【現役不動産投資家が伝授】物件の現地調査完全マニュアル|チェックリスト付き

2024.03.12更新

この記事の監修者

安藤 新之助

安藤 新之助

株式会社サクセスアーキテクト 代表取締役

【現役不動産投資家が伝授】物件の現地調査完全マニュアル|チェックリスト付き

現地調査は投資物件の素顔を目の当たりにし、購入するか否かを判断するための重要項目です。実践投資家の目利きのポイントをお届けします。

この記事のポイント
  • 現地調査の1回目はひとりで、2回目以降は客観的な目線を取り入れるべく、不動産業者や投資家仲間などと行くことをおすすめします。
  • 物件の状態のみならず、騒音や近隣施設など周辺環境も必ずチェック!
  • 現地調査の際に管理会社や周辺不動産会社にヒアリングすることでより具体的な情報収集ができることも。

目次

投資物件の現地調査とは

現地調査は言わば物件の素顔を確認するための重要なミッションです。不動産業者から提供されるマイソクや写真などの資料から得られない情報を収集することができます。

現地で得られる情報は購入の可否を判断するための情報が多く隠されています。この章ではその確認ポイントを解説します。

【ポイント1】資料情報の整合性を確認する

不動産業者から得られる物件概要書やレントロールをもとに、物件の状況に相違ないかを確認します。提出された資料と違っていたというのは良くある話です。資料の但し書きにも「資料と相違があるときは現状を優先します」などの記載がされていたりします。現状を自分の目でしっかり確かめることが重要です。

確認箇所の事例
・入居状況:空室の数の確認→カーテンの有無、電気、ガスの稼働
・構造:記載されている構造と相違ないか
・駐車場の数:台数に相違ないか
など

とくに稼働の状況、駐車場の台数は収支や資金調達に影響しますので確認が必須です。

【ポイント2】入居者目線で物件を見る

現地を訪れる際は、ご自身が入居者として物件を確認に来たという想定で、客観的な目線で見てみましょう。

たとえば、建物の外観デザインや立地などを見て女性向けのお部屋作りを行えばニーズが得られるとか、近隣に工場が多いから社宅仕様としてPRしていけば長期的な入居を確保できそう、など購入後の経営戦略が立てやすくなります。

不動産の現地調査はいつ、誰と、何を見ればいい?

いざ現地調査へ!といってもビギナーにとってはどのようにどこを確認すればよいのか困惑することもあるでしょう。物件を紹介されてから現地調査完了までの流れを解説します。

条件に見合う物件を紹介されたら現地調査へ

業者から物件情報をもらい、自分の条件に合致する物件であった場合、可能な限り迅速に現地確認に向かいましょう。好条件の物件の場合、競争が高く即日買付が入ってしまう事例も珍しくありません。

注意点として、現地調査を行う際には紹介してもらった不動産業者の許可および注意事項を確認しておくことがポイントです。

最初はひとりで、2回目は不動産会社と

とにかく最初は迅速に現地を確認することが大切です。そこで、自分のイメージしている条件か否かを確認します。可能であれば、最初から不動産業者やリフォーム会社と同行できればそれに越したことはありませんが、相手の都合もあることなので、自分の目で確認することを優先しましょう。

2回目以降は客観的な目線を取り入れるべく、不動産業者、リフォーム業者、仲介店営業、管理会社、投資家仲間などと同行することをお勧めします。客観的な意見を取り入れディスカッションすることでより多くの情報を得ることができ、購入に向けてのプランニングにとても有利に働きます。

物件の実態を自分の目で確認しよう!

