オーナーチェンジ物件を買って後悔しないために。不動産投資初心者が知っておきたいこと

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この記事の監修者

安藤 新之助
安藤 新之助

不動産投資家/株式会社サクセスアーキテクト 代表取締役

オーナーチェンジ物件を買って後悔しないために。不動産投資初心者が知っておきたいこと

不動産投資家のほとんどがここから始めるといっても過言ではない「オーナーチェンジ物件」。購入時の注意点を詳しく解説します。

この記事のポイント
  • オーナーチェンジ物件は取得から家賃受け取りまでがスピーディかつ手間なく、初心者向けです。
  • 賃貸借契約も前オーナーから引き継ぐため、契約内容を精査することが肝心!
  • 悪徳業者の被害に遭いやすいリスクもはらんでいるので情報収集は怠らないようにしましょう。

目次

オーナーチェンジ物件とは

オーナーチェンジ物件とはひと言でいうと「入居者が住んでいる状態、借手が使用している状態」で販売されている賃貸物件の事を指します。

市場の中古収益物件で売りに出ているものとして、一棟ものから区分所有などさまざまなタイプがあります。区分マンションの場合、1室に対し1契約、一棟物件ですと1棟に対し複数の賃貸借契約が存在するのが大きな違いです。

引き継ぐ権利と義務

オーナーチェンジ物件を購入するということはオーナーが入居者と結んだ賃貸借契約をそのまま引き継ぐことになります。

すなわち、家賃を受け取る権利を引き継ぐと合わせてその他の権利も引き継ぐ事となります。一例として下記のような権利と義務があります。

入居者から賃料を受け取る権利

入居者と結んだ賃貸借契約に基づき入居者から家賃を受け取る権利が発生します。

契約終了時に建物を返還してもらう権利

賃貸借契約に基づいた契約期間が満了と同時に入居者から建物を返還してもらう権利を有します。契約内容により、契約期間の自動更新/更新無しがあります。

契約終了時に入居者に原状回復させる権利

入居者による故意、過失による破損、汚損において原状回復をさせる権利を有します。それ以外の生活による通常損耗に関しては貸主の負担になります。

建物を入居者に使用させる義務

貸主は入居者が快適に過ごせる環境を整える義務を負います。たとえば建物から発生する騒音、異臭などの苦情の解決に努めなければなりません。

建物の修繕を行う義務

貸主はお湯がでない、トイレの水が出ないなど、経年劣化による故障や破損による建物の修繕を行う義務を負います。(入居者の故意、過失を除く)

契約終了時に敷金を返還する義務

賃貸借が終了し、かつ建物の返還を受けたとき。賃借人が適法に賃借権を譲り渡した時に入居者に敷金を返還する義務を負います。ただし、入居者が賃貸借に基づく債務を履行しない場合、敷金を債務に弁済することができます。(民法622条)

前オーナーが結んだ契約の一部を引き継ぐことを拒むことはできず、仮にどうしても引き継ぐことに納得が出来ない場合は、売主に引き渡し日までに契約を巻きなおしてもらうほかありません。

オーナーチェンジ物件のメリット

オーナーチェンジは新築物件にはないキャッシュベースとするさまざまなメリットを享受することができます。物件を吟味することで売買価格以上の含み益を手にする可能性も発生します。そんなオーナーチェンジのメリットをご紹介しましょう。

家賃収入がすぐに手に入る

物件の決済引き渡しと同時に家賃を受け取ることが可能となります。新築で未完成の物件や募集開始間もない物件と比較すると、キャッシュフローの面で有利です。

融資審査が通りやすい

入居者が存在し家賃発生していることは収支計画の見通しが立てやすく、融資する側にとって安心材料となります。その家賃が相場と合っているかどうかを調査確認することでさらに安心度が増します。

反面、空室率が高い物件の場合、募集に苦戦する物件と捉えられ融資が付きにくくなる可能性も。その場合には何故、空室なのか理由と空室を埋める対策を提示することで、貸手として取り組みやすくなります。

周辺相場より安く買える

市場の情勢、前オーナーの取組み姿勢、管理会社、仲介店の募集体制により家賃が高く貸されたり低く貸されたりします。低い家賃設定の場合、次回の募集の際に高く賃料設定が可能となります。キャッシュフローも多くなり物件の資産価値もあがります。

