不動産投資で経費にできる/できない項目とは。初心者向けにくわしく解説します

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この記事の監修者

秦 光一郎
秦 光一郎

税理士/税理士法人シン総合会計 代表

不動産投資で経費にできる/できない項目とは。初心者向けにくわしく解説します

不動産投資効率を上げるには、可能な限り必要経費を計上し無駄な所得税負担を抑えるべきです。この記事では経費計上できる項目を解説します。

不動産投資では必要経費の計算は重要。
効率を上げるために、必要経費の項目は必ず把握しましょう。

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目次

不動産投資における経費とは

不動産投資を始めると、不動産所得が発生し、確定申告が必要になります。不動産所得は以下の算式により計算されます。

不動産所得=収入金額-必要経費(-青色申告特別控除)
必要経費とは、収入から差引くことができる費用のことです。必要経費の範囲について法律では、
① 収入を得るために直接要した費用
② 販売費、一般管理費、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用
とされています。

経費が節税に影響する理由

所得税の計算は、まず不動産所得や給与所得、年金所得などを合算した合計所得金額を算出します。その後、合計所得金額から扶養控除などの所定の所得控除を差し引いて課税所得金額を算出し、この課税所得金額に対して税率を乗じて、所得税が算出されます。

もし必要経費が何もなければ、上記不動産所得は賃貸収入とほぼ同額になりますが、必要経費が多くあれば、不動産所得はその分少なくなります。そして税率を乗ずる前の課税所得金額もその分少なくなります。

必要経費を合法的かつ網羅的に集計することは所得税の節税に繋がります。

不動産投資で経費にできる項目

上記の通り法律では、必要経費の範囲を「直接要した費用」「販売費、一般管理費、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用」としています。「直接要した費用」はまだしも、「業務について生じた費用」とは曖昧な表現ですが、簡単にいうと、直接ではなくとも不動産投資と関係のある項目のことを意味します。

では、具体的な項目から不動産投資の必要経費にできる項目を見ていきましょう。

金利

金融機関から融資を受けて不動産投資を行っている場合、金融機関へ支払う金利は必要経費になります。土地建物の取得や修繕費に充てるための借入金に係る金利、支払利息、保証料などは名目の如何を問わずいずれも必要経費です。

ただし不動産所得が赤字になる場合で、土地の取得に充てた借入金利息に相当する金額が有る場合は、その借入金利息相当額は、他の所得、給与所得や年金所得と相殺することができません。これは不動産投資のキャッシュフローに大きく影響する部分ですのでご注意ください。

不動産投資による節税を図るスキームは、損益通算という規定を利用しています。たとえば、不動産所得の赤字と給与所得の黒字を相殺して所得税の還付を受ける、というものです。 しかし上述の通り、不動産所得の赤字のうち土地の取得に充てた借入利息は相殺の対象にできず、所得税の還付を受けられません。 つまり不動産投資においては、借入資金はなるべく建物の取得に充て、土地の取得はなるべく自己資金を使ったほうが有利になります。

秦 光一郎
秦 光一郎

税金

不動産投資に関連する各種税金は必要経費になるものが多いです。必要経費となる代表的な税金は以下の通りです。
・不動産取得税
・固定資産税
・都市計画税
・印紙税
・登録免許税
不動産取得税は、新たに不動産を購入した際に課せられるものです。固定資産税・都市計画税は毎年市区町村から賦課課税されます。印紙税は契約締結時、登録免許税は不動産登記に際して発生します。

保険料

毎年支払う保険料のうち、不動産投資に関わるものは必要経費になります。具体的には、賃貸用建物の火災保険料や地震保険料です。
当然のことですが、ご自宅にかかる火災保険料や地震保険料は、必要経費になりません。
ご自宅にかかる地震保険料については、一定額を所得控除という項目で所得から差し引くことができます。

管理委託費

賃貸用物件を管理会社などの第三者へ管理委託している場合、その管理委託料は必要経費になります。家賃収入の収納代行を委託している場合は、一旦管理会社が集金代行した家賃収入から5%程度の管理委託料が差し引かれて貸主口座へ入金されます。差引かれる管理委託料は必要経費です。

もちろん相殺される管理委託料だけでなく、送金などされる管理委託料も必要経費になります。同様に修繕積立金なども通常は必要経費になります。

広告宣伝費

賃貸物件の空室募集に際して、賃貸情報サイトへ登録するなど不動産会社に入居者を探してもらうことがあります。こうした費用は広告宣伝費として必要経費になります。賃貸契約更新時の手数料も同様です。

修繕費

賃貸物件は使用とともに経年劣化します。給湯器の交換や窓枠のコーキング材の入替、塗装のし直しなどなど、年数の経過とともに様々な修繕が必要になります。基本的に経年劣化に伴う原状回復のための費用やクリーニング代は必要経費になります。

しかし、和室を洋室に変えるなどの仕様変更や、性能・品質の向上に繋がる支出は、資本的支出といって全額を必要経費にすることができません。後述する減価償却という手続きによって必要経費を計算することになります。

減価償却費

減価償却とは、資産の取得価額を耐用年数の期間に応じて必要経費に配分する手続きのことをいいます。原則として10万円以上する物の購入は、支払い時の費用ではなく、資産の購入として減価償却を通じて必要経費にすることになっています。青色申告の承認を受けている方については、一個30万円未満の物については年間300万円まで支払時の費用にしてよいことになっています。

