地方物件への不動産投資はメリットあり?投資物件の選び方と注意点

2024.06.24更新

この記事の監修者

吉崎 誠二
吉崎 誠二

不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

地方物件への不動産投資はメリットあり?投資物件の選び方と注意点

地方物件への不動産投資を検討している方に向けて、地方物件に投資する場合のメリット・デメリットおよび注意点についてご説明します。

利回りが高く魅力的な、地方での不動産投資
注意点をおさえて慎重に進めましょう!

目次

地方の不動産投資物件は買いか、否か

将来を見通した時、地方物件への不動産投資にメリットはあるのでしょうか?そもそも「地方」とは何を指すのか、そしてどのような「地方」なら不動産投資に適しているのか、など、賢く地方物件へ投資する方法をご説明します。

どのような投資でもリスクがつきものです。不動産投資における「リスク」は利回りに反映されます。地方物件は、相対的に高い利回り物件が多いですが、その分、投資リスクは高くなります。そのため、しっかりとした目利きと地域業者との連携が必要です。

吉崎 誠二
吉崎 誠二

そもそも「地方」とは

「地方」とは国語辞典で調べてみると、「ある国の中のある地域」「首都などの大都市に対してそれ以外の土地」(出典:デジタル大辞泉)となっています。「地方」という言葉からはあまり人口が多くなくのんびりした町をイメージされる方も多いと思います。

こうした地方のなかにも不動産投資に適しているエリアは、じっくりと吟味すればありそうです。

賃貸需要があるエリアかどうかが鍵

地方物件でも、不動産投資に適しているエリアであるか否かは、賃貸需要の有無で判断します。地方のなかでも、どのようなエリアが不動産投資に適しているかは以下のような点に注目してみるとよいでしょう。

注目エリアは?

2023年地価公示によると、住宅地地価では前年比でみれば、24都道府県の地価が上昇となっています。

標準点(調査地点)別でみれば北広島市(北海道)の住宅地地点が上昇率上位10位内に5地点もランクインしています。道内から人口流入が進んでいる札幌地域ですが、北広島市は札幌都市圏とも言える地域で、郊外住宅地域として人気があり、札幌はもちろん空港のある千歳へ鉄道アクセスがよいエリアです。

加えて、23年に開場したプロ野球チームの新球場を中心とした複合施設のプラスイメージも大きく影響していると考えられます。また、新しく大きな施設ができると、そこで働く人、地域外の方々の住まいが必要となり、賃貸需要も生まれてくる可能性があります。

このように不動産投資を検討しているエリアの、地価動向がどのように推移しているかを確認し、地価上昇の背景とその影響を考えてみると、注目エリアを見つけることができます。

土地勘がある場所のほうが有利

先に述べたような北広島市(北海道)のように、注目されているエリアとはいえ、まったく土地勘がなければ、こうした状況にピンとこない方もいらっしゃるでしょう。

出身地や元勤務地など、暮らした経験のある土地勘がある場所から、自身にとっての注目エリアを探してみるほうが、有利といえるでしょう。

将来性も欠かさずチェックを

エリアの将来についても確認が必要です。地価上昇は一時的な場合もあります。

これまでの地価推移や、今後の開発情報および人口動態予測などをチェックして、一時的ではなく将来にわたって、賃貸需要が見込めるかどうかも不動産投資に適しているか否かの見極めに重要なポイントです。

地方物件のメリット

地方の物件に投資をするメリットについて、ご説明します。

利回りが高い

利回り(表面利回り)は、「(年間の家賃収入÷物件価格)×100」で表されます。つまり、家賃収入が多い、または物件価格が低くなれば利回りは向上します。

地方の物件は、東京や大阪といった大都市圏の物件と比べると、相対的に物件価格は低いため、仮に家賃収入が同じであれば利回りが高くなる可能性が大きくなります。

ライバルが少ない

もちろん、地方にも賃貸物件はありますが、大都市と比べると投資目的で不動産投資を行っているというケースよりも、相続対策などで不動産投資を始めたというケースのほうが多い傾向にあります。

そのため、空室が生じても積極的な対策を講じないケースもあり、入居者のニーズをとらえた物件を提供し、適切な維持管理を行っていけばおのずと魅力の高い賃貸物件となるため、成功できる不動産投資になる可能性が高いといえます。

物件価格が安い

利回りの解説でも触れましたが、大都市部に比べると地方は物件価格が低い傾向にあります、そのため、固定資産税も低いうえ、エリアによっては、都市計画税がかからない物件もあります。

初期コストや運用コストを抑えられるのは、不動産投資においてメリットといえます。

地方物件のリスク(デメリット)

地方の物件で不動産投資を行うリスク(デメリット)についてご説明します。

空室リスクが高い

地方の物件の利回り(表面利回り)の高さや物件価格の低さなどに注目し過ぎて、賃貸需要の有無を確認しなければ空室リスクは高まります。長期的に賃貸需要が見込める立地で、後段で説明するような地方特有のニーズも満たしている物件を選ぶ必要があります。

