「自己資金不足だからフルローン」は危険!
収支計算を慎重に行うことが不動産投資成功へのヒントです。
目次
フルローンとは
フルローンとオーバーローンの違い
一方、物件価格の全額を融資でまかない、ローンを組むのが「フルローン」。さらに、物件価格に加え物件購入時に必要な諸費用(登記費用、税金など)も含めてローンを組むのが「オーバーローン」です。
【融資額の大きさ】 一般的なローン < フルローン < オーバーローン
フルローンを組むための条件
多額の資産を保有している
ちなみに資産には、預貯金や株式、債券や投資信託、生命保険などの形を持たない金融資産のほか、不動産(マンション・アパート・一戸建、土地など)、貴金属(金・銀・ダイヤモンド・プラチナなど)、コレクション品(絵画などの美術品)といった実物資産があります。
金融機関によっては、配偶者や、ご両親などが所有する資産をカウントしてくれる場合があります。一族でその支店に定期預金しているなどは大きなポイントとなります。
新築の方がフルローンを受けやすい
一般的に、新築物件の方でフルローンがおりやすい傾向にあります。その理由は2つ、「耐用年数」と「不動産会社と金融機関の提携」です。
耐用年数
RC造もしくはSRC造で築20年の中古マンションであれば法定耐用年数47年-築年数20年=融資期間27年となります。金融機関側からすると、融資期間が長くなれば毎月の返済額が少なくなり負債者(ローンを借りている人)のリスクが軽減されますので、フルローンを出しやすくなります。
不動産会社と金融機関の提携
不動産会社が複数の顧客に対して金融機関を斡旋することで、金融機関は個々の物件査定の手間をかけず、短期間で貸付残高を増やすことが可能です。そういった理由から新築物件には提携金融機関のフルローンの融資が用意されている場合が多いのです。
金融機関との提携では、築浅の中古ワンルームマンションを販売している不動産会社もそうです。築浅の中古ワンルームマンションを扱う不動産会社にお願いすれば、フルローン可能の金融機関を紹介してくれます。
私の場合、2010年に初めて購入した物件が都内の築浅中古ワンルームマンションでした。その際の融資は、不動産会社からの紹介でノンバンクからほぼフルローンに近い融資を受けました。
不動産投資の実績がプラスになる
フルローンを組んで不動産投資を始めるメリット
では、頭金無しに、物件価格の全てを金融機関からの融資で調達するフルローンを選択するメリットはどんなことが挙げられるでしょうか。
すぐに不動産投資を始められる
手持ち資金を残しておくことができる
レバレッジ効果を大きくできる
たとえば、3,000万円の物件を頭金1割(300万円)+ 諸費用100万円を準備してローンを組む場合と、諸費用100万円のみ準備してフルローンを組む場合、以下のようにレバレッジ効果に大きな差が生まれます。
●頭金300万円+諸費用100万円を準備してローンを組む場合
3,000万円 ÷ 400万円(300万円 + 100万円)=レバレッジ 7.5倍
●諸費用100万円を準備してフルローンを組む場合
3,000万円 ÷ 100万円(諸費用) = レバレッジ30倍
フルローンを組んで不動産投資を始めるデメリット
毎月の返済金額が増える
結果として家計をローン返済額がひっ迫したり、返済が困難になったりすることも考えられますので十分注意が必要です。
キャッシュフローが悪化しやすくなる
キャッシュフローが良い状態とは、家賃収入が支出より大きい状態です。逆に、キャッシュフローが悪い状態は、家賃収入より支出が大きい状態です。フルローンの場合、月々の返済額が大きくなりますので、その結果、キャッシュフローが悪化しやすくなります。
また、黒字でもキャッシュフローが小さければ、空室の発生や突然の経費支出によってすぐにマイナスに転じることもありえます。
出口戦略時のリスクが大きい
近年では、収益を確定する意味合いで使われる場合もあり、不動産投資における出口戦略は、売却・譲渡・相続・破産などがあります。一般的には売却する際、いかにその不動産を高く売却できるかが出口戦略のカギとなります。
3000万円のフルローンで物件を購入、十数年経った場合
・不動産の売却査定を受けたところ、査定額は2000万円
