不動産投資に団体信用生命保険は必要?メリット・デメリットや注意点を解説します

2024.06.20更新

この記事の監修者

八木エミリー
八木エミリー

証券外務員一種/2級FP技能士

不動産投資に団体信用生命保険は必要?メリット・デメリットや注意点を解説します

この記事では、不動産投資に団体信用生命保険が必要かどうかを悩んでいる人に向けて、加入時のメリット・デメリットなどを解説します。

この記事のポイント
  • 団体信用生命保険に加入することで万一の時に返済義務がなくなるメリットがありますが、金利が上がってしまうデメリットも。
  • 過去の病歴や現在の健康状態によっては加入できないことがあります。
  • 団体信用生命保険に加入する際は健康状態などを正しく申告しましょう。告知義務違反になれば保険金が支払われないといったトラブルが生じかねません。

目次

不動産投資を始めるなら団体信用生命保険に入るべき?

不動産投資を始める際、万が一に備えて団体信用生命保険に加入しておいた方がよいでしょう。ただし、一般的な生命保険とは保障内容や仕組みが異なるため、内容を理解した上で加入することが大切です。

団体信用生命保険とは、金融機関から融資を受ける人が加入できる保険です。ローン契約者がローンを残して死亡した時、あるいは所定の※高度障害状態になった時、ローン残債が0円になります。ローン残債分は、保険会社から金融機関へ支払われる保険金で補う仕組みです。

※高度障害状態:両目の視力を永久に失う、常に介護が必要な状態など、保険会社が定める所定の状態を指します。
保険契約者・保険受取人債権者(金融機関または保証会社)
被保険者(保険の対象者)債務者(ローン契約者)
保険者(保険の引き受け元)保険会社
団体信用生命保険の保険契約者は、債権者である金融機関や保証会社です。そのため、保険会社への保険料の払い込みは債権者が行います。ただし、保険料はローン金利に含まれていることから、ローン契約者が間接的に支払っていると言えます。

団体信用生命保険のメリット

団体信用生命保険の主なメリットは、遺族や税制上の負担を軽減できる点です。それぞれ順番に解説しましょう。

生命保険代わりになる

「不動産投資は生命保険代わりになる」と言われることがあります。その理由は、ローン契約者が亡くなった場合、遺族に債務を残さず資産を残せるためです。

自分に万が一のことがあっても、不動産を残せば売却してまとまった資金を作れますし、遺族が賃貸経営を引き継げば年金のように家賃収入を得られます。

万一の時に返済義務がなくなる

契約者の死亡時に返済義務がなくなる点は、遺族にとって大きなメリットです。

団体信用生命保険に加入せず、不動産投資ローンを残して相続が発生した場合、遺族が債務を引き継ぎます。債務を引き継ぎたくない場合は所定の手続きを経て相続放棄できますが、相続放棄すればプラスの財産も放棄しなければなりません。

つまり、ローン残債を引き継がず、不動産のみを相続することはNGです。団体信用生命保険に加入しておけば、ローンのない投資用不動産を残すことができ、純粋な家賃収入が遺族の生活にプラスとなるでしょう。

保険料を経費計上できる(法人の場合)

不動産賃貸業を法人化し、法人として団体信用生命保険に加入できた場合、法人の財源から保険料を支払います。法人が支払う団体信用生命保険の保険料は、損金算入(経費計上)が可能です。所得を圧縮できるため、節税につながる可能性があります。

団体信用生命保険のデメリット

団体信用生命保険には、金利や税制面、加入条件に関するデメリットがあります。必要性を検討する際の参考にしてください。

金利が上がる

ローン返済期間中は、死亡時だけでなく病気やケガによるリスクもあります。そのようなリスクに備えて、特約で保障の範囲を広げることが可能です。特約を付加する場合は保険料が金利に上乗せされるため、金利が上がります。

保険料の所得税控除がない

個人が民間生命保険の保険料を支払った場合、一定金額までは生命保険料控除が適用されます。控除が適用されれば所得が下がり、所得税の負担を軽減できる仕組みです。

一方、団体信用生命保険は生命保険料控除が適用されない点に注意が必要です。

誰でも入れるわけではない

一般的な生命保険と同様に、団体信用生命保険は誰でも加入できるわけではありません。生命保険は加入者が少しずつ保険料を出し合い、お金が必要になった加入者へ保険金を支払う仕組みです。

保険金の支払いが生じる可能性が高い人が加入できてしまうと不公平になるため、過去の病歴や現在の健康状態によっては加入できないことがあります。

保険金受取時の税負担に注意!(法人の場合)

また、法人として加入する際は、保険金受取時の税制に注意が必要です。個人の場合、団体信用生命保険の保険金が債務に充てられると、単純に債務が0円になります。

一方、法人の場合は債務を免除された分が「債務免除益」として利益とみなされます。状況によっては税負担の増加につながる恐れがあるでしょう。

団体信用生命保険加入/未加入の比較

団体信用生命保険に加入した場合と、加入せずに民間の定期保険で死亡保障を備えた場合を比較します。具体的な数字を用いてシミュレーションを作成したので、違いを比較してみてください。

【シミュレーションの前提条件】
<被保険者>
35歳(男性)

<不動産投資ローン>
・借入金:3000万円(頭金は0円と仮定します)
・金利:3%(元利均等返済)
・返済期間:30年

<生命保険>
・団体信用生命保険:介護保障特約付き(特約の保険料は金利に0.1%上乗せ)
・生命保険:定期保険(保険金3,000万円、保険期間30年)

