ガレージハウスとは、車庫付き住宅の一形態でありながら、1階部分にガレージを組み込んでいる住宅のことを指します。車やバイクなどを趣味とする方に人気が高く、駅から遠く離れた立地でも需要がある点が特徴です。この記事では、ガレージハウス経営に関心のある方、また、一般の賃貸住宅には不向きな土地をお持ちの方に、ガレージハウス経営ならではの特徴や始め方を詳しく解説していきます。
ガレージハウス経営とは
ガレージハウスとは、車庫付き住宅の一形態でありながら1階部分にガレージを組み込んでいるため、2階や3階などの住居部分から出ることなく駐車スペースに行くことができる個性的な住宅です。車やバイクなどを趣味とする人に需要が高いという特性から、居室の広さや部屋数をそれほど重要視しません。そのため、連棟式を採用するなどして一棟の戸数を増やし、収益性を高めることも可能となります。
また、ガレージハウスは自宅利用だけでなく、車やバイクの保管・メンテナンスのためにセカンドハウスとして利用されることが多いことも特徴の1つです。開口部が大きく広いスペースを確保できるため、釣りやサーフィンなどの大きな道具を要する趣味を持つ人々にも需要があるほか、車椅子やベビーカーを風雨にさらすことなく家の中に誘導することが可能なため、子育て世代や介護を要する世帯にとっても需要が期待できます。
安定したガレージハウス経営を行うためには、このような潜在的なニーズも視野に入れることがポイントの1つです。
ガレージハウス経営のメリット
入居者ニーズなどに特徴を持つガレージハウスは、その独自性からほかの賃貸経営とは異なった市場性に恵まれています。ここではガレージハウス経営のメリットについて詳しく掘り下げていきましょう。
1. 家賃を高めに設定できる
ガレージハウスは一般的なアパート経営に比べ希少性が高く、競合物件が少ないことから賃料を高めに設定することが可能です。また、ガレージハウスという付加価値があるため、やや高い賃料でも入居者を確保することができます。なお、建物をターゲットに合わせた設計にするなど工夫を施すことで、長期入居してもらうことも期待できるでしょう。
2. 狭小地でも経営可能
ガレージハウスは狭小地でも問題ありません。戸建てを建てられるくらいの面積があればガレージハウス経営を行うことは可能です。また、アパートを建てるには形状に問題がある場合でも、ガレージハウスであれば建てることができるため、あまり土地の形状を気にする必要もありません。そのほか、空き家をガレージハウスにリフォームして活用することも十分可能です。
3. 立地に左右されづらい
一般的に賃貸物件は駅から近い方が入居者を確保しやすいですが、ガレージハウスは車やバイクを所有している入居者が多くなるため、最寄り駅までの距離を重視しない傾向にあります。一般的なアパートや戸建て賃貸に向いていないような立地でも需要が見込める点は、ガレージハウス経営のメリットと言えるでしょう。
ガレージハウス経営のデメリット
ガレージハウス経営のメリットをお伝えしましたが、デメリットにはどのような点があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
1. 投資効率が低い
ガレージハウス経営はアパート経営と比較して投資効率が下がるという点がデメリットです。ガレージハウスは戸建てタイプが多く、戸建ての場合は1世帯のみの入居となるため、アパートやマンションよりも収益性は低くなります。ただし、冒頭でも触れたように連棟式を採用するなどして戸数を増やし、収益性を高めることも可能です。
2. 空室リスクが大きい
ガレージハウスは戸建てタイプがほとんどですが、仮に空室になった場合、家賃収入はゼロになってしまいます。車やバイクを趣味とする人など、ターゲットが限られていることから次の入居者確保が難しい可能性もあるため、管理会社に相談するなどして空室になった場合の対策を立てておくと良いでしょう。
ガレージハウス経営を始めるまでの流れ
ここでは、ガレージハウス経営を始めるまでの流れについて見ていきましょう。ガレージハウス経営においてもアパート・マンション経営と同様、建築プランの検討からスタートします。建築プランが決まれば、以下のスケジュールで建物を建築し、賃貸募集へと進みます。
・建築プラン策定 |
・建築確認申請(建築許可の取得) |
・建築会社との間で建築請負契約の締結(着手金の支払い) |
・建築開始 |
