アパート・マンション経営だけで生計は立てられる?
安定した家賃収入維持に必要なポイントをシェアします。
目次
家賃収入とは

アパート・マンション大家さんの手取り収入はどれくらい?
下の表は2019年度分の国税庁データから、不動産所得の申告結果をまとめたものです。
所得階級 | 人員 | 金額(百万円) | 一人当たり |
---|---|---|---|
70万円以下 | 28,806 | 24,145 | 838,193 |
100万円以下 | 52,102 | 42,943 | 824,210 |
150万円以下 | 109,238 | 126,558 | 1,158,553 |
200万円以下 | 107,027 | 166,571 | 1,556,346 |
250万円以下 | 96,999 | 187,811 | 1,936,216 |
300万円以下 | 86,139 | 198,270 | 2,301,745 |
400万円以下 | 143,954 | 406,145 | 2,821,353 |
500万円以下 | 108,655 | 389,551 | 3,585,210 |
600万円以下 | 78,146 | 341,923 | 4,375,438 |
700万円以下 | 58,138 | 300,953 | 5,176,528 |
800万円以下 | 43,689 | 261,419 | 5,983,634 |
1,000万円以下 | 58,764 | 422,458 | 7,189,061 |
1,200万円以下 | 34,635 | 308,846 | 8,917,165 |
1,500万円以下 | 29,845 | 328,031 | 10,991,154 |
2,000万円以下 | 24,569 | 350,126 | 14,250,722 |
3,000万円以下 | 17,236 | 344,945 | 20,013,054 |
5,000万円以下 | 8,172 | 254,335 | 31,122,736 |
10,000万円以下 | 2,826 | 150,440 | 53,234,253 |
20,000万円以下 | 568 | 58,404 | 102,823,944 |
50,000万円以下 | 92 | 20,273 | 220,358,696 |
100,000万円以下 | 6 | 2,509 | 418,166,667 |
合計 | 1,089,606 | 4,686,656 | 4,301,239 |
平均所得額は約430万円になっていますが、この不動産所得とは、家賃収入から必要経費を除いた残りの「利益」に該当する金額を言います。手取り収入とは、利益から税金を支払った残りの純利益のことです。
表の結果をグラフにしたものが下の図ですが、人員がもっとも多い中央値は年間所得額400万円以下の階級になります。

家賃収入だけで暮らせるのか?
一般的に、アパート経営における経費率は20%前後と言われます。つまり不動産所得は家賃収入の約8割と想定され、最低でも家賃収入が625万円以上なければ手取り500万円の確保は難しいということです。年間の不動産所得1,000万円を確保したい場合は、1,250万円の家賃収入がなければいけないことがわかります。
また、賃貸物件の表面利回りは5~8%ぐらい、よほど条件のよい物件で15%ぐらいが相場です。表面利回り8%、実質利回り6.8%の物件を想定すると、1,250万円の家賃収入を確保できる投資額は約1億8,382万円と計算されます。年間所得の希望が500万円でも投資額は約7,352万円です。さらに年間所得から税金を支払うので、手取り額は所得額よりも少なくなります。従って投資額はもう少し上積みする必要があるでしょう。
アパート・マンション経営の収入内訳

家賃
初めて入居する時には、月初から入居する場合以外、入居する月に関しては日割り計算により当月分を支払ってもらい、翌月分を「前家賃」として契約時に支払ってもらうことが多いでしょう。消費税に関して、住宅として貸付ける場合の家賃に対しては非課税となります。
共益費・管理費
礼金
更新料
駐車場賃料
アパート・マンション経営の支出内訳

管理委託料
賃貸住宅管理委託契約書を締結して、業務内容の詳細や業務報酬を業務別に区分した明細を明記することが多いです。委託契約書の内容は国土交通省が「賃貸住宅標準管理委託契約書」を策定し公表していますので、参考にしてください。
仲介手数料
入居者が家賃1か月分を負担した場合は、大家さんが仲介手数料を支払う必要はありません。また、入居者の仲介手数料を無料とした場合は大家さんが支払います。ほかに、大家さんが不動産会社に対し「広告料」と呼ばれる費用を支払うケースもあります。
建物修繕費
10年ごとに行う、大規模修繕と呼ばれる外壁や屋根の改修工事などについては、経費としては扱わず再投資として位置づけられ、資本的支出として「減価償却費」で損金処理をするケースもあります。
保険料
税金
収入から経費を控除した利益が不動産所得であり、所得額に応じて所得税と住民税が課されます。大家さんは毎年2月16日~3月15日の期間内に、最寄りの税務署にて確定申告をして納税しなければなりません。
また、一定の条件に該当すると都道府県から事業税が課されます。さらに、賃貸物件となっている土地と建物には固定資産税と都市計画税が課され、市区町村が徴収します。事業税と固定資産税・都市計画税は必要経費として算入が可能です。
【実例比較】収益を上げやすい賃貸経営とは?


