フルローンで不動産投資を始めるのは危険?!メリット・デメリットや注意点を解説します

2024.08.21更新

この記事の監修者

アユカワタカヲ
アユカワタカヲ

不動産投資家/宅地建物取引士/AFP/J-REC公認 不動産コンサルタントなど

フルローンで不動産投資を始めるのは危険?!メリット・デメリットや注意点を解説します

「フルローン」なら頭金ゼロでも不動産投資を始めることが可能ですが、当然デメリットも。フルローンについて詳しく解説します。

「自己資金不足だからフルローン」は危険!
収支計算を慎重に行うことが不動産投資成功へのヒントです。

目次

フルローンとは

「フルローン」とは、物件価格の全額をローンでまかなう事をいいます。たとえば、2000万円の物件であれば、2000万円の融資を受け、ローンを組むという意味です。

フルローンとオーバーローンの違い

まず、不動産投資で組むローンには、一定額の自己資金=頭金を用意して残りの金額に対して融資を受けるローンがあります。これが最もスタンダードな融資の受け方です。

一方、物件価格の全額を融資でまかない、ローンを組むのが「フルローン」。さらに、物件価格に加え物件購入時に必要な諸費用(登記費用、税金など)も含めてローンを組むのが「オーバーローン」です

【融資額の大きさ】 一般的なローン < フルローン < オーバーローン

2013年〜2017年頃、サラリーマンの間で「不動産投資大ブーム」が起こりました。当時、オーバーローンを出す金融機関が多数あり、まさに1円も使わずに◯億円の収益不動産を購入したサラリーマン大家が続出いたしました。

アユカワタカヲ
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フルローンを組むための条件

手元に資金が無くてもフルローンなら不動産投資を始めることができます。「それならすぐにでも始めたい」と思うかもしれません。しかし、物件価格の100%の融資を受けるのは簡単な事ではありません。フルローンを組むには以下のような条件があるためです。

多額の資産を保有している

金融機関の審査では、融資を受ける側の年収や持っている資産の額が重要となります。年収が高かったり、多くの資産を持っていたりすれば、フルローンでの融資を受けられる可能性が高くなります。

ちなみに資産には、預貯金や株式、債券や投資信託、生命保険などの形を持たない金融資産のほか、不動産(マンション・アパート・一戸建、土地など)、貴金属(金・銀・ダイヤモンド・プラチナなど)、コレクション品(絵画などの美術品)といった実物資産があります。

金融機関によっては、配偶者や、ご両親などが所有する資産をカウントしてくれる場合があります。一族でその支店に定期預金しているなどは大きなポイントとなります。

アユカワタカヲ
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新築の方がフルローンを受けやすい

不動産投資を「新築物件より価格が安い中古物件で始めたい」と思う方もいると思います。もちろん中古物件で始めるのも選択のひとつ。ただし、「どうしてもフルローンで始めたい」という方にとっては、新築物件も選択肢の1つです。

一般的に、新築物件の方でフルローンがおりやすい傾向にあります。その理由は2つ、「耐用年数」と「不動産会社と金融機関の提携」です。

耐用年数

融資期間は建物の法定耐用年数で決まります。たとえば、一般的なマンション「RC造」「SRC造」の場合は法定耐用年数が47年です。この場合、最長で35年の借り入れができます。なお、融資期間=法定耐用年数―築年数です。

RC造もしくはSRC造で築20年の中古マンションであれば法定耐用年数47年-築年数20年=融資期間27年となります。金融機関側からすると、融資期間が長くなれば毎月の返済額が少なくなり負債者(ローンを借りている人)のリスクが軽減されますので、フルローンを出しやすくなります。

不動産会社と金融機関の提携

新築物件の場合、デベロッパー(販売会社)が金融機関と提携しているケースが多く見受けられます。新築物件は完成のタイミングに、不動産会社がたくさんの顧客に同じマンションの区分を販売します。

