レントロールはこう見るべし!現役不動産投資家が教えるチェックポイントとは

2024.03.13更新

この記事の監修者

安藤 新之助

安藤 新之助

株式会社サクセスアーキテクト 代表取締役

レントロールはこう見るべし!現役不動産投資家が教えるチェックポイントとは

レントロールには不動産投資物件の収益を左右する情報が隠されています。ここではレントロールの読み解き方を詳しく掘り下げます。

この記事のポイント
  • レントロールには入居者からオーナーへ支払われている賃料の詳細やその他の収支情報が記載されています。
  • 資料に記載されている情報のみで判断するのは危険!自分の目で現場を確認し、必要ならば第三者に意見を求めましょう。
  • レントロールから読みとれる情報をもとに、購入後に得られるであろう収益やリスクをイメージすることが重要です。

目次

レントロールとは

レントロールとは収益不動産における賃貸条件の一覧表のこと。入居者からオーナーへ支払われている賃料の詳細やその他の収支情報が記載されています。

たとえば、〇〇号室は家賃80,000円、共益費6,000円 駐車場10,000円、などの賃料のほか、間取り、広さ、契約日や特記事項などさまざまな情報、自動販売機や看板広告などの入居者以外からの収入などが記載されています。

このレントロールの情報をもとに収支シミュレーションを作成するのが一般的です。

賃貸物件の収益性評価に利用するもの

レントロールの情報で、適正に賃貸されているかどうか、現在の賃料相場と比較し割高か割安かなどが把握できます。これは一棟ものも区分マンションも共通しています。

区分マンションでも、ファミリー分譲賃貸は一棟ものの収益物件にくらべ家賃設定が高いのが一般的ですが、修繕積立金、管理費の賃料に対する割合もみておくことがポイントです。

レントロールから得られる賃料などの情報は物件価格の評価に大きく影響することもあり、価格交渉の材料になるケースも十分に含まれますので注視しましょう。

どうやって入手する?

レントロールは物件を仲介している不動産業者に依頼すれば入手できます。

ただし、レントロールはある意味入居者の個人情報でもあるため、売主、業者の意向によっては情報を第三者に漏らさないためのCA(コンフィデンシャル アグリーメント:秘密保持誓約書)のサインを求められることもあります。その際には承諾が必要です。

レントロールのひな型はある?

レントロールにはとくに決まった書式はありません。媒介を依頼された不動産業者が売主から提供された賃貸借契約をもとに見やすく作成し、買主側に提供するパターンが一般的です。

注意点としてしっかり見ておきたいのが新築や空室の募集賃料の設定です。賃料が相場に基づいて記載されていれば良いのですが、利回りを高く見せるために割増しに設定されているケースがあるからです。

その部屋にリノベーションなどで付加価値を付け、家賃をアップしたものであれば問題ないのですが、通常の仕様にもかかわらずレントロールを良く見せかけた虚偽のものや、うっかり間違って記載されているケースもあります。

買付が通った際、売買契約の前に賃貸借契約書の閲覧をリクエストし自分の目で確認することと、レントロールに記載されている賃料と近隣相場の比較は必ず行いましょう。

ときどきあるケースとしては、サブリース契約の物件の場合、入居者の個人情報であることを盾に、サブリース業者から詳細な賃貸情報を提供されないケースもあります。その際にはサブリース賃料で判断するほかありません。

レントロールに記載されている内容

レントロールに記載されている情報は以下のようなものです。

・号室、状況(入居中/空室)
各階の部屋数、入居状況を表します。空室であれば募集賃料はいくらか、募集賃料が相場で利回りに反映されているかを確認しましょう。

・契約者(個人/法人)
入居者の属性が記載されています。同一法人が同時期に入居している場合は注意が必要。派遣社員や契約社員などの社宅の場合、同時に退去されることも。その場合に収益、入居付けに影響がでます。

