- 任意売却物件は価格面でメリットがありますが、リスクも考慮して購入判断をすべきです。
- 任意売却物件を探すなら、しかるべき紹介者からのほうが信頼度は高いと言えます。
- 初期コストの低さだけに着目せず、細心の注意をもって物件を選定しましょう。
目次
任意売却物件とは
さて、任意売却とはどういったものを指すのでしょうか。まずはその概要や条件について解説していきましょう。
住宅ローンや借入金等の返済が困難になった場合、借入した金融機関(債権者)は担保権(抵当権等)の実行により借入金(債権)を回収する事になります。この場合、いわゆる競売による不動産の売却では現金化までに時間がかかるうえ、市場価格より安くなるケースもあります。
そこで、不動産会社の仲介により債権者・債務者の調整を行い、市場で担保不動産を売却する「任意売却」という手段を取ります。債務者(所有者)、債権者(金融機関)、及び担保物件を買う第三者で話し合いをし、合意した売価で第三者に売却するという内容です。債務者は売却代金をローン返済にあて、債権者は抵当権を抹消するという流れになります。
債務者(所有者)、債権者(金融機関)と担保物件を買う第三者との合意が条件になるため、売却金額に債権者の合意が得られないと成立はしません。
こうした状況になると、債務者はローン返済の目途が立たないケースが多いので、債権者がどこまで金額的に歩み寄りができるかが任意売却では大きなポイントになります。
任意売却物件(任売物件)の取引方法
任意売却物件の取引は先ほども触れた通り、債務者(所有者)、債権者(金融機関)と担保物件を買う第三者との合意が条件になります。なかには連帯保証人も係る場合があるので、連帯保証人にも調整が必要になります。
こうした関係者との調整期間はおおむね2ヶ月から半年程度は必要です。その間に関係者との合意形成を行い、最終的には売買契約の締結、物件の引渡しとなります。
ただ、任意売却を選択したから競売にはならないということではありません。競売落札の前日までに買い手が見つからない場合には競売になってしまうので債務者にとっては注意が必要です。
そもそも任意売却するということはローンの返済が困難になった物件で、競売にはしたくないというものですから、金融機関とのつながりや不動産会社、あるいは弁護士や司法書士からの情報を入手する場合が大半です。
こうした関係者との付き合いが物件情報入手のポイントにはなります。
競売物件との違い
競売とは住宅ローンの返済が延滞し続けると、金融機関は法的手続きで貸金の回収をし、金融機関が競売の申立を裁判所にすることを指します。そうなると、強制的に売却されます。
競売は裁判所が3点セットと呼ばれる資料を用意します。3点セットは物件明細書、現況調査報告書、不動産評価書の3つを指しますが、通常の不動産売買における重要事項説明書とは異なり、ある意味簡易的な資料と捉えられるものです。
加えて、競売物件の内覧はできないので、部屋の中がどうなっているのかはわかりません。また、物件の占有者がいる場合もあり、その占有者がどういった人かもわかりません。
競売物件は任意売却物件とは異なり、不明な点がかなり存在しますので注意が必要になります。たとえば、室内に大量の残置物があって処分しなければならない場合や、第三者の占有者が賃料の未払いなどがあったり、悪質な場合には法外な立会料を請求されたりするということもあります。
したがって、競売物件は価格面ではメリットがあるぶん、煩わしい一面があることは認識しておくことでしょう。
任意売却と競売の違いを図表にまとめると以下の通りになります。
競売の場合 | 任意売却の場合 | |
---|---|---|
物件価格 | 相場価格の50~80%程度 | 相場価格の80%程度 |
物件情報 | 基本的に内覧不可 | 相談のうえ内覧可能 |
引き渡し | 裁判所は引き渡しを保障しないため占有者や残置物のリスクがある | 退去時期を売主と調整のうえ契約できる |
瑕疵保証 | 現況での引き渡しで瑕疵保証はなし | 現況での引き渡しで瑕疵保証はなし |
住宅ローン | 取扱金融機関は少ない | 利用可能 |
