不動産投資を始める前に、
固定資産税について把握しておきましょう!
目次
マンション投資に税金の知識は必要不可欠!

固定資産税とは

通知の時期は自治体毎に異なりますが、毎年4月~6月にかけて不動産所有者へ納税通知書と納付書が郵送され、年4回に分割して納付します。
東京都の場合、6月、9月、12月、翌年2月の末日が納期限となり、末日が休日などに該当する場合休日明けとされます。最初の納期に1年分まとめて納付することもできますし、口座振替を指定していると、各納期限に指定の銀行口座から引き落とされます。
マンションの固定資産税の目安は?

このため都心の一等地に建つマンションの固定資産税は、同じ広さの郊外マンションのそれより高額になりますし、郊外のマンションでも低層棟(5階以下)で敷地に余裕のある作りのものは、土地の持分が大きくなる分固定資産税の税額も高額なる傾向があります。
マンションの固定資産税の計算方法

固定資産税の税率は、ほとんどの自治体が1.4%を採用していますが、1.6%等異なる税率を採用している自治体もあります。算式にある「課税標準」とは、税率を乗ずる金額です。各地方自治体は総務大臣が告示する「固定資産評価基準」に基づいて土地や建物の「評価額」を算出。
一般的にマンション敷地となる宅地については、道路毎に定められている固定資産税路線価に、対象となる敷地の地積を乗じて算出されます。この際、相続税の財産評価と同様、土地の不整形などの減額要因も加味されます。
一般的な土地の固定資産税評価額の目安は、公示価格の70%、相続税評価額の90%程度です。建物については新築時に所有者から設計図書などの資料の提出を受け、建物の材質、構造、付帯設備、建物用途などに基づき評価額を算出。
建物の規模にもよりますが、完成引渡しから半年前後で自治体から連絡が来て固定資産税評価額が決定され、完成引渡しの翌年分から固定資産税が課されるようになります。新築時の建物の固定資産税評価額の目安は、建築価額の50%~60%程度です。
固定資産税評価額は3年に一度評価替えされます。つまり原則として評価替えの年から3年間は税額が変わらないということです。土地については時価の変動に基づき固定資産税路線価等が修正され評価額、課税標準額が評価替えされ、建物については、再取得価額と経年減点補正率が加味されて評価替えがされます。
上記の他、都市部においては都市計画税という税が課されます。都市計画税の課税標準は固定資産税評価額を基に計算されますが、固定資産税と同様土地については、特例措置の関係で固定資産税とは異なる金額が課税標準額となります。税率は0.3%で、税額は固定資産税の納税通知書に記載され、固定資産税と同時期の納付が求められます。
マンションの固定資産税シミュレーション

他方新築物件の場合、建物の評価額が定まっていないため事前に正確な情報を入手することはできません。以下は、新築物件や中古物件でも固定資産税の情報を得られない場合に、課される固定資産税額の目安のシミュレーションする例です。
シミュレーション1:新築マンションの購入
前提条件 | |
---|---|
マンション全体の地積 | 1,000m2 |
購入する部屋の土地持分 | 10,000分の75 |
購入する部屋の延床面積 | 75m2 |
マンション敷地の固定資産税路線価 | 25万円 |
マンションの新築販売価額 | 5,000万円 |
187.5万円×1/6=31.2万円(住宅特例適用後・固定資産税課税標準額)
31.2万円×1.4%=4,368円(固定資産税額)
2,400万円×60%=1,440万円(概算の固定資産税評価額)
1,440万円×0.80=1,152万円(住宅の場合の初年度の経年減点補正率。)
1,152万円×1.4%×1/2=80,640円
建築価額の推計に用いている48%という率は、一般的な分譲マンションの原価率80%と原価構成比率土地40%建物60%を基に算出した比率(80%×60%=48%)で、統計情報を基にしています。経年減点補正率は、固定資産評価基準の経年減点補正率表より引用しています。
この新築マンションの場合、固定資産税の年額は85,000円程度と見込まれます。
シミュレーション2:中古マンションの購入
前提条件 | |
---|---|
マンション全体の地積 | 1,000m2 |
購入する部屋の土地持分 | 10,000分の75 |
購入する部屋の延床面積 | 75m2 |
マンション敷地の固定資産税路線価 | 25万円 |
マンションの新築販売価額 | 5,000万円 |
2,175万円×60%=1,305万円(当初の概算固定資産評価額)
1,305万円×0.6825=890.6万円(評価替年の経年減点補正)
890.6万円×1.4%=124,684円(経過6年につき軽減措置無)
建物価額に用いている29万円という数値は、2016年の東京都における鉄筋コンクリート共同住宅の1m2当りの平均建築費用の額です。評価替年における再調達価額については、考慮していません。
この中古マンションの固定資産税は年額129,000円程度と見込まれます。新築後6年目であるため、1/2特例の対象とならず新築時より税額が増加しています。また実際には、上記に0.3%の都市計画税が加わります。可能な限り精緻なシミュレーションを望むのであれば、都市計画税も含めて計算することが望ましいでしょう。
上記のシミュレーションでは、建物建築価額の推計に際して、販売価額から推計する方法と、統計データの平均的な建築価額から推計する方法の2種類を紹介しました。
マンションの建築価額を推計する方法はいくつか考えられますが、統計データの平均的な建築価額から推計する方法がシミュレーションを行う上ではより安全と考えられます。分譲マンションの販売価額に締める原価率は必ずしも常に一定とは言えないためです。
このようなシミュレーションで算出される固定資産税額は、あくまでも目安であって実際の税額と異なります。投資計画を立てる際の参考情報としてお考えください。