収益物件は家賃(利回り)で価格が決まるため、現在の家賃が安く設定され、次回以降家賃アップが見込める物件の場合、実質的に割安に購入できたことになります。

入居募集の手間がない

オーナーチェンジであれば入居者が入居している間は空室から解放されます。次回の空室時に備えて、マイソクの作成や仲介店とのコミュニケーションの構築、エリアの入居者ニーズを調査する時間も得られ、空室になった際の対策にもつながります。

新築と比べ家賃下落が緩やか

築20年前後の物件になると家賃下落が落ち着いてきます。よって以降の収益が読みやすく安定した収益が期待できます。

間取りが同タイプの物件の需要と供給のリサーチをすることで、リスク管理も新築と比較し容易となります。

オーナーチェンジ物件のデメリット

オーナーチェンジ物件は購入後すぐに家賃が受け取れる、収支計画が見通しやすいメリットがある一方、リスクもデメリット(リスク)も存在します。

そのデメリットを把握し取り組むことで、リスクを最小限に抑えることが可能になります。その事例を紹介します。

室内状況を把握しにくい

入居者が住んでいる以上、内覧し物件の瑕疵や室内の状況を把握することができません。入居者の使用の仕方によって極度に傷んでいることがあったり、最悪ごみ屋敷であったりする可能性があります。 

このような場合、管理会社が過去にメンテナンスなどで入室したことが無いか確認しましょう。しっかりした管理会社であれば定期的に排水管洗浄などで入室しています。

その際の状況をヒアリングすることで室内の様子を把握することが可能になります。

ペット不可の物件で平気でペットを飼っているケースも多々あります。ペットの鳴き声、毛や排泄物など現地を朝、晩数回確認すると形跡を発見できたりします。

安藤 新之助
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入居者審査ができない

空室で新規の入居者募集であれば住居者属性を選ぶことが可能ですが、オーナーチェンジだと属性を選ぶことができません。

前オーナーや管理会社が入居者募集に関心が低いと、モラルの低い入居者が多く住んでいるケースも。契約書の確認、過去のトラブル、事件、事故など管理会社、仲介会社からヒアリングを確実に行いましょう。

入居時期により家賃、契約内容に差が出る

古くから入居している方は、直近で入居している方と比べ入居条件が緩く入居しているケースがあります

昨今のケースですと滞納保証会社の審査入会が入居条件の主体であるのに対し、古くからの入居者である場合は、連帯保証人や緊急連絡先のみで入居している場合があります。

この場合、もし連帯保証人が亡くなっていたり、実在しないと入居者に万が一のことがあった際、オーナーの費用負担が大きくなります。

入居者の万が一の為に連帯保証人の確保、もしくは保証会社の加入が必要です。入居者と契約条件をまき直し、早めのリスク回避をおこないましょう。

安藤 新之助
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入居偽装の場合がある

長期間の空室や家賃を水増しし収支を良く見せるために、サクラを用い入居偽装するケースがあります。引き渡し後、即退去されたりすればキャッシュフローに影響が出てしまいます。

契約日がいつからか、契約日が集中した月がないかをチェックし、売主の許可の上、電気メーター、水道メーターの利用状況を確認することで入居偽装か判断することが可能です。

オーナーチェンジ物件選びに失敗しないための注意点

オーナーチェンジ物件を購入する場合、事前にいくつかのチェックを行えば失敗リスクを回避することが可能となります。そのチェックポイントを解説します。

契約内容を精査する

現入居者の賃貸借契約書の内容をしっかり確認することが大切です。売主から契約するまでは開示できない旨を伝えられるかもしれません。その場合、秘密保持契約を結ぶなどし、可能な限り確認する事が大切です。

貸主に不利な契約条項があったり、最悪の場合、契約書が無かったりするケースもあります。賃貸借契約の内容が把握できれば、仮に賃貸人に不利な賃貸借契約があっても、それをカバーできる内容の条件を、売主と相談のうえ売買契約書に特約として記すこともリスク回避の方法の1つです。

