土地・建物などの不動産、絵画・宝石・時計などの動産、自動車やゴルフ会員権などがあげられます。

競売物件との違い

公売物件と似たようなものとして、競売物件や任意売却物件があります。

競売とは債務者が住宅ローンの返済ができなくなり、金融機関などの債権者が裁判所に申し立てることにより、担保としていた債務者の不動産などの財産を差し押さえ、裁判所の権限によって強制的に売却することを指します。競売にかけられる不動産は競売物件として扱われ、一番高く買ってくれる人に売却してその代金は債務の返済に充てられます。

これに対して任意売却は債権者の許可のもと、ある程度所有者の希望条件で一般市場にて不動産を売却することを指し、こうした物件を任意売却物件と呼びます。競売と任意売却の違いを図表にすると以下の通りになります。

競売の場合任意売却の場合
物件価格相場価格の50~80%相場価格の80%程度
物件情報基本的に内覧不可相談のうえ内覧可能
引渡し裁判所は引渡しを保証しないため占有者や残置物のリスクがある退去時期を売主と調整のうえ契約できる
瑕疵保証現況での引渡しで瑕疵保証はなし現況での引渡しで瑕疵保証はなし
住宅ローン取扱金融機関は少ない利用可能
交渉期間債権者との交渉に時間がかかる場合もある短期間(1~3週間)で物件購入の判断、保証金の準備が必要

公売物件を購入するメリット

投資用として公売物件を購入する場合にはどんなメリットがあるのでしょうか。ここからは公売物件のメリットを見ていきましょう。

【メリット1】相場より安く買える可能性がある

公売は自治体や国税局が販売を行う機関となり、価格設定は市況の概ね7割程度が提示価格となります。したがって、相場よりも安く買える場合があります。しかしながら、近年では市況よりも安価で買えるというイメージで入札者が増え、それに伴い最高価額も高くなりがちなようです。

また、物件に占有者がいる場合には立ち退き交渉は当事者間で行う必要があり、引渡命令をすぐに出すことはできない場合もありますので注意が必要になります。そうした交渉に時間や費用がかかれば、せっかく安く買ったとしてもプラスアルファの費用が発生する可能性があります。

【メリット2】諸費用を抑えられる

公売物件は国が差し押さえた財産ですから、一般の不動産取引のように仲介手数料はかかりません。

【メリット3】市場に出回っていない物件が買える

公売物件は一般の市況には出回っていない場合が多いので、中にはお買い得な物件もあります。ただ、そういった物件はいつ出回るかはわかりません。

公売物件を購入するデメリット

ここからは、投資用として公売物件を購入する場合のデメリットについて見ていきましょう。

【デメリット1】情報が少ない

公売物件は競売物件と比べると、該当部分に対する資料が少ないと言えます。したがって、現地にて物件を確認することや関係資料を自分で探して取ることが必要になります。

国税庁の公売情報には以下のような注意事項があります。

公売は現況有姿により行うものであるため、次の一般的事項を十分ご理解の上、公売へご参加ください。
 公売財産については、あらかじめその現況及び関係公簿等を確認してください。
 公売財産に財産の種類又は品質に関する不適合があっても、執行機関(国)は、担保責任を負いません。
 執行機関(国)は、公売財産の引渡義務を負わないため、使用者又は占有者に対して明渡しを求める場合や不動産内にある動産の処理などはすべて買受人の責任において行うことになります。
 土地の境界については隣接地所有者と、接面道路(私道)の利用については道路所有者とそれぞれ協議してください。
 土壌汚染やアスベストなどに関する専門的な調査は行っておりません。

このように一般の不動産物件の売買とは異なる点は注意する必要があります。

【デメリット2】契約不適合責任が発生しない

公売物件はいわゆる売主の契約不適合責任は発生しません。上記のように「公売財産に財産の種類又は品質に関する不適合があっても、執行機関(国)は、担保責任を負いません。」となりますので、この点は充分に理解しておくことです。

【デメリット3】残置物や滞納金の負担などトラブルが多い

公売物件はあくまでも現況有姿で行うため、建物内部に残置物があったり、マンションの管理費といった費用が滞納されていたりする場合は、購入者がその対処をすることになります。事前の充分な確認が必要です。

【デメリット4】占有者の立ち退きは自己責任となる

物件に占有者がいる場合には、その人に対して明渡しを求める場合には購入者の責任において行うことになります。

したがって、物件に占有者がいるかどうか、現地に出向いて確認することが必要です。

【デメリット5】入札のハードルが高い

入札に当たっては公売保証金を必要とする公売財産については、その公売財産ごとに定められた公売保証金の金額に相当する現金又は金融機関振出しの小切手が必要になります。
上記の表は公売情報に掲載されているものの一例ですが、3,100万円の価額に対して400万円の公売保証金が設定され、この金額を現金納付することで、まずは入札に参加できます。