不動産会社が複数の顧客に対して金融機関を斡旋することで、金融機関は個々の物件査定の手間をかけず、短期間で貸付残高を増やすことが可能です。そういった理由から新築物件には提携金融機関のフルローンの融資が用意されている場合が多いのです。

金融機関との提携では、築浅の中古ワンルームマンションを販売している不動産会社もそうです。築浅の中古ワンルームマンションを扱う不動産会社にお願いすれば、フルローン可能の金融機関を紹介してくれます

私の場合、2010年に初めて購入した物件が都内の築浅中古ワンルームマンションでした。その際の融資は、不動産会社からの紹介でノンバンクからほぼフルローンに近い融資を受けました。

アユカワタカヲ
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不動産投資の実績がプラスになる

不動産投資をすでに始めていて物件をいくつか所有し、きちんとキャッシュフローも出て賃貸経営を順調に継続されている場合は、フルローンでの融資を受けられる可能性が高まります。これは、金融機関が賃貸経営の実績を高く評価するためです

フルローンを組んで不動産投資を始めるメリット

不動産投資を始める場合、ローンを組んで物件を購入するケースが一般的ですが、基本的には、一定額の自己資金=頭金を用意して融資を受けます。

では、頭金無しに、物件価格の全てを金融機関からの融資で調達するフルローンを選択するメリットはどんなことが挙げられるでしょうか。

すぐに不動産投資を始められる

フルローンのメリットは、思い立ったら直ぐに投資を始めることが出来ることです。頭金が無くて済むので、自己資金が無い、家計に余裕が無い場合でも、物件価格の100%を融資でまかなうため、すぐ不動産投資を始めることができます。

手持ち資金を残しておくことができる

フルローンの最大のメリットは、手元に自己資金を多く残しておけることです。手元の資金を物件の修繕費やリフォーム費用に充てたり、広告宣伝費をかけて入居者を募集したりすることが出できますし、あるいは生活費に充てられるというメリットもあります。

レバレッジ効果を大きくできる

投資におけるレバレッジ効果とは、「少ない資金で大きな資産を得ること」です。レバレッジ効果が大きいほど効率的な投資といえます。フルローンでの投資は、借りた資金で投資物件を購入するので、レバレッジ効果は最大になります。

たとえば、3,000万円の物件を頭金1割(300万円)+ 諸費用100万円を準備してローンを組む場合と、諸費用100万円のみ準備してフルローンを組む場合、以下のようにレバレッジ効果に大きな差が生まれます。

●頭金300万円+諸費用100万円を準備してローンを組む場合
3,000万円 ÷ 400万円(300万円 + 100万円)=レバレッジ 7.5倍

●諸費用100万円を準備してフルローンを組む場合
3,000万円 ÷ 100万円(諸費用) = レバレッジ30倍

フルローンを組んで不動産投資を始めるデメリット

ここまで、フルローンのメリットを挙げてきました。自己資金が無くても投資が始められて資金も手元に残る。レバレッジ効果も大きい。良いことだらけだと思えてきます。しかし、当然ですがデメリットもあります。

毎月の返済金額が増える

頭金なしで物件価格分のローンを借りているわけですから、頭金を入れた場合と比べるとその借入金の額は大きくなります。額が大きくなればローンにかかる利息の金額も大きくなるため、毎月の支払いも、完済までの総支払額も大きくなります

結果として家計をローン返済額がひっ迫したり、返済が困難になったりすることも考えられますので十分注意が必要です。

キャッシュフローが悪化しやすくなる

不動産投資における「キャッシュフロー」とは、家賃収入からローンの返済や経費などの現金支出を差し引き、最終的に手元に残るお金のことです。簡単な計算式は以下の通り。

キャッシュフロー=家賃収入-諸経費(ローン返済・固定資産税など)

キャッシュフローが良い状態とは、家賃収入が支出より大きい状態です。逆に、キャッシュフローが悪い状態は、家賃収入より支出が大きい状態です。フルローンの場合、月々の返済額が大きくなりますので、その結果、キャッシュフローが悪化しやすくなります