マンションの固定資産税の軽減措置

住宅用地の特例措置
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 1戸に付200m2までの部分 | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の住宅用地 | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
新築マンションの軽減措置
貸家・・・40m2以上280m2以下
上記面積は、一部屋当たりの面積に共用部の面積を按分し加えた床面積で判定をします。またいずれの場合も、部屋毎の床面積の1/2以上が住宅用である必要があります。半分以上を事務所などに利用していると、この措置の適用を受けられないことになります。
認定長期優良住宅の軽減措置
認定長期優良住宅の優遇措置を受けるためには、行政庁に所定の書類を提出し認定通知書の交付を受ける必要があります。認定長期優良住宅については、固定資産税だけでなく登録免許税、所得税にも軽減規定が存在しますが、これらの特例は自己の居住用の住宅に限られ、投資用のマンションには適用されません。
タワーマンションの例外措置
「居住用超高層建築物」については、階層別専有床面積補正率という率が設けられ、階層が上で取引単価が高い部屋の固定資産税評価額が多めに算出されるようになりました。仮に同じ床面積の場合、1階の部屋の固定資産税評価額が100のとき、40階の部屋は110になるよう制度設計されています。
マンション全体の固定資産税評価額は変わりません。全く同じ条件で建設された40階建てのタワーマンションの場合、2016年以前建築のものと2017年以後のものでは1階の部屋の固定資産税評価額は従前より4.76%減少し、40階の部屋では4.76%増加することになります。当然これは相続財産の評価額へも影響を及ぼすことになります。
不動産投資で失敗しないために正しい税額を把握しよう

しかし固定資産税などの維持管理費はある程度の精度をもって予測ができます。予測可能なリスクを網羅的に織り込んだ計画を立てることは、余裕をもって投資に取り組んでいく上で重要なことです。
不動産投資を検討中であるならば、物件の固定資産税負担を織り込んだ上で、投資計画を立てるようになさってください。

まとめ

もし各種データ収集やシミュレーションにご不安のある場合は、是非お知り合いの税理士や不動産業者などの力を借りてください。投資判断を行う上で、税理士などの専門家と繋がりを持っておくことは必ずプラスに働くはずです。
不動産投資を始める前に、
固定資産税について把握しておきましょう!
この記事の監修者

秦 光一郎
【資格】税理士
会計事務所に勤務しつつ平成16年税理士試験に合格。税務コンサルタント会社にて金融機関をサポートする業務の中、資産税業務の経験を積む。平成22年税理士法人シン総合会計設立。主に中小企業の会計税務支援を中心に、事業承継、資産税業務にも従事。不動産会社の税務相談会相談員、金融機関のセミナー講師等に携わる。
建物の固定資産税評価額は、物件により建築価額の40%前後で評価されているものもあり、バラツキが見られるのが現状です。また住宅の固定資産税評価額は、構造等に関わらず初年度に80%、第3年度には70%で評価されることから、他の用途の建物に比し固定資産税負担は低く抑えられます。