現地に着いたら何を見て確認すればよいのか迷うところです。どのような点を確認すればよいのか、まずは調査の概要と着眼点を解説し、次章以降のチェックリストに進みましょう。

周辺環境

物件を取り巻く環境は物件購入後の賃貸経営に直接影響してきます。賃貸物件として入居者にアピールできる箇所はあるか、賃貸ニーズを削ぐようなネガティブな要因はないかをチェックしましょう。

具体的には最寄りの駅からの距離、学校、商業施設などの日常生活に必要な公共施設の確認や、工場や車や電車などの騒音、臭い、風俗店や反社会勢力の事務所など生活に支障のある嫌悪施設を確認します。

物件とその周辺環境には朝、昼、夜の顔があります。 時間帯で風景が全く異なるケースが多々あります。契約までにかならず3つの顔を見ておきましょう。

安藤 新之助
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物件現況

物件の現況チェックは、投資物件の資産価値の確認でもあります。資料と照らし合わせながら、または専門家の意見も求めつつ、ありのままを把握するよう努めましょう。

外壁や基礎、屋上防水の状況、共用部の維持管理状態など敷地内における建物や土地の状況を確認します。

現地調査のチェックリスト【周辺環境編】

現地に着いて確認することは意外とたくさんあるものです。具体的なチェック項目とその内容を解説します。

☑駅からの距離、各路線の乗降客数、バス便の本数や終バス時刻

地域によっては一時間に1本場合よっては数時間に1本のケースもあります。公共の乗り物の駅が近いからといってプラスの材料にするのは禁物です。

また、物件から駅までの距離を実際に歩いてみることをお勧めします。物件から駅までの道のり、交通量や道幅の確認、商業施設の有無や雰囲気などを確認することで実際の入居者さんの導線、目線がイメージできるようになります。

☑ニオイや騒音、振動が気にならないか

国道や沿線からの振動や騒音、工場や河川、家畜の飼育場からの騒音や臭いを確認しましょう。物件の価値や入居促進に影響のでるポイントです。

窓を開けられない、洗濯物が干しづらいなど生活に大きく支障がでる可能性があります。

風向きや時間帯によっては感じ取れない場合があるので注意が必要です。

☑敷地内もしくは近隣に高圧電線や鉄塔はないか

高圧電線による電波障害や健康障害を懸念される入居者様もおり、入居促進に影響がでる可能性もあります。

☑近隣に嫌悪施設はないか

風俗店、反社会勢力の事務所やごみ屋敷などの有無を確認しましょう。入居促進だけでなく、資産の組換えなどで売却する際にも足かせになる可能性があります。

確認方法としまして、自身で歩いて確認するほか、近隣の住民や管理会社や仲介店から情報を入れるのが一般的です。

☑スーパー、コンビニへの距離や導線はどうか

グーグルマップやYahoo!地図などを用いて場所と距離を確認します。信号や上り坂、歩道橋、踏切などによりマイソクに記載された距離、時間と異なってくるものです。

また、道中のお店の雰囲気や品ぞろえのなどを実際に入居者になったつもりで確認することをお勧めします。

☑単身物件なら飲食店やクリーニング店はあるか

衣食に困らない住環境かどうかを確認しましょう。スーパー、ファーストフード店、コンビニにクリーニング店やお弁当屋さんが併設されているような施設があればベストでしょう。

ファミリー物件も同様ですが、単身者の方がより求められる傾向にあります。

☑学校、公園、公共施設への順路は危なくないか

子育てファミリー物件の取得において優先度が高い項目です。道中の交通量やフェンスや路側帯の有無、管理状態を確認しましょう。

道路は路側帯の幅がしっかり確保されているか、歩道橋や信号機の有無を確認することが必須です。

☑物件周辺の開発予定があるか

大規模商業施設やイベント会場、工場や嫌悪施設の開発の予定の有無を確認しましょう。自治会や管理会社、仲介会社から情報を入手することが可能です。開発案件により物件の価値、入居募集に影響でます。

☑工場や大学などの新設、撤退の予定はあるか

地域の人口が大きく増減するため入居募集に大きく影響します。仲介店、管理会社に確認することで情報が得られます。

撤退の計画がある場合、物件が相場より安く販売されていることがあります。 購入後に収支計画が近い将来成り立たなくなる恐れも・・喜ぶ前にその理由を探ることがポイントです。

安藤 新之助
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☑人口は増えているか

都道府県や市町村のウェブサイトから人口増減の確認が可能です。マクロ的に減っていても、人気のあるエリアも存在しますので慎重に判断しましょう。

現地調査のチェックリスト【物件編】

☑外観の第一印象はどうか

タイル張り、塗装仕上げなど仕上げ方で物件の印象が変わります。写真やサイトから得られない部位の確認を行いましょう。その角度から写真を撮っておくことで後の修繕や資料作成などのプレゼンに利用することができます。

