【不動産投資の基本】家賃収入の税金はどのくらい?計算方法や税金対策について解説します

2024.07.18更新

この記事の監修者

秦 光一郎
秦 光一郎

税理士

【不動産投資の基本】家賃収入の税金はどのくらい?計算方法や税金対策について解説します

不労所得である家賃収入を得るには、どの程度の税金が課されるのでしょうか。この記事では家賃収入の税金の知識をお伝えします。

この記事のポイント
  • 不動産投資は多くの税金を支払わなければならない事業であることを覚えておきましょう。
  • 経費計上や損益通算などで納税額を減らすことも可能。税金の知識はしっかり身に付けておくことが大切です。
  • 家賃収入を得たら確定申告を!悩む場合は迷わず税理士に相談することをおすすめします。

目次

家賃収入を得たら税金がかかる

家賃収入とは、文字通り住宅や事務所を第三者に貸し付けた際に、借手から貰うことができる賃料です。個人が家賃収入から得られる利益のことを、所得税法では不動産所得といいます。

そして不動産所得には税金が課せられます。賃収入として入ってきたお金をすべて使ってしまうと、後で税金の支払いに困ることになります

不動産所得の計算方法

不動産所得は、次のような算式で計算されます。

不動産所得=総収入金額-必要経費(-青色申告特別控除)

この算式で計算された金額がプラスである場合、つまり収入金額が必要経費よりも多い場合、不動産所得が発生していることになり不動産所得に係る税金の対象となります。他方、上記算式がマイナスの場合、つまり収入金額が必要経費よりも少ない場合、不動産所得は発生していませんから、不動産所得に係る税金も発生しないことになります。

算式中右端括弧内の「青色申告特別控除」は、青色申告の承認得ている人だけが控除できる項目です。要件により、10万円、55万円、65万円の種類があります。特別控除前の所得を限度としますので、青色申告特別控除により不動産所得がマイナスになることはありません。

家賃収入に含まれるもの

上記の「総収入金額」は、不動産を貸し付けることで得られる収入の合計を意味しています。これには毎月の家賃(賃料)はもちろん、共益費、管理費、水道光熱費負担金など毎月の家賃に付随するものや、礼金、更新料なども総収入金額に含まれます。

他方、敷金や保証金など、契約上退去に際して返金・精算されるものは、総収入金額に含まれません。

家賃収入に課せられる税金の種類と計算方法

不動産所得がある人には、給与に係る税金以外にいくつかの税金が課せられるようになります。

所得税

不動産所得は、給与所得や事業所得、公的年金所得などと合算され、所得税の対象となります。日本では個人の所得税を計算する際に超過累進税率を適用しており、所得の大きい人ほど負担する税率が高くなります

つまり不動産所得が同じ100万円でも、他に給与所得が1,000万円あるA氏と、年金所得100万円しかないB氏では負担する所得税の額が異なることになります。

上記、A氏とB氏で言えば、扶養人数や負担する社会保険料により変動するものの、A氏は概ね20%程度の所得税が課されると見込まれるのに対して、B氏は5%程度と見込まれます。つまりA氏は不動産所得100万円のうち、20万円は所得税の納税資金として確保しておく必要がありますが、B氏は5万円で良いということです。

所得税の確定申告書は、翌年の3月15日までに提出が求められ、納付期限も同日です。預金口座からの振替を設定すると、口座振替日が例年4月20日過ぎになります。また、確定申告による所得税の納税額が15万円以上になると、翌年の所得税の予定納税が求められます。

予定納税は7月と11月が納期になります。上記A氏の例で言えば、令和3年分の不動産所得100万円に対して確定申告で20万円の所得税を納付した場合、令和4年6月上旬に予定納税の通知書が送付され、令和4年7月と11月にそれぞれ、67,000円程度の予定納税の納付が求められます。

この予定納税は、翌年令和5年3月15日に納付する令和4年分所得税から差引かれます。

住民税

不動産所得には住民税も課されます。これは、都民税、県民税、市民税、区民税、村民税など、居住している地域により名称が異なります。各地方自治体から6月上旬に納付書が郵送され、税率は10%。上記のA氏B氏の例で言えば、他の所得の多寡にかかわらず2人とも10万円の住民税が課されます。