・間取り
お部屋のタイプを表します。間取りといってもお部屋ごとに形や方角が違います。
平面図を確認しニーズに合った間取りか検証しましょう。

・面積
お部屋の広さを表します。近隣の類似した物件と間取りと面積を比較することがポイント。近隣の同類の物件より極端に狭いと客付けに劣勢になる恐れも。

・賃料
一か月あたりの賃料になります。近隣相場との比較が必須。直近の入居の賃料を確認することで、購入後の客付けの指標の材料となります。

・共益費
エレベーターの維持管理、共用電気、水道、清掃代などにあてる費用です。一室あたりエレベーター無しの場合3,000~5,000円、エレベーターがある場合6,000~8,000円が相場です。共用部の設備や仕様、維持管理内容で変動します。共益費でまかなえそうかどうかを判断します。

・保証金(敷金)
入居者からいただく預り金です。退去時の原状回復や万が一の家賃滞納にあてます。保証金、敷金が徴収できているか否かが物件の競争力や市場の需要と供給の指標となります。徴収出来ている場合、100%償却なのか実費償却なのかを確認しましょう。修繕負担金などのほかの返金の必要性のない名目で徴収しているケースもあります。

・保証会社の有無
入居者が滞納した際に保証会社が家賃や原状回復費用を補填してくれます。一般的に入居者が費用負担します。保証会社が現存しているか、また引き継げるかを確認しましょう。

・告知事項
買主に告知が必要な内容がある場合に記載されます。事件、事故、心理的瑕疵などが該当します。

・契約開始/終了日
長期入居か直近の入居かを見ることができます。長期入居の場合、当時の家賃と現在と比較すると高い場合が多いです。

長期入居のお部屋は内装、設備の傷みが通常と比べ多く、原状回復費用が通常より高額になることと、次回の募集で家賃が下がる可能性が高いです。相場の家賃に引き直し、修繕費用も織込んで収支計算をしましょう。

安藤 新之助
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レントロールに記載されてないが重要なこと

レントロールなど売買に必須とされる資料には記載されていませんが、後の賃貸運営に影響する可能性のある情報を自ら収集することがポイントです。

滞納や入居者トラブルの有無

滞納、隣人、上下階の入居者同士のトラブルはレントロールに記載されません。近隣に反社会勢力の事務所があったり、ごみ屋敷など自治会でも対応に苦戦すると想定できる隣人は、ご自身では対応することは非常に困難です。業者を通じて売主もしくは管理会社に確認しましょう。許可を得られれば直接、管理委託会社に問い合わせても大丈夫です。

入居者募集にストレートに影響が出ます。 問題解決ができなかったり、出来ても膨大な費用と時間がかかる可能性大。しっかりリサーチしましょう。 状況によっては利回りが良くても見送る決断も必要です。

安藤 新之助
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敷地外駐車場の有無

現況で駐車場が足りていても、将来の入退去で必要なケースがあります。管理会社や不動産業者に敷地外駐車場の需要と供給を把握することが後の安心材料となります。

その他の収益

契約期間、賃料条件など契約条件の確認をすることがポイントです。撤去費用や解約違約金など不利な条項がないか確認しましょう。確認は不動産業者を通じて契約書や情報を提供してもらいます。

共用部の水道光熱費や設備負担

物件によっては洗車場やフリーの共有スペースを設けている物件もあります。その際の維持管理に伴う支出がどの程度あるのかを把握することがポイントです。

正しく読み解け!レントロールのチェックポイント

レントロールは言わば物件の健康診断書といっても過言ではありません。物件が健康であれば適正賃料以上で満室、入居者属性も安定しています。

一方、健康状態が悪ければ相場より賃料設定が低く、空室も目立ちますし入居者属性も望ましいものではありません。ではどの点をみれば読み解けるのかを解説してまいります。

一見不健康に見えるレントロールが、実はダイヤモンドの原石の可能性も。要因を突き止めることが大切で、解決することでお宝物件に生まれ変わります。管理会社を変え、内外装の修繕を行うことで高収益物件に生まれ変わる事例も少なくありません。