☑外壁にクラックはないか、チョーキング現象はないか

外壁のクラックやチョーキングが見られる場合、購入後にメンテナンスが必要になります。見受けられたら購入前に塗装業者に修繕見積もりをとり修繕計画に織り込みましょう。 

鉄筋コンクリート造や鉄骨造など外壁がタイル張りの場合、浮きがあるケースがあるので打診棒などを使って調査します。

☑ベランダや屋上防水はされているか

防水が劣化していると雨漏りの原因となります。修繕履歴を確認し、築後もしくは修繕後10~15年を目安に修繕がなされていない場合は近々メンテナンスが必要となります。防水業者に調査及び見積もりを依頼しましょう。

☑ゴミ置き場や植栽、共用部分はきれいに清掃されているか

定期的に清掃などのメンテナンスがされているか否かで管理会社とオーナーの取り組み姿勢がイメージできます。購入後、管理会社を変えるなどの対策でリカバリーが可能です。

☑室内の日当たりや景観はどうか

周辺の建物や木々などが日差しを遮っていないかを確認しましょう。注意点としまして、建物の正面にあたる側が空き地になっていた場合、将来建物が立つことがありますから、その点もイメージしておくことがポイントです。

☑室内の状況はどうか

空室がある場合、不動産業者にリクエストすることで室内の内覧が可能な場合があります。原状回復の状態や水回り設備劣化状況を確認します。間取り、設備変更など、将来各部屋にかかる修繕費用をイメージすることができます。

☑設備に故障はないか

エアコン、換気扇、給湯器が正常に稼働するかを確認しましょう。給湯器はガス栓が閉められている場合は確認できません。

☑共用部の管理状況はどうか

放置自転車、入居者の私物の有無を確認しましょう。著しい場合、管理会社の管理体制の良くないだけでなく、マナーの守れない入居者の比率が多い物件の可能性が高いことが予想されます。

マナーの悪い入居者が一人いるだけで物件の運営に悪影響を及ぼします。だからといって退去させるにも容易ではありません。 管理会社に必ず入居者属性と対応履歴の確認しましょう。

安藤 新之助
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☑不良な入居者はいないか

玄関ドアの周辺の異臭、私物の有無を確認しましょう。駐車スペースに違法改造の車、バイクなどがある場合は注意が必要です。

☑レントロールは正しいか

レントロールの入居情報と実際の空室とを照らし合わせましょう。情報が古かったり、架空入居のケースがあるので調査は必須です。

☑接道状況はどうか(一棟物件や一戸建て)

接道状況によってはセットバックが必要であったり再建築不可物件であったりするケースがあります。マイソクの情報と整合性をとりましょう。

☑土地の状況はどうか(一棟物件や一戸建て)

地形がマイソクと異なったり、図面からは読み取れない情報があります。たとえば崖の上だったり、隣接している、沈下しているなど現地でないとわからない情報があります。

☑管理組合は機能しているか(区分物件)

管理組合がきちんと機能しているかどうかを確認しましょう。管理人が常駐になっているはずのに不在がちではないか、管理人の人柄などをチェックしましょう。

現地調査に用意していくと便利なもの

現地調査には目視だけでは判別ができないことがあります。それを解決する現地調査の必須アイテムをご紹介します。
1住宅地図周辺の施設やアパートのなどの入居率を確認、メモに必須です。印刷したものもしくはタブレットなどを用いて情報を記載します。
2カメラ携帯、タブレットを用いて外観、周辺、室内を撮影します。
3方位磁石携帯アプリでも可。建物の方角を確認するのに用います。
4懐中電灯夕方や夜間の外部、室内調査、パイプスペースや倉庫など明かりの乏しい際に用います。
5クラックスケール基礎、外壁のクラックの大きさを図ります。
6水平器建物などの傾きを確認するのに用います。
7マイナスドライバー屋外排水桝を開ける際に使用します。排水管の汚れを確認します。
8打診棒外壁、土間のタイルやコンクリートの浮きの調査に用います。
9双眼鏡肉眼では見えにくい部分の確認に使用します。
10脚立手の届かない部位の確認に用います。

オリジナルの調査シートを作成しよう!