注意が必要なのは納税時期です。住民税は毎年6月に前年所得に基づく納税通知書が送付され、年4回、通常6月、8月、10月、翌年1月が納期限となります

つまり令和3年の不動産所得に係る住民税が10万円である場合、令和4年6月、8月、10月、令和5年1月にそれぞれ25,000円ずつ納付となります。

もちろん1年分まとめて納付することも可能です。少額であれば問題ありませんが、納税額が多額になる場合、住民税の納税資金を確保しておかないと、資金繰りに苦しむことになります。

個人事業税 ※利益290万円超~

不動産貸付が事業的規模になると、個人事業税が課されます。この事業的規模については、地方自治体ごとに多少要件の違いがありますが、統一的な基準として貸付不動産5棟10室以上とされています。駐車場の場合、5台1室としてカウントします

個人事業税の課税標準は、青色申告特別控除前の不動産所得の金額から290万円を控除した金額で、税率は5%です。個人事業税の納税義務がある場合、8月と11月に納付を行うよう納税通知書が送付されます。

個人事業税も前年の所得に対する事業税が翌年課されています。つまり、令和3年分の不動産所得について、個人事業税が課される場合、令和4年8月と11月に納税を求められます。

消費税 ※課税売上高1,000万円超~

住宅賃料について消費税は非課税です。他方、店舗、事務所、駐車場(更地駐車場除く)などの賃料については、消費税の課税対象となります。消費税の課税対象となる収入のことを課税売上といいます。

前々年の課税売上が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になります。つまり令和3年に店舗事務所などの賃料収入が初めて1,000万円を超えた人は、令和5年から消費税の課税事業者になります

消費税の税率はご存じの通り10%です。課税事業者は対象となる取引に際して、収入時には請求額の10%を余分に預り、経費支払時にその10%を余分に仮払いします。

1年間の預かり金額と仮払金額の差額が原則として消費税の納税額になります(住宅の貸付などがある場合、計算方法は上記と異なります)。

消費税には簡易課税という計算方法もあり、簡易課税方式によれば不動産貸付の場合、課税売上のおおむね6%が納税額となります。個人の場合、毎年3月31日までに前年分の確定申告書を提出し、消費税を納付しなければなりません

固定資産税・都市計画税

不動産所得に課される税金ではありませんが、不動産の所有者に課される税金として、固定資産税と都市計画税があります。これはその年の1月1日時点の不動産の所有者に、不動産の所在する地方自治体から課されるものです。

このうち都市計画税は、市街化区域に所在する土地家屋のみが対象になります。固定資産税は、固定資産税課税標準額という地方自治体が定めた価額に対して1.4%の税率で課されます都市計画税の税率は0.3%です。

納税通知書の送付時期と納期は地方自治体により異なりますが、東京都の場合、6月に納税通知書が送付され、6月、9月、12月、翌年2月の年4回に分けて納付が求められます。

家賃収入の税金対策|3つの方法

上述の通り、不動産所得に対してはさまざまな税金が課されます。可能な限り節税をして、納税額を抑えたいと考えるのが人の常です。

経費を計上する

不動産所得をなるべく抑える方法の1つは、経費を網羅的に計上することです。しかし、何でもかんでも経費にできるわけではありません。不動産所得の経費として認められる一般的なものを下記に例示しますので、ご確認ください。

経費を網羅的に計上する、とは確定申告書の作成時期になって慌ててできることではありません。必要経費の計上にはエビデンス(証憑)の保存が不可欠だからです。経費の範囲を日頃から意識して、不動産所得の必要経費になり得る支払いについては、領収書などのエビデンスを保存しておくことが重要です。