流動性が低い

地方の物件に限ったことではありませんが、不動産は流動性が低い資産です。さらに投資物件となれば、時期によっては短期間での売却が難しい場合もあります。しかし、賃貸需要が見込める立地で、満室に近い運営ができている物件であれば、その限りではありません。

立地や物件選定を十分に行い、満室運営ができる努力や工夫を重ねていく姿勢を大切にしましょう。

融資が受けにくい

現在のお住まいから離れた「地方」で不動産投資を行う場合、融資が受けにくい可能性があります。金融機関にもよりますが、融資を受ける金融機関の営業エリアから遠く離れた投資物件への融資は、断られるケースも多いようです。

また、その投資物件がある現地の金融機関でも、オーナーの生活実態なども含めて審査は慎重に行われます。融資を受けて、地方物件への投資を行う場合には、全国展開をしている金融機関など、居住地と投資物件が離れていても融資が受けられる金融機関を探しておく必要があります。

遠隔地物件の管理が難しい

居住地と投資物件が離れている場合、みずから管理を行うのは難しいでしょう。また、管理会社に管理業務を委託する場合でも、業務遂行しているかどうかを自分の目で確認をとるのが難しい可能性もあります。

賃貸住宅管理業法では、管理会社からオーナーへの定期的な業務報告が義務付けられていますが、管理業務の報告をどのような方法で、どれくらいの頻度で行ってくれるのか内容を比較検討しておく必要もあります。

地方で投資物件を選ぶ場合の注意点

地方で不動産投資を行うにあたり、物件取得時ならびに運用時において注意しておきたいポイントについてご説明します。

駐車場が必要

地方特有のニーズとお話をしましたが、駐車場もその1つです。電車などの公共交通機関を使う機会の多い大都市部と異なり、多くの地方は車社会です。一家に1台ではなく、一人1台の車を所有している場合も少なくありません。

投資物件を単身者向け、ファミリー向けにするのかによっても必要な台数は異なりますが、地方の投資物件には少なくとも1戸あたり1台の駐車場が必須と考えておきましょう。

流動性を意識した物件選びを

子などに相続させるにしても、空室の多き物件は、いわば「負の財産」ですから、相続した人の悩みの種となってしまいます。悩みの種を残さないためにも、物件取得段階から、将来の売却も視野に入れた物件選びが大切です。

そのうえで、戦略的に計画的に不動産投資および運用を行い、第三者から「欲しい」と思わせる物件に育てていく姿勢も大切にしておきましょう。

管理会社との付き合いを大切に

居住地と投資物件が遠隔になる場合、管理会社へ管理業務の委託が必要になります。管理会社の対応により、入居率に影響を及ぼす可能性もあります。

管理業務をていねいに行ってくれる会社であるか否か、そして、こまめにコミュニケーションをとれる会社であるか否かを見極め、選んだ管理会社との日ごろのお付き合いを大切にしておきましょう。

地元とのつながりを意識

居住地と投資物件が遠隔になる場合、頻繁に投資物件のあるエリアに足を運ぶのは難しいかもしれません。しかし、投資物件となる賃貸物件に入居するのは地元の人です。インターネットの情報には限りがありますから、物件取得の際には、現地に足を運んで自分の目で確認する必要もあります。

また、物件取得後も、時間を作って投資物件のあるエリアに足を運び、地元の不動産会社へのあいさつ回りを行ったり、新しい開発の動きなど街の変化にアンテナをはったり、地元とのつながりを意識しておく姿勢を大切にしましょう。

収支計画はシビアに

地方の物件価格が低く、利回りが高いからといって、楽観視し過ぎるのは注意が必要です。周辺の類似物件や利便施設を確認し、賃貸需要の有無や家賃相場、空室状況などを踏まえたうえで、現実性のある収支計画を考えておく必要があります。

居住地と投資物件が遠隔になる場合、自分の目が行き届かない点も多くなるため、よりシビアに収支計画を検討しておく姿勢を大切にしましょう。

まとめ

地方で不動産投資を行うのは、メリットがある場合もあります。しかし、遠隔地に居住しながら、地方での不動産投資を成功させるためには、慎重なエリアおよび物件選定が必要になります。

また、どこの金融機関でも融資を受けられるとは限らないため、資金繰りや金融機関の選定、収支計画の検討も慎重に行う必要があるでしょう。

検討事項の多い、地方での不動産投資。しかし、不動産投資業者に勧められたからではなく、自分の資産を育てていくために、慎重な検討を重ねていく姿勢は、本来の不動産投資家のあるべき姿ともいえるのかもしれません。今回、挙げた注意点に留意しながら、地方での不動産投資にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

利回りが高く魅力的な、地方での不動産投資
注意点をおさえて慎重に進めましょう!

この記事の監修者

吉崎 誠二
吉崎 誠二

不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。

著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。