現地調査における、自分のチェックポイントを記載した表を作成し、現地に赴くことで時間の短縮、チェックポイントの漏れを防ぐことが可能になります。

調査シートをもとに、不動産業者や管理会社と協議し改善可能か否かの判断材料になります。

↓調査シート例
項目確認する箇所(okなら線をひく)改善、対策法の有無予算
駅からの
道のり
実測、通り雰囲気、街灯の多さ、交通量・騒音
近隣の建物嫌悪施設、臭い・音・傾きなど
境界境界標の有無、確定測量の有無、セットバック
道路付け前面道路幅員、間口、私道の承諾など
ゴミステーション集積場か個別回収か、場所、大きさ、マナー
駐車場・
駐輪場
放置車 自転車、不陸・白線の状況・桝の状況
基礎クラック、不同沈下、水染み跡、鉄筋の露出
外壁クラック、チョーキング、水染み跡、目地、修繕箇所
屋根 屋上防水や塗装の状況、ドレン、修繕箇所
外部金物等ドレン、雨樋の傷み、錆、修繕箇所
エントランスメールボックス、ドアヒンジ、ポーチ、オートロックの状態
共用廊下私物の放置、清掃、管理状況
共用階段・手摺鉄部の錆・腐食、柵の傷み・破損等
設備の状況給水ポンプ、給湯器、エアコン、消火器、給排水、浄化槽
予算計

現地調査に赴く際の注意点

現地に確認に赴く際には気配り、配慮が必要です。不動産業者への連絡はもちろん入居者や近隣住民に迷惑や不安を抱かせないよう心掛けることがポイントです。

清潔感のある服装で

物件のある周辺環境に応じて服装をアレンジすると良いでしょう。一般的にスーツ、ビジネスカジュアル、私服で大丈夫です。あまりないとは思いますが、汚れた作業着や派手な私服は控えましょう。

地方の郊外、住宅地になりますと、あまりきっちりしたスーツだと訪問販売と疑われてしまい警戒されていしまうこともあります。

不法侵入は厳禁!

現地調査において無断で敷地に入るのは不法侵入となる可能性があります。前述しましたが、必ず物件紹介をしてもらった業者を通じてオーナーの許可を得ましょう。

管理会社や周辺不動産会社へのヒアリングも

現地調査の際に管理会社や周辺不動産会社にヒアリングすることでより具体的な情報収集ができます。突然訪問するのではなく、アポイントをとって訪問することで丁寧な対応してもらえることが期待できます。

ただし、物件によっては内々の極秘の売却情報の可能性がありますので、ヒアリングする際も紹介してくれた不動産業者の確認ならびに許可をとりましょう。

物件を購入した際にお世話になる可能性もあります。誠実な対応を心掛け好印象を持ってもらうことがポイントです。 良好な関係を築けば更なる情報収集や購入後の運営に寄与すること間違いなしです。

安藤 新之助
安藤 新之助

まとめ

現地調査は提供される不動産情報だけでは得られないリアルかつ重要な情報を得ることができます。良い情報ということで紹介されても、現地を確認したら自分の思い描く物件でないケースもあります。

契約した後に現地確認をして「しまった!」と思っても手遅れです。時間を惜しまず、現地調査を必ず自分の目で行うことが失敗しないための重要なポイントです。

気になる物件は必ず現地で見ること!
数件見ていくうちに眼識も養われるはずです。

この記事の監修者

安藤 新之助

安藤 新之助

株式会社サクセスアーキテクト 代表取締役

高校卒業後、通算20年以上住宅業界に携わり、2008年不動産投資を開始。当時の年収400万円から7年で資産10億円と家賃収入1億円を達成し、42歳でサラリーマン生活を卒業しセミリタイア。現在14棟214室を保有する実践不動産投資家としてwebコラム執筆やTV、新聞などのメディアに多数出演しながら、3法人を運営し不動産賃貸業ならびに不動産賃貸経営コンサルタントとして活動中。「NOをYESに変える不動産投資最強融資術」(ぱる出版)を執筆。 

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