また、黒字でもキャッシュフローが小さければ、空室の発生や突然の経費支出によってすぐにマイナスに転じることもありえます。

出口戦略時のリスクが大きい

出口戦略とはもともと軍事用語で、損害が続く状況下でいかに損失を抑えて撤退するか、という戦略のことです。

近年では、収益を確定する意味合いで使われる場合もあり、不動産投資における出口戦略は、売却・譲渡・相続・破産などがあります。一般的には売却する際、いかにその不動産を高く売却できるかが出口戦略のカギとなります。
問題は、フルローンで購入した不動産は売却しにくいという点です。その理由は、売却価格が返済残高を下回ることで抵当権を外せないことにあります。以下、例を見てみましょう。

3000万円のフルローンで物件を購入、十数年経った場合

・仮にその時点のローン残高が2500万
・不動産の売却査定を受けたところ、査定額は2000万円

この場合、自己資金などで追加の500万円をローン返済に充てなければ、ローンを完済できません。ローンが残っていれば抵当権(ローンの返済が滞った場合に、対象不動産を差し押さえできる権利)を外すことができないため、その不動産を売却することができないのです。

また、新築物件を購入した場合、入居者が住み始めた瞬間から中古物件となり、価値は下がります。そのため、売却したとしてもローン残高を下回るケースが発生します

物件の保有期間中にしっかり家賃収入を得ていたとしても、売却の際に大きく損失を出してしまい、結果マイナスということも考えられます。

金利上昇リスクが高い

借入額が大きいということは、それだけ返済利子も大きくなります。日本でも利上げが決定されるなど、世界的に金利上昇傾向にありますが、今後金利の上昇が続けば月々の返済額も上昇していくため注意が必要です。

フルローンを組んで成功した事例

フルローンのメリット・デメリットをご説明しましたが、では具体的に成功した例はどんなケースでしょうか。フルローンを組んで成功した事例を見てみましょう。

持っていた自己資金で2つ目の物件を購入した

サラリーマンのAさんは、800万円の自己資金を持っていましたが、フルローンで1,850万円の都内築浅中古ワンルームマンションを購入しました。
借入金1,850万円
返済期間32年
金利1.6%
月の返済額約61,000円
家賃/月83,000円
管理費・修繕積立金/月10,000円
管理委託手数料/月2,000円
月の手残り(キャッシュフロー)約10,000円
フルローンで購入した物件で、空室が発生することもなく安定経営できているため、その後Aさんは、手を付けていない自己資金800万円を使って、2件目の物件を購入しました。

フルローンを組んで失敗した事例

フルローンでの購入は、借入額が大きくなり毎月の返済が大きな負担となります。赤字が続く、物件を売れない、借金が残るという厳しい状況もありえますので注意しましょう。失敗したBさんの事例を紹介します。

返済額が大きく赤字、売っても返済できない状況

サラリーマンのBさんは、3500万円の新築ワンルームマンションをフルローンで購入。しかし、月々の返済額が大きく、毎月のキャッシュフローは赤字。さらに空室も発生し赤字の額が大きくなったため、Bさんは損切りで物件を手放そうと決断しました。

売却額は2,700万円。この時点でローン残債は3,000万。自己資金で300万円を補填しないと売ることさえできないという状況に陥ってしまったのです。

不動産を売却して不動産投資から撤退したくても、ローンを完済できないため売却することさえ難しくなってしまったケースです。フルローンで購入した結果このようなケースに陥る可能性は十分あり得ますので注意しましょう。

フルローンを組める銀行はあるのか?

