不動産投資で失敗しないために、
キャッシュフローを理解しておきましょう!
目次
キャッシュフローとは

ただし、キャッシュフローの重要性や計算方法について確認する前に、まずはキャッシュフローと混同しやすい「帳簿上の利益」や「利回り」との違いを理解することが大切です。ここでは、それらの違いについて順番に解説します。
キャッシュフローと帳簿上の利益の違い
帳簿上の利益は、所得税・住民税を計算する際の基準となる数字を指し、キャッシュフローは、手持ち資金を表す数字を指します。両者の計算方法の違いは以下の通りです。

減価償却費とは、建物の価値が減少した分を一定期間に分けて経費として計上するものです。実際に生じた支出ではないため、ローン返済額とのずれが生じます。
Aの計算は、あくまでも所得税・住民税を算出するためのものです。一方、Bでは実際に発生した支出を計算するために、減価償却費ではなく、ローンの元金・利息を家賃収入から引き算します。
帳簿上の利益は手元の資金とずれが生じるため、実際は手元にお金がないのに帳簿上は黒字の場合があるなど、正確な手持ち資金を把握できません。資金繰りを上手に行うためには、キャッシュフローの把握が必要という訳です。
キャッシュフローと利回りの違い
利回りの計算方法
キャッシュフローは手元に残るお金、利回りは利益率を表す数字となるため、両者はそもそもの考え方が異なります。しかし、キャッシュフローと利回りは関連性が深く、利回りが高い物件とキャッシュフローが貯まりやすい物件は、どちらも収益性が高い物件と言えます。
注意が必要な点は、利回りが高い物件が必ずしもキャッシュフローが貯まる物件とは限らない点です。たとえば、利回りが高くても融資の条件が悪い(金利が高い、返済期間が短く毎月の返済額が多いなど)とキャッシュフローが貯まりにくくなります。
キャッシュフローは手元に残るお金ですから、利回りが高くても支出が多い物件は、キャッシュフローが貯まらない可能性が高いです。そのような事態を避けるための対策として「イールドギャップ」を意識する方法があります。
イールドギャップの計算方法
イールドギャップとは、ローンの金利と実質利回りの差を表す数字です。ローンの借り過ぎによる不動産投資の失敗を防ぐために、イールドギャップを意識することも有効な手段の1つです。
不動産投資でキャッシュフローが重要な理由

利益を出すため
毎月のローン返済額に無理はないか、空室が続いてもローンの返済を続けられるか、維持費がかかり過ぎていないか、といった状態を確認するためにキャッシュフローをしっかりと意識しましょう。
確実な収入を得るため

不動産の価格は需要と供給、経済情勢などさまざまな要因によって変動するため、キャピタルゲインで確実に売却益を得られる保証はありません。
家賃収入は、入居者がいる限り半永久的に得られる利益ですから、長期的に安定して収入を得たい場合はインカムゲインを重視すると良いでしょう。インカムゲインを重視するのであれば、長期的に賃貸経営を続けられるようにキャッシュフローを把握することが重要です。
突発的な支出に備えるため
設備の故障の場合、修繕する場所によっては急を要するものではないこともあります。しかし、水回り、電気、ガスなどライフラインに関する修繕は早急な対応が必要です。
また、家賃収入を得られなくても、毎月のローン返済を続けなければなりません。支出だけでなく、空室や入居者の家賃滞納など、収入を得られないリスクにも備える必要があります。以上のように突発的な支出に備えてキャッシュフローが必要です。
キャッシュフローの計算方法

また、不動産投資での経費とは、具体的に以下のものがあります。
上記のほかにも賃貸経営にかかる費用があれば、経費として計算しましょう。
所得税・住民税の考え方
また、住民税はお住まいの地域によって計算方法が異なりますので、詳細は最寄りの税務署や国税庁の公式サイト、市町村の窓口でご確認ください。
キャッシュフローを計算する際の注意点
購入時に入居者がついている物件でも、永久的に入居率100%を維持できるとは限りません。リスクを考慮してもキャッシュフローが出る物件かどうか、チェックすることが大切です。空室損を計算するためには、家賃収入から空室損を差し引いて、収入を低めに見積もります。
たとえば、家賃収入10万円の場合、満室時の家賃収入は120万円です(10万円×12か月)。空室を1か月と仮定する場合、家賃収入を110万円として計算します(10万円×(12か月-1か月)。
キャッシュフローをシミュレーションしてみよう


シミュレーションの3ステップ
STEP1:不動産所得を計算する
STEP2:所得税・住民税を計算する
STEP3:キャッシュフローを計算する
キャッシュフローを増やす方法はある?

利回りの高い物件を選ぶ
上で説明したように、利回りは投資した金額(物件価格)に対してどれだけの利益(家賃収入)を得られるかを表した数字のため、物件価格が割安なほど高利回りになります。
割安な物件を狙う際の注意点
記事の前半でお伝えしたとおり、利回りが高い物件のすべてにおいてキャッシュフローが増えるとは限らないため、物件選びは慎重に行いましょう。
低金利で融資を引く
以下のように、元金と返済期間が同じ時、金利が1%変わると利息に数百万円の差が生じることがあります。※融資条件:元金3,000万円、返済期間20年間、元利均等返済
利息 | 毎月の返済額 | 総返済額 | |
---|---|---|---|
金利2% | 642万円 | 15.1万円 | 3,642万円 |
金利3% | 993万円 | 16.6万円 | 3,993万円 |
低金利で融資を引く手段の1つとして、頭金を多く入れる方法が挙げられます。金融機関の中には、融資額に対する頭金の割合によって優遇金利を設けている場合があるため、そのような金融機関を探してみるのも手です。
ただし、手元資金のすべてを頭金として投入するという考えは危険です。不動産投資では手元にお金を残すことも重要なため、不動産会社へ相談のうえ、慎重に判断しましょう。
家賃が安い物件を選ぶ
購入時に募集家賃が高く設定されている物件は、家賃下落リスクが高いと言えます。相場に対して家賃が安い物件を購入すれば、将来的に家賃を上げられる可能性があります。
ただし、一般的には不動産の価値は購入時から下がるものです。物件の価値を維持するには、計画的な修繕、周辺競合物件の情報収集が欠かせません。リフォーム、清掃、入居条件の見直しなど、メンテナンスをしっかりと行う必要があります。
まとめ

また、キャッシュフローについて深く理解するためには、利回り、税金の仕組み、物件の選び方などさまざまな知識も必要です。不動産投資で大きな失敗をしないように、情報収集をしっかりと行いましょう。
不動産投資で失敗しないために、
キャッシュフローを理解しておきましょう!
この記事の監修者

八木エミリー
【資格】証券外務員一種/2級FP技能士
新卒時に野村證券に入社、投資の勉強を始める。新人時にして営業成績東海地方1位を獲得。2016年より不動産を購入。現在では7棟を所有。2019年より独立系ファイナンシャルアドバイザーとして活動し主に富裕層向けに資産活用のアドバイスを行うほか、一部上場企業の社員向けセミナー講師としても活躍。またオンラインサロン「em会」を主宰し、金融知識の啓蒙に務める傍ら、地域活性事業や障害児支援など活動の幅を広げている。「今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!」(ビジネス社)など執筆。