可能な限り現地確認する

オーナーチェンジの場合、前オーナーの管理状態が悪いと購入後に思わぬトラブルに見舞われる可能性がとても高くなります。

ご自身が現場調査に不慣れな場合、費用はかかりますが専門家によるインスペクションを依頼する事で、物件を購入するか否かの判断材料を収集することができます。

過去の運用状況をヒアリングする

売主や物件を管理する管理会社から過去の出来ごとや修繕履歴をとるようにしましょう。

どんな処置がなされたか、放置されたままの修繕必須事項はないかの確認が必要です。今後、再発するおそれはないかを確認するために必須な項目です。

売り出しの理由を聞き出す

収益物件を売却するにあたり、売主側になんらかの理由が存在します。その売却理由を聞きましょう。

売却理由として「資産整理」「資産の組み換え」と返ってくることが一般的です。本当の真意は把握することができない可能性もありますので自分で調査することがポイントです。

たとえば、嫌悪施設の建設、大学、工場、商業施設の移転、閉鎖など将来的立地環境によるものやマナーの良くない入居者、近隣住民による被害、トラブルなどであると購入後の運営に影響を及ぼします。売主に聞くだけでなく、自身で仲介店や役所などにリサーチするとよいでしょう。

売却の理由は本人とは別のところにあったりします。不動産業者、売主は利害が直結するため本音を語らないケースも多々あります。 一方、管理会社、仲介店は入居率アップや募集の数字に直結するため、物件を取り巻くリアルな情報が聞けます。それが本当の売却理由と直結することもあります。

安藤 新之助
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レントロールを確認する

レントロールを確認する事で将来の収支を予測することが可能になります。たとえば、現在の相場より安く貸しているお部屋があれば、次回の募集の際に賃料アップすることも可能ですし、高く貸していれば家賃を下げて募集することが必要になってきます。

高く貸されている場合、お部屋の間取りを変更したり、リノベーションして賃料アップしているケースがあります。その際にはどんな間取りで、どの程度の費用を費やしたかを確認しましょう。

よくある質問

オーナーチェンジに関するよくある質問を集めましたので、参考になさってください。
オーナーチェンジ時の流れを教えてください
物件買付→売買契約、融資獲得、管理会社契約→決済引き渡しとなります。一般的に契約から決済引き渡しまで1か月~2か月ほどを要します。

新築物件と比較すると買付から引き渡しまで流れがスムーズです。
オーナーチェンジ時の敷金はどう扱いますか?
敷金は入居者から預かっているものですから、次のオーナーに引き継がれるのが一般的です。

ただし、関西地方など地域によって敷金は前オーナーから承継されないケースもあります。その場合、入居者が退去する際に自身が敷金を持ち出す形になるのでその分を収支計画に組み入れるなど対策が必要です。
オーナーチェンジ物件は初心者向けと聞きますがなぜですか?
新築ですと、土地の仕入れ→建設→竣工まで一年以上かかり、合わせて入居者募集も行います。家賃を受け取るまでそれ以上の期間を要します。

初心者にとって家賃を受け取るまでの期間や打合せなどの折衝において、難易度が高め。オーナーチェンジの方が物件取得から家賃受け取りまで期間や折衝が少なくスピーディだからです。

まとめ

オーナーチェンジ物件は不動産投資の初心者にとって非常に取り組みやすい案件です。理由として現物があり、物件のヒストリーがあり、収支計画や修繕計画が立てやすいこと。なにより引き渡し後、賃貸中の物件であればすぐに賃料が受け取れることが最大のメリットです。

一方、取り組みやすさから、悪徳業者による被害に遭いやすいリスクももっています。物件に出会い購入するまでの短い時間で多くの情報収集、判断することが求められます。決して気を緩めることなく、知識や情報収集に向けて取り組む姿勢を大切にしましょう。

不動産投資初心者向けのオーナーチェンジ物件。
メリット・デメリットを把握して、自力の調査も行いましょう。

この記事の監修者

安藤 新之助
安藤 新之助

不動産投資家/株式会社サクセスアーキテクト 代表取締役

高校卒業後、通算20年以上住宅業界に携わり、2008年不動産投資を開始。当時の年収400万円から7年で資産10億円と家賃収入1億円を達成し、42歳でサラリーマン生活を卒業しセミリタイア。

現在14棟214室を保有する実践不動産投資家としてwebコラム執筆やTV、新聞などのメディアに多数出演しながら、3法人を運営し不動産賃貸業ならびに不動産賃貸経営コンサルタントとして活動中。

「NOをYESに変える不動産投資最強融資術」(ぱる出版)を執筆。 

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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