不動産投資の「レバレッジ効果」とは?失敗しないために知っておきたいリスク

2024.06.24更新

この記事の監修者

八木エミリー
八木エミリー

証券外務員一種/2級FP技能士

不動産投資の「レバレッジ効果」とは?失敗しないために知っておきたいリスク

不動産投資におけるレバレッジ効果のメリット・注意点について図解付きのシミュレーションを用いてわかりやすく解説します。

この記事のポイント
  • レバレッジを効かせることで効率よく資産拡大することが可能です!
  • ただし、”逆レバレッジ”に陥るリスクも…利回り低下や空室リスクに注意が必要ですが、綿密な資金計画も大切。
  • レバレッジ効果は不動産投資ならではの魅力ですが、物件の収益性と返済とのバランスを意識するようにしましょう。

目次

不動産投資のレバレッジ効果とは

レバレッジ(leverage)とは、小さな力で大きな効果を得ることを意味します。英語を日本語に訳すと「てこの原理」です。不動産投資においては、「少額の自己資金」「融資」を併用して収益性の高い物件を購入し、大きな収益を得ることを指します。

たとえば、表面利回りが同じ物件を購入したいAさんとBさんがいるとしましょう。
・Aさん:自己資金1,000万円で1,000万円の物件を購入
・Bさん:自己資金1,000万円を頭金として、5,000万円の物件を購入
Aさんの物件とBさんの物件から得られる家賃収入を比較した場合、Bさんの物件の方が高い収入を得られます。レバレッジ効果とは、Bさんのように自己資金と融資を併用して、より大きな収益を得ることです。

株式や債券といった金融資産へ投資する際は、融資を受けられません。融資を引いて投資を始められる点は、不動産投資ならではの魅力の1つといえるでしょう。

レバレッジ効果と融資額の関係

レバレッジ効果を利用して収益性を高めることを「レバレッジを効かせる」といいます。レバレッジを効かせる場合、融資額が大きいほど効果が高くなる仕組みです。

また、融資額が同じ場合、潤沢な資産を保有する人よりも、これから資産を大きくしていきたい人の方が、資産に与えられるインパクトが大きくなります。つまり、レバレッジ効果は、これから資産を拡大したい人が効率よく投資するために適した手法です。

レバレッジ効果とイールドギャップの関係

レバレッジを効かせる場合、イールドギャップが大きい方がより高い効果を得られます。たとえば、物件の利回りが10%だった場合、ローン金利5%2%では、後者の方が高い効果を得られます。また、融資金利が2%だった場合、物件の利回り10%5%では利回り10%の方が、高いレバレッジ効果を得られるでしょう。

つまり、イールドギャップが大きいほど、効率よく投資できるということです。

イールドギャップとは?

イールドギャップとは、物件の利回りからローン金利を差し引いた数値です。たとえば、物件の利回り5%、ローン金利2%の場合、イールドギャップは3%になります。

レバレッジを効かせるメリット!

不動産投資でレバレッジを効かせることで得られるメリットは、以下の3点です。

【レバレッジを効かせるメリット】
・少ない自己資金で高額の物件を買うことができる
・団信への加入で生命保険代わりにできる
・節税効果を得られる可能性がある

少ない自己資金で高額の物件を買うことができる

融資を利用することで、自己資金のみでは購入できない高額な物件を購入できます。予算が高いほど検討できる物件の選択肢も広がり、より収益性の高い物件を購入できるでしょう。

一般的に、不動産投資ローンを借り入れる際に必要な自己資金は、物件価格の20~30%です。たとえば、物件価格5,000万円の場合、1,000万円~1,500万円の自己資金を用意するイメージです。

また、金融機関の融資審査では物件の価値やローン契約者の年収などを考慮します。物件の担保評価が高い、ローン契約者が高年収など、金融機関から高く評価される場合、フルローンで融資を受けられる可能性もあります。フルローンで融資を受けられれば、より高いレバレッジ効果を期待できるでしょう。

ただし、融資額が大きいほど返済負担が重くなります。レバレッジを効かせる場合、物件から得られる収益と購入後の返済負担とのバランスを考慮することが大切です。

団信への加入で生命保険代わりにできる

不動産投資ローンでは、団信(団体信用生命保険)への加入が条件となっているケースが少なくありません。団信へ加入していれば、万が一、契約者が返済中に亡くなった場合にローン残債が0円になります。残された家族へ、債務を残さずに資産を残せるため、生命保険代わりとして備えられます。