この場合、自己資金などで追加の500万円をローン返済に充てなければ、ローンを完済できません。ローンが残っていれば抵当権(ローンの返済が滞った場合に、対象不動産を差し押さえできる権利)を外すことができないため、その不動産を売却することができないのです。
また、新築物件を購入した場合、入居者が住み始めた瞬間から中古物件となり、価値は下がります。そのため、売却したとしてもローン残高を下回るケースが発生します。
物件の保有期間中にしっかり家賃収入を得ていたとしても、売却の際に大きく損失を出してしまい、結果マイナスということも考えられます。
金利上昇リスクが高い
フルローンを組んで成功した事例
持っていた自己資金で2つ目の物件を購入した
借入金 | 1,850万円 |
---|---|
返済期間 | 32年 |
金利 | 1.6% |
月の返済額 | 約61,000円 |
家賃/月 | 83,000円 |
管理費・修繕積立金/月 | 10,000円 |
管理委託手数料/月 | 2,000円 |
月の手残り(キャッシュフロー) | 約10,000円 |
フルローンを組んで失敗した事例
返済額が大きく赤字、売っても返済できない状況
売却額は2,700万円。この時点でローン残債は3,000万。自己資金で300万円を補填しないと売ることさえできないという状況に陥ってしまったのです。
不動産を売却して不動産投資から撤退したくても、ローンを完済できないため売却することさえ難しくなってしまったケースです。フルローンで購入した結果このようなケースに陥る可能性は十分あり得ますので注意しましょう。
フルローンを組める銀行はあるのか?
その結果、金融機関の不動産投資への融資審査が厳しくなっています。まして、フルローンで銀行融資を受けることは、非常にハードルが高いと思う方も多いでしょう。しかし、一部のノンバンク、地方銀行、信用金庫はフルローンを出してくれます。
また、「共同担保を差し入れることを条件にフルローンを認める」などと、条件を明記している金融機関もありますので、条件など事前によく確認し、粘り強く複数の金融機関に相談してみるとよいでしょう。
フルローンの注意点
「手持ち資金がないからフルローンで不動産投資」という考え方は止めた方が良いでしょう。「手持ちのお金はあるけど、低金利時代なのでフルローンで不動産投資をしよう」という考え方が正しいと思います。
希望額でローン審査に通るために必要なこと
しっかりとした事業計画書を用意する
安定した不動産経営ができるよう入念なシミュレーションがポイントとなります。返済能力をチェックされますので、事業計画書は、融資の審査で重視されます。
事業計画書のテンプレートは、インターネットでダウンロードする事もできますし、不動産会社に作成してもらう事もできます。ローンの審査を有利に進めるためにも事業計画書は慎重に作成してください。
属性をあげる
属性とは、融資を受ける人の職業や年収、社会的信用のことです。その人に融資しても大丈夫なのか、いくらくらいまで融資できるのかなど、金融機関が判断する際の重要なポイントとなります。以下、属性の高い人の例です。
以上のような条件であれば、属性が高いと判断され「フルローン」を受けられる可能性はより高くなります。
まとめ
入って来たキャッシュフローは使わずにしっかり貯める、銀行に積み立てる。そして、あるタイミングで繰り上げ返済をする。将来、不動産投資が立ちいかなくなる事が無いように一歩一歩確実に進めていきましょう。
「自己資金不足だからフルローン」は危険!
収支計算を慎重に行うことが不動産投資成功へのヒントです。
この記事の監修者
不動産投資家/宅地建物取引士/AFP/J-REC公認 不動産コンサルタントなど
2010年、世田谷区内の中古区分ワンルームマンション購入から不動産投資をスタート。区分・一棟・戸建て・日本・海外…と幅広く不動産賃貸業を営む(2022年3月時点)。
現在は総合マネープロデューサーとして、人生におけるマネーリテラシーの重要性をメディアやセミナーなどで伝えている。年間のセミナー登壇数は300本を超える。
「満室バンザイ」(平成出版)、「不動産はあなたの人生を変えてくれる魔法使い 女性の願いを叶えてくれる最幸マイホーム購入術」(ごきげんビジネス出版)など執筆。
2013年〜2017年頃、サラリーマンの間で「不動産投資大ブーム」が起こりました。当時、オーバーローンを出す金融機関が多数あり、まさに1円も使わずに◯億円の収益不動産を購入したサラリーマン大家が続出いたしました。