【シミュレーション結果】
団体信用生命保険(特約あり)不動産投資ローン+定期保険
保証額最高3,000万円(ローン残高に応じて低減)
3,000万円(契約期間は一定)
保障内容・死亡、高度障害時の残金と同額
・要介護3以上と認定された時点の残債と同額
・死亡時:死亡保険金3,000万円
・高度障害時:高度障害保険金3,000万円
保障期間ローンを完済するまで定期保険の契約期間が終了するまで
保険金受取人金融機関遺族
ローン金利3.1%3.0%
ローン返済総額(内利息)※14,612万円(1,612万円)4,553万円(1,553万円)
保険料の支払い方法ローン金利に含まれる別途、保険会社へ支払う
保険料の総額59万円※2266.4万円(月額7,400円×30年分)
※1:1万円未満四捨五入
※2:特約により金利0.1%を上乗せした場合の利息1,612万円と金利の上乗せが生じなかった場合の利息1,553万円の差額です。ただし、団体信用生命保険や生命保険の保険料は個人や加入先によって異なるため、単純に比較できません。あくまでも目安としてご覧ください。

上記のシミュレーション結果を比較する際のポイントは、以下4点です。

【保障額】
団体信用生命保険はローン残債に対する保険のため、ローン残高が減少するほど保障額が減額されます。一方、定期保険は保障期間中の保障額が一定です。

【保障内容】
上記は介護保障の特約を付加した場合の一例です。介護保障の特約が付いている場合、死亡時だけでなく要介護時も保障されます。一方、定期保険は死亡保障のみです。

【保障期間】
団体信用生命保険はローンを完済すれば保障がなくなりますが、定期保険は契約期間内であれば保障が続きます。

【保険料】
団体信用生命保険の保険料は金利に上乗せされるため、ローン返済時に支払う仕組みです。一方、生命保険に別途加入する場合、ローン返済とは別に保険会社へ支払います。なお、団体信用生命保険や生命保険の保険料は、個人や加入先の条件によって異なる点にご注意ください(上記はあくまでも一例です)。

団体信用生命保険に入れない場合の対処法

健康上の理由で一般的な団体信用生命保険に加入できない場合でも「ワイド団信」に加入できる可能性があります。ワイド団信とは、通常の団体信用生命保険よりも加入の基準が緩和された保険です。

ただし、保険料(金利上乗せ分)は、通常よりも高くなる点にご注意ください。

団体信用生命保険の種類

団体信用生命保険には、複数の種類があります。一般的な団体信用生命保険は死亡保障として備える保険ですが、多額の融資を受ける場合は病気や介護状態など万が一のリスクを考慮することも大切です。

保障内容は金融機関によって異なりますが、代表的なものをまとめました。

三大疾病・八大疾病に備える団信

がんと診断された場合や、保険会社の定める所定の病気が一定期間継続した場合に残債が0円になる保険です。三大疾病はがん・急性心筋梗塞・脳卒中、八大疾病はそれらの疾病に高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性すい炎が加わります。

介護・身体障害に備える団信

要介護や身体障害状態と認定された場合にローン残債が0円になる保険です。

がんに備える団信

がんと診断された場合に残債が0円になる保険です。加入先によっては、一時金が給付されることもあります。

団体信用生命保険に入る際の注意点

団体信用生命保険に加入する際、現在の健康状態や病歴について申告します。団信に加入する人には、自分の健康状態などをありのままに正しく申告する義務があります。これが「告知義務」です。

加入者がこの申告を正しく行わないことを「告知義務違反」と呼びます。告知義務違反をすると、保険契約が解除される、万が一の時に保険金が支払われないといったトラブルが生じかねません。告知内容に関して不明点があれば、金融機関や保険会社の担当者へ確認しましょう。

また、団体信用生命保険は万能の保険ではありません。保障内容を正確に理解し、不足している保障は別途、民間の保険で備えましょう。

まとめ

不動産投資を始める際、万が一に備えて団体信用生命保険に加入しておくことをおすすめします。ただし、保障内容や特約の保険料は金融機関によって異なるため、加入前に内容を確認しましょう。

また、団体信用生命保険はあくまでもローン残債を保障する保険です。病気やケガをした時の家族の生活費など、団信で保障できないリスクは民間の保険で検討してみてください。

団信はかなりお得に入ることのできる保険ですし、不動産を買うときにしか基本的には入れないので、加入できるのであれば加入した方が良いと思います。同時に、現行の保険と見比べて保障が過剰になっていないかもチェックすると良いでしょう。

八木エミリー
八木 エミリー

投資物件取得の際に悩む団体信用生命保険の加入
メリット・デメリットを把握しておきましょう!

この記事の監修者

八木エミリー
八木エミリー

証券外務員一種/2級FP技能士

新卒時に野村證券入社。新人時に営業成績東海地方1位を獲得。2016年より不動産を購入。現在7棟を所有。2019年より独立系ファイナンシャルアドバイザーとして主に富裕層向けに資産活用のアドバイスを行うほか、一部上場企業の社員向けセミナー講師としても活躍。オンラインサロン「em会」にて金融知識の啓蒙に務める傍ら、地域活性事業など活動も行う。東京駅に近いバイリンガルスクール「WONDER KIDS BILINGUAL PREP SCHOOL」オーナー。「元証券ウーマンが不動産投資で7億円」など執筆。

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