たとえば、100万円で耐用年数4年の中古車を年初に購入した場合の減価償却費は、
100万円×0.25(4年定額法償却率)=25万円
となります。ただし、年の中途に購入している場合月割が必要です。また、この車を不動産投資以外、たとえば家事用としても利用している場合には、不動産投資と家事との利用状況に応じて按分計算が必要になります。

司法書士・税理士への報酬

不動産の購入売却に係る登記、借入に拠る抵当権の設定などは通常司法書士へ依頼します。毎年の確定申告や税務上の相談については税理士へ依頼するのが通常です。これら専門家への報酬支払額は必要経費となります。

通信費

通信費はどのような事業でも比較的認められやすい費用の1つです。借主や管理会社との文書のやり取りに要する郵送料は通信費として必要経費になります。携帯電話料金や固定電話料金は、不動産投資用と家事用の使用割合に応じて按分計算し、一部を必要経費にすることができるでしょう。

交通費

管理会社との打ち合わせや賃貸物件への往復のための交通費は必要経費になります。公共交通機関の利用料、ガソリン代、高速代などが考えられます。当然家事や不動産投資と関係ないことに使った金額は必要経費になりません。

交際費

管理会社の職員や賃借人など、不動産投資と関連する方々へのお中元やお歳暮などに要する費用は交際費として必要経費になります。こちらも当然のことですが、不動産投資と何ら関係の無い方々への贈答や懇親に係る費用などは不動産投資の必要経費にはなりません。

情報収集に係る費用

 不動産投資に関する見識や能力を高めるための自己研鑽、情報収集のための費用は、必要経費になります。関連する書籍の購入、セミナーや交流会への参加・出席などは典型的な必要経費でしょう。

不動産投資で経費にできない項目

次に不動産投資の必要経費にならない項目について見ていきましょう。これは簡単にいうならば、不動産投資とは全く関係のないと考えられる項目になります。

スーツ代

スーツ代は不動産投資の必要経費にはなりません。スーツに限らず、衣服の購入費用は通常は必要経費にならないと考えてよいでしょう。ただし貸し付けている不動産の維持管理のため、たとえば草むしりや外壁の清掃などのための作業着の購入費用であれば、衣服ではありますが必要経費として認められる可能性は有ります。

スポーツジムなどの会費

スポーツジムなどの会費も利用料も不動産投資の必要経費にはなりません。モデルや俳優、アスリートなどの個人事業主であれば関連を主張できるかもしれませんが、スポーツジムと不動産投資との関連を主張するのは少々無理があるでしょう。

所得税・住民税

毎年納付する所得税・住民税は必要経費にはなりません。これは計算技術的な問題からです。他方、不動産投資の規模がある程度大きくなると事業税という別の税目が課されるようになります。事業税は支払った年分の必要経費になります。

資格取得費用

職務の遂行上必要な技術を習得するための費用は、通常必要経費になります。しかし不動産投資においては、職務遂行上必要な技術や資格というものはなかなか想定が難しいものです。宅地建物取引業やファイナンシャルプランナー、税理士などの資格は不動産投資との関連は認められるものの、職務遂行上本当に「必要」か、との観点では、説明の難しい費用です。一般的には必要経費としては認められません。

反則金・罰金

交通反則金や滞納に拠る延滞税などは必要経費になりません。こうした費用が必要経費として認められると、その分所得税などを安くする効果を伴い、行政罰としての意義が薄められてしまうからです。

判断に迷ったら専門家に相談を

最初に述べた通り、必要経費の範囲は法律で定められていますが、その内容は曖昧糢糊としています。上に述べた、必要経費になる・ならないの具体例は一例に過ぎず、その範囲はご本人の個別事情にも左右されます。

忘れないで頂きたいことは、ある支出が必要経費であるかどうかの判断は、まず事業主本人が考え判断すべきことである、ということです。確かに後日の税務調査において、その判断が不適正なものとされる可能性はあります。

しかしそうであったとしても事業の当事者として、必ずご自分なりの判断基準を形成しておくことは重要です。判断基準を税務当局に一任してしまうと、必要経費の範囲は極めて狭められてしまいます。

そしてご自分なりの判断基準の形成のために、税理士などの専門家との繋がりをもち、相談なさってください。税理士は、税務当局の目線や考え方、必要経費を主張するために必要な論理、按分が必要な経費の按分基準など、さまざまな角度で相談に乗ってくれるでしょう。

まとめ

この記事では、必要経費にできる・できない項目について解説してきました。この記事で上げた具体的な項目は、一般的な必要経費の範囲で通説になっているもの、とお考え下さい。上述の通り、必要経費の範囲は個別の事情でも変わることが有りますし、按分が必要な項目は情報の整理が不可欠です。

ご自分では難しいとお感じになられたならば是非専門家の知見を活用なさってください。必要経費の規定をうまく活用し、投資効率を上げ、不動産投資を実りの多い投資に育てていきましょう。

不動産投資では必要経費の計算は重要。
効率を上げるために、必要経費の項目は必ず把握しましょう。

この記事の監修者

秦 光一郎
秦 光一郎

税理士/税理士法人シン総合会計 代表

会計事務所に勤務しつつ平成16年税理士試験に合格。税務コンサルタント会社にて金融機関をサポートする業務の中、資産税業務の経験を積む。平成22年税理士法人シン総合会計設立。主に中小企業の会計税務支援を中心に、事業承継、資産税業務にも従事。不動産会社の税務相談会相談員、金融機関のセミナー講師等に携わる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。