安藤 新之助
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賃料のばらつきはないか

古くから入居する方は賃料が高く、一番新しい方が安くなっていくのが一般的です。ここで一番新しく入居した方との賃料の差をみることがポイント。賃料差がほとんどなければ賃貸需要が安定している証です。

入居時期が偏っていないか

賃貸市場は1~3月、9~10月頃の繁忙期と6~8月の閑散期があります。とくに、メインの繁忙期1~3月にしか契約日がない場合には注意が必要です。空室がでたら繁忙期まで埋まらない可能性が大です。学生向け物件の場合は入居が決まる時期が決まっているので、織り込んで購入することがポイントです。

入居者の属性はどうか

一般的に法人契約、個人の勤務先が上場企業、大手、中堅安定企業ですと安心です。注意点として法人契約でも短期契約の派遣の場合は入れ替わりも多く不安定なので、業種に着目することがポイントです。属性が低くても家賃保証会社と契約していたり、連帯保証人がとれていればリスクは軽減できます。

相場と比べ全体的に賃料設定が高いもしくは安い

レントロールの家賃が安い場合、現在の管理会社、仲介店と現オーナーの取り組みに要因がある可能性が高いです。その場合、管理会社や仲介店を変えることで賃料アップが望めます。高い場合、現在の管理会社、仲介店がよいクライアントを持っていたり、現オーナーの賃貸経営力が高いなどプラスの要因があります。

極端に家賃が安い

たまたま、退去が同時期に出てしまい家賃を10~20%大幅に下げて募集することもよくある事例です。その他、現オーナーの親族、またはオーナー本人が入居しているケースがあります。不動産業者を通じて確認しましょう。

安い賃料設定で継続的に入居されると物件の収益力、価値、その他運営に影響を及ぼす恐れがあります。 家賃を段階的に相場までアップさせてもらう契約を結ぶなど、不利の無い契約条件にすることがポイントです。

安藤 新之助
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入居率が低くないか

入居率が低い場合、何故、空室なのか要因を突き止めることがポイントです。一因として、以下のようなものが考えられます。
・需要と供給のバランスが崩れている
・管理会社、仲介店のリーシング不足
・オーナーの取組み不足

空室の要因によってはお宝物件であったりします。入居率が低いからと言って即座に見送るのはもったいないことです。

資料を鵜呑みにせず、本当の収益性を読み解く材料に

レントロールなどの資料を読み解くことで多くの物件の背景を読み取ることができます。しかしながら、その資料から読み取れることだけを鵜呑みにし、主観で判断することはある意味危険です。資料と現場に相違があることは少なくありません。資料から読み取れることを現場で自分の目で確認し、第三者の意見や情報を得て客観的に判断することが大切です。

しかしながら、サラリーマンや士師業など本業をお持ちの方で、ご多忙で現場確認や情報収集できない場合、不動産コンサルタントなどのセカンドピニオンを利用するのもおすすめです。

まとめ

レントロールは物件から得られる収入の情報が記載された重要な資料です。そこから読み取れる情報から、購入後に得られるであろう収益やリスクをイメージすることが可能です。

レントロールの重要性を認識し、この記事で学んだことを活かしていきましょう。

レントロールはいわば物件の健康診断書。
問題点があったら、改善できるものか否かを見極めましょう。

この記事の監修者

安藤 新之助

安藤 新之助

株式会社サクセスアーキテクト 代表取締役

高校卒業後、通算20年以上住宅業界に携わり、2008年不動産投資を開始。当時の年収400万円から7年で資産10億円と家賃収入1億円を達成し、42歳でサラリーマン生活を卒業しセミリタイア。現在14棟214室を保有する実践不動産投資家としてwebコラム執筆やTV、新聞などのメディアに多数出演しながら、3法人を運営し不動産賃貸業ならびに不動産賃貸経営コンサルタントとして活動中。「NOをYESに変える不動産投資最強融資術」(ぱる出版)を執筆。 

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