節税効果を得られる可能性がある

「融資を受けると利息の支払いで損をするのでは?」と考える人もいるでしょう。確かに、借入金額が大きいほど利息の負担も重くなるため、過剰な借り入れには注意が必要です。

ただし、不動産投資では、ローン利息を必要経費として計上できます。不動産投資にかかる税金は、所得が少ないほど負担が軽くなる仕組みです。つまり、計上できる経費がたくさんあるほど、節税効果につながります。

シミュレーションで見るレバレッジ効果の比較

ここでは、自己資金1,000万円を用いて不動産投資を始めた場合のレバレッジ効果を比較します。シミュレーションの条件は、自己資金のみの場合と融資を受ける場合(A・B)です。

主に、融資額によるレバレッジ効果の違いを比較するため、融資額2,000万円のケースをA、融資額9,000万円のケースをBとします。

【シミュレーションの条件】
・自己資金1,000万円のみ
・A:自己資金1,000万円+融資額2,000万円で、3,000万円の物件を購入する
・B:自己資金1,000万円+融資額9,000万円で、1億円の物件を購入する

<共通の条件>
・物件の表面利回り7.5%
・ローン金利3%(A・B)

シミュレーション結果は以下のとおりです。
※シミュレーションでは、ローン利息以外の必要経費を考慮していません

シミュレーションでは、収益性が高い順にB>A>自己資金のみという結果でした。

上記のシミュレーション結果から、物件の表面利回りが同じ場合、自己資金のみよりも融資を受けた方が年間で得られる収益(上図1)の金額が高くなることがわかります。また、年間の収益からローン利息を差し引いた実質的な年間利益を計算すると、自己資金に対する利回り(上図2)も、自己資金のみよりもA・Bの方が高くなっています。

A.自己資金1,000万円で3,000万円の物件を買う場合

自己資金1,000万円と融資額2,000万円で3,000万円の物件を購入する場合、物件の表面利回りが7.5%であれば、年間で得られる収益は225万円です(3,000万円×7.5%)。

ローン金利3%の場合、初年度に負担する利息は約60万円です(2,000万円×3%)。年間の収益からローン利息を差し引くと、実質的な利益は165万円となります。

Aの表面利回りは7.5%ですが、初期投資額は自己資金1,000万円のみのため、自己資金に対する利回りを求めると、16.5%になります(165万円÷1,000万円×100)。Aのケースは、自己資金のみの場合よりも2.2倍の収益を得られるため、レバレッジ2.2倍です(165万円÷75万円)。

B.自己資金1,000万円で1億円の物件を買う場合

自己資金1,000万円と融資額9,000万円で1億円の物件を購入する場合、物件の表面利回り7.5%であれば、年間で得られる収益は750万円です(1億円×7.5%)。

ローン金利3%の場合、初年度に負担するローン利息は約270万円となります(9,000万円×3%)。年間の収益からローン利息を差し引くと、実質的な利益は480万円です。

BはAよりも融資額が大きい分、年間で得られる収益(上図1)の金額や自己資金1,000万円に対する利回り(上図2)が高くなります。

Bの表面利回りは7.5%ですが、自己資金1,000万円のみを投資しているため、自己資金に対する利回りを求めると48%になります(480万円÷1,000万円×100)。Bのケースは、自己資金のみの場合よりも収益性が6.4倍になるため、レバレッジ6.4倍です(480万円÷75万円)。

自己資金だけで物件を購入する場合

自己資金1,000万円のみで物件を購入する場合、利回り7.5%であれば年間で得られる収益は75万円です。AやBよりも購入できる物件の規模が小さいため、年間で得られる収益の金額や利回りが小さくなります。

レバレッジをかけることでリスクも!逆レバレッジとは?

逆レバレッジとは、レバレッジを効かせることで損をしてしまう状態です。

たとえば、融資を受けずに自己資金のみで不動産投資を始めた場合、75万円の利益を得られたとしましょう。レバレッジを効かせた場合の利益が50万円の状態では、融資を受けない方が儲かったと考えられます。このような状態が逆レバレッジです。

逆レバレッジに陥る原因には、ローン金利の上昇や利回りの低下が挙げられます。

金利上昇による逆レバレッジとは、借り入れ当初よりも金利が上昇し、利息の返済額が増えてしまうケースです。利回りの低下による逆レバレッジとは、空室が長引くなど、期待したほどの利益を得られなかったケースが考えられます。

また、空室などのリスクによる利回り低下のみでなく、資金計画の甘さから逆レバレッジに陥るケースもあるでしょう。たとえば、元々利回りが低い物件を、高金利の融資を受けて購入した場合が挙げられます。