②はキャッシュフローにより手取り収入を計算する方法で、キャッシュフローから税金を支払った残りを「税引き後キャッシュフロー(ATCF)」と言います。
①と②とでは最終的な手取り収入の金額が異なります。その理由は計算式にあるように、損益計算ではローン返済の金利分を必要経費に算入しますが、キャッシュフローではローン返済の元利合計額を差し引くためです。さらに損益計算では「減価償却費」を必要経費として参入しますが、実際には支出しない費用になります。キャッシュフローでは減価償却費を計算に入れません。このような違いがあり、実際に手元に残るお金はキャッシュフローで計算する金額になります。
では、実際に家賃収入とキャッシュフローを計算してみましょう。
家賃収入とキャッシュフロー実例
【Aプラン】
総部屋数:12室
月額家賃:5万円
入居室数:11室
経費率:家賃の20%
【Bプラン】
総部屋数:6室
月額家賃:10万円
入居室数:5室
経費率:家賃の20%
まずAプランについて、損益計算とキャッシュフローによる計算で、手取り収入がどのように違うのか確認してみましょう。
項目 | Aプラン |
---|---|
年間実収入 | 6,600,000 |
年間経費 | 1,320,000 |
元金返済 | 500,000 |
金利返済 | 1,500,000 |
減価償却費 | 1,700,000 |
年間所得 | 2,080,000 |
所得税 | 110,500 |
税引き後利益 | 1,969,500 |
ATCF | 3,169,500 |
これについてはこちらの記事も参考にしてください。
空室による減収を想定しておこう
項目 | Aプラン | Bプラン |
---|---|---|
満室時収入 | 7,200,000 | 7,200,000 |
年間実収入 | 6,600,000 | 6,000,000 |
年間経費 | 1,320,000 | 1,200,000 |
元金返済 | 500,000 | 500,000 |
金利返済 | 1,500,000 | 1,500,000 |
減価償却費 | 1,700,000 | 1,700,000 |
年間所得 | 2,080,000 | 1,600,000 |
所得税 | 110,500 | 80,000 |
税引き後利益 | 1,969,500 | 1,520,000 |
ATCF | 3,169,500 | 2,720,000 |
アパート経営の収入リスク

主なリスクについて紹介しますが、詳しくはこちらの記事も参照してください。
家賃下落リスク
入居率を上げるためには家賃を下げる設定が必要になってきます。老朽化があまり進んでいない場合でも、物件の建っているエリアの利便性が悪化し、家賃相場が下がるケースもあります。家賃は通常、新築時の家賃設定が最高と考え、だんだん下がっていくことを前提として事業計画を立てなければなりません。
空室増加リスク
空室が増加すると収入が減り、修繕などの資金が足りなくなる可能性もあるでしょう。修繕が十分でなければさらに入居率が下がり、ますます空室が増えるという悪循環に陥りかねません。空室リスクは賃貸事業において、もっとも大きなものであることを認識しておく必要があるでしょう。
滞納リスク
経費増加リスク
安定収入を維持するには

長期的な収支計画を立てよう
ローン返済が終わると金利分の損金算入がなくなり、木造アパートの場合で減価償却期間が終了すると、所得税が上昇しキャッシュフローが悪化することもあります。甘い見通しで経営をスタートすることは大変危険だと認識しておかなければなりません。
建物の維持管理費用を見積もっておこう
投資物件を購入する場合には金融機関の融資を利用しますが、金融機関が融資審査をする際に重視するポイントの1つが「維持管理費用」です。これは主に修繕費のことで、定期点検費用や設備更新費用なども含まれます。維持管理費用の計画が不十分な事業計画書は、計画よりも支出が増加し収益性の悪化が予想され、事業計画書の見直しを求められるケースもあります。
金融機関の指摘を受けるまでもなく、リスクを織り込んだ安全性の高い長期収支計画のポイントは維持管理費用であると認識しておく必要があるでしょう。
空室対策を怠らない
・所有している物件はエリアの需要にマッチしているか
・競合物件がエリア内にどの程度存在しどのような違いがあるか
・入居者は満足して居住しているか
このように、所有する物件を管理会社とは異なる視点で分析し、空室対策を管理会社とともに考える姿勢が大切でしょう。
収益改善策(経費削減など)を練ろう
経費には、委託管理費や仲介手数料など賃貸経営に直接関わる経費と、損益計算書に参入する間接的な経費などがあります。通信費・交通費・新聞図書費・消耗品費・接待交際費などの、変動費の見直しが1つのポイントです。さらに以下のような固定費を見直してみることも効果のある対策です。
・ローンの借り換えなどにより返済額を減らす
・委託管理業務の範囲や業務報酬を見直し委託管理費を圧縮する
・従業員がいる場合は人件費を見直す
・火災保険の見直しにより保険料を低減させる
また、経費算入していない費用を見直すと経費算入可能な場合もあり、節税対策も立派な収益改善策になるでしょう。詳しいことはこちらの記事も参考にしてください。
まとめ

立地条件によってターゲットも変わり、マッチするプランニングが必要です。予定している土地があって活用を図る場合、新規に土地から取得して賃貸事業を始める場合など、不動産投資にはさまざまなバリエーションが考えられます。検討にあたっては「土地活用プランの一括資料請求」が有効です。
アパート・マンション経営だけで生計は立てられる?
安定した家賃収入維持に必要なポイントをシェアします。

監修弘中 純一
【資格】宅建取引士/一級建築士
宅建取引士・一級建築士として住宅の仕事に関り30年以上になります。
住宅の設計から新築工事・リフォームそして売買まで、あらゆる分野での経験を活かし、現在は住まいのコンサルタントとして活動。
さまざまな情報が多い不動産業界ですので、正しい情報発信に努めています。