不動産投資が生命保険の代わりになること以上に
知っておくべきことはたくさんあります。
目次

監修吉崎 誠二
【資格】宅地建物取引士
不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。
吉崎誠二公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/
不動産投資が生命保険の代わりになると言われる理由

不動産投資とは、不動産を取得し他人にその不動産を貸し出すことで賃料収入を得る投資ですが、ローンの選択によっては投資を行った方(=資産保有者)が亡くなった場合には不動産が現物資産として家族に遺されるからです。
物件購入時に金融機関からの融資を利用した場合には、団体信用生命保険に加入するのが一般的です。団体信用生命保険とは、購入者が亡くなったり、高度の障害を患ったりした際に、ローン残債を保険金で返済してもらえる仕組みです。残された家族には、借金なしの収益不動産が資産として遺され、生活を守ってくれるといえます。
万が一のときに投資用不動産を遺族に遺せる

この団体信用保険に加入すると、投資家がローンを残して亡くなった場合、残債の支払いを免除してもらうことができます。死亡や高度障害に加えて、がんと診断された際に保険が適用になる、「がん団信保険」や、特定疾病にり患した際にローン返済が免除される特約などもあり、生命保険と同様な厚い保障を選ぶことも可能です。
家賃収入が保険の代わりに入る
物件を売却すれば、まとまったお金を残せる
エリアや規模によって異なりますが、一般的に不動産は、数千万円以上という価格帯での取り引きになるので、物件売却により、遺族はまとまったお金を手にいれることができます。
団体信用生命保険と生命保険、どちらがよりお得?

団体信用生命保険とは
債務者に万が一のことがあった場合、債務不履行になることを避ける目的でかけられる保険であり、契約者および保険金受取人は融資先の金融機関となり、被保険者は債務者である投資家です。保険料はローン残高に応じて金利に上乗せして払うのが一般的です。そのため補償額はローン残額、ローンの契約期間はローン完済までと、一般の生命保険とは仕組みが異なることを理解しておきましょう。
加入条件に注意
「ワイド団信」など持病がある方も契約可能なタイプもありますが、保険料となる金利の上乗せ率が高くなります。また、法人として不動産を取得する場合は団信を利用することはできません。
団体信用生命保険と生命保険の違い
死亡保障を目的とした生命保険は、掛け捨て型の定期保険と貯蓄型の終身保険に分けてシミュレーションしてみます。
契約者:30歳男性
団体信用生命保険…3000万円の不動産を35年ローンで購入。金利は2%(注:ここでは比較のために保障内容をほぼ同等に揃えていますが、3000万円で購入した不動産が死亡保障時に同価格で売却できるという保証はありません。金額は一例です)
団体信用生命保険 | 定期保険 | 終身保険 | |
---|---|---|---|
契約期間 | ローン完済まで | 65歳まで | 終身 |
保険料 | ローン残高に応じて金利を上乗せ | 例)5,984円/月※2 | 例)56,220円/月 |
掛け捨ての有無 | なし | あり | なし |
総払込保険料 | 例)3,262,100円※1 | 例)2,513,280円 | 例)23,612,400円 |
65歳未満の 保障内容 | ローン残高を保障 (遺族には不動産プラス家賃収入が遺る) | 3,000万円 | 3,000万円 |
65歳以上の 保障内容 | ローン残高を保障 (遺族には不動産プラス家賃収入が遺る) | なし | 3,000万円 |
総払込保険料は住宅支援機構のシミュレーションより、3000万円をフルローンで借りた場合で算出していますが、頭金を用意すればもっと低い保険料で、安心を得ることが可能となります。
生命保険代わりの不動産投資で背負うリスク

運用がうまくいかないリスク
空室リスク
家賃滞納リスク
家賃滞納は、入居者の経済事情により発生することが多いため、完全に未然に回避することは難しいでしょう。ただし、事前対策として、入居審査の厳格化や、保証会社の利用を義務付ければ、リスクを減らすこともできます。
自然災害などの突発的なリスク
ただし、物件所在地ごとに発生の可能性の高い災害は、ハザードマップの確認などである程度予想することができます。また、災害警戒区域にある場合などは、不動産会社からの重要事項説明書に記載されていますので、事前のチェックを必ず行いましょう。また事前チェックに加え、万が一に備えて、火災保険や地震保険にも忘れず加入することをおすすめします。購入時にしっかり確認しておきましょう。
家賃が下落するリスク
そのため、遺族年金代わりになるだろうと見込んでいた家賃収入が充分な額でなくなる可能性も考えられます。
売却したいときにすぐ換金できないリスク
さらに、時間だけでなく、売却時にはお金もかかります。売却を行なった不動産会社や抵当権抹消の登記を行なった司法書士に対する報酬や仲介手数料など。また、売却時には、場合により税金も発生します。売却により利益が発生したら、不動産譲渡所得税が課税されますし、売買契約書に対する印紙税などもあります。不動産を売却するのには、時間とコストがかかるという点に注意しておきましょう。
相続税が多額になるリスク
生命保険という言葉だけに捉われず、投資、事業であることを忘れずに

団体信用生命保険にかかるコストは金利に含まれている場合も多く、数字が可視化しにくいものですが、金利が上乗せされる=キャッシュフローの低下につながることは意識するべきです。ライフプランや資産状況に合わせて、どの程度の保障が必要なのかを割り出し、不動産投資だけでなく、生命保険や貯蓄でバランスよく備えられるように組み立てていきましょう。不動産投資を始める際にファイナンシャルプランナーなどの第3者的な専門家に相談するのも有効です。
まとめ

ただし、完全に生命保険の代わりとして選択するには、不動産投資はリスクが高すぎますので、事前準備をしっかり行ったうえで検討することをおすすめします。
不動産投資が生命保険の代わりになること以上に
知っておくべきことはたくさんあります。

監修吉崎 誠二
【資格】宅地建物取引士
不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。
吉崎誠二公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/
団信保険に加入しておらず、残債がある場合は、相続で残債も引継ぐことになるので注意が必要です。必ず加入しておいた方がいいでしょう!