交渉期間 | 債権者との交渉に時間がかかる場合もある | 短期間(1~3週間)で物件購入の判断、保証金の準備が必要 |
任意売却物件を購入するメリット4つ
相場より安く買える可能性がある
競売物件よりも購入しやすい
ところが競売物件では、内覧はできませんし、物件自体の詳細が把握しづらいので、任意売却物件の方が競売物件に比べてリスクは少なくて済みます。
住宅ローンが利用できる
リースバックが可能
自宅に住み続けたいとか住んだまま住まいを売りたいという場合、自宅を任意売却してそのまま所有者が自宅に住み続けるという契約形態が増加しています。
当然、任意売却後に住み続けるには家賃を払うことになります。将来的には元々の所有者が不動産を買い戻しすることも可能ですが、買い戻し価格は売却時よりも高くなります。
任意売却物件を購入するデメリット5つ
債権者(金融機関)と売主の協議に時間がかかる
売主はすでにローン返済ができない状況ですが、金融機関はできるだけ高い金額で対象不動産を売却してもらいたいという双方の意向が相反するので、その調整には時間がかかるケースがあります。
引渡し時の状態が悪い場合がある
給湯器などの住宅設備機器が壊れていたとか、内部の造作を補修してリフォーム工事が必要になるなど、引渡し後に費用がかさむ場合もありますので注意が必要です。
管理費修繕費の滞納負担の可能性
こうした費用は本来、売主が負担するものですが、任意売却となれば買主側の費用負担が発生する場合もあります。滞納の有無は売主に確認する必要があります。
いきなり契約キャンセルの場合もある
たとえば、所有者が内覧などはさせないなどの非協力的な行為があったとか、金融機関側の売却金額が想定よりも高く売却できないなど、様々な理由で売却ができなく契約自体がキャンセルになるという場合があります。
契約不適合責任が免責の場合が多い
任意売却物件の探し方
ここからは、まず任意売却物件の探し方についてみていきましょう。
業者からの紹介
弁護士からの紹介
その代わり弁護士は物件の売買には係ることがなく、不動産会社を経由しての売却となります。
専門サイトで探す
任意売却物件の探索は弁護士からの紹介物件は信憑性が高いといえます。少なくとも弁護士は万一の想定をしており、問題があったとしても早期解決ができます。
任意売却物件購入時の注意点
価格交渉は時期を見計らって
手付金持ち逃げに注意
したがって、手付金は仲介している不動産会社に預かりしてもらいましょう。
競売や差し押さえがないか確認
売主である債務者にはよくヒアリングして確認しておくことです。
まとめ
しかし、物件自体の目に見えないマイナス要因は物件の引渡しを受けてみないとわかりません。したがって、任意売却物件は不動産会社などのプロを介して購入する方が得策かもしれません。信頼のおける不動産会社や専門家を探してから購入をされてはいかがでしょうか。
任意売却物件や競売物件は価格的には大きなメリットがありますが、それ以外のリスクは大きいものがあります。占有者の退去や管理費などの滞納に予想外のコストがかかって価格のメリットが帳消しになりかねませんので、購入には細心の注意を払うことが必要です。
任意売却物件を投資用に購入するなら
条件の把握をすることが大切です。
この記事の監修者
不動産投資アドバイザー(RIA)/相続診断士/貸家経営アドバイザー/住宅ローンアドバイザー
アネシスプランニング株式会社 代表取締役。住宅コンサルタント、住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務後、2006年に同社を設立。
個人住宅・賃貸住宅の建築や不動産売却・購入、ファイナンスなどのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、3000件以上の相談を受けている。
WEBメディアに不動産投資についてのコラムを多数寄稿。著書に「不動産投資は出口戦略が9割」「不動産投資の曲がり角 で、どうする?」(クロスメディア・パブリッシング)など。
任意売却物件はそのメリット・デメリットがあります。その点を充分に理解してから購入するか否かの判断をしましょう。価格が安いからといって安易に手を出すと失敗しかねません。