保存の際には、費目ごと、月ごと、支払方法ごと、など分類して整然と保存しておくと後の作業が楽になりますし、紛失を防ぐことができます。

経費として認められるもの

不動産所得の経費として一般的なものは以下のようなものです。なお、必要経費については、税理士へ相談をするとWeb上には掲載できない有用なアドバイスを貰える場合もあります。是非、近しい税理士へ相談なさってください。

・租税公課(固定資産税、登録免許税、印紙代など。所得税、住民税は対象外)
・損害保険料(建物の火災保険料など)
・地代家賃(賃貸している建物や敷地の地代)
・借入金利子(購入や大規模修繕時の借入金利子)
・修繕費(入退去時の修繕、クリーニングなど)
・事務費、消耗品費
・減価償却費(建物、構築物の償却費)
・支払手数料(管理手数料、税理士などへの報酬)
・広告宣伝費(募集費用など)
・その他の経費

損益通算する

不動産所得がマイナスになる場合、そのマイナスは給与所得や公的年金に係る雑所得などと相殺できます。これを損益通算といいます。損益通算を行うと給与所得などから源泉徴収された所得税の還付を受けられる場合があります。しかし、不動産所得の損益通算制度にはいくつか制限があります。

土地の負債利子について損益通算不可規定があります。たとえば不動産所得がマイナス100万円であったとしても、必要経費に算入した土地の負債利子が60万円ある場合、損益通算できるのは100万円-60万円=40万円のみになります

また、国外中古建物に係る一定の減価償却費から生じた損失や、民法組合事業または信託から生じた不動産所得の損失は、国内の不動産所得や他の所得との損益通算を行うことができません。

青色申告する

上述しましたが、青色申告の承認があると青色申告特別控除を受けることができます。青色申告特別控除には、10万円、55万円、65万円という三種類の控除があります。

事業的規模があり、複式簿記により記帳し、申告期限までに貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して提出する場合、55万円の控除が認められます

上記に加え、e-Taxでの申告等電子申告の要件を満たす場合は、65万円の控除が認められます。上記いずれの要件も満たさない青色申告は10万円の控除になります。

青色申告には特別控除の他、生計一親族の給与の必要経費算入、30万円未満の資産取得価額の必要経費算入、各種特別償却や繰越控除、税額控除など、さまざまな税制上の恩典(所得税を安くする制度)が認められます。家賃収入のある人は、青色申告ができるよう申請をしておきましょう。

その年分の所得税の確定申告を青色申告により行いたい人は、その年3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。また、年の中途に業務を開始した人は、業務開始日から2ヵ月以内に同申請書を提出することで青色申告による確定申告書を提出することができます。

家賃収入を得たら確定申告が必要

家賃収入を得たら確定申告が必要ですし、義務が無い場合でも確定申告をした方が有利になります。

確定申告の方法

前述の通り、所得税の確定申告は翌年の3月15日が提出期限となります。現状ご自身で申告する場合、紙の確定申告書で申告する方法と、e-Taxを用いてインターネットで申告する方法があります。紙での確定申告をご希望であれば、税務署の相談窓口などへ出向き、書き方を相談しながら申告することもできます。

しかし紙での提出の場合、転記箇所が多く、集計も手作業で煩雑ですし、確定申告期は税務署も大変混雑します。e-Taxの場合、国税庁HPの「確定申告書作成コーナー」で、画面の案内に従って金額などを入力していくだけで提出ができます。集計も自動です。

マイナポータルでのふるさと納税や医療費のデータ連携も可能になりました。必要な資料を取りそろえてe-Taxでの申告書提出にチャレンジしてみるのは良い経験になるかもしれません。

不動産所得が事業的規模である場合や損益通算による還付を受けたい場合、不動産の譲渡所得がある場合などは、近所の税理士へ相談し確定申告書の作成と申告を依頼したほうが無難です。前述の通り税理士からは必要経費の考え方など有用なアドバイスを貰える場合もあります。

また譲渡所得は特例間の関係が複雑で、今年の確定申告における選択が来年以降の特例選択の可否に影響を与えます。代表的なものは居住用財産特別控除と住宅ローン控除の併用不可です。きちんと計画しないと余分な税負担を強いられますが、税理士に相談をしないと余分な負担を強いられていることにすら気付けないかもしれません