仮に、落札して購入する場合には、残りの残金の2,700万円を現金納付することになります。したがって、それなりの手元資金がないと入札にすら参加できないことになります。

公売物件は競売物件と同様に価額が安いという点では大きなメリットがあります。しかしながら、購入前に確認できる情報は限られたものが多いので、そのリスクヘッジをどう考えるかが大きなポイントになります。また、基本的に購入代金は現金払いとなりますので、資金力がないと公売物件の購入は難しいものです。

寺岡 孝
寺岡 孝

公売物件の購入方法

公売物件の購入方法は入札方式と競い売りの方法があります。

入札方式は入札を行った参加者のうち最高価格の入札者に売却する方法で、特定の公売日に公売会場で出された入札書をその日に開札する期日入札と、定められた期間内に入札書を提出して別の日に開札する期間入札があります。

競い売りの方法はいわゆるオークション的な方法で、購入希望者が順次高価な買受の申込みを行い、最高価額の申込者に売却する方法です。この方法はインターネットオークションサイトでも実施しています。

公売物件の情報の入手先

公売物件の情報は国税庁の公売情報というHPで確認することができます。
また、公売の参加資格はだれでも参加できますが、下記の方は参加できません。
・滞納者(滞納者は自己の財産を購入できません。)
・国税庁、国税局、税務署の職員
・公売への参加を制限されている人

公売物件入札の流れ

公売物件の入札の概ねの流れは以下の通りです。

下記は期日入札の場合です。期日入札は、入札書の提出を行うことができる期間(入札期間)が1日である入札方法です。期日入札では、入札期間において入札書の提出を受け付け、同日中に開札します。

公売物件を購入する際の注意点

いくら価格的には安いとはいえ、公売物件の購入にはリスクがあります。購入する場合の注意点はどういった点なのかを見ていきましょう。

充分な資金を用意すること

公売物件の購入には原則的に現金で購入することになります。通常の不動産売買ではローンを利用する場合が大半ですが、公売物件にはローンの利用は難しいと認識しておく必要があります。

入札前に情報収集をすること

国税庁から提供される公売物件の情報は非常に少ないものです。したがって、購入希望物件の現地確認や近隣の調査は充分に行う必要があります。いわゆる売主の責任が極めて少ない取引形態ですので、買う側の綿密な調査は不可欠になります。

法的なトラブルに備えること

現地調査により占有者がいるかどうかの判定が難しいとか、目視で残置物がありそうな場合などに備えて、万が一の対処法を検討しておく必要があります。せっかく安価で物件を購入したとしても、占有者の退去や残置物の撤去で相当な費用がかかる場合もありますので、法的な対処も含めてトラブルに備えることになります。

公売物件の購入での注意点は占有者の存在や残置物や滞納金の有無を充分に調査、確認する必要があります。この点で現地確認は必ず行い、現状がどうなっているのかは目視や近隣への聞き取り調査などを行って正確な情報取得をしておくべきです。

寺岡 孝
寺岡 孝

まとめ

公売物件は税金の滞納で差し押さえた財産ですので、状態の良い物件が買えるというメリットがあります。また、競売物件と同様に公売物件も価額が安いものです。

しかしながら、占有者の存在や滞納金の発覚、売主の契約不適合責任がないなど、落札後にトラブルに発展する想定もしておく必要があります。加えて、購入の資金は基本すべて現金となりますので、資金調達も充分に考えておきましょう。
こうしたメリット、デメリットを踏まえて、買うか買わないかの判断は必要でしょう。

価格が安いからといって飛びつくと後々、痛い目に合います。 入札前に専門家のアドバイスを受けるなど、事前に自己防衛をしておくべきでしょう。

寺岡 孝
寺岡 孝

「お買い得物件」が見つかりそうなイメージの公売ですが
リスクの事前把握が不可欠です!

この記事の監修者

寺岡 孝
寺岡 孝

不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー

アネシスプランニング株式会社 代表取締役。住宅コンサルタント、住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務後、2006年に同社を設立。

個人住宅・賃貸住宅の建築や不動産売却・購入、ファイナンスなどのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、3000件以上の相談を受けている。

WEBメディアに不動産投資についてのコラムを多数寄稿。著書に「不動産投資は出口戦略が9割」「不動産投資の曲がり角 で、どうする?」(クロスメディア・パブリッシング)など。


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