2015年に起きた相続税の税制改正により、不動産投資へ乗り出す人が急増。さらに、2018年以降相次いだ不動産投資に対する不正融資により、金融庁は、各金融機関への監視の目を強化しました。

その結果、金融機関の不動産投資への融資審査が厳しくなっています。まして、フルローンで銀行融資を受けることは、非常にハードルが高いと思う方も多いでしょう。しかし、一部のノンバンク、地方銀行、信用金庫はフルローンを出してくれます。

また、「共同担保を差し入れることを条件にフルローンを認める」などと、条件を明記している金融機関もありますので、条件など事前によく確認し、粘り強く複数の金融機関に相談してみるとよいでしょう。

フルローンの注意点

基本的に不動産投資は、自己資金を入れて行った方が安定します。少なくとも物件価格の1割、一般的には2~3割と言われています。

「手持ち資金がないからフルローンで不動産投資」という考え方は止めた方が良いでしょう。「手持ちのお金はあるけど、低金利時代なのでフルローンで不動産投資をしよう」という考え方が正しいと思います。

希望額でローン審査に通るために必要なこと

フルローンで不動産融資を受けることは容易ではありませんが、可能性がゼロでもありません。フルローンで不動産投資を始めるにはどのような準備が必要なのでしょうか?フルローンでの投資の可能性を高めるために心がけておきたいポイントをご説明しましょう。

しっかりとした事業計画書を用意する

金融機関に融資のお願いをする際、事業の方向性や計画性を明確に示す「事業計画書」の提出が必要です。事業計画書とは、この物件を手に入れたらどのくらいの家賃収入があって、どのくらいの返済があって、どのくらいのキャッシュフローが出るのか、長期的な収入と支出を予測した収支シミュレーションです。

安定した不動産経営ができるよう入念なシミュレーションがポイントとなります。返済能力をチェックされますので、事業計画書は、融資の審査で重視されます

事業計画書のテンプレートは、インターネットでダウンロードする事もできますし、不動産会社に作成してもらう事もできます。ローンの審査を有利に進めるためにも事業計画書は慎重に作成してください

属性をあげる

フルローンに限らず、ローンが通りやすい属性と判断されるのは、安定した返済が可能だと認めてもらう事です。いわゆる、属性が高い人。

属性とは、融資を受ける人の職業や年収、社会的信用のことです。その人に融資しても大丈夫なのか、いくらくらいまで融資できるのかなど、金融機関が判断する際の重要なポイントとなります。以下、属性の高い人の例です。

・公務員や大手上場企業など倒産リスクの少ない会社に勤務
・平均年収が高い業種
・安定した収益を上げている自営業
・勤続年数が長い

以上のような条件であれば、属性が高いと判断され「フルローン」を受けられる可能性はより高くなります。

まとめ

安定した不動産経営を行うためには、自己資金を物件価格の1割以上入れるのが鉄則ですので、基本的には自己資金は入れましょう。ただし、合法的に「フルローン」を出してくれる金融機関が出てきた場合、慎重に収支計算をして進めてください。

入って来たキャッシュフローは使わずにしっかり貯める、銀行に積み立てる。そして、あるタイミングで繰り上げ返済をする。将来、不動産投資が立ちいかなくなる事が無いように一歩一歩確実に進めていきましょう。

「自己資金不足だからフルローン」は危険!
収支計算を慎重に行うことが不動産投資成功へのヒントです。

この記事の監修者

アユカワタカヲ
アユカワタカヲ

不動産投資家/宅地建物取引士/AFP/J-REC公認 不動産コンサルタントなど

2010年、世田谷区内の中古区分ワンルームマンション購入から不動産投資をスタート。区分・一棟・戸建て・日本・海外…と幅広く不動産賃貸業を営む(2022年3月時点)。

現在は総合マネープロデューサーとして、人生におけるマネーリテラシーの重要性をメディアやセミナーなどで伝えている。年間のセミナー登壇数は300本を超える。

「満室バンザイ」(平成出版)、「不動産はあなたの人生を変えてくれる魔法使い 女性の願いを叶えてくれる最幸マイホーム購入術」(ごきげんビジネス出版)など執筆。

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