確定申告に必要な書類

不動産所得の計算には、収入と必要経費を裏付ける資料が必要になります。具体的には、家賃などの入金のある預金口座の入出金記録や管理会社からの賃料報告書、必要経費の領収書などです。

店子の入替がある場合は契約書なども必要な確認資料となります。借入金で賃貸物件を購入している場合は返済明細書も利子や保証料の集計に必要になります。不動産所得以外の所得や各種控除の計算に必要な資料としては、一般的に以下のような資料が考えられます。

・給与所得の源泉徴収票
・公的年金等源泉徴収票
・生命保険契約等の一時金又は年金の支払調書
・原稿料等の支払調書
・特定口座年間取引報告書
・配当金の支払調書
・寄附金受領証明書
・住宅取得等借入金年末残高証明書
・医療費領収書
・保険料年間支払額報告書又は通知書

確定申告書に必要な書類は、申告内容に応じ人それぞれです。支払調書や証明書類、報告書などの書面はなるべく整然と保管しておくよう心掛けてください

不動産所得が20万円以下の場合は確定申告不要?

日本の労働者の大半は企業や団体からの給与で生計を維持しています。年末調整を行った給与以外の所得が年間20万円以下である人は確定申告をする義務がありません。

しかし、不動産所得がマイナスである場合に前述の損益通算をして所得税の還付を受けたい場合は、確定申告書を提出する必要があります。不動産投資による節税メリットを確実に実現したいのであれば、確定申告書は必要であると覚えておきましょう。

よくある質問

ここでは、不動産投資に関するよくある質問をご紹介します。
「不動産投資で節税できる」は本当?
不動産投資の節税効果は前述のとおり損益通算に拠ります。損益通算対象外となる経費(土地の負債利子、国外不動産の一定の減価償却費)が多く含まれる場合、節税効果は限定的です。

また賃料収入の大半が借入返済に廻る場合、設備の償却が終わると、手残りが無いのに税負担のみ発生、との苦境に陥りがちです。不動産投資と節税に関する記事を参照ください。
所得税を計算する際に控除されるものは?
所得控除と税額控除があります。所得控除は税率を乗ずる前に控除されるもので、社会保険料やiDeco掛金等支払額を控除するものと、扶養控除のような一定額を控除するものがあります。

税額控除は算出された税金から差引くもので、配当控除や住宅ローン控除、ふるさと納税の寄付金控除などがあります。
サラリーマン大家さんとして成功するためには何が必要?
まず、自己資金を貯めることが必要です。不動産購入には土地・建物の費用以外にさまざまな税金を支払わなければなりません。

また、困ったときやトラブルに遭ってしまった時などに相談できる相談先を持つことも大切です。しかし、何より重要なのは積極的に情報収集を行うこと。セミナーなどに参加しながら不動産投資の知識を増やしていきましょう。詳しくはサラリーマン大家の成功に関する記事を参照ください。
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まとめ

この記事では、家賃収入に課せられる税金についての解説を行いました。所得税以外に住民税や事業税など、さまざまな種類の税金が課されます。また納税の時期も、翌年や翌々年となる場合もあり、管理や計画が必要であることをご理解頂けたのではないでしょうか。

家賃収入は代表的な不労所得であり、経済的自立を得るための有効な手段の1つです。これに関する税制への理解を深め、ご自身の資産形成に役立ててください。専門家へのご相談もお気軽に!

不動産投資を始めるなら税金の知識は必須!
家賃収入にはどのくらいの税金がかかるのか把握しましょう。

この記事の監修者

秦 光一郎
秦 光一郎

税理士

会計事務所に勤務しつつ平成16年税理士試験に合格。税務コンサルタント会社にて金融機関をサポートする業務の中、資産税業務の経験を積む。平成22年税理士法人シン総合会計設立。主に中小企業の会計税務支援を中心に、事業承継、資産税業務にも従事。不動産会社の税務相談会相談員、金融機関のセミナー講師等に携わる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。