・建物完成 |
・建築費の支払い(建物引渡し) |
・賃貸募集を行う不動産業者の選定 |
・賃貸募集 |
なお、
融資を利用する場合は金融機関のスケジュールに合わせた支払い時期の調整も重要となります。また、既存住宅のリフォームも基本的に流れは同じですが、新築と違ってできることが限られるため、建替えを視野に入れた検討も必要です。
ガレージハウス経営の留意点
ガレージハウス経営を行う場合は、ほかの賃貸経営とはやや違った視点を持つ必要があります。流通数や運用実績が少ないためデータに乏しいため、一般的な賃貸経営のセオリーが通用しにくいためです。データに乏しいということは、賃貸募集にあたっての正解を誰も知らないということになり、どのような建物がニーズに合致するのかも、現状では不透明であるといわざるをえません。
ガレージハウス経営を始める際は、大家さん自身が積極的に動き、建物プランや入居者募集について情報収集するようにしましょう。たとえば、建築プラン策定については、車の停めやすい駐車場形状はどうすべきか、作業場の確保や道具の収納場所、車椅子などの乗降利便性を検討する必要があり、リフォームに関しても設計・施工の両面でしっかり検討する必要があります。
慎重な業者選びをすることが肝要
ガレージハウス経営では建築、入居者募集のどちらにおいても、実績のある業者を選ぶことが重要です。しかし、実績のあるガレージハウス専門業者はかなり少なく、専門業者を探すことは容易ではありません。一方、ガレージハウスは立地に左右されにくく、広い範囲で入居者を募集できます。そのため一般的な賃貸住宅のように、必ずしも物件の所在する地域の地元業者を頼る必要はありません。さまざまなエリアの業者に話を聞いてみると良いでしょう。
そのほか、土地活用の専門業者に相談することも一案です。土地活用の専門業者であればガレージハウス経営に関する相談のみならず、土地活用自体に関する悩みも相談することが可能です。一括相談サービスなどをうまく活用しながら相談先となる不動産会社を選定するとよいでしょう。
よくある質問
ここでは、ガレージハウス経営に関するよくある質問をご紹介します。
- ガレージハウスの建築費は高い?
- ガレージハウスを建築する際に重要なのは建物の耐震性確保です。一般的に建物は柱と壁で支えられていますが、ガレージハウスのように開口部が大きくなると壁面が減り、耐震性に劣ってしまいます。そのため鉄筋コンクリート造などの強度の高い工法が必要となり、結果的に建築費が高くなることがあるのです。費用に関して不安がある場合は、事前に業者に細かく確認するようにしましょう。
- ガレージハウスの固定資産税は安くなる?
- ガレージハウスもアパートなどと同じく「住宅用地の軽減措置」があるため、固定資産税は安くなります。しかし、この軽減措置は土地のみが対象となるため、建物に関して固定資産税が安くなることはありません。なお、屋根と柱で建てられているカーポートや物置程度のガレージハウスであれば、場合によっては家屋とみなされず、固定資産税がかからないこともあります。詳しくは税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
- ガレージハウスの入居者に特徴はある?
- ガレージハウス最大の特徴は、風雨をしのげ、外から遮断された駐車場を持っている点です。これらの特徴を一般的な賃貸住宅で求めるのは難しいため、ガレージハウスは付加価値が高まり、物件数も少ないことから高めの賃料設定となっています。そのためガレージハウスの入居者は、金銭的な余裕がある高所得者層が多くなっています。
まとめ
ガレージハウス経営は比較的低リスクで高い収益を期待できる土地活用ですが、市場規模の小さいニッチな賃貸事業だといえます。そのため経営にあたっては自身で情報を集め、十分な検討を行わねばなりません。まずは、不動産業者などに相談することから始めてみてはいかがでしょうか。なお、不動産業者に限らずカーディーラーなどにも車好きの方々が好む駐車場形状や設備についての意見を求めてみても良いでしょう。ぜひともこの新しい土地活用を検討してみてください。
監修近藤 智博
【資格】宅地建物取引士
住宅の売買仲介、賃貸仲介・管理、新築分譲、相続、投資などに約30年の実務実績があり、得意としております。
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