要因1.金利の上昇

金利上昇への対策は、融資を引く前に金利上昇リスクを見込んだシミュレーションをしておくことです。また、固定金利であれば金利上昇リスクがないため、固定金利を選択するのも手です。ただし、固定金利は変動金利よりも金利水準が高いので、返済予定の利息の負担と期待できる利回りとのバランスを意識しましょう。

要因2.利回りの低下

不動産投資には、空室リスク、家賃滞納リスク、物件の老朽化リスクなど複数のリスクがあります。投資を始めた当初よりも利回りが下がり、逆レバレッジに陥るリスクを考慮しなければなりません。

利回りの低下への対策は、空室対策をしっかりと行うことです。たとえば、フリーレントや内見時のホームステージングなど、集客への施策を検討するとよいでしょう。

また、物件を選定する際、利回りのみに意識が向きがちですが、ローン金利も考慮し、キャッシュフローが生じるかどうかを確認することも大切です。

レバレッジをかけて不動産投資を始める際の注意点

レバレッジを効かせた不動産投資で失敗しないために、レバレッジ効果を用いた不動産投資の注意点を解説します。

自己資本比率は2~3割が理想

自己資本比率とは、購入する物件価格に対する自己資金の割合です。たとえば、物件価格5,000万円、自己資金1,000万円であれば自己資本比率20%です(1,000万円÷5,000万円×100)。

投入する自己資金の割合が高いほど、レバレッジ効果が低くなります。

・自己資本比率が高い→レバレッジ効果小
・自己資本比率が低い→レバレッジ効果大
不動産投資によるリスクを抑えるためには、レバレッジを効かせ過ぎないことが大切です。安定を求める人は、自己資本比率を2~3割は確保しておくとよいでしょう。

リスクをどれだけ取るかは、個人の価値観や資産背景などによって異なります。大切なことは、自身の認識と実際に抱えるリスクを一致させることです。

レバレッジを最大限に活用して収益性を重視するか、安定を重視するかのどちらがよいかを明確にし、自分の意向に適したリスクを取りましょう。

利回りの数字だけで判断をしない

利回りは、物件の収益性を判断するために大切な指標です。レバレッジ効果を検討する上でも重要といえます。しかし、利回りのみで物件を選定することはおすすめできません。

利回りには、表面利回りと実質利回りがあります。前者は家賃収入を物件価格で割った数値、後者は必要経費を考慮した利益を物件価格で割った数値です。

表面利回り(%)=家賃収入÷物件価格×100
実質利回り(%)=(家賃収入-必要経費)÷物件価格×100

一般的に、物件の広告に記載されている利回りは表面利回りです。表面利回りでは必要経費を考慮していないため、表面利回りが高くても、実質利回りが低い可能性があります。

また、利回りに対してローン金利が高い場合、キャッシュフローを得られない可能性もあります。レバレッジ効果を用いた不動産投資では、利回りとあわせてイールドギャップも意識しましょう。

個人の与信枠には上限がある

個人には与信枠があるため、「いつでも」「いくらでも」融資を受けられるとは限りません。融資を受けられる上限を「与信枠」と呼びます。

与信枠の上限は、借り入れ先の金融機関や年収、投資対象の物件などによって異なります。与信枠を超えると融資審査に通らなくなるため、融資を検討している人は注意が必要です。

まとめ

不動産投資でレバレッジを効かせると、少ない自己資金で効率よく資産形成できます。これから資産を拡大したい人にとって、有効的な手段といえるでしょう。

ただしレバレッジを効かせると、その分リスクも高くなります。不動産は高額な投資であるため、失敗した場合に生活に影響を与える恐れもあるでしょう。物件の収益性と返済とのバランスを意識することが大切です。

レバレッジ効果は不動産投資ならではの魅力!
ただしリスクとのバランスは考慮しましょう。

この記事の監修者

八木エミリー
八木エミリー

証券外務員一種/2級FP技能士

新卒時に野村證券入社。新人時に営業成績東海地方1位を獲得。2016年より不動産を購入。現在7棟を所有。2019年より独立系ファイナンシャルアドバイザーとして主に富裕層向けに資産活用のアドバイスを行うほか、一部上場企業の社員向けセミナー講師としても活躍。オンラインサロン「em会」にて金融知識の啓蒙に務める傍ら、地域活性事業など活動も行う。東京駅に近いバイリンガルスクール「WONDER KIDS BILINGUAL PREP SCHOOL」オーナー。「元証券ウーマンが不動産